- 作成日 : 2025年9月25日
飲食店のコンセプトシートの書き方とは?無料テンプレートと記入例
飲食店の開業やリニューアルを成功させるためには、お店の軸となる「コンセプト」を明確にすることが欠かせません。そのコンセプトを可視化し、関係者間で共有するためのツールが「コンセプトシート」です。しっかりとしたコンセプトシートは、ブレない店作りだけでなく、資金調達や人材育成においても力を発揮します。
この記事では、飲食店のコンセプトシートの重要性から、具体的な書き方、無料テンプレートの活用法までを網羅的に解説します。
目次
飲食店のコンセプトシートとは ブレない経営の設計図
飲食店のコンセプトシートとは、お店の基本的な考え方や方向性を一枚のシートにまとめたものです。お店の「憲法」や「設計図」ともいえるもので、開業準備から日々の運営における、あらゆる意思決定の基準となります。頭の中にある漠然としたアイデアを言語化・視覚化することで、お店の全体像が明確になります。
なぜコンセプトシートが必要なのか
飲食店を開業する際には、メニュー開発、内装デザイン、資金調達、人材採用など、決めなければならないことが山積みです。コンセプトシートがないままこれらを進めると、一つひとつの判断に一貫性がなくなり、結果として「何がしたいのかわからないお店」になってしまうおそれがあります。コンセプトシートは、そうした事態を防ぎ、お店作りのブレない軸を定めるために必要です。
コンセプトシートを作成するメリット
コンセプトシートを作成することには、主に3つのメリットがあります。第一に、自分自身の考えが整理され、お店の強みや課題が明確になること。
第二に、金融機関から融資を受ける際の事業計画書や、補助金の申請書類を作成する際の基礎資料として活用できること。第三に、スタッフやデザイナーなどの関係者とお店のビジョンを正確に共有し、スムーズな連携を促せることです。
飲食店のコンセプトシートに盛り込むべき必須項目
効果的なコンセプトシートを作成するためには、いくつかの必須項目を網羅することが大切です。ここでは、お店の全体像を明確にするために、一般的に用いられる「5W2H」のフレームワークを基にした項目を中心に解説します。これらの項目を一つひとつ埋めていくことで、自然とコンセプトが具体化していきます。
基本コンセプト(5W2H)を定める
お店の根幹となる考え方を、5W2Hの視点で整理します。
- Why(なぜ): なぜこのお店を開くのか(動機・理念)
- Whom(誰に): どのようなお客様に来てほしいのか(ターゲット顧客)
- What(何を): どのような商品・サービスを提供するのか(看板メニュー・特徴)
- Where(どこで): どのエリアで出店するのか(立地)
- When(いつ): どのような時間帯・シーンで利用してほしいのか(営業時間・利用動機)
- How(どのように): どのような方法で提供するのか(店舗デザイン・接客スタイル)
- How much(いくらで): どのくらいの価格で提供するのか(客単価・価格設定)
数値計画を立てる
夢を現実のビジネスとして成立させるための、具体的な数値目標を設定します。
- 売上目標: 月間、年間の売上目標
- 客席数・回転数: 満席時の客席数と、1日に何回転させたいか
- 客単価: お客様一人あたりの平均利用金額
- 損益分岐点: 利益がゼロになる売上高。これを超えれば黒字化します。
マーケティング戦略を考える
お店のことを知ってもらい、お客様に来店してもらうための具体的な方法を計画します。
- 販促活動: SNSの活用、チラシ、プレスリリース、グルメサイトへの掲載など
- 競合との差別化: 周辺の競合店と比較した際の、自店の独自の強みは何か
【記入例付き】飲食店のコンセプトシートの書き方を5ステップで解説
ここでは、実際に飲食店のコンセプトシートを作成するための手順を、5つのステップに分けて解説します。各ステップで何をすべきかを理解し、順序立てて進めることで、説得力のあるコンセプトシートを完成させることができます。
ステップ1:お店の「理念」や「想い」を言語化する
まず、自分自身が「なぜこのお店をやりたいのか」「お客様にどんな価値を提供したいのか」という原点を深掘りします。これはコンセプトシートの根幹となる「Why」の部分です。難しく考えず、思いつくままにキーワードを書き出してみましょう。
(記入例:Why)「忙しい毎日を送る地域の人々が、手作りの優しい味で心から安らげる『第二の食卓』のような場所を作りたい」
ステップ2:ターゲット顧客と立地を定める
次に、「誰に」「どこで」サービスを提供するのかを具体的にします。ターゲット顧客の年齢層、性別、ライフスタイルなどを細かく設定(ペルソナ設定)し、そのターゲットが多く集まるエリアはどこかを考えます。
(記入例:Whom)「近隣で働く30代~40代の男女。健康を意識しているが、自炊する時間がない人」 (記入例:Where)「〇〇駅周辺のオフィス街と住宅街が混在するエリア」
ステップ3:提供するメニューとお店の強みを考える
ターゲット顧客のニーズを満たすための具体的な商品(What)と、他店にはない独自の強みを考えます。看板メニューは何か、価格帯(How much)はどうするか、お店の雰囲気(How)はどうするか、などを決めていきます。
(記入例:What)「国産野菜をたっぷり使った、日替わりの健康的な定食」 (記入見本:How much)「ランチ客単価:1,200円、ディナー客単価:2,500円」
ステップ4:数値を設定し事業計画に落とし込む
ステップ1~3で固めたアイデアを、具体的な数値計画に落とし込みます。想定する客単価と目標の客数から売上目標を算出し、それに対して必要な経費(原材料費、人件費、家賃など)を計算し、現実的に利益が出るかを確認します。この段階で無理があれば、前のステップに戻って計画を修正します。
ステップ5:シートにまとめて全体像を可視化する
最後に、ここまでのステップで考えたすべての要素を、一枚のシートに整理してまとめます。箇条書きや簡単な表を用いると、情報が整理されて見やすくなります。これでコンセプトシートの完成です。
無料で使える飲食店のコンセプトシートテンプレート
コンセプトシートをゼロから作るのは大変だと感じる方もいるかもしれません。その場合は、インターネット上で配布されている無料のテンプレートを活用するのが便利です。ここでは、テンプレートを探す際のポイントを紹介します。
Excel・Word形式のテンプレート
多くのビジネス系情報サイトやコンサルティング会社のウェブサイトで、ExcelやWord形式のテンプレートが無料でダウンロードできます。「飲食店 コンセプトシート テンプレート 無料」などのキーワードで検索すると見つかります。
これらのテンプレートは、必要な項目があらかじめ用意されているため、それに沿って入力するだけで基本的なコンセプトシートが完成します。カスタマイズしやすいのも利点です。
Canvaなどのデザインツールを活用する
よりデザイン性の高いコンセプトシートを作りたい場合は、「Canva」のような無料のデザインツールが役立ちます。プレゼンテーション用のテンプレートなどを応用すれば、写真やイラストを効果的に使った、視覚的に訴えるコンセプトシートを作成できます。デザイナーや投資家に見せる際などにおすすめです。
参照:Canva(キャンバ)
テンプレート利用時の注意点
無料テンプレートは便利ですが、あくまで汎用的な雛形です。テンプレートの項目をただ埋めるだけでなく、必ず「自店ならではの独自の強みは何か」「この項目は自店のコンセプトを伝える上で本当に必要か」といった視点で、内容を吟味し、カスタマイズすることが大切です。
作成したコンセプトシートを飲食店経営に活かす方法
コンセプトシートは、作成して終わりではありません。むしろ、作成してからが本当のスタートです。完成したコンセプトシートをさまざまな場面で活用することで、その価値を最大限に引き出すことができます。
事業計画書・融資申請への活用
コンセプトシートは、日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受ける際に提出する「創業計画書」や「事業計画書」を作成する際の、強力な土台となります。コンセプトシートの内容を基に、より詳細な数値計画や行動計画を肉付けしていくことで、説得力のある事業計画書を効率的に作成できます。
スタッフとの意識共有ツールとして
お店のコンセプトは、オーナーだけでなく、働くスタッフ全員が共有して初めてお客様に伝わります。コンセプトシートをスタッフ研修の資料として活用したり、休憩室に掲示したりすることで、お店が目指す方向性や大切にしたい価値観を全員で共有し、日々の接客や調理に一貫性を持たせることができます。
デザイン会社や内装業者との打ち合わせに
店舗のロゴや内装を外部の業者に依頼する際、コンセプトシートは非常に役立ちます。口頭でイメージを伝えるだけでは、認識のズレが生じやすくなります。コンセプトシートを提示することで、お店の世界観を正確に伝え、イメージ通りのデザインを形にしてもらうための、円滑なコミュニケーションが可能になります。
説得力のあるコンセプトシートが飲食店の未来を描く
飲食店のコンセプトシートは、お店の成功を左右する「経営の羅針盤」です。開業前のアイデアを整理し、具体的な計画に落とし込むだけでなく、開業後も経営判断に迷ったときに立ち返るべき原点となります。
今回解説した書き方や項目を参考に、あなたのお店の「想い」と「戦略」を一枚のシートに描き出してみてください。説得力のあるコンセプトシートは、金融機関や協力業者、そしてスタッフの心を動かし、あなたのお店の未来を切り開くための道しるべとなるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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