- 作成日 : 2025年7月18日
電子署名の確認方法は?確認項目やAdobeでの確認方法などを解説
デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代において、電子契約の導入が加速しています。その中核技術である「電子署名」は、電子文書の「本人性」と「非改ざん性」を証明する仕組みです。
しかし、電子署名が付与されていれば万全というわけではなく、その信頼性を「確認」する作業が不可欠です。この確認を怠ると、契約の法的有効性が揺らいだり、なりすましや文書改ざんのリスクに晒されたりする可能性があります。この記事では、電子署名の確認項目から具体的な手順、注意点を解説します。
電子署名について知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
目次
電子署名の確認方法
電子署名の確認は専用ソフトウェア等を利用します。
Adobe Acrobat Readerで確認する
Adobe Acrobat ReaderはPDFの電子署名確認に広く使われる無料ツールです。
準備:Acrobat Readerの環境設定 [編集] > [環境設定] > [署名]で、検証設定([文書を開くときに署名を検証]など)や信頼済み証明書を確認・設定します。
- 署名済みPDFを開くと上部にステータスバーが表示されます。
- 署名パネルをクリックし[署名の詳細…] > [証明書の詳細を表示…]で、発行者、有効期間などを確認できます。
タイムスタンプの詳細確認:署名パネルのバージョン一覧からタイムスタンプを選択し、同様に詳細を確認します。
Adobe Acrobat Readerでの主な署名検証メッセージと意味
| 表示メッセージ | 意味・状態 |
|---|---|
| 「署名済みであり、全ての署名が有効です。」 | 署名は正しく検証され、問題なし。 |
| 「少なくとも1つの署名に問題があります。」 | 署名の一部または全部に問題あり。原因特定が必要。 |
| 「署名の完全性は不明です。」 | 検証情報不足。ルート証明書の信頼設定等を確認。 |
その他のツールで確認する
WordやExcelでも[ファイル] > [情報] > [署名の表示]から署名詳細を確認できます。Windowsエクスプローラーのプロパティからも概要を確認可能な場合があります。
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電子署名の確認項目
電子署名の信頼性を確認するためには、以下の項目をチェックします。
誰が署名したのか
- 当事者型(契約者本人が電子署名を付与する方法)の場合:当事者型では、証明書記載の署名者名が契約相手と一致するか確認します。
- 立会人型(電子契約サービス提供者が契約当事者の代わりに電子署名を付与する方法)の場合:サービス事業者のログ(署名時のメールアドレス、IPアドレス等)で間接的に確認します。
署名後に変更されていないか
署名後に文書が変更されると署名は無効として検知されます。Adobe Acrobat Readerなどのソフトウェア上の「署名後に文書が変更されていません」等のメッセージで確認できます。
署名は有効な状態か
Adobe Acrobat Readerなどで「署名済みであり、全ての署名が有効です。」と表示されれば基本的に問題ありません。警告表示の場合は原因特定が必要です。
電子証明書の詳細:発行元、有効期限など
電子証明書では以下の情報を確認します。
| 確認項目 | 確認内容・ポイント |
|---|---|
| サブジェクト(署名者名) | 署名者本人または組織の名称が正しいか。 |
| 発行者(発行認証局) | 信頼できる認証局か例えばAdobe社のAATLという信頼リストに登録された認証局であるか) |
| 有効期間 | 署名が有効期間内に行われたか。 |
| 公開鍵アルゴリズム | 安全な暗号方式か(RSAアルゴリズムの場合、鍵長が2048ビット=RSA-2048以上であることが望ましい)。 |
電子証明書の有効期間は通常1~5年です。
いつ、誰によって時刻認証されたのか
タイムスタンプは、特定の時刻に文書が存在し、それ以降改ざんされていないことを証明します。
- 役割:署名時刻の正確な証明、非改ざん証明の補強。電子証明書の有効期限切れ後も署名時の正当性主張に重要です。
- 確認項目:付与日時、発行した時刻認証局(TSA)の信頼性などを確認します。
電子署名を確認すべきタイミング
電子署名の確認は、一度行えば終わりというものではなく、状況に応じて適切なタイミングで行うことが重要です。
契約締結時・重要文書の受領時
電子署名を確認する最も基本的なタイミングは、契約締結時や重要文書を受領した時です。契約書やその他重要文書を電子署名で締結した場合、または相手方から電子署名付きの文書を受領した場合は、速やかにその署名を確認しましょう。
権利行使や義務履行の前など法的なアクション前
契約に基づいて支払い請求を行う、納品物を受領する、あるいは何らかの権利を行使するなど、法的な意味合いを持つアクションを起こす前には、改めて関連する電子署名付き文書の有効性を確認することが賢明です。
訴訟や紛争発生の可能性が生じた時
取引に関して何らかのトラブルが発生し、訴訟や紛争に至る可能性が出てきた場合、電子署名された文書は重要な証拠となります。このとき、その電子署名が法的に有効であるか、改ざんされていないか、署名時刻は正確か、といった点が争点となることがあります。
長期保管された文書の有効性を再確認する時
電子証明書には有効期限があるため(通常1~5年)、長期保管文書は署名時の証明書が期限切れの可能性があります。この場合、署名時に付与された「タイムスタンプ」が、署名時点での正当性と非改ざん性を証明する上で重要になります。
電子署名確認の注意点
検証時の注意点を理解し、正確な判断をしましょう。
電子証明書の有効期限切れと署名の効力
- 期限切れ証明書での署名:原則無効です。
- 署名「時」有効、検証「時」期限切れ:日本の電子署名法に明確な規定はなく、個別判断となります。タイムスタンプと長期署名技術があれば、署名時の有効性を後から検証できる可能性があります。
信頼できる認証局の確認方法
電子署名の信頼性は、その署名に使われた電子証明書を発行した認証局の信頼性によって大きく左右されます。そのため、Adobe Acrobat Readerで電子署名の証明書チェーン(証明書の階層構造)を表示し、最上位にあるルート認証局が信頼できる機関かどうか確認します。具体的には、その認証局のルート証明書がAdobeの信頼リスト(AATL)に含まれているか、といった点をチェックすると良いでしょう。一般的に、日本国内では政府から公式に認定を受けた認証局(国の認定事業者)が信頼性の高い機関とみなされます。
秘密鍵の厳重な管理の重要性
秘密鍵が署名者本人によって厳重に管理されていることが安全性の根幹です。漏洩すると第三者によるなりすまし署名が可能になります。電子署名法第3条の推定効も適切な管理が前提です。
電子署名の確認を行おう
電子署名の確認は、署名者の本人性、文書の非改ざん性、署名の有効性、電子証明書の詳細、タイムスタンプの有無と内容を多角的に検証する作業です。この検証は、ソフトウェアが自動で行うように見えても、背景には「信頼の連鎖」があり、検証環境の設定も影響します。電子証明書の有効期限とタイムスタンプの重要性、そして電子署名法の法的有効性の要件を理解することが肝要です。
電子署名と電子契約の仕組みを正しく理解し、この記事で紹介した確認項目や手順を実践することで、リスクを低減し、DXを安全かつ効果的に推進できるでしょう。不明な点は専門家にご相談ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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