- 作成日 : 2024年10月7日
英会話教室との契約はクーリング・オフできる?通知の方法をひな形つきで解説
英会話教室(語学教室)のクーリング・オフはできるのでしょうか。クーリング・オフとは、消費者が商品購入などを契約した後、「やはり契約をなかったことにしたい」と考えを変えた場合、一定の期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。
英会話レッスンなどを契約した後に、クーリング・オフが可能な条件などについて解説します。
目次
英会話教室との契約をクーリング・オフできる条件
クーリング・オフとは、訪問販売や電話勧誘などにより商品やサービスの購入契約をした場合に、法律で定められた期間内であれば、無条件で契約の解除ができる制度です。特定商取引法(特商法)や割賦販売法などに基づいて条件などが定められています。
条件によっては、英会話教室の契約でもクーリング・オフの対象となります。クーリング・オフが認められるための一般的な条件について、以下で解説します。
クーリング・オフできる条件
クーリング・オフできる条件は、以下の通りです。
- 特商法や割賦販売法などにおいて、クーリング・オフの対象として規定されている内容の契約であること
- 法律で規定された期間内であること
- 書面または電磁的記録を用いること
英会話教室(語学教室)の契約は、特商法48条に定められている「特定継続的役務提供等契約」に該当します。したがって、契約締結日を含めて8日以内に書面または電磁的記録で英会話教室に対して契約解除したい旨を申し出れば、契約の解除ができます。
クーリング・オフの対象になる商品・サービス
クーリング・オフの対象になる商品やサービスとしては、例えば、英会話教室と契約を結んだ際に、レッスン料・コース代金に加えて、「授業で使うから」と言われて購入を促された関連書籍やCDなどの教材があります。
クーリング・オフの手続をとれば、コースの代金と共に教材等の代金も返金してもらうことが可能です。
他にクーリング・オフされやすい商品やサービスとしては、エステのコース契約および一緒に購入させられた化粧品、美容器具、学習塾、結婚相手紹介サービスなどが挙げられます。
英会話教室との契約をクーリング・オフできないケース
クーリング・オフは、いつ、どのような条件下でもできるとは限りません。以下では、英会話教室の契約をクーリング・オフできないケースを紹介します。
クーリング・オフできる期間が経過した場合
クーリング・オフできる期間は法律で決められており、期間を過ぎてから行うクーリング・オフは認められません。英会話教室の契約がクーリング・オフできるのは、契約締結の日を含めた8日以内です(特商法48条1項)。
営業用に購入した場合
事業者が営業活動のために商品やサービスを購入した場合の契約は、クーリング・オフの対象外となるため注意が必要です。
なぜなら、クーリング・オフは原則として、冷静な判断のできない状況下で商品・サービスを購入した個人消費者の保護を目的とした制度だからです。事業者が営業活動のために結んだ締結はクーリング・オフで保護すべき対象には該当しません。
自分の意思で教室等に足を運んで契約した場合
英会話教室の勧誘などがきっかけではなく、自分の意思で教室に足を運び、契約を結んだ場合はクーリング・オフの対象外のため注意しましょう。
なぜなら、自ら英会話教室に足を運んで契約したのであれば、行動に積極性が認められ、不当な契約から消費者を保護するというクーリング・オフ制度の目的に合致しないからです。
総額3,000円未満を現金購入した場合
英会話教室に関する商品・サービスを購入した総額が3,000円未満で現金購入した場合、クーリング・オフ制度の救済制度の対象とはなりません(特定商取引に関する法律施行令17条)。
クーリング・オフの手順
クーリング・オフを行うための手順は以下の通りです。
- 書面(封書、はがきなど)または電磁的記録(メール、問い合わせフォームなど)で通知書を作成
- クーリング・オフ可能期間内に相手方に対し通知
通知を封書やはがきで送付する場合は、「特定記録郵便」または「簡易書留」など、発信の記録が残る方法で送付するのがおすすめです。英会話教室の運営事業者とトラブルに発展した際に、確実に書面を送付したことの証明となります。また、事前に書面のコピーをとっておくことも忘れないようにしましょう。
クーリング・オフの通知をメールや問い合わせフォームなど電磁的記録を通して行う場合は、送信したメールや問い合わせ内容のスクリーンショットを保存しておくことをおすすめします。
英会話教室との契約でクレジット会社とも契約をしている場合は、英会話教室(もしくはその運営会社)とクレジット会社の両方に、同時に通知します。
クーリング・オフ通知書のひな形(テンプレート)
以下のページより、英会話教室の事業者に送付するクーリング・オフ通知書のひな形(テンプレート)をダウンロードできます。英会話教室のクーリング・オフ通知書を作成する際にご活用ください。
英会話教室のクーリング・オフ通知書の書き方
クーリング・オフの通知には、解除の対象となる契約を特定するために必要な情報(契約年月日、契約者名、購入コースや商品名、契約金額等)や、通知を発した日を明記することが必要です。
クレジット会社とも契約している場合は、相手方を当該クレジット会社とした通知書(書面に限る)を送付します。
以下、前章のひな形を参考に、英会話教室のクーリング・オフ通知書に必要な項目を解説します。
契約年月日
クーリング・オフが認められるためには、期間内に通知をする必要があります。英会話教室運営事業者と交わした契約のクーリング・オフは、契約締結日を含む8日以内です。
したがって、通知が期間内であることを明示するために「令和〇年〇月✕日付」などとして契約年月日を正確に記しましょう。
購入内容
クーリング・オフしたい契約を締結した当事者名、購入したコース名、購入金額などを明記します。「貴社の英会話教室「○○コース」を代金××円で受講する契約を締結しました」などと記します。当該英会話教室の中でどの商品・サービスであるのか、契約内容を特定するために必要な情報を盛り込みましょう。
契約当事者については、相手会社の住所と代表者名、通知の送り主の住所と代表者名を明記します。
通知を発した日
契約年月日と同様に、クーリング・オフ可能期間内に通知をしていることを表す情報として明記する必要があります。通知文の後、署名の前に「令和〇年〇月〇日」などと記します。
契約解除の意思表示
当該契約を解除する旨を明記します。英会話教室の契約を解除する場合は「特定商取引に関する法律第48条1項の規定に基づき、本書面をもちまして、上記契約を解除いたします」などと記します。
クーリング・オフ通知書を送る際の注意点
クーリング・オフ通知書を送る際には、以下の点に注意しましょう。
「期間内」は配達日ではなく発送日が基準となる
英会話教室をクーリング・オフする場合の「期間内」は8日以内ですが、これは期間内までに通知の発送を終えていれば良いという意味です。
よって、相手方に通知書が届いた日が「契約締結の日から8日」を過ぎていても、発送日が8日以内であれば大丈夫です。
期間内に発送した記録が確実に残るよう、簡易書留や特定記録郵便、内容証明などを利用して送りましょう。
クレジット会社への通知は書面でする
クレジット会社へクーリング・オフの通知を送る場合は、メールなどの電磁的方法は認められていないため、書面で送る必要があります。英会話教室の運営事業者に送る場合と同様、特定記録郵便や簡易書留、内容証明などの記録が残る方法で送付しましょう。
通知をはがきで送ることも可能です。その際ははがきの表と裏の両面をコピーにとって保管しておきましょう。
クーリング・オフの期間を過ぎていたら?
万が一クーリング・オフの期間が過ぎてしまった場合でも、何もできないわけではありません。法律にはいくつかの救済制度が用意されています。
まず、民法上は契約の撤回や解除(民法540条)を主張できる可能性があります。支払代金の返還が難しい場合でも、途中解約の手続を進めることで残りの代金を返金してもらえる可能性があります。
他にも、契約締結時の状況や内容によっては、錯誤による無効、詐欺や脅迫による契約の取消、未成年者の契約取消(民法119条~121条など)、公序良俗違反による無効(民法90条)などの手段をとることが可能です。
また、特商法9条の2の規定により、「通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等の申込み」に当たる場合、クーリング・オフ期間が1年に延長されます。
消費者契約法4条3項各号では、契約時に重要な契約内容を告知されなかったり、消費者が求めたにもかかわらず退去せずに押し売りしてきたり、消費者の不安をあおる方法でセールスしてきたりした場合等に、契約の取消をすることができると定めています。規約の取消が認められると、契約締結当初にさかのぼり、契約そのものが無効となるため、英会話教室の料金の全額返金を求めることができます。
これら対応策には法律の専門知識が求められるため、各自治体の消費生活センターや弁護士などの専門家に相談しながら手続を進めることをおすすめします。
英会話教室のクーリング・オフは期間内に通知を
英会話教室と契約を結んだ後でも、8日以内であればクーリング・オフ制度により契約を解除することが可能です。
クーリング・オフ制度は、不本意な契約を結んでしてしまった場合に消費者を保護する目的があります。いったん結んだ契約は決して解除できないわけではないので安心しましょう。
ただし、期間が経過してしまうとクーリング・オフによる解除はできません。解除すると決めたら、できるだけ早めに行動することが大切です。
また、相手方に送る通知書には、当該契約を特定できるだけの情報や契約締結日、解除の意思をしっかり明記する必要があります。
通知書を作成する際は、ぜひひな形をご活用ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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