- 更新日 : 2025年12月9日
ホールディングス化とは?メリットやデメリット、実行ステップや事例も解説
ホールディングス化とは、企業が持株会社を中心に事業会社を子会社として運営する経営形態を指します。
ホールディングス化は主に、経営の効率化やリスク分散、M&A対策の強化を目的に実施されます。
本記事では、ホールディングス化の概要やメリット・デメリット、実行のステップや事例について解説します。
目次
ホールディングス化とは
ホールディングス化とは、企業が持株会社を設立し、その下に複数の子会社を置く経営形態のことを指します。
持株会社は子会社の株式を保有し、経営戦略や財務管理などの大枠を統括する役割を担います。
一方で、子会社はそれぞれが独立して経営を行い、自主的に事業を展開しますが、全体の戦略や方針は持株会社によってコントロールされます。
これにより、企業全体の経営効率を高め、柔軟な事業運営が可能になります。
ホールディングス化は、企業が成長や事業拡大を目指す際に有効な手段として活用されることが多いです。
ホールディングス化のメリット
次に、ホールディングス化のメリットを3つ紹介します。
経営の効率化
ホールディングス化によって、持株会社が戦略的な意思決定を担い、子会社が専門的な事業運営を行うという役割が明確化されることで、経営効率が向上</spanします。
持株会社が全体の資源を統合的に管理し、各子会社へ最適にリソースを配分することで、迅速な意思決定と運営が可能になります。
一方で、各子会社は独立性を保ちつつ持株会社の方針に従って運営されるため、柔軟かつ効果的な経営が実現します。
リスク分散
ホールディングス化により、事業リスクの分散が可能です。
持株会社が複数の子会社を保有することで、一つの事業が揺らいでも、全体に与える影響を軽減することができます。子会社ごとにリスク管理を行うことで、事業ごとの特性に応じた対応が可能となるため、全体の安定性も向上します。
また、事業分野の多角化が進むことで新たな市場機会を見出しやすくなり、企業全体の成長ポテンシャルが高まります。
M&A対策の強化
ホールディングス化は、M&A対策の強化にも寄与します。持株会社が各子会社を統括することで、買収や統合の計画を効率よく進めることが可能になるのです。
子会社として独立した事業体を持つため買収後の統合プロセスがスムーズに進行し、シナジー効果を最大限に引き出すことが期待できます。
持株会社は、資本効率を高めつつ、迅速なM&Aの意思決定を行えるため、競争力のある成長戦略を実現できます。
ホールディングス化のデメリット
ここからは、ホールディングス化のデメリットを3つ紹介します。
管理コストの増加
ホールディングス化を実施することで、管理コストが増加します。
持株会社と各子会社の運営には個別に管理・運営が必要となるため、その分コストがかかってしまうのです。
例えば財務報告や監査も各子会社が独立して行うため、追加の人材や管理システムが求められ、全体としての管理費用が増大します。
また、持株会社自体の運営にもコストが発生するため、これらの合計が企業全体のコストとしてかかってきます。
子会社間で連携が必要となる
ホールディングス化によって各子会社が独立して運営され始めると、情報共有や協力体制の構築など、子会社間での連携が重要となります。
子会社間のコミュニケーションが不足していると、全体の戦略実行に支障を来す可能性があります。
効果的な連携を図るためには、共通の目標設定や定期的な会議が必要となり、これに伴って多くのコストと時間がかかります。
トップダウン経営が困難
ホールディングス化により、トップダウン経営が難しくなるケースがあります。
持株会社は子会社の統括役を担いますが、各子会社は独立性を持つようになるため、直接的な指示命令は困難です。
各子会社の独立性を尊重しつつ全体の方向性を一致させるには、バランスの取れたマネジメントが求められます。
このように、直接の指示命令が困難になることによって、迅速な意思決定や一貫した戦略実行が難しくなり、経営のスピード感が失われる可能性がある点に注意が必要です。
ホールディングス化の実行ステップ
ホールディングス化を実施する際は、以下のステップで行います。
- STEP1.事前準備
- STEP2.スキームの検討
- STEP3.ステークホルダーへの説明
STEP1.事前準備
まずは事前準備として、現状分析と評価、目標の設定を行うことが必要です。
ホールディングス化を進める前に、現在の企業状況を詳細に分析し評価することが求められます。
財務状況や組織体制、事業内容などを把握し、ホールディングス化が適切かどうかを判断します。
続いて、ホールディングス化の具体的な目標を設定します。経営の効率化やリスク分散、M&A戦略の強化など、達成したい目的を明確にすることが重要です。
STEP2.スキームの検討
ホールディングス化を実行するための具体的なスキームを検討します。
主な方法としては、株式移転、株式交換、会社分割があります。それぞれの概要は以下のとおりです。
| スキーム | 概要 |
|---|---|
| 株式移転 | 既存の株式を新設する持株会社の株式と交換する方法。既存の株主構成を維持しつつ、持株会社を設立したい場合に適している。 |
| 株式交換 | 既存の会社が、新設する持株会社の完全子会社となる方法。既存の会社が持つ事業の独立性を保ちながら、新設する持株会社の完全子会社として運営したい場合に適している。 |
| 会社分割 | 既存の事業を分割して新たに設立する持株会社に移管する方法。既存の事業を分割し企業の多角化を推進するために、異なる分野の事業を分割して専門化を図ることが目的の場合に有効である。 |
手法別の特性や、ステークホルダーへの影響を加味しながら、適切なスキームを選定することが重要です。
STEP3.ステークホルダーへの説明
ホールディングス化を進める際には、株主や従業員、取引先など、全てのステークホルダーへの説明が求められます。
特に株主に対しては、ホールディングス化の目的やメリット、具体的なスキームを明確に説明し、納得を得ることが重要です。
また従業員に対しても、組織再編の理由や今後の展望を共有し、不安を払拭するためのコミュニケーションを徹底することが求められます。
ホールディングス化の事例
A社は、求人広告、人材紹介、人材派遣、販売促進、ITサービスなどを提供する企業であり、グループ全体の従業員数は約5万人に達します。
A社は事業の多角化とグローバル展開を進めるために、A社を持株会社として各事業の会社を傘下に置き、ホールディングス化を実施しました。
各事業会社が独立した経営を行うことで専門性と競争力が向上し、迅速な意思決定が可能となりました。またM&Aを通じた事業拡大や、海外市場への進出もスムーズに行うことができるようになりました。
さらに、事業ごとのリスクを持株会社で吸収しつつ、各会社が効率的かつ独立した経営を行うことで、安定した経営基盤を構築することに成功しました。
まとめ
ホールディングス化とは、企業が持株会社を設立し複数の子会社を統括する経営形態を指します。
経営効率の向上やリスク分散、M&A戦略の強化などのメリットがある一方で、管理コストの増加や子会社間の連携が必要になるなどのデメリットがあります。
ホールディングス化を実施する際は、事前準備、スキームの検討、ステークホルダーへの説明が重要です。
ホールディングス化を検討している企業の方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
中堅グループ企業における会計システム統一のポイント
中堅グループ企業にとって、バックオフィスや経理部門の負荷軽減・コスト削減は、大きな課題ではないでしょうか。
本資料では、会計システム未統一による課題やシステム統一のステップをまとめました。システム統一を進める上で気をつけるべきポイントや具体的なソリューション、導入事例も解説しています。
財務会計と管理会計の基本
予実管理の煩雑さは大きな課題です。手作業に依存した業務プロセスやデータの連携不足、エクセルによる予実管理に悩む企業も多いのではないでしょうか。
財務会計と管理会計の基本を押さえつつ、予実管理の正確性とスピードを両立させるためのポイントと具体的な解決策を詳しく解説しています。
課題別導入事例集〜グループ経営効率化〜
マネーフォワード クラウドERPを導入し、グループ経営の効率化を実現した事例をまとめました。
導入前の課題や導入の決め手となったポイント、導入後の効果など、導入企業様の声をご紹介します。
マネーフォワード クラウドERP サービス資料
マネーフォワード クラウドERPは段階的に導入できるコンポーネント型クラウドERPです。
会計から人事労務まで、バックオフィス全体をシームレスに連携できるため、面倒な手作業を自動化します。SFA/CRM、販売管理、在庫・購買管理などの他社システムとも連携できるため、現在ご利用のシステムを活かしたままシステム全体の最適化が可能です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
ティール組織とは?定義や理論をわかりやすく解説
ティール組織は2014年にフレデリック・ラルーの著書「ティール組織」で使用された言葉で、近代社会における企業とは異なる要素を持った組織モデルとして国内外で注目を集めています。この記事ではティール組織がどういった組織モデルか、主な構成要素や特…
詳しくみる損益管理とは?目的や損益計算書で確認するべき項目をわかりやすく解説
企業が継続的に売上を上げるためには、「損益管理」が不可欠です。 損益管理によって企業の損失と利益が明確になり、赤字もしくは黒字になっているのか、赤字になっているなら原因はどこにあるのかなどを客観的に把握できます。 損益管理を行う際には、損益…
詳しくみるレベニューシェアとは?メリット・デメリットや契約のポイントを解説
レベニューシェアとは、発注者側と受注者側で、事業の収益を分配する契約を結ぶ、成果報酬型の契約方式です。 発注者としてはコストやリスクを抑えたビジネス展開ができ、受注者としては継続的な収入の確保につながるという特徴があります。 本記事ではレベ…
詳しくみる自社に最適な多角化戦略を見つける3ステップと成功事例、メリット・デメリットを解説
中小企業の経営者や事業責任者の中には、「自社の事業が鈍化している」「将来の既存事業のリスクに備えたい」と考えている方も少なくありません。 しかし、「多角化戦略って具体的に何をすればいいの?」「自社に合った多角化戦略って?」といった疑問をお持…
詳しくみるカーブアウトとは?メリットやデメリット、実施プロセスを解説
カーブアウトとは、企業の一部事業を切り離して新会社を設立することです。 株式分割や事業譲渡といった手法を用いるケースが多く、外部からの資金調達や意思決定スピードの高速化を主な目的として実施されます。 本記事ではカーブアウトの概要や目的、メリ…
詳しくみる売上管理とは?基礎知識や管理上のポイント、効率化に役立つツールを解説
売上管理とは、自社の売上目標の達成を目的に、売上目標の達成率や売上の前年比・前期比などを管理する活動を指します。 売上管理では、自社にとって必要な管理項目を明確にした上で、管理ルールや管理体制を事前に定めて運用していくことが重要です。本記事…
詳しくみる



