- 作成日 : 2024年5月10日
政令とは?法体系における役割や具体例、確認方法を解説
法律に似た用語として「政令」という言葉を見かけることがあります。字面から政府が関係しているとイメージするかもしれませんが、政令は日本の憲法と法律を補完するために定められたルールのことです。
今回は、政令の基礎知識、法体系における政令の位置づけや役割、具体例および政令の確認方法について解説します。
目次
政令とは
政令は、日本の憲法と法律を実施するために、内閣が制定するルールのことです。特に、法律を効率良く実行・運営するために必要な詳細なルールや手順を定めて発令されます。
通常、法律は国会において制定されますが、政令は内閣において制定されます。政令は内閣から発せられる命令のうち最上位に位置するルールで、法律から委任された事項について、委任の範囲においてこれを定めるとしています。
政令は、法律による根拠がない限り罰則や国民としての権利を制限したり、国民に義務を課したりする内容を定めることはできません。また、「省令」という言葉もあります。 政令は内閣が出す国の規則で、省令は大臣が出す法令という点に違いがあります。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
紙も!電子も!契約書の一元管理マニュアル
本ガイドでは、契約書を一元管理する方法を、①紙の契約書のみ、②電子契約のみ、③紙・電子の両方の3つのパターンに分けて解説しています。
これから契約書管理の体制を構築する方だけでなく、既存の管理体制の整備を考えている方にもおすすめの資料です。
自社の利益を守るための16項目!契約書レビューのチェックポイント
法務担当者や経営者が契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
弁護士監修で安心してご利用いただけます。
法務担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ
法務担当者がchat GPTで使えるプロンプトのアイデアをまとめた資料を無料で提供しています。
chat GPT以外の生成AIでも活用できるので、普段利用する生成AIに入力してご活用ください。
法体系における政令の役割
政令は、政府が行う命令の中では最上位に位置づけられますが、日本の法体系全体の中ではその上位に民法などの各種法律があり、さらに最上位に日本国憲法が存在します。他にも法令と混同しやすいものに、告示、訓令、通達があります。これらは行政組織の中で上位から下位の機関や職員に知らせたり命じたりするものであり、国民に対して直接的な効力を有しません。
それぞれ主体・対象が異なるため、きちんと整理して理解する必要があります。
| 法令の形式 | 制定権者 | 説明 |
|---|---|---|
| 憲法 | 国民 | 国の最高法規。すべての法律や規則の基本となるもので、最も効力が強い。 |
| 法律 | 国会 | 憲法の次に効力が強い法令。国会で制定され、憲法にもとづき国民に対する義務や権利を定める公式の規範。 |
| 政令(施行令) | 内閣 | 内閣法律を具体的に実施するため、内閣が制定する命令。法律よりも下位に位置する。 |
| 内閣府令・省令(施行規則) | 各省大臣 | 各省庁が法律や政令にもとづいて具体的な実施詳細を定める規則。効力としては政令よりも下位にある。 |
| 告示 | 国や地方公共団体 | 国や地方公共団体などの行政機関が、法律や政令・省令の実施に際して、具体的な実施方法や手続きの詳細を示す。 |
| 通知 | 国や地方公共団体 | 国や地方公共団体などの行政機関が、特定の事業者や個人に対し、法律や規則の適用に関する具体的な指示や情報を伝える。 |
| その他の命令 | 委員会・庁の長官 | 委員会と庁の長官が担当する行政事務について、法律にもとづき定めるルール。例としては、会計検査院規則や人事院規則、公正取引委員会規則などが該当。 |
直近の政令の具体例
次に、政令が具体的にどのような内容で出されているか、事例をもとに解説します。
令和五年政令第百七十七号:中小事業主が行う事業に従事する者等の労働災害等に係る共済事業に関する法律施行令
この政令は、令和5年6月1日に施行された「中小事業主が行う事業に従事する者等の労働災害等に係る共済事業に関する法律」と同時に、同法が規定する内容の読み替えなどに関して規定している政令です。
内容としては、中小事業主が運営する事業で働く従業員の労働災害に対応する共済事業の詳細について定めています。
具体的には、すでに事故が発生しているか共済期間が終了している共済契約を新規制の適用から除外し、共済金請求権や返戻金などの権利範囲を設定、また、共済団体の解散や異議申し立てに関する規定を整備しています。さらに、共済事業を行う銀行や金融機関の範囲を明確にし、行政庁が関与する場合の手続きを規定しています。
平成二十一年政令第二百十八号:不当景品類及び不当表示防止法施行令
この政令は、「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和三十七年法律第百三十四号)第十二条第一項及び第二項の規定に基づき、令和6年2月1日から施行されました。この法律の目的は、消費者が不正な商取引や誤解を招く広告などによって誤った商品購入を防止することです。
同政令は、同法の具体的な施行規則を設定し、違反行為に対する計算方法や処理プロセスを明確にするために出されました。具体的には、課徴金の対象となる売上額の算定方法を定め、返品や割り戻しを考慮に入れた課徴金の算出基準を設けています。また、対象となる消費者を特定する基準と、それに基づいた購入額の算定方法も規定しています。
一般消費者を対象に商品・サービスを提供する事業者は、一読しておく必要があるでしょう。
令和三年政令第百七十一号 新技術等効果評価委員会令
この政令は、日本産業の競争力を強化する法律「産業競争力強化法」に関して制定されたものです。同法のうち、新しい技術やビジネスモデルの実証・評価を行うため、内閣府に設置される「新技術等効果評価委員会」に関する規定(同法第十四条の二第三号及び第十四条の六)にもとづいて発令されました。
新技術や新サービスが社会に導入される際に企業や研究機関などが直面する法的な障壁を緩和・除外するための評価機関として、新技術等効果評価委員会が設置されることになりました。その委員会を設置するための詳細な要項などを、同政令にて定めています。
以下、具体的な内容の一例です。
- 新技術等効果評価委員会は委員15人以内で組織
- 委員会に専門事項を調査させるため必要がある場合は専門委員を設置可能
- 専門委員は専門の事項に関して学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が任命
一般市民や多くの中小企業の事業には直結しない政令ではありますが、内閣府が進める新しい技術やビジネスモデルに伴う国家戦略ですので、経済動向を知る1つの指標になるかもしれません。
法務担当が政令についての情報を集める方法
企業や団体の法務担当は、政令に違反する企業活動は制限する必要があり、政令についての情報を集めておくことが大切です。
しかし、すべての政令が新聞やインターネットなどのニュースで取り上げられるわけではないため、定期的に政令の制定や変更についてチェックしておく必要があります。
各省庁のホームページや官報において、政令の新規制定・変更についての情報を得ることは可能です。ただし、企業活動を行う際には、経済産業省だけではなくさまざまな
省庁が所管する法令が関係する場面があるため、一つひとつ目を通すのは手間がかかります。
そこで、日本政府が運営するサイト「e-gov法令検索」より、政令に関する更新情報を一括で調べられる方法があります。
e-gov法令検索のページにて、以下手順で最新の情報を調べることができます。
- ページ上部のチェック項目で「政令」のみチェックを入れる
- 「詳細検索」から公布日や分類などで検索対象を絞り込む
- 「検索」ボタンをクリック
- 表示された結果ページの右部窓を「公布日(新しい順)」にする
また、「e-gov法令検索」トップ画面の「登録法令情報」の中から「更新法令一覧」を選択すると、最新の更新情報のみを列挙したページが表示されます。
最新情報だけではなく、過去の政令も検索できるため、「詳細検索」で条件を設定して調べると簡単に情報を得ることができます。
新しい政令を調べて法律の理解を深めよう
政令は、日本の憲法と法律を補完するために内閣府が定めたルールです。政令そのものに罰則はありませんが、憲法・法律を補う内容であるため、違反すれば一定の損失を招く可能性があります。
政令は必ずしも大々的に報じられるとは限らず、企業の法務担当は常に情報のチェックが必要です。
政令は数多く存在し、政府が運営するサイト「e-gov法令検索」で知りたい情報を調べられます。
企業活動に支障をきたさないよう、政令に関する更新情報を調べ、企業活動に関係する法律の理解も深めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
民法96条とは?取消しの要件や手続きをわかりやすく解説
民法96条は、だまされたり脅されたりして行った意思表示は取消すことができると定めた条文です。だまされて不当な契約をさせられた人などを保護するために設けられました。 本記事では、民法96条について解説します。取消し要件や手続きをわかりやすく解…
詳しくみる廃掃法とは?改正の背景や改正後の内容について詳しく解説!
廃棄物の管理・処分方法は廃掃法で定められており、特に産業廃棄物の処分は管理票による処分管理の仕組み(マニフェスト制度)が定められていましたが、廃棄物の不適正処理事件を機に改正されました。ここでは、改正内容や改正前と改正後の違いなどについて解…
詳しくみる廃棄物処理法とは?概要・違反事例・罰則などを解説
廃棄物処理法(廃掃法)とは、廃棄物の処理・保管・運搬・処分などについて定めた法律です。廃棄物を排出する事業者などは、廃掃法のルールを遵守する必要があります。本記事では廃掃法について、概要・違反事例・罰則などを解説します。 廃棄物処理法とは?…
詳しくみる支払停止とは?認められる要件や具体的なケースを紹介
業績が悪化し、債務超過に陥ったとき、最終的に「破産」を検討することがあります。ただ、破産手続を開始するにもいくつか要件を満たさないといけません。特に「支払停止」は重要なポイントです。 どのような行為が支払停止にあたるのか、具体例を挙げて解説…
詳しくみる下請法におけるキャンセルは合意があれば可能?
下請取引は多くの産業で不可欠ですが、親事業者と下請事業者の間には力関係の不均衡が存在しがちです。この不均衡が悪用され、下請事業者が不利益を被ることを防ぐのが下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」)です。 特に発注後のキャンセルは下請事業者…
詳しくみるリスクマネジメントとは?考慮すべきリスクやフローも解説
企業などの法人は日々さまざまなリスクを背負っています。これまで経営が順調であったとしても、トラブルが発生して形勢が逆転し、窮地に立たされる企業も少なくありません。 そこで「リスクマネジメント」をしっかりと行って、問題が発生しないよう事前に対…
詳しくみる


