• 作成日 : 2025年8月8日

キッチンカーの独立開業を支援する補助金・助成金まとめ

キッチンカーでの独立を考えるなら、自己資金だけでなく、補助金や助成金といった支援制度を活用するのもひとつの方法です。条件に合えば、車両の改造費や設備費、広告費の一部をまかなうことも可能です。申請には時間がかかり、締切もあるため、早めの情報収集と準備が欠かせません。この記事では、キッチンカー独立支援に使える主な制度と、利用時の注意点をわかりやすく解説します。

キッチンカーの独立開業を支援する補助金・助成金

キッチンカー開業には、国や自治体が提供するさまざまな補助金・助成金が活用できます。これらを活用すれば、初期費用を大幅に抑えられます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が、販路拡大や業務効率化に取り組むための費用を支援します。キッチンカー事業では、例えば、新たな顧客層にリーチするための移動販売の立ち上げや、既存のキッチンカー事業のさらなる強化(例:メニュー開発、SNS広告による集客)などが支援対象となります。

  • 対象者: 営利法人、個人事業主、特定非営利活動法人。商業・サービス業は従業員5人以下、製造業などは20人以下が目安です。
  • 補助率・上限額: 対象経費の2/3または3/4で、上限は50万円から250万円(特例活用時)です。
  • 主な対象経費: 車両の改造費や調理設備(事業専用のキッチンカーとして改造・使用する場合など、「機械装置等費」として認められるケースがあり)、広告宣伝費、ウェブサイト作成費、チラシ制作費、看板設置費、設備導入費などが含まれます。
    ※車両本体は補助金の対象外とされることが多い点には留意しておくべきです。

出典:小規模事業者持続化補助金ガイドブック小規模事業者持続化補助金|商工会議所地区

IT導入補助金

中小企業や個人事業主がITツール(POSレジ、会計ソフト、予約システムなど)を導入し、業務効率化や売上向上を図るための補助金です。キッチンカー事業においては、キャッシュレス決済に対応するためのPOSレジシステムの導入、モバイルオーダーや事前予約システムを導入して顧客の利便性を高めるケース、在庫管理や会計処理を効率化するソフトウェアの導入などが該当します。

  • 対象者: 中小企業・小規模事業者・個人事業主。
  • 補助額・補助率: 5万円から450万円、補助率は1/2、3/4、4/5と申請枠によって異なります。
    なお、参考までに申請枠としては、通常枠、デジタル化基盤導入枠、セキュリティ対策推進枠などがあります。
  • 主な対象経費: POSレジシステム、予約・オーダー管理システム、会計ソフトなど。
  • 申請方法: 申請は、事前に認定された「IT導入支援事業者」を通じてのみ可能で、導入する製品も認定されたものから選ぶ必要があります。インボイス枠や賃上げ要件で補助率や上限額が上がることがあります。

出典:IT導入補助金2025

中小企業新事業進出補助金

2025年度に開始された新しい事業分野への挑戦を支援する制度です。既存の飲食店が新たな顧客層にアプローチするためにキッチンカーを導入するケースや、全く新しい事業として移動販売事業を立ち上げるケースなどが対象となります。革新性や成長性が重視される傾向があります。

  • 対象者: 日本国内で事業を営む中小企業者。
  • 補助率・上限額: 補助率は1/2、上限額は従業員数に応じて2,500万円から7,000万円(大幅賃上げで最大9,000万円)です。補助下限額は750万円です。
  • 主な対象経費: キッチンカー本体の購入費用・内装改造費、調理設備・給排水設備・電源システムなどの装備導入費、専門家や外注業者への依頼費(設計、保健所対策、営業戦略アドバイスなど)、開業時の広告宣伝費(チラシ、ウェブサイト、SNS広告費など。広告費は他の経費との併用が条件で、上限500万円)。

出典:中小企業新事業進出補助金|中小企業庁

ものづくり補助金

中小企業が革新的な製品開発やサービス改善、生産性向上につながる設備投資を行うことを支援する制度です。キッチンカー事業では、革新的なサービス開発を伴う場合に対象となり得ます。例えば、AIによる需要予測と連動したメニュー提供システムや、地域の特産品を活用したこれまでにない調理法を可能にする特殊なオーダーメイド設備の導入など、作業効率化に留まらない付加価値の高い計画が求められます。

  • 対象者: 中小企業基本法に基づく中小企業および小規模事業者で、製品開発や技術革新に取り組む意思と計画がある事業者。
  • 補助率・上限額: 対象経費の1/2または2/3が支給されます。上限額は事業規模や事業内容により、数百万から数千万円です。
  • 主な対象経費: キッチンカー本体、調理設備、給排水、発電機などの導入費用、車両の内装・構造改造費、新メニュー開発・試作費用、ITシステム導入費用(モバイルPOS、在庫管理アプリなど)、衛生管理・労働環境改善費用などが含まれます。

出典:ものづくり補助金のご案内|中小機構

業務改善助成金

中小企業・小規模事業者が生産性向上に向けた設備投資や、従業員の賃金引き上げを行う場合に支援する助成金です。キッチンカー事業では、最低賃金以上の賃上げを行いながら、同時に効率的な調理器具を導入して人手不足を解消するケースなどが該当します。

  • 対象者: 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内の事業場が主な対象です。
  • 助成率: 最低賃金の引き上げ額に応じて4/5または3/4です。

出典:業務改善助成金|厚生労働省

中小企業省力化投資補助金

中小企業の労働力不足解消と生産性向上を目的とした、ロボットやIoTなど労働力削減技術の導入を支援する国の制度です。キッチンカー事業では、自動販売機機能付きのキッチンカーの導入、調理の一部を自動化するロボットアームの導入、効率的な券売機や自動精算機の導入による省人化などが対象となり得ます。

  • 対象者: 労働力不足に直面している中小企業。
  • 補助率・上限額: 1/2(小規模・再生事業者は2/3)で、補助上限額は200万円から最大1億円(賃上げ特例で増額)と大規模です。
  • 主な対象経費: 配膳ロボット、券売機、自動精算機、清掃ロボット、スチームコンベクションオーブンなど、飲食店で活用できる設備。

出典:中小企業省力化投資補助金

雇用関係助成金

特定の地域での雇用創出や、職場環境の改善を促進するための助成金です。

  • 地域雇用開発助成金: 例えば、過疎地域や特定地域でキッチンカー事業を開始し、その地域の住民を2名以上新規雇用するケースで、機械購入費や車両購入費などが対象となることがあります。
  • 働き方改革推進支援助成金: 職場環境改善や労働時間短縮に取り組む中小企業・小規模事業者を支援します。キッチンカー従業員の労働時間短縮のため、効率的なシフト管理システムを導入するケースなどが該当します。

上記助成金について、年度ごとに予算措置や内容が変わるケースもあるので、適用を考えている場合には、厚生労働省の最新情報を確認されることをおすすめします。

出典:雇用関係助成金一覧|厚生労働省

キッチンカーの独立開業を支援する地域の補助金・助成金

各自治体もキッチンカー開業を支援する独自の補助金・助成金を提供しています。ここでは、主な補助金の例を紹介します。

東京都

創業助成事業

都内で創業予定または創業5年未満の事業者を対象に、創業初期にかかる経費を助成します。例えば、都内でキッチンカー事業を立ち上げる際の初期費用(車両購入費や内装・設備費を含む)や、開業後の賃借料(事務所や保管場所など)、広告費、人件費などが対象となる場合があります。

  • 対象者: 都内で創業予定または創業5年未満の事業者。
  • 補助率・上限額: 補助額は100万円から400万円で、補助率は2/3です。

出典:創業助成事業|TOKYO創業ステーション

千葉県

南房総市がんばる事業者支援事業補助金(移動販売導入支援事業)

市内の法人または個人事業主が、キッチンカーとして使用する車両の取得、改造にかかる経費などを補助します。例えば、南房総市内で買い物に不便を感じる地域への移動販売を計画し、地域住民の生活を支えるケースが該当します。

  • 対象者: 南房総市内の法人または個人事業主。
  • 補助率・上限額: 上限額は100万円、補助率は3/10です。
  • 主な対象経費: キッチンカー車両取得費・改造費、新品備品・設備購入費など。

出典:令和7年度南房総市がんばる事業者支援事業補助金|南房総市

神奈川県

中小企業生産性向上促進事業費補助金

神奈川県内の中小企業が業務効率化、省力化につながる設備投資を行う際に助成します。効率的な調理設備や省エネ型の発電機を導入し、キッチンカーの運営コスト削減と提供スピード向上を目指すケースなどが該当します。

  • 対象者: 神奈川県内の中小企業。
  • 補助率・上限額: 上限額は500万円、補助率は1/2です。「機械装置費」の例にキッチンカーが挙げられています。

出典:令和7年度中小企業生産性向上促進事業費補助金について|神奈川県

補助金・助成金は、申請期間や条件が毎年度変更されるのが通例です。最新の公募状況や詳細な要件は、各省庁や自治体のウェブサイト、公募要領で必ず確認してください。

キッチンカーに関する補助金・助成金を使うときの注意点

補助金や助成金を使ってキッチンカーを始めるなら、条件や手続きの確認が欠かせません。ここでは、補助制度を正しく活用するために知っておくべき注意点を解説します。

対象条件を事前に確認する

補助金や助成金には、法人か個人事業主か、従業員数、創業時期、事業の所在地など、細かな条件があります。「創業5年以内」「従業員5名以下」といった制限があることもあるため、必ず申請要項を読み込みましょう。

対象経費と対象外経費の違いを把握する

補助対象となる経費は、制度によって異なります。キッチンカー本体は多くの制度で対象外とされていますが、制度によっては本体購入費も対象となることもあります。車両改造費のほうが対象となりやすいため、必ず制度ごとの申請内容を確認することをおすすめします。また、「広告費は設備と併用申請でのみ対象」といった条件もあります。誤った経費を申請すると不採択になるため、事前に確認をしましょう。

補助金は原則後払い、資金繰りに注意

補助金・助成金の多くは、実施後に実績報告を提出し、審査を経て支払われます。そのため、一時的に自費で立て替える必要があります。手元資金が十分でない場合、資金繰りが厳しくなる恐れがあります。

書類作成と手続きには時間がかかる

申請書類は、事業計画、収支見込、必要経費の内訳などを具体的に記載する必要があります。申請にあたっては、地域の商工会議所・商工会や、国が認定した専門家(認定経営革新等支援機関)から事業計画策定のサポートを受けることができます。

申請から採択まで数カ月かかることもありますので、スケジュールに余裕をもって準備を進めましょう。

審査の視点を意識して申請書を作る

特に補助金では、申請が多いと採択率が下がります。審査では「地域性」「継続性」「収益性」「社会的意義」などが見られる傾向があります。単に「移動販売を始めたい」というだけでなく、「高齢者向けに食事を届けたい」「人材を雇用して地域に貢献したい」といった具体的な狙いを明示することが評価につながります。

公募期間の締切を見落とさない

多くの補助金・助成金には公募期間が設定されています。例えば「小規模事業者持続化補助金」は年に数回の締切があり、それを逃すと数カ月待つ必要があります。締切日から逆算して、余裕を持った準備を心がけてください。

キッチンカーで独立支援を活用するには事前の確認が重要

キッチンカーの独立開業を後押しする補助金や助成金は、制度によって対象者や経費、申請の手順が異なります。活用するには、まず自分がどの制度に該当するのか、何が申請できて何が対象外なのかを正確に把握することが欠かせません。

申請書類の作成には時間も労力もかかり、締切を過ぎると再申請まで数カ月待つこともあります。補助金は先払いではなく後払いのため、資金繰りも重要です。

焦らず段取りを組み、スケジュールと書類の準備を進めることが、制度を活かすコツです。


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