- 作成日 : 2025年1月29日
覚書に収入印紙は必要?印紙税の金額や変更契約書の契約金額についても解説
覚書とは、相手とのやりとりを記録しておくための書類やメモのことを指し、契約を補完する際によく用いられます。覚書は、一定の要件に当てはまる場合は印紙の貼付が必要です。
この記事では、どのような場合に覚書に印紙が必要なのか、金額はいくらなのか、契約当事者のどちらが印紙を貼るのかなどについて解説していきます。
目次
覚書に収入印紙は必要か
覚書は内容次第では、収入印紙の貼付が必要な場合があります。
覚書とよく似た意味の書類に契約書があります。覚書という名称であったとしても、その内容が契約書と同じく法的効力をもつものであれば、印紙の貼付が必要です。
具体的には印紙税法の課税文書に該当するかどうかにより判断されます。名前が覚書だからという理由ではなく、実際の文書の内容によって印紙の貼付が必要かどうかが決まります。
そもそも覚書とは
覚書とは一般的に、当事者間が合意したことを証明するために作成する文書のことです。契約書を作成するほどではないものの、当事者が合意したということを書面に残す場合などに使われます。
例としては、契約書を締結する前に内容に双方が合意したことを証明する場合や、一度契約書を締結した後に契約書の内容の一部を変更するような場合などがあります。
いずれの場合も契約書を作成するほどではないものの、口頭での合意では後からトラブルになることも考えられるため、このような場合には覚書が用いられることも珍しくありません。
覚書が課税文書に該当する場合は収入印紙が必要
覚書の内容が印紙税法で定められた課税文書に該当する場合は、収入印紙の貼付が必要です。
課税文書に該当するかどうかは印紙税法別表第1により定められており、覚書の内容によって判断されます。
具体的には、課税文書となる文書が第1号から第20号まで列挙されており、主なものには不動産の譲渡に関する契約書や、約束手形、株券などが課税文書として挙げられています。
覚書に貼る収入印紙の金額
覚書に貼る収入印紙の金額は、印紙税法別表1のうちのどの課税文書に該当するか、また覚書に記載された契約金額がいくらかによって異なります。ここでは、比較的一般的な第1号文書と第2号文書について解説していきます。
覚書が第1号文書に該当する場合
第1号文書とは、不動産売買契約書、金銭借用証書、運送契約書などが該当し、これらは課税文書となるため、契約金額に応じて印紙の貼付が必要です。
印紙の金額は以下の通りです。
契約金額 | 印紙税 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載がないもの | 200円 |
このように、契約金額により必要な印紙の金額が定められており、1万円未満の契約金額の場合を除き、第1号文書の場合は原則として印紙の貼付が必要です。
なお、不動産の譲渡に関する契約書のうち、10万円を超える契約金額のものについては印紙税の軽減措置が設けられており、軽減後の印紙税の金額は以下の通りです。
契約金額 | 軽減後の印紙税額 |
---|---|
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
この軽減措置は2027年3月31日までとされています。
また、契約金額が10万円以下であり、かつ契約金額の記載がない文書については軽減措置はありません。
覚書が第2号文書に該当する場合
第2号文書とは請負に関する契約書のことで、代表的なものとしては建設工事の請負契約書などです。その他にも、スポーツ選手や俳優の専属契約書なども第2号文書に該当します。
第2号文書の印紙税額は以下の通りです。
契約金額 | 印紙税 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 |
300万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載がないもの | 200円 |
また、第2号文書のうち建設工事に関する請負契約書には印紙税の軽減措置が設けられており、軽減後の印紙税額は以下の通りです。
契約金額 | 軽減後の印紙税額 |
---|---|
100万円超200万円以下 | 200円 |
200万円超300万円以下 | 500円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
この軽減措置の対象となるのは、第2号文書すべてではなく、建設工事にかかる請負契約が対象で、軽減措置は第1号文書と同様に2027年3月31日までとされています。
覚書を変更契約書とする場合の契約金額の考え方
個人や企業間の取引においては、一度契約書を作成したものの、後から契約書の内容に変更が生じることも珍しくありません。
当初契約書で定めた内容に変更があった場合は、新たに契約書を取り交わすのではなく、変更後の内容を覚書として作成することがあります。この場合、変更後の内容によっては印紙の貼付が必要です。
契約締結後に内容が変更になる場合とは
契約書を締結したものの、後から内容が変更になる場合の具体例としては、不動産の売買契約や建設工事の請負契約などがあります。
注文住宅の売買契約では、当初は大まかな内容で契約をし、ハウスメーカーとの打ち合わせの段階で内装など細かな点を決めていくことがあります。
建設工事の請負契約は、工事が進むにつれて契約金額や納期が変更になることも考えられます。
このような場合は、当初の契約内容に変更が加えられることになり、変更内容についての覚書を作成します。これを変更契約書といいます。
また、作成された覚書が契約金額の変更の場合は、印紙の貼付が必要です。貼付する印紙の金額は、変更前の契約金額が記載された契約書が作成されていることが明らかか、明らかでないかによって異なります。
変更前の契約金額が記載された契約書が作成されていることが明らかな場合
変更前の契約金額が記載された契約書が作成されていることが明らかな場合は、変更前と変更後の契約金額との差額の印紙の貼付が必要となります。
例として、変更前の契約金額が100万円で変更後の契約金額が120万円の場合は、差額の20万円となり20万円に応じた印紙の貼付が必要です。なお、契約金額が記載された契約書が作成されているものの、作成した覚書には変更後の金額のみが記載されている場合は、変更後の金額に応じた印紙の貼付(例の場合は120万円)が必要です。
変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかでない場合
変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかでない場合、変更後の金額が記載されている場合は、その記載金額の印紙の貼付が必要となります。
一方で、当初の契約金額との差額のみが記載されている場合(当初の契約金額から20万円増額するなど)は差額の金額に応じた印紙の貼付をします。
覚書の収入印紙はどちらが貼る?
完成した覚書に収入印紙の貼付が必要な場合は、当事者双方で負担することが一般的です。
これは、印紙税法の規定により、課税文書を共同で作成した場合は、連帯して印紙税の納付義務を負う、とされているためです。
特段の事情がなければ、当事者双方で印紙税を負担することが望ましいでしょう。
覚書の収入印紙を貼付し忘れた場合はどうなる?
覚書に本来貼付すべき収入印紙の貼付を忘れた場合は、本来納付すべき印紙税とは別に、2倍に相当する額の納付を命じられることがあります(過怠税)。
一般的に過怠税は3倍返しといわれています。請負金額や契約金額が多くなると、その分、過怠税の金額も多くなります。印紙の貼り忘れには注意が必要です。
ただし、過怠税は税務調査が行われる前に、自主的に印紙の貼り忘れを申し出た場合は、本来納税する金額の1.1倍の金額で済みます。もし後から印紙の貼り忘れに気付いた場合は、必ず自主的に申し出るようにしましょう。
覚書の収入印紙の貼付が不要なケース
覚書を作成した場合でも、一定の場合には印紙の貼付が不要となることがあります。
印紙が不要とされるのは以下の場合です。
覚書の契約金額が1万円未満の場合
覚書の契約金額が1万円未満の場合、内容が課税文書であったとしても、印紙の貼付は不要です。これは第1号文書と第2号文書に共通で、契約金額があまりに小さければ印紙税は不要だということです。
覚書に契約金額の記載がない場合
覚書の内容が委任契約であり、契約金額の記載がない場合は、課税文書に該当しないため印紙の貼付は不要です。
例としては、弁護士への委任契約や業務委託契約などが該当します。
ただし、業務委託契約書の内容が請負契約に該当するような場合は、非課税とはならないため注意が必要です。
電子契約の場合
覚書を電子契約として作成した場合も、印紙の貼付は不要です。印紙税が課税されるのは、あくまで課税文書を作成した場合であり、電子契約は文書の作成には当たらないとされているため、印紙を貼付する必要がないのです。
マネーフォワードクラウド契約では、契約書や覚書が電子化できるだけではなく、契約書の一元管理なども可能です。
覚書の内容が課税文書に該当すると印紙の貼付が必要
覚書を作成した際、その内容が課税文書に該当すれば印紙の貼付が必要です。貼付する印紙の金額は契約金額により異なります。電子契約など一定の場合は印紙の貼付が不要です。
印紙税の貼付忘れは、過怠税というペナルティーを受けることもあるため、注意が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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