- 更新日 : 2024年9月3日
永小作権設定契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
永小作権設定契約書とは、土地について永小作権を設定する際に締結する契約書です。他人の土地上で耕作や牧畜をする際に、永小作権設定契約書が締結されることがあります。本記事では、永小作権設定契約書の書き方やレビュー時のポイントなどを、条文の具体例を示しながら解説します。
目次
永小作権設定契約書とは?
「永小作権設定契約書」とは、永小作権を設定する際に締結する契約書です。
「永小作権(えいこさくけん)」とは、他人の土地において耕作または牧畜をする権利をいいます(民法270条)。賃借権と類似していますが、永小作権は物権であるため、原則として地主の承諾を得ずとも第三者に譲渡できます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い45個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
実際の契約に合わせてカスタマイズしていただきながら、ご利用くださいませ。
【弁護士監修】チェックリスト付き 改正下請法 1から簡単解説ガイド
下請法の改正内容を基礎からわかりやすく解説した「改正下請法 1から簡単解説ガイド」をご用意しました。
本資料では、2025年改正の背景や主要ポイントを、弁護士監修のもと図解や具体例を交えて解説しています。さらに、委託事業者・受託事業者それぞれのチェックリストを収録しており、実務対応の抜け漏れを防ぐことができます。
2026年1月の施行に向けて、社内説明や取引先対応の準備に役立つ情報がギュッと詰まった1冊です。
弁護士監修で分かりやすい! 契約書の作り方・書き方の教科書
弁護士の南陽輔氏(一歩法律事務所所属)が監修している「契約書の作り方・書き方の教科書」ガイドです。
契約書作成の基本知識、作成の流れ・記載項目、作成時の注意点・論点が、分かりやすくまとまっています。手元に置ける保存版としてぜひご活用ください。
自社の利益を守るための16項目 契約書レビューのチェックポイント
契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
契約書のレビューを行う企業法務担当者や中小企業経営者の方にもご活用いただけます。
永小作権設定契約書を締結するケース
永小作権設定契約書は、地主が他人に土地を貸し、借りた側がその土地上で耕作または牧畜をする際に締結します。例えば、農作や牧場経営用の土地を他人に貸す場合や、反対に他人から借りる場合などには、永小作権設定契約書を締結することが選択肢の一つとなります。
ただし現在では、耕作や牧畜のための土地を貸し借りする際には、永小作権ではなく賃借権を設定するのが一般的になっています。そのため、永小作権設定契約書が締結されるケースは少ないのが実情です。
永小作権設定契約書のひな形
永小作権設定契約書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に永小作権設定契約書を作成する際の参考としてください。
永小作権設定契約書に記載すべき内容
永小作権設定契約書には、主に以下の内容を記載します。
①永小作権の設定
②農業委員会の許可
③永小作権設定登記
④小作料
⑤土地の引渡し
⑥契約の解除
⑦存続期間
⑧その他
永小作権の設定
第1条 甲は、乙に対し、下記の土地(以下「本件土地」という。)について、農地法第3条第1項に基づく〇〇市農業委員会(以下「農業委員会」という。)の許可を得ることを条件として、乙のために、耕作を目的とする永小作権を設定する。
所在 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 〇〇番
地目 宅地
地積 〇〇.〇〇平方メートル
2 乙は、本件土地を耕作の目的にのみ使用し、それ以外の目的に使用してはならない。
3 略
対象となる土地を特定したうえで、その土地に永小作権を設定する旨を定めます。使用目的も明記したうえで、目的外利用を禁止する旨を定めておきましょう。
農業委員会の許可
第1条 甲は、乙に対し、下記の土地(以下「本件土地」という。)について、農地法第3条第1項に基づく〇〇市農業委員会(以下「農業委員会」という。)の許可を得ることを条件として、乙のために、耕作を目的とする永小作権を設定する。
略
2 略
3 第1項の許可がない場合、本契約は効力を生じない(ただし、本項、次条、第9条および第10条を除く)。
(農業委員会の許可)
第2条 甲は、農業委員会に対し、○年○月○日までに、第1条第1項の許可の申請をしなければならない。
農地または採草放牧地について永小作権を設定する際には、農業委員会の許可を受けなければなりません。
永小作権設定契約書では、農業委員会の許可を受けた場合に初めて効力を生じる旨(一部の規定を除く)、および農業委員会に対する許可申請の期限を定めておきましょう。
永小作権設定登記
第3条 甲は、第1条第1項の許可を得たときは、速やかに永小作権設定を原因とする永小作権設定登記手続をしなければならない。登記手続費用は、乙の負担とする。
永小作権を第三者に対抗するためには、永小作権設定登記を経る必要があります(民法177条)。
農業委員会の許可を受けたら速やかに登記手続を行うべき旨、および登記手続の費用の負担者を定めておきましょう。登記手続の費用は、永小作人の負担とするのが一般的です。
小作料
第4条 本件土地の小作料(以下「小作料」という。)は月額金〇〇円とする。
2 乙は、甲に対し、当月の小作料を、前月末日までに、甲が定める以下の金融機関の口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は、乙の負担とする。
銀行名 :〇〇銀行 〇〇支店(店番号〇〇〇)
口座番号:普通 〇〇〇〇〇〇〇
口座名義:〇〇 〇〇
3 乙が小作料を第2項に定める期日までに支払わなかった場合、当該期日の翌日から支払完了に至るまで年〇%による遅延損害金を支払う。
永小作権に基づく土地の使用料は「小作料」と呼ばれます。小作料の金額、支払方法および不払い時の遅延損害金などを定めておきましょう。
土地の引渡し
第5条 甲は、乙に対し、第1条第1項の許可を得た後、甲乙間で別途合意する日に、本件土地を引き渡す。
地主が永小作人に対して、永小作権の対象土地を引き渡す日を定めます。永小作権設定契約書を締結する時点では、農業委員会の許可がいつ得られるか分からないので、実際の引渡日は別途合意としておくのがよいでしょう。
契約の解除
第7条 乙が第4条第2項に定める期日までに甲に対し小作料を支払わない場合が合計〇回に達したときは、甲は、何らの催告をすることなく本契約を解除することができる。
2 甲が第5条で定める期日までに、本件土地を乙に対し引き渡さない場合において、乙が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、乙は、本契約を解除することができる。
3 本条による解除は、解除の相手方に対する損害賠償の請求を妨げない。
賃料の不払いや土地の引渡しの不履行があった場合には、契約を解除できる旨を定めます。契約解除に当たって事前に催告を要するのか、それとも無催告で解除できるのかを明記しておきましょう。
存続期間
第8条 本契約による永小作権の存続期間は、農業委員会の許可を受けた日から〇年とする。
永小作権の存続期間を定めます。
民法上、永小作権の存続期間は20年以上50年以下とされています(民法278条1項)。契約において存続期間を定めなかった場合は、別段の慣習がある場合を除き、30年となります(同条3項)。
存続期間については、自動更新を定めることも考えられます。更新後の存続期間は、50年以内とする必要があります(同条2項)。
その他
上記のほか、損害賠償・合意管轄・誠実協議などの条項を定めます。
永小作権設定契約書を作成する際の注意点
永小作権設定契約書を作成しようとする際には、まずそもそも「永小作権」の形態が適切であるかどうかを検討すべきです。耕作または牧畜の目的で土地を使用収益させることは、永小作権以外に賃借権の設定によっても可能であるため、永小作権と賃借権のどちらが適切であるかを検討する必要があります。
永小作権と賃借権の大きな違いは、永小作権は物権であるのに対して、賃借権は債権である点です。物権と債権を比較すると、物権の方が強力な権利であるため、地主としては他人に永小作権を認めることはリスクが高いと考えられます。
また、賃借権の存続期間は自由に設定できるのに対して、永小作権の存続期間は20年から50年までに限定されており、融通が利きにくいのも難点です。
これらの事情により、新たに永小作権が設定されるケースは、賃借権に比べて非常に少数となっています。
特に地主の側としては、相手方に永小作権を認めることに支障がないかどうかを、契約締結前に慎重に検討しましょう。
永小作権設定契約書を締結することにした場合は、定めるべき事項を漏れなく、かつ明確な文言で定めることが大切です。本記事で紹介した条文例を参考にして、適切な内容で永小作権設定契約書を作成しましょう。
永小作権設定契約書は賃借権との比較・農業委員会の許可などに要注意
永小作権設定契約書を作成しようとする際には、まず永小作権と賃借権を比較して、どちらを設定するのが適切であるかを検討しましょう。特に地主の立場では、物権である永小作権を設定するのはリスクが高い側面がある点に注意が必要です。
また、農地や採草放牧地への永小作権の設定については農業委員会の許可を要するなど、耕作用地や牧畜用地に特有の注意点にも気を付けなければなりません。永小作権設定契約書においても、農業委員会の許可をはじめとする特有の注意点を条文に反映させましょう。
永小作権設定契約書に関するトラブルを避けるには、必要な条項を漏れなく、かつ明確な条項で定めることが大切です。内容に不安がある場合には、必要に応じて弁護士のリーガルチェックを受けましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
AI契約書レビューとは?機能からメリット・デメリット、主要サービス10選まで解説
AI契約書レビューは、人工知能(AI)技術を活用して契約書に潜むリスクを自動で検知・分析するサービスです。このAI契約書レビューを導入することで、法務担当者や弁護士のレビュー業務を大幅に効率化し、人的ミスを防ぐことが期待できます。 本記事で…
詳しくみるシステム開発契約書とは?契約の種類や注意点を解説
一般的に、ソフトウェアやクラウドシステムの設計・構築を行うシステム開発を請け負う際には契約書を交わします。開発するシステムの内容や納品、報酬の支払いについて明記しておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。 今回はシステム開発契約におけ…
詳しくみるポスティングの業務委託契約とは?契約書のテンプレート・例文、委託の注意点を紹介
ポスティングの業務委託契約とは、チラシなどの配布を外注するための契約のことです。契約時には契約書を作成することが大事。そのため、留意すべき契約書への記載事項や書き方を本記事でご確認ください。そのほかポスティングの外注に関しての注意点なども紹…
詳しくみる業務委託契約とは?種類や締結の流れをわかりやすく解説【テンプレートつき】
業務委託契約とは、外部の個人や企業に業務を依頼する契約形態です。一般的に業務委託契約は「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つに分けられます。 本記事では、業務委託の契約形態の違いや契約書作成のポイント、業務委託をする際の注意点など、業…
詳しくみる株式交換契約書とは?ひな形をもとに書き方やレビュー時の注意点を解説
株式交換契約書とは、企業の100%子会社化に用いられる「株式交換」を行う際に締結する契約書です。会社法の規定を踏まえて、必要な事項を漏れなく定める必要があります。本記事では、株式交換契約書に記載すべき内容(書き方)や、レビュー時のポイントな…
詳しくみる電子署名付き電子メールの仕組みや確認方法とは?
電子メールに電子署名を付加することで、改ざんやなりすましなどのトラブルの防止につながります。今回は、電子メールに電子署名を付加する意義や仕組みを紹介し、実際にOutlookでメールに電子署名を付加する方法も解説します。 ビジネスで取引先にメ…
詳しくみる



