• 作成日 : 2025年12月11日

シミュレーションゴルフは儲からない?経営者の年収や開業費用、閉店のリスクまで解説

「シミュレーションゴルフは儲からない」という声を耳にすることがありますが、これは本当でしょうか。確かに儲からないと言われる理由は存在するものの、適切な計画と戦略があれば高い収益性を期待できる事業でもあります。

この記事では、シミュレーションゴルフが儲からないと言われる理由から、具体的な収益モデル、失敗事例、そして安定した収益を上げるためのポイントまで、経営のリアルを徹底解説します。

シミュレーションゴルフが儲からないと言われる理由は?

シミュレーションゴルフ経営が「儲からない」あるいは「失敗しやすい」と言われる理由として、主に以下の要因が挙げられます。

1. 高額な初期費用

シミュレーションゴルフ事業の最大のハードルは、初期費用の高さです。高性能なシミュレーター本体や内装工事費など、初期に数千万円単位の多額な導入費用が必要となり、その投資回収に時間がかかります。

  • 機器本体:最新の高性能なシミュレーターは、1台あたり数百万円から1,000万円近くになることもあります。
  • 内装・設備費:防音設備の整った快適なプレー空間を作るための内装工事費が必要です。
  • 物件取得費:都心部や駅近など好立地であればあるほど、保証金や礼金などの物件取得費用が高額になります。

小規模な店舗(2〜3ブース)でも総額2,000万円〜5,000万円程度の初期投資が必要となるケースが多く、この投資額を毎月の売上で回収するには、相当高い稼働率を長期間維持する必要があります。

2. ランニングコスト

インドアゴルフ事業は、比較的高い利益率が期待できる反面、固定費も高額になりがちです。

  • 家賃:集客しやすい一等地の物件は、当然ながら家賃も高額です。
  • 人件費:受付スタッフやインストラクターを雇用する場合、人件費が発生します。
  • 光熱費:シミュレーターやエアコン、照明など、広い空間を維持するための光熱費は予想以上にかかります。
  • メンテナンス・アップデート費:機器の性能を保つための定期的なメンテナンス費用や、ソフトウェアのアップデート、新機能の追加にも費用が発生します。
  • 消耗品費:スクリーン、プロジェクターのランプ、ボールなどの消耗品交換費用が定期的に発生します。

3. 競争激化による集客の難しさ

シミュレーションゴルフ市場は、参入障壁が下がったことで競合施設が急増し、レッドオーシャン化しています。特に近年は、大手資本の参入やフランチャイズ(FC)展開、低コストな24時間無人営業モデルの登場により、インドアゴルフ施設の数が増加しています。

結果として、限られたゴルフ人口を奪い合う形となり、最新機器を導入した快適な環境というだけでは顧客を惹きつけることが難しくなっています。明確な差別化が図れていないと、値下げによる価格競争に陥り、集客もままならなくなります。

シミュレーションゴルフの収益構造とビジネスモデルは?

シミュレーションゴルフは、一度設備を導入すれば売上に比例して変動するコストが比較的少ないです。

稼働率が損益分岐点を超えれば、営業利益率は20%〜30%以上を狙うことも可能です。ただし、その損益分岐点に到達するまでが最大の難関です。

主な収入源

シミュレーションゴルフの主な収入源は以下の通りです。これらを組み合わせることで客単価と収益性を高めます。

  1. ブース利用料(施設利用料)
    • ビジター(都度払い)料金
    • 月額会員(サブスクリプション)料金
  2. レッスン料
    • インストラクターによるパーソナルレッスン
    • グループレッスン、オンラインレッスン
  3. 物販・レンタル収入
    • ゴルフ用品(ボール、グローブ)の販売
    • レンタルクラブ、シューズ代
  4. 飲食収入
    • ドリンクバー、アルコール、軽食の提供(別途、保健所の許可が必要)

固定費・変動費

主な固定費・変動費は、以下の通りです。

  • 固定費: 家賃、人件費(正社員)、機器リース料、減価償却費、共益費、通信費、予約システム利用料
  • 変動費: 人件費(アルバイト)、水道光熱費、消耗品費(ボール、マット)、広告宣伝費、メンテナンス費

収益のモデルケース

例として、3ブースの店舗で月額固定費が150万円の場合の収益モデルを見てみましょう。

  • 固定費: 150万円/月(家賃、人件費、リース代など)
  • 客単価(平均): 3,000円/時・ブース
  • 損益分岐点に必要な売上: 150万円/月
  • 必要な稼働時間(月間): 150万円 ÷ 3,000円 = 500時間/月
  • 1日あたりの必要稼働時間(30日営業): 500時間 ÷ 30日 ≒ 16.7時間/日
  • 1ブースあたりの必要稼働時間: 16.7時間 ÷ 3ブース ≒ 5.6時間/日・ブース

この計算では、1ブースあたり1日に約5.6時間稼働すればトントン(利益ゼロ)になります。もし1日の営業時間を14時間(10時〜24時)と仮定すると、平均稼働率40%(5.6時間 ÷ 14時間)が損益分岐点となります。

この稼働率40%を常に超え続ければ黒字(儲かる)、下回れば赤字(儲からない)となります。平日の昼間を含めて平均40%を維持するのが、いかに難しいかが分かります。

シミュレーションゴルフ経営者の年収目安は?

経営者の年収は、施設の規模、稼働率、運営形態によって大きく変動するため、一概には言えません。

小規模店舗のオーナーの場合、軌道に乗れば年収500万〜1,000万円程度を目指すことは可能です。しかし、上記の収益モデルケース(月間固定費150万、損益分岐点稼働率40%)で、もし平均稼働率60%を達成できた場合、粗利益は月間約75万円程度であり、そこから法人税等を支払った残りが利益となります。

稼働率が低ければ年収ゼロ、あるいは赤字となるリスクも伴います。

シミュレーションゴルフ事業の失敗事例は?

儲からない施設には共通するパターンがあります。成功のコツを学ぶ前に、これらの失敗事例からリスクを学ぶことが重要です。

1. ターゲット層と立地のミスマッチ

ターゲット層と立地がミスマッチを起こすと、経営は失敗します。

例えば、高所得者のビジネスマンをターゲットに高級路線で出店したにもかかわらず、実際にはファミリー層が多い郊外のロードサイドに立地してしまい、客層が噛み合わないケースです。ターゲット層の行動(居住地、勤務地、交通手段)を分析せず、単に家賃が安い、広い物件が空いているという理由で立地を決めると失敗します。

2. 差別化要因がなく価格競争に巻き込まれる

機器の性能だけで差別化を図るのは困難であり、価格競争に巻き込まれて失敗します。

例えば、「最新シミュレーター導入」だけを売りに開業したが、半年後に近隣にもっと安い料金の24時間無人店舗がオープンし、顧客が流れてしまったケースです。価格以外の付加価値がなければ、消耗戦に陥ります。

3. オペレーションの不備による顧客満足度低下

運営オペレーションの不備による顧客満足度の低下は、リピーターが定着しない最大の失敗要因です。特に無人営業でよく見られる失敗です。

コストを抑えたものの、予約システムが使いにくい、機器が頻繁にトラブルを起こす、清掃が行き届いておらず不潔、といったクレームが多発するケースです。無人営業モデルは、システムの安定性、セキュリティ、清掃、トラブル時の迅速な遠隔対応が生命線となります。

シミュレーションゴルフ開業を成功に導くポイントは?

シミュレーションゴルフで安定した収益を上げるためには、開業前の準備から開業後の運営まで、綿密な戦略が求められます。

1. 徹底した事業計画と市場調査

「ゴルフが好きだから」という思いだけで始めてはいけません。出店を検討しているエリアの市場調査を徹底的に行います。

  • 競合調査:周辺のインドアゴルフ施設、打ちっぱなし練習場の料金、設備、サービス内容、客層を調査します。
  • ターゲット :エリアの人口構成、所得水準、ゴルフ人口を分析し、誰をメインターゲットにするか(例:仕事帰りのビジネスマン、本気で上達したい中級者)を明確にします。
  • 収支計画:初期費用とランニングコストを精緻に見積もり、収支シミュレーションを行います。損益分岐点(稼働率)を正確に把握することが重要です。

参考:事業計画書の作成例|起業マニュアル|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

2. コンセプトの明確化と差別化戦略

「なぜ競合ではなく、あなたの施設を選ぶのか?」という問いに明確に答えられる差別化戦略を確立します。

差別化戦略の例
  • 完全個室・高級路線:プライバシーを重視した完全個室で、高級感のある内装とサービスを提供し、接待利用や著名人の利用も想定します。
  • 24時間無人・低価格型:システム化により人件費を徹底的に削減し、地域最安値水準の料金で「とにかく安く練習したい」層を取り込みます。
  • コミュニティ型:定期的なコンペやイベントを開催し、会員同士の交流を促進する「ゴルフ仲間を作る場」として機能させます。

3. 効果的な集客施策

コンセプトが決まったら、そのターゲット層に最も響く方法で集客を行います。

  • Webマーケティング
    • MEO: Googleマップで「地域名 + インドアゴルフ」などで検索された際に上位表示されるよう対策することは必須です。
    • Webサイト/LP:施設の魅力、料金体系、予約導線を分かりやすく提示します。
    • Web広告:リスティング広告やSNS広告(Instagram、 Facebook)でターゲット層にピンポイントで配信します。
  • 地域密着型施策
    • ポスティング:商圏内のターゲット層(例:高所得者層が多いマンション)に絞ってチラシを配布します。
    • 体験キャンペーン:初回無料や割引キャンペーンで、まずは一度足を運んでもらいます。
    • 法人営業:近隣企業の福利厚生としての利用や、接待利用を提案します。

4. リピート率を高める顧客満足度の追求

新規顧客の獲得にはコストがかかります。安定経営の鍵はリピート率です。

  • 快適な環境維持: 清潔な施設、高性能でストレスのない機器、快適な空調を維持します。
  • 質の高い接客:スタッフの明るい挨拶や丁寧な対応、トラブル時の迅速で誠実な対応が求められます。
  • 予約システムの利便性: スマホから24時間いつでも簡単に予約・キャンセルができるシステムは必須です。

5. 収益源の多角化

ブース利用料(場所代)だけに頼ると、稼働率が低い時間帯の収益がゼロになります。客単価を上げ、売上を安定させるために、収益源を多角化します。

  • 高品質なレッスン: 最も客単価を上げやすい施策です。
  • 物販: グローブやボールなど、来店時に「ついで買い」できる消耗品。
  • 飲食: ドリンクサーバーの設置、アルコールや軽食の提供(※許可に注意)。
  • イベント開催: 会員向けコンペ、メーカーの試打会などを企画し、参加費や手数料を得る。

シミュレーションゴルフの経営に関してよくある質問

シミュレーションゴルフの経営に関してよくある質問にお答えします。

シミュレーションゴルフの将来性はありますか?

インドアゴルフの需要自体は高まっていますが、競争は激化すると予想されます。

ゴルフ人口自体は横ばい傾向ですが、天候に左右されず、手軽に短時間で楽しめるインドアゴルフの需要は高まっています。ただし、競合施設(特に低価格の無人店舗)も急増しているため、市場が成熟していく今後は、明確な差別化戦略を持つ施設のみが生き残ると予想されます。

自宅にシミュレーターを導入して開業できますか?

趣味としての導入と事業としての開業は別物であり、自宅での開業は非常に困難です。

打球音や振動による近隣トラブル 、建築基準法・用途地域による営業活動の制限 、集客の難しさ 、十分な天井高と広さ(1ブースあたり最低でも幅3.5m x 奥行6m x 高さ3m程度)の確保など、多くのハードルがあります。

開業に必要な資格や許認可はありますか?

施設を開業するだけなら、基本的に必須の資格はありません。

ただし、インストラクターがレッスンを行う場合、PGAティーチングプロなどの資格があれば顧客からの信頼につながります。また、アルコールを含む飲食を提供する場合は「飲食店営業許可」、深夜0時以降も提供する場合は「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が別途必要です。

個人経営とフランチャイズはどちらが良いですか?

ご自身の状況や戦略によって異なります。

経営ノウハウやブランド力に自信がない場合は、サポートが受けられるフランチャイズ(FC)も有力な選択肢です。ただし、ロイヤリティ負担が収支を圧迫するデメリットがあります。独自のコンセプトを打ち出し、利益率を最大化し、自由に経営したい場合は個人経営が向いています。

24時間無人営業モデルのメリット・デメリットを教えてください。

メリットは人件費の大幅な削減、デメリットは運営不備による顧客満足度の低下リスクです。

  • メリット:受付スタッフや夜間スタッフが不要なため、運営コスト(固定費)を大幅に圧縮できます。また、24時間営業で深夜早朝のニーズを取り込む可能性があります。
  • デメリット:システムの安定性、セキュリティ、清掃、トラブル時の迅速な遠隔対応が必須です。予約システムが使いにくい、機器トラブルが多い、清掃不備といった状態は顧客満足度の低下に直結し、リピーターが定着しない最大の失敗(閉店)要因となります。

シミュレーションゴルフ経営は差別化戦略が重要

「シミュレーションゴルフは儲からない」という言葉は、多くの場合、事前の調査不足、甘い収支計画、そして競合との差別化戦略の欠如からくる失敗事例に基づいています。

インドアゴルフ経営は、高額な初期投資と固定費という明確なリスクを抱えています。しかし、これらのリスクを直視し、明確なコンセプトとターゲット設定、徹底した市場調査に基づいた事業計画を立て、顧客満足度を追求し続けるならば、シミュレーションゴルフは依然として高い収益性を秘めた魅力的なビジネスモデルです。

失敗を避け、成功を掴むためには、安易な参入ではなく、周到な準備と継続的な努力が不可欠です。


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