- 更新日 : 2025年8月19日
バー(bar)の開業で失敗を防ぐには?潰れる確率と儲かる仕組みを解説
バー開業は、緻密な計画と経営知識がなければ失敗のリスクが高い事業です。しかし、失敗する原因をあらかじめ理解し、適切な対策を講じることで、その確率を大きく下げられます。この記事では、バー開業で失敗するパターンを徹底分析し、失敗を防ぐための仕組みづくりまで、わかりやすく解説します。
目次
バーの開業は失敗しやすい?
バー(bar)の開業が「難しい」といわれる背景には、高い廃業率があります。バーのみならず、飲食店の廃業率は、他の業種と比較しても高く、小規模な店舗ほどリスクが大きい傾向にあります。
帝国データバンクの「飲食店の倒産動向調査(2024年)」によると、2024年の飲食店の倒産件数は894件で、前年(768件)比で16.4%増加し、過去最多を更新しました。このうち1億円未満の小規模倒産が784件(87.7%)と9割近くを占めており、小さなバー経営も、例外ではありません。
業態別では、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」の倒産件数が93件となり、前年を上回る結果となりました。最も多かったのは居酒屋を主体とする「酒場、ビヤホール」(212件)で、これもバー経営と類似する酒類提供型の業態にあたります。
倒産件数が急増している背景には、以下のような要因があります。
- コロナ関連の資金繰り支援終了とゼロゼロ融資の返済開始
- 急速な円安を背景とした物価高の影響
- 人手不足による人件費負担の増加
- 消費者の節約志向により値上げが困難
同調査では、中小クラスを中心に競争力に課題のある店舗の倒産・休廃業が高水準で続くと予測されています。実際、小規模な飲食店ではコストの上昇に対応しながらも、値上げに踏み切れず、資金繰りが悪化しているケースが多く見られます。
バーが潰れやすい背景には、初期投資の回収に時間がかかることや、客単価は高めでも回転率が低いという業態の特性があります。また、お酒を提供する業種特有の規制や、夜間営業による人件費の高さなども経営を圧迫する要因となっています。
これらのデータを踏まえると、バー開業を成功させるためには、一般的な飲食店以上に慎重な準備と戦略が必要といえるでしょう。
出典:「飲食店」の倒産動向調査(2024年)|帝国データバンク
「好き」だけでは乗り越えられないバー経営の壁
「お酒や人と話すのが好き」という動機は、バーを開業するうえで素晴らしい出発点です。しかし、それだけで経営が成り立つほど甘くはありません。経営者には、お酒の知識や接客スキルに加えて、計数管理、人材育成、集客マーケティング、法務・労務といった多岐にわたる経営スキルが求められます。とくに、売上・原価・人件費などを把握しながら利益を管理する「計数管理力」が欠けていると、気づかぬうちに資金が足りなくなってしまうこともあるでしょう。
こうした「経営の壁」に直面し、準備不足のまま開業してしまったことで、早期に廃業へ追い込まれるケースは少なくありません。きちんと計画を立て、開業前に“経営者としての自分”をシミュレーションしておくことが、失敗を防ぐ第一歩です。
バーの開業で失敗してしまう5つの特徴
バー経営で失敗する店舗には、共通する特徴やパターンがあります。これらを事前に理解することで、同じ過ちを避けられます。
立地選びの判断ミス
立地選びでの失敗は、バー経営において深刻な問題の一つです。家賃が安いからといって人通りの少ない場所を選んだり、ターゲット層と合わないエリアに出店したりすることで、集客に苦戦するケースは珍しくありません。
バーの場合、昼間の人通りよりも夜間の人流と周辺環境が重要です。オフィス街なら平日夜、繁華街であれば週末に集客のピークが見込めます。一方、住宅街では騒音や近隣への配慮が必要となり、営業時間の制限がかかる可能性もあります。
また、競合店も慎重に調べましょう。同じようなコンセプトのバーが近くに複数ある場合、価格競争や客層の分散に巻き込まれるリスクがあります。
資金計画の甘さ
資金の見積もりが甘いと、開業後すぐに資金が尽きてしまうこともあります。
バーは開業直後の集客などに時間を要するケースもあるので、開業資金だけでなく6か月以上の運転資金を確保しておく必要があります。
たとえば、内装費が予算を超過したり、集客が計画どおりに進まなかった場合、資金ショートにより廃業に至るリスクも現実的です。
また、バーならではのコストにも注意が必要です。お酒の仕入れや、高品質なグラス・備品への投資など、コンセプトによっては、一般的な飲食店に比べて初期費用が高くなるケースあるので、その点についても見落とさないようにしましょう。
ターゲット設定の曖昧さ
「誰でも気軽に来られるバー」を目指すあまり、ターゲットが曖昧になってしまうケースがあります。年齢層、職業、来店目的などを明確に設定しないと、メニュー構成や価格設定、店舗の雰囲気作りがブレてしまいます。
たとえば、若いサラリーマンをターゲットにするなら手頃な価格のカクテルを中心とし、ビジネスマンの接待需要を狙うなら高級ウイスキーを充実させるといった具合に、ターゲットによって戦略は大きく変わります。
運営コストの見積もり不足
バー経営では、飲食業のなかでも特有のコスト構造があります。深夜営業による光熱費の増加、お酒の種類を豊富に揃えるための在庫コスト、グラスの破損による交換費用などです。
また、バーテンダーの人件費も高めに設定する必要があります。技術や知識を要する職種のため、アルバイトでも時給は一般的な飲食店より高くなります。夜間勤務手当や深夜割増も考慮すると、人件費率は30%を超えることも珍しくありません。
差別化戦略の欠如
「美味しいお酒を提供すれば客は来る」という考えでは、競合に埋もれてしまいます。なぜそのバーを選ぶべきなのか、他店との違いは何なのかを明確にする必要があります。
カクテルの技術力、お酒の品揃え、店舗の雰囲気、接客サービス、立地の利便性など、どこか一つでも強みを持つことが重要です。すべてを平均的にするよりも、特定の分野で際立った特徴を作ることで、固定客の獲得につながります。
バー経営で失敗しない「儲かる仕組み」の作り方
利益を安定して確保するためには、売上を最大化しながらコストを適切に管理する仕組み作りが欠かせません。ここでは、メニュー設計から人件費の管理、データ分析、リピーター獲得まで、バーを収益化するために必要な5つの視点を整理して紹介します。
利益率を重視したメニュー構成
バーは原価率が低いため、構成次第では高利益が見込める業態です。
一般的な飲食店の原価率は30%前後ですが、バーではアルコール類の原価が15〜20%程度とされ、全体でも20%台に抑えやすいのが特長です。
この利点を活かすには、高利益率の商品を前面に出す戦略が欠かせません。原価の低いオリジナルカクテルを「看板商品」として提案し、SNS映えする要素を加えることで、収益と話題性の両立を図れます。
加えて、フードメニューも利益を下支えする柱となります。軽食でも**原価率が30〜40%、利益率は60〜70%**と高いため、アルコールとのセット販売で客単価も向上しやすくなります。
固定客獲得のリピート戦略
バーの経営に限らず、飲食店で成功の秘訣はリピーターの獲得です。来店いただいた利用者の満足度を高めることでリピーターとなり、次回は友人や知人を連れて来店してもらえるという流れができあがると、経営は軌道に乗りやすくなります。
そのためには、顧客情報を管理し、好みのお酒や来店頻度を把握することで、パーソナライズされたサービスを提供できます。誕生日や記念日のサプライズ、限定メニューの案内、会員向けの特典などを通じて、特別感を演出しましょう。
また、常連客同士のコミュニティ形成も重要です。お客様同士が知り合いになることで、一人でも気軽に来店しやすい雰囲気を作れます。
客単価を自然に引き上げる工夫
バーでは、客単価の引き上げによって利益を大きく左右できます。
飲食業のなかでも、アルコールは滞在中に複数回の注文につながりやすく、客単価を比較的上げやすい商材です。
たとえば、2杯目を選びたくなるような「おすすめカクテル」や、料理とのセット提案、グラスアップグレードの案内などが効果的です。また、「数量限定」や「季節限定メニュー」などを加えることで、再来店の動機にもつながります。
無理に売り込むのではなく、会話のなかでさりげなく提案することが、心地よい体験として印象に残りやすくなります。
データ分析による経営改善
経営を成功させるには、売上データの分析が必須となります。客単価や回転率、原価率や利益率などを日々チェックし、ブラッシュアップに繋げることが大切です。
売上データの分析により、人気メニューの把握、効率的な仕入れ計画、適切な価格設定などが可能になります。事業数値の分析やビッグデータの閲覧などがオンライン上で可能なサービスも活用しつつ、こまめに数値を把握して経営へ反映させることが重要です。
効率的な人件費管理
バーの人件費率は一般的に25~35%程度が目安とされていますが、営業時間や提供サービスによって調整が必要です。
ピークタイムとオフタイムのメリハリをつけたシフト管理により、無駄な人件費を削減できます。また、マルチタスクができるスタッフを育成することで、少人数でも効率的な運営が可能になります。
一人でも多くの業務をこなせるよう、バーテンダー業務だけでなく、接客、清掃、発注などの知識も身につけてもらいましょう。研修やスキルアップへの投資は、長期的な人件費効率化につながります。
バー開業後の失敗を避けるスタッフマネジメントと集客術
バー経営を継続させるには、接客の質と集客の工夫を開業後も継続して磨くことが欠かせません。お客様に選ばれ続ける店に育てるには、人材育成と情報発信の両輪で店舗力を高めていく視点が求められます。
バーの価値を決める接客と人材育成
バーにおいて、接客は商品そのものといっても過言ではありません。
バーテンダーの所作や言葉遣い、お客様との距離感まで含めて、お店の世界観を形づくっています。
たとえば、あるお客様は静かにお酒を楽しみたいかもしれませんし、別のお客様は会話を楽しみに来ているかもしれません。その空気を察知し、一人ひとりに合わせたサービスを提供できるかどうかが、満足度を左右します。
たとえカクテルが絶品でも、接客に不満があれば、お客様は再来店しないでしょう。
だからこそ、オーナー自身が日々接客の質を磨くことが必要です。そしてスタッフを雇用する場合には、お店のコンセプトに沿った接客ができるよう、丁寧な教育とフィードバックを重ねることが大切です。
オンラインとオフラインを組み合わせた集客方法
バーの集客には、オンラインとオフラインの両方を活用することが効果的です。
特に現代では、InstagramやGoogleビジネスプロフィール(MEO対策)などを通じて、お店の雰囲気やこだわりを発信することが新規顧客の入口になります。
- SNSでは、カクテルの写真や日替わりメニュー、イベント情報を発信
- Googleマップでは、位置情報・口コミ・写真を活用して検索に強くする
また、地域密着型のバーであれば、近隣店舗にショップカードを置いてもらう・交流イベントに参加するなど、オフラインでの地道な取り組みも集客につながります。
オンラインで興味を持ってもらい、オフラインで関係を深める。このように双方を組み合わせて継続的にアピールすることが、開業後の安定経営につながる集客のコツです。
バー開業の失敗を防ぐ資金計画のポイント
バー開業で失敗を防ぐためには、事前の資金計画をどれだけ正確に立てられるかが成否を分けます。開業に必要な初期資金と、営業を続けるための運転資金の両方を見積もり、過不足なく準備しておくことが重要です。
開業資金の内訳と目安
バーの開業資金は、物件の立地や規模、内装の状態によって大きく変動しますが、1,000万円以上かかることも珍しくありません。あくまで一例として、以下のような費用が想定されます。
物件取得費用(150万円~250万円)
物件取得に必要な費用は家賃の6〜10ヶ月分が目安とされています。内訳としては、前家賃2ヶ月分、敷金礼金1ヶ月分、保証料が家賃の4〜6ヶ月分が一般的です。家賃相場は地域によって大きく異なりますが、都市部では1ヶ月あたり25万円前後が多く見られます。
内装工事費用(200万円~800万円)
物件の種類によって大きく変わり、居抜き物件を活用することで費用を大幅に削減できます。スケルトン物件の場合は、ゼロからの工事となるため高額になりがちです。
設備・備品費用(100万円~300万円)
厨房機器やバーカウンター設備、グラス、シェーカー、計量器、冷蔵庫、レジなど、開業に必要な備品は多岐にわたります。最低でも100万円以上は必要とされており、機器のブランドやスペックによってはさらに高額になることもあります。
初回仕入れ費用(50万円~150万円)
お酒やフードの原価は月に10万円前後が目安とされています。
開業時の初回仕入れでは、定番の銘柄を中心に揃え、営業を続けながら徐々にラインナップを拡充していく方法が推奨されます。無理に高級銘柄を揃える必要はありません。
運転資金の確保方法
開業資金とあわせて、3〜6か月分の運転資金を必ず確保しておくようにしましょう。
バーの運転資金は、1ヶ月あたり平均50万〜80万円程度と見積もられるケースが多く、家賃・仕入れ・人件費・光熱費などが継続的に発生します。
資金調達の手段としては、日本政策金融公庫の「創業融資」が代表的です。
同公庫は国が100%出資する金融機関で、創業前後の個人事業主や小規模事業者にも積極的に融資を行っているのが特長です。無担保・無保証で借りられる制度や、女性・若者・シニア創業支援資金などのメニューも用意されています。
バー開業・経営に活用できる補助金や助成金
バーの開業や経営には、補助金や助成金を活用することで資金負担を軽減することができます。ただし、申請から採択までに時間がかかるため、早めの準備が必要です。
ここでは、バー経営でも利用しやすい「IT導入補助金」と「省力化投資補助金」について紹介します。
IT補助金の活用方法
IT補助金は、中小企業のITツール導入を支援する制度です。POSレジシステム、顧客管理システム、予約管理システム、会計ソフトなどの導入費用が対象となります。
バーでは、以下のようなシステム導入でIT補助金を活用できます。
- POSレジシステム: 売上管理、在庫管理、顧客管理を一元化
- 予約管理システム: オンライン予約受付、顧客情報管理
- 勤怠管理システム: スタッフの勤怠管理、給与計算の効率化
IT導入補助金には複数の類型があり、たとえば通常枠(B類型)では補助率1/2・最大450万円、POSレジや会計ソフトなどが対象となるデジタル化基盤導入類型では、補助率2/3~3/4・最大350万円となっています。申請には事前にIT導入支援事業者への相談が必要です。
省力化投資補助金の対象範囲
省力化投資補助金は、人手不足解消と生産性向上を目的とした設備投資を支援する制度です。自動化機器やロボット導入などが対象となります。
バー経営では、以下のような設備で活用の可能性があります。
- 自動ディスペンサー: 正確な分量でのお酒の提供
- 食器洗浄機: 清掃作業の効率化
- 自動釣銭機: レジ業務の効率化と現金管理の精度向上
補助率は1/2以内、補助金額は最大1,500万円となっており、投資効果の説明や事業計画書の提出が求められます。
これらの補助金は毎年制度内容が変更される場合があるため、最新情報を中小企業庁のウェブサイトで確認することが重要です。
参照:令和6年度(2024年度)の中小企業の動向|中小企業庁
バー開業の失敗を防ぎ、愛される店を築くために
バー開業で失敗する要因は、「資金計画の甘さ」「コンセプトの欠如」「経営知識の不足」に多く見られます。華やかなイメージの裏には、高い廃業率という現実があることを忘れてはなりません。だからこそ、開業前から緻密な事業計画を立てることが、失敗を防ぐうえで不可欠です。
本記事で紹介したとおり、儲かる仕組みの構築=原価管理・客単価の向上・リピーターの獲得が、バー経営を成功に導きます。融資や助成金といった制度も賢く活用し、余裕を持った資金計画を立ててください。
小さなバーだとしても、他にはない明確な個性と質の高いサービスがあれば、お客様に長く愛される繁盛店を築くことは十分に可能です。この記事で解説した点をふまえ、まずは事業計画の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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