• 作成日 : 2025年9月22日

飲食店の売上分析とは?見るべき指標から改善方法までわかりやすく解説

飲食店の売上分析は、経営状況の改善や現場の見直しにつながる手段です。感覚に頼った経営だけでは限界があるため、データをもとにした判断が欠かせません。この記事では、飲食店の売上分析の基本的な考え方から、活用できる経営指標、Excelやツールの使い方、実際の分析後にとる行動までをわかりやすく解説します。

飲食店の売上分析でわかること

飲食店の売上分析をおこなうことで、お店の現状や人気商品、顧客の動きなどが数字で把握できるようになります。「なぜか売上が良くない」といった曖昧な問題が、具体的な課題として見えてくるのです。

お店の現状と課題の明確化

お店の課題は、売上データを分析することで明確になります。たとえば「客単価は高いが、平日の客数が少ない」「ランチは忙しいが、ディナーの客足が伸び悩んでいる」など、お店が抱える問題点が数字でわかります。

漠然とした不安が具体的な課題に変わることで、対策の優先順位もつけやすくなるのではないでしょうか。

人気商品・不人気商品の特定

どのメニューが売上に貢献している「人気商品(売れ筋)」で、どれが貢献していない「不人気商品(死に筋)」なのかが、客観的なデータで判断できます。これにより、看板メニューのさらなる強化や、メニュー構成の見直しといった実際のアクションを考えやすくなります。

顧客の来店パターン

お客様が「何曜日の」「どの時間帯に」多く来店するのか、また、どのような客層が多いのかといったパターンを把握できます。このパターンがわかれば、スタッフのシフトを効率的に組んだり、お客様が少ない時間帯に限定したサービスを企画したりといった、効果的な店舗運営が考えられます。

販促活動の効果測定

実施したキャンペーンや割引サービスが、実際にどれだけ売上や客数の増加につながったのかを、数値で評価できます。たとえば「チラシを配布した週は客数が10%増えた」といった効果がわかれば、その販促が成功だったのかを判断でき、次回の企画をより良いものに改善していけるでしょう。

飲食店の売上分析で見るべき経営指標

飲食店の売上や利益の状態を正しく知るためには、いくつかの経営指標を理解することが大切です。ここでは、とくに重要となる5つの指標とその見方を紹介します。これらの数字をおさえることで、お店の健康状態を多角的に把握できるでしょう。

売上高

売上高は、お店の事業規模や成長性を示す指標です。日々の売上を見るだけでなく「前年同月比」や「前週の同じ曜日との比較」をおこなうことが大切になります。これにより、季節や天候、イベントなどの影響をのぞいた、お店の実質的な成長度合いを測れるからです。もし売上が目標に届かない場合は、次の「客数」と「客単価」のどちらに原因があるのかを分解して考えていきます。

客数と客単価

売上高は「客数 × 客単価」の式で成り立っています。売上を伸ばすには「より多くのお客様に来ていただく(客数を増やす)」か、「お客様一人あたりに使う金額を増やしていただく(客単価を上げる)」かの、おもに2つの方向性があります。

売上分析を通じて、自店がどちらの改善に力を入れるべきか判断しましょう。さらに客単価は「オーダー品数」と「一品あたりの平均価格」に分解でき、品数を増やすためのセットメニュー提案なども考えられます。

損益分岐点

損益分岐点とは、費用と収益がちょうど等しくなり、利益がゼロになる売上高のことです。この売上高を超えれば利益が生まれ、下回ると損失(赤字)が出ている状態を示します。

損益分岐点を把握することで「あといくら売上があれば利益を出せるのか」という目標設定がしやすくなります。 この計算には、まず費用を「変動費」と「固定費」に分けます。

  • 変動費:売上の増減に伴って変動する費用(食材費、ドリンク原価など)
  • 固定費:売上に関わらず一定にかかる費用(家賃、正社員の人件費、減価償却費など)

計算式は以下のとおりです。

損益分岐点売上高=固定費÷(1 – 変動費÷売上高) 

まずは自店の損益分岐点を計算し、現状の売上高がそれを上回っているかを確認することから始めましょう。

FLコスト(食材費・人件費)

FLコストとは、Food(食材費)とLabor(人件費)を合わせた費用で、飲食店の二大経費です。売上高に占めるFLコストの割合を「FL比率」と呼び、この比率を適正に保つことが利益確保につながります。FL比率は、一般的に60%以内が健全な状態の目安とされています。売上は好調でもこの比率が高い場合、利益が圧迫されている状態かもしれません。

食材の仕入れ価格の見直しやフードロスの削減、オペレーション効率化による人件費の調整といった対策を検討する必要があるでしょう。

回転率

回転率は、客席が一定時間内に何回満席になったかを示す指標で、「期間中の総客数 ÷ 総客席数」で計算されます。この指標は、お店が客席をどれだけ効率的に使えているかを示します。とくにお客様の滞在時間が短いランチタイムでは、回転率が収益に大きく影響するでしょう。

一方で、ゆっくりと食事を楽しむお客様が多いディナータイムでは、回転率よりも客単価を重視する戦略が有効な場合もあります。

飲食店の売上分析に使う具体的な手法

データを集めたら、目的に合った手法で分析を進めます。ここでは、多くの飲食店で活用されている代表的な分析手法と、それによって何がわかるのかを紹介します。難しく考えず、まずは自店で試せそうなものから取り入れてみてはいかがでしょうか。

ABC分析

ABC分析は、メニューや商品を売上高や販売数といった指標でランク付けし、管理にメリハリをつける手法です。売上の大部分を占めるAランク(売れ筋)、中間のBランク、貢献度の低いCランク(死に筋)に分類することで、どの商品に力を入れるべきかがはっきりします。

  • Aランク:お店の看板商品。積極的に販促し、品切れがないよう管理する。
  • Bランク:Aランクに次ぐ商品。セット販売などでAランクへの育成をはかる。
  • Cランク:貢献度が低い商品。メニューからの削除や、抜本的な改良を検討する。

アソシエーション分析

この分析は、「Aを注文したお客様は、Bも一緒に注文する傾向がある」といった、一見気づきにくい商品同士の組み合わせを発見するための手法です。POSデータなどから、同時に購入された商品の組み合わせを分析します。たとえば「パスタと一緒に、ミニサラダもよく注文される」という関連性がわかれば、「パスタをご注文の方には、プラス200円でミニサラダをセットにできます」といったクロスセル提案が考えられるでしょう。

RFM分析

RFM分析は、顧客を「お店にとってどれくらい重要か」という視点でグループ分けし、とくに大切な優良顧客を見つけ出すための手法です。以下の3つの指標で顧客をグループ分けします。

  • Recency(最終来店日):最近いつ来たか
  • Frequency(来店頻度):どれくらいの頻度で来るか
  • Monetary(累計購入金額):これまでいくら使ってくれたか

この3つの指標すべてが高い顧客は、お店にとってとくに大切な「優良顧客」といえます。こうした顧客層に対しては、限定の案内を送ったり、特別なサービスを提供したりすることで、お店との関係をより深められるのではないでしょうか。

時間帯・曜日別分析

時間帯・曜日別分析は、「どの曜日の、どの時間帯がもっとも忙しいか」を分析する、基本的でわかりやすい手法です。お客様の来店パターンが明確になるため、スタッフのシフト作成や、暇な時間帯の集客キャンペーン(ハッピーアワーなど)の計画に役立てることができます。

天候・季節変動分析

お店の売上は、天候や季節によっても大きく左右されます。過去の売上データと天気、季節の情報を照らし合わせることで、「雨の日はデリバリーの注文が増える」「夏場は冷たい麺類の出数が伸びる」といった傾向を掴めます。こうした傾向がわかれば、「雨の日限定クーポン」の配布や、季節限定メニューの開発といった、先を見越した対策を準備できるでしょう。

飲食店の売上分析を経営改善につなげる方法

分析で気づきを得たあとは、行動に移してこそ経営改善につながります。ここでは、分析結果を実際の改善策に落とし込むための4つのステップを紹介します。この流れを意識することで、データにもとづいた改善活動がスムーズに進められるでしょう。

ステップ1:分析データから「課題」を特定する

まずは、分析結果からお店の「課題」を客観的に洗い出します。ここでは「良い・悪い」と主観で判断するのではなく、見つかったことを事実としてそのまま受けとめることが大切です。

  • (例)ABC分析の結果 → 「Cランクに分類されるメニューが全体の30%を占めている」
  • (例)曜日別分析の結果 → 「水曜日の売上が他の曜日と比べて20%低い」

ステップ2:課題の「原因」を深掘りする(仮説を立てる)

次に、特定した課題に対して「なぜそうなっているのか?」と原因を考え、仮説を立てます。データだけでは見えない、現場の状況やお客様の動きをふまえて考えることが、的確な改善策につながります。

  • (課題)水曜日の売上が低い → (仮説) 「近隣の競合店が水曜日に割引をおこなっており、お客様がそちらに流れているのではないか?」

ステップ3:実際の「改善策(アクションプラン)」を立てる

立てた仮説にもとづいて、具体的な改善策を考えます。「客数アップ」「客単価アップ」「コスト最適化」といった視点を持つと、アイデアが出やすいかもしれません。

  • 【客数アップの改善策】
    • アイドルタイム分析 → 平日15-17時限定の「ケーキセット」を導入し、カフェ利用の新規顧客を狙う。
  • 【客単価アップの改善策】
    • ABC分析とアソシエーション分析 → Aランクのパスタと一緒に頼まれやすいBランクの「ミニサラダ」をセットにして提案する。
  • 【コスト削減・効率化の改善策】
    • 時間帯別分析 → ピークタイム前に仕込みが完了するよう人員配置を見直し、人件費を調整する。

ステップ4:「効果測定」を行い、次の改善へつなげる(PDCA)

アクションプランを実行したら、必ず「効果測定」をおこないます。施策の前後で、売上や客単価などの関連指標がどう変化したかを同じ基準で比較しましょう。

  • (例) 「水曜限定サービス」を開始して1ヶ月後、水曜日の売上が前月比で15%向上したため、施策は成功と判断し、来月も継続する。

このように「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続けることが、お店の成長につながります。

飲食店の売上分析を効率化するツール

売上分析は継続が大切ですが、手作業では手間がかかり長続きしにくいものです。ここでは、分析作業を効率化するための代表的なツールを紹介します。お店の状況に合わせて導入を検討してみてはいかがでしょうか。

エクセル(スプレッドシート)

エクセルやGoogleスプレッドシートは、多くのお店で導入しやすいツールです。まずは日々の「日付」「曜日」「売上高」「客数」といったデータを記録する簡単な表を作成することから始めましょう。データが溜まってきたら、関数やピボットテーブル機能を使うことで、曜日別の平均売上や月別の売上推移などを集計できます。

POSレジシステム

POS(ポス)レジシステムは、会計機能だけでなく、売上データを自動で集計・分析してくれる機能をそなえています。リアルタイムで売上状況を確認できるほか、ABC分析や時間帯別分析などを自動でおこなってくれる機種も少なくありません。導入には費用がかかりますが、日々の集計作業の手間が大幅に省け、より高度な分析ができるようになるでしょう。

飲食店の売上分析でデータに基づいた経営判断を

飲食店の売上分析は、数字を調べるだけでなく、お店の現状を正しく理解し、具体的な改善策へとつなげるための経営活動です。日々の売上データの中から客観的な事実を読み解き、次の一手を考えることで、勘や経験だけに頼らない、より安定したお店作りが実現します。

売上分析というと難しく聞こえるかもしれませんが、まずはエクセルに簡単な記録をつけることからでも始められます。データにもとづいた経営判断を、今日から始めてみましょう。


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