- 作成日 : 2024年2月19日
【2023年施行】電気通信事業法改正の概要は?事業者への影響まで解説
2023年6月に電気通信事業法改正が施行され、新たに規律が追加されました。事業者へも影響するため、電気通信事業の経営者は、改正の概要やどのような影響を及ぼすのかを理解しなければなりません。本記事では、電気通信事業法改正の内容や気を付けるべきことについてわかりやすく解説します。
目次
2023年に施行された電気通信事業法改正の概要
電気通信事業法とは、電気通信事業者が事業を営む上で守るべき規則について定めた法律です。電話会社やプロバイダ、インターネットサービスやWebサイトの運営者などの電気通信事業者は、電気通信事業法に従って業務を行わなければなりません。
ここでは、2023年に施行された電気通信事業法改正の概要について解説します。主な改正内容は、次の3つです。
- 届出対象業種の拡大
- 特定利用者情報の取り扱いについての義務の追加
- 外部送信規律(Cookie規制)の新設
なお、電気通信事業法の詳しい内容については、下記記事をご確認ください。
改正点1:届出対象業種の拡大
電気通信事業者は、総務省への届出が必須です。電気通信事業法の改正により、大規模なインターネット検索サービスやSNSを提供する、以下の事業者も届出対象となりました。
- 検索情報電気通信役務
- 媒介相当電気通信役務
「検索情報電気通信役務」は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンサービスを提供する事業者を指します。一方、「媒介相当電気通信役務」は、X(旧:Twitter)、Facebook、InstagramなどのSNSプラットフォームを提供する事業者のことです。
これまでこれらの事業者は第三者事業に該当し、届出の必要はありませんでしたが、今回の改正によりこれらの事業者も届出が必要となりました。
改正点2:特定利用者情報の取り扱いについての義務の追加
電気通信事業法の改正により、事業者が保護するべき情報の範囲が拡大し、「特定利用者情報」についての義務が新たに設けられました。特定利用者情報とは、次の2つの条件のいずれかを満たす情報のことです。
- 通信の秘密に該当する情報:電話やメールの内容など
- 利用者を識別でき、かつ総務省令で定める情報:利用者に付与されるIDや番号など
これらの情報を事業者が適切に管理し、保護する必要があります。ただし、「特定利用者情報」の適切な取り扱いについての義務は、すべての事業者に適用されるわけではありません。この義務は、利用者の利益に大きな影響を及ぼす可能性があると判断される、規模の大きな電気通信事業者に対してのみ適用されます。
特定利用者情報の取り扱いについて負う義務は、主に以下の内容です。
- 情報取扱規程の定義と報告:特定利用者情報の適切な管理を確保するため、事業者は情報取扱規程を作成し、指定日から3か月以内に総務大臣に報告する
- 情報取扱方針の公表:透明性を確保するため、事業者は情報取扱方針を定め、指定日から3か月以内に公開する
- 年次評価と見直し:事業者は毎事業年度、特定利用者情報の取り扱い状況について評価を行い、必要に応じて情報取扱規程および情報取扱方針を見直す
- 統括管理者の任命:特定利用者情報の取り扱い業務を統括するため、事業者は指定日から3か月以内に特定利用者情報統括管理者を任命する
- 情報漏えいの報告:特定利用者情報が漏えいした場合、事業者は漏えいの事実とその理由・原因を速やかに総務大臣に報告する
上記の義務に対応することにより、利用者のプライバシー保護が強化され、事業者の信頼性が向上します。
改正点3:外部送信規律(Cookie規制)の新設
今回の改正により、「外部送信規律」という新たな規制が導入されました。利用者情報の外部通信、とくにCookieの取り扱いについての規制が強化されています。Cookieとは、Webサイトの閲覧者の行動履歴や入力データ、利用環境などを記録した電子ファイルのことです。
Cookieの活用によりログインやフォームの入力作業の効率化、必要な情報の取得などの利点があります。しかし一方で、それと同時に個人情報の漏えいリスクも対策しなければなりません。
このため、WebサイトやSNS、その他のインターネットサービスを提供する事業者は、Cookieを用いて利用者情報を取得する際には、以下の事項を公表し、利用者からの同意を得ることが義務付けられています。
- 送信される利用者情報
- 情報を送信する先の名称や氏名
- 集めた情報の利用目的
「Cookieの取り扱いについて」というポップアップが表示されるサイトが増えてきています。これは、Cookieの取り扱いに関する新たな規制が背景にあるためでしょう。
事業者が気をつけるべきこと
電気通信事業法の改正に伴い、事業者が気を付けるべき点や変更しなくてはいけない点を解説します。電気通信事業の事業者に求められる主な対応は、以下の3つです。
- プライバシーポリシーを記載する
- 利用者の同意を得る手段を検討・導入する
- オプトアウトの措置を講じる
1つずつ詳しくみていきましょう。
プライバシーポリシーを記載する
Cookieの使用に伴い、プライバシーポリシーやCookieポリシーを総務省令に準拠する形で整備することが必要です。その整備にあたっては、以下の要件を満たすことが求められます。
- 明瞭な説明:日本語で、かつわかりやすい表現を用いて説明する
- 適切な文字サイズ:利用者が拡大・縮小等の作業をせずに読めるよう、適切な文字サイズで表示する
- 利用者の利便性:利用者が容易に確認できるよう配慮する
自社での整備が困難な場合は、外部の専門機関への依頼も検討しましょう。外部の専門機関に依頼することで、既存のプライバシーポリシーの見直しや改定案作成などのサポートを受けることができます。
利用者の同意を得る手段を検討・導入する
外部送信規律は単に表示や公表するだけではなく、利用者からの明確な同意が必要です。具体的な同意の方法は法律で定められていませんが、「適切な確認の機会を付与する」と記載されています。詳細な情報を提供し、確実に同意を得ることが重要です。
たとえば、利用者の同意を得る手段として、CMP(Consent Management Platform)ツールの導入が考えられます。CMPはクッキー同意管理バナーのことです。これを利用することで、Webサイトやアプリ上で訪問者に対して企業がどのようにデータを収集し利用しているかを案内し、同意の取得やその状態の管理を行うことができます。
オプトアウトの措置を講じる
オプトアウトとは、利用者が自身の個人データの第三者への提供を停止することを選択できる設定のことです。オプトアウトでは、利用者の要望に応じて、その利用者に対する情報の送信または利用を停止する措置をしなければなりません。
オプトアウトの手段を提供するだけではなく、それを利用者が理解しやすい形で公表することが重要です。公表する際には、以下の点を明確に示すことが求められます。
- オプトアウト措置の存在:事業者がオプトアウト措置を講じていることを明示する
- 情報の送信と利用の停止:オプトアウト措置により、情報の送信と利用のどちらが停止するのかを説明する
- オプトアウト措置の申込方法:利用者がオプトアウト措置を申し込む方法を示す
- サービスの利用制限:オプトアウト措置の適用により、サービスの利用がどのように制限されるかを説明する
- 送信情報の詳細:送信される情報の内容、送信先、利用目的などを詳細に説明する
これらの情報を明示することで、利用者は自身の情報がどのように取り扱われるのかを理解し、適切な選択を行えるでしょう。
電気通信事業法改正について深く理解しよう
2022年6月に電気通信事業法の一部が改正され、その新たな規定は2023年6月から施行されました。この改正の主要な内容は、「届出対象業種の拡大」、「特定利用者情報の取り扱いに関する新たな義務」、「外部送信規律(Cookie規制)の新設」の3つです。これらの変更により、事業者は「プライバシーポリシーの明示」、「利用者からの同意の取得とその手段の導入」、「オプトアウト措置の設定」の対応を求められます。
とくに、外部送信規律は多くの事業者に影響を及ぼすと予想されるため、適切な対応が必要です。自社での対応が困難な場合は、外部の専門機関に依頼したり、適切なツールを活用したりすることを検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
担保権とは?物的担保と人的担保それぞれを解説
担保権とは、物などの売却代金から不払いが生じた債権を回収できる権利です。担保権には抵当権や質権などがあり、これらは「物的担保」と呼ばれることもあります。また、担保の機能を果たすものとしては「人的担保」も挙げられます。連帯保証が人的担保の典型…
詳しくみる民法における危険負担とは?契約時に確認したい項目も解説
2020年4月に民法の改正法が施行され、売買など、当事者双方が債務を負う双務契約で問題となる「危険負担」のルールが大きく変わりました。 この記事では、売買契約などの双務契約において理解しておくべき危険負担について、わかりやすく解説していきま…
詳しくみる要配慮個人情報とは?定義や具体例、事業者目線の注意点を紹介
要配慮個人情報とは、個人情報のなかでも特に本人に対する不当な差別や偏見、その他不利益が生じやすい情報のことを指します。個人情報保護法の規制対象となる個人情報取扱事業者は、この要配慮個人情報の要件についても把握し、取得した情報は適切に取り扱わ…
詳しくみる特許権とは?効力や取得方法を解説
これまでになかった大きな発明に成功すれば、事業者として大きなアドバンテージを得られます。しかしせっかくの発明も他社にマネをされてしまっては優位に立つことができません。重要な発明については、特許権の取得を検討しましょう。 本記事では、特許権の…
詳しくみる権利濫用の禁止とは?濫用にあたる行為や事業者が注意すべき点を紹介
「権利濫用」とは、権利の行使ではあるものの、社会常識や道徳に基づいて判断すると無効にするのが妥当な行為のことをいいます。 企業も法律遵守のもと事業活動を行うべきですが、条文の内容に沿っていれば常に権利の行使が認められるわけではない点に留意し…
詳しくみる個人情報取扱事業者とは?法的な定義や義務をわかりやすく解説
個人情報取扱事業者とは、事業のために個人情報を利用する事業者のことです。個人情報保護法の規定を遵守して個人情報を扱う義務を負います。違反した場合、罰則の対象になったり、社会的信用が失墜したりするリスクがあるため注意は必要です。 今回は、個人…
詳しくみる