- 作成日 : 2025年8月8日
キッチンカーの経営は難しい?仕事内容の一覧や成功ポイントを解説
キッチンカー(移動販売)経営は、自由な働き方ができる一方で、継続するには明確な戦略と準備が必要です。唐揚げなど人気メニューを扱っても、売上が安定しないこともあります。本記事では、キッチンカー経営の実態や、よくある失敗例、軌道に乗せる具体的な方法までを詳しく解説します。これから始めたい方の疑問や不安を解消します。
目次
キッチンカー経営は難しい?
キッチンカー経営は簡単ではありません。調理だけでなく、販売戦略や出店交渉、仕入れ、衛生管理、集客など多くの業務を自分でこなす必要があります。固定費が少なく始めやすい一方で、売れる場所を見極められないと赤字になりやすいのが現実です。
中でも売上に直結するのは、以下の3つです。
- 場所選び
- 販売計画
- メニュー設計
これらの計画が不十分な場合、事業の継続が困難になり、早期に撤退を判断するケースもあります。
キッチンカーは飲食業と移動販売のハイブリッド型。屋台やフードコートとは運営面が異なり、事前に十分なリサーチと準備が必要です。
キッチンカー経営者の年収目安
キッチンカー経営者の年収目安は、地域や出店場所などによって異なりますが、400万円から500万円、月収に換算すると30万円から40万円程度と言われています。
月収35万円(年収420万円)を稼ぐには、月間約70万円の売上が必要で、月20日稼働とすると1日あたり約3.5万円の売上が目安です 。
年収700万円を目指す場合、月間売上は約117万円、1日あたり約5.85万円の売上を継続して上げる必要があります 。
利益を計算する際は、食材原価(30%前後が目安)に加え、出店料、燃料費、車両維持費、保険料など、多岐にわたる経費を考慮する必要があります。
イベントで売上が伸びるケースもありますが、安定させるには集客力や運営力が問われます。
キッチンカー経営の廃業率
ある調査によると、キッチンカー経営は1年以内に約30%が廃業すると言われています。初期費用が少なく参入しやすい反面、十分な準備や経営の知識がないまま始めるケースが多く、結果として早期撤退が増えています。特に唐揚げなどの人気メニューは競合が多く、差別化や継続的な売上戦略が必要です。
キッチンカー経営の仕事内容一覧
キッチンカー経営には複数の役割があります。仕入れ、仕込み、調理、接客、会計、清掃、SNS運用、出店交渉まで全て自分で行うケースが多く、個人事業主としての業務も加わります。
また、出店場所によって売上が大きく変動するため、出店場所の選定やイベント参加、平日のランチ営業など、柔軟な対応が必要です。
以下は、キッチンカー経営で日常的に行う作業をまとめた表です。
業務内容 | 説明 | |
---|---|---|
準備 | 仕入れ | 食材や資材の調達。鮮度・原価の確認も必要。 |
仕込み | 営業前に下ごしらえや仕込み作業を行う。 | |
車両・設備の点検 | 冷蔵庫・ガス・電源・タイヤなどの安全確認。 | |
車両準備・積み込み | 必要な設備や材料をキッチンカーに積み込む。 | |
出店交渉 | イベント主催者や施設と出店交渉・申請。 | |
営業 | 移動・設営 | 出店場所まで移動し、営業準備を整える。 |
調理・販売 | 注文に応じて調理し、素早く商品を提供する。 | |
接客 | お客様との会話やリピーター獲得に努める。 | |
清掃・片付け | 営業後は衛生管理のための清掃・洗浄を行う。 | |
経営管理 | SNS・集客 | 出店情報やメニューをSNSで発信。 |
売上管理 | 売上や原価を記録し、日々の損益を確認する。 | |
保健所・行政手続き | 営業許可や保険、衛生管理に関する書類対応。 | |
メニュー開発・価格設定 | 売れる商品を研究し、利益が出る価格を設計。 |
キッチンカー経営のメリット
キッチンカー経営は初期費用を抑えて自由度の高い運営ができ、個人事業主にも人気があります。以下に代表的なメリットを紹介します。
初期費用と固定費が低い
キッチンカーは店舗家賃が不要なため、ガソリン代や保険料などの維持費を含めても、固定費の負担が低く済みます。
また、キッチンカーの初期費用は、車両の選択によって大きく変動します。中古の軽トラックなどを利用し、設備を限定すれば200万円台から開業できる場合もありますが、新車をベースに本格的な厨房設備を整える場合は400万〜500万円以上かかることもあります。
事業計画に合わせた資金準備が重要です。
営業場所と時間の自由度が高い
曜日や時間帯に応じて出店場所を変えられるのが強みです。ランチはオフィス街、週末はイベント会場など、人の動きに合わせた営業が可能です。立地に縛られず、売れる場所に移動して営業できるため、柔軟で攻めのスタイルが取れます。
人件費を抑えて効率的に運営できる
1人または2人で運営することが多いため、人件費が抑えられます。ワンオペでの運営も現実的で、固定費の中でも大きな割合を占める人件費を最小限にできます。ただし、体力的な負担があるため効率的な作業設計が求められます。
キッチンカー経営のデメリット
魅力の多いキッチンカー経営ですが、リスクや制約も存在します。主なデメリットを見ていきましょう。
売上が出店場所に大きく左右される
人通りが少ない場所では売上が伸びず、場所選びが売上に直結します。人気エリアやイベントの出店枠は競争が激しく、安定的に確保するには交渉力や営業力が求められます。
メニューや仕込みに制限がある
車内スペースが限られるため、仕込みは外部施設を利用する必要があります。食品衛生法に基づき、食材のカットや下味付けといった主要な仕込みは、営業許可を取得した固定の調理施設(シェアキッチンや他の飲食店の厨房など)で行う必要があります。
基本的に自宅のキッチンは使用できず、車内で行えるのは加熱などの最終調理に限られるのが原則です。
提供できるメニューの種類や数量にも制限があるため、調理効率や材料管理を徹底する必要があります。
天候と法規制に左右されやすい
屋外営業が基本のため、天候が悪い日は売上が落ちやすくなります。さらに、2021年の法改正で車両の設備基準は全国で統一されましたが、営業許可は出店地域ごとに取得する必要があるなど、事前の確認と対応は依然として欠かせません。
キッチンカー経営に向いている人
キッチンカー経営は自由度が高い反面、個人での業務範囲が広く、一定の適性が求められます。成功しやすい人の特徴を紹介します。
自分で考え動ける人
キッチンカーは基本的に一人または少人数で運営します。仕入れから調理、販売、片付け、集客まで自分で対応する場面が多く、指示待ちでは対応できません。問題が起きた時に自ら解決策を考え、すぐに行動できる人が向いています。
柔軟な発想と変化への対応力がある人
出店場所の変更、天候の急変、客層の違いなど、環境の変化に日々直面します。そんな時、臨機応変に判断し、すばやく対応できる柔軟性が求められます。例えば、ランチタイム向けのメニューから、イベント向けの軽食に切り替えるなど、売上に直結する判断が必要です。
お客様との交流が好きな人
キッチンカーではお客様との距離が近く、会話が生まれやすい環境です。笑顔での接客や会話から、リピーターにつながることも多いため、人と接するのが好きな人に向いています。商品を売るだけでなく、自分自身も“看板”のひとつになります。
キッチンカー経営を軌道に乗せるポイント
キッチンカーで安定した利益を出すには、商品力だけでなく、運営の仕組みや数字の管理、集客導線、法令対応までトータルで整えていく必要があります。
短時間で出せて利益が残るか
売れるメニューは「早く出せて、おいしい」と直結します。唐揚げなら、揚げ置きや二度揚げで提供時間を短縮し、衣や味付けにこだわって他店と差をつけましょう。
看板商品は、選びやすく、記憶に残るものが有効です。ドリンクセットや丼にすることで、客単価を上げる工夫も大切です。
無駄を減らす運営とコスト管理
原価は30%以下を目安に設定し、ロスを出さない仕入れと在庫管理が必要です。食材の大量仕入れは単価を下げますが、使い切る計画が不可欠です。1人で回せるワークフローを組み、人件費を最小化します。
開業後の運転資金は、出店料や燃料費などで月10万円前後(食材費除く)を目安に見ておくとよいでしょう。
固定店舗に比べて負担は小さいですが、毎月の支出と利益の見直しは継続的に行いましょう。
SNSと出店戦略でリピーターを増やす
どこで営業しているかをSNSでこまめに発信し、ファンをつくることが集客の基本です。LINE公式アカウントやInstagramでクーポン配布やメニュー紹介を続けると、常連客が定着します。
また、出店場所選びは戦略そのものです。人通りの多い場所だけでなく、自分のメニューに合った層が集まる場所を探し、自分の足で交渉する力も必要です。
法規制を理解し、トラブルを避ける
2021年6月1日に施行された改正食品衛生法により、従来は自治体ごとに異なっていたキッチンカーの設備基準(給排水タンクの容量など)が原則として全国で統一されましたが、自治体によって、実際の運用や解釈は一部異なるケースもあります。
上記改正により、基準を満たした車両であれば、複数の自治体で営業許可を取得しやすくなりました。また、HACCPによる衛生管理や食品衛生責任者の配置も必須。これらを怠ると営業停止になる可能性もあるため、開業前にしっかり確認し、必要な申請はすべて行いましょう。
キッチンカー経営の成功には準備と継続的な見直しが重要
キッチンカーの経営は「始めやすいが、続けるのは簡単ではない」というのが実情です。調理の腕だけでなく、場所選び、メニュー設計、コスト管理、集客、法対応など幅広いスキルが求められます。
ただし、きちんと計画を立て、改善を重ねれば、個人でも十分に軌道に乗せることは可能です。日々の数字を確認し、無理のない運営スタイルを構築していくことが、安定経営への第一歩です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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