• 作成日 : 2025年6月30日

キッチンカーに保険は必要?種類・費用・選び方を徹底解説

キッチンカーは自由度が高く人気のある営業スタイルですが、火災や事故、第三者への賠償など、さまざまなリスクも伴います。そんなときに事業を守るのが「保険」です。本記事では、キッチンカー営業に必要な保険の種類や補償内容、保険会社の選び方、よくある質問まで幅広く解説します。

なぜキッチンカー販売に保険が必要なのか

キッチンカーでの販売は初期費用が抑えられ、自由な営業ができる点が魅力的ですが、その反面、突発的なリスクにさらされやすいこともあります。そのリスクに備えるために、保険の知識を身に付けておくことが非常に重要です。

たとえば、調理中の火災で車両が焼失してしまえば、大きな損失になります。また、販売した食品が原因で食中毒を起こしてしまった場合、お客様からの損害賠償請求に発展する可能性もあります。さらに、イベント会場などで他人の車や備品を破損させた場合には、対物賠償が発生します。

これらのリスクに対して、保険に加入していないとすべて自己負担になり、最悪の場合、営業継続が困難になる可能性すらあります。

加えて、最近ではイベント出店や商業施設の営業契約時に「保険証の提出」や「PL保険(生産物賠償責任保険)」への加入が条件になっているケースも増えています。

キッチンカー販売に必要な保険の種類

キッチンカー販売では、さまざまなリスクに備えるために、複数の保険を組み合わせて加入するのが一般的です。ここでは主な保険の種類と、それぞれがどんなリスクをカバーするのかを解説します。

1. 生産物賠償責任保険(PL保険)

食品による事故に備える保険で、キッチンカーにとっては最優先で加入すべき保険です。提供した商品が原因で食中毒や異物混入などが発生し、顧客に健康被害や財物損害を与えた場合に補償します。治療費・慰謝料・損害賠償・訴訟費用などが対象となり、イベント出店時にも加入証明を求められるケースが多くあります。

年間保険料の目安は1万〜3万円程度で、事業規模によって変動します。

2. 事業用自動車保険

キッチンカーは「事業用貨物車両」に該当するため、通常の自動車保険では補償されないことがあります。対人・対物賠償のほか、車両保険では調理設備を含む損害もカバーされることがあります。事故時の人身傷害、災害、当て逃げ、盗難まで対応可能。

特に8ナンバー登録車の場合、専用プランの加入が必要になることもあるため、保険会社への確認が必須です。年間保険料は10〜20万円前後が目安です。

3. 施設賠償責任保険

営業中に発生する「車両や設備の不備による事故」から第三者を守る保険です。たとえば、看板の落下、油の飛散、扉の開閉による接触事故などが対象となります。

PL保険と異なり、食品そのものではなく、運営設備に起因する事故が補償の範囲です。イベントや商業施設では、PL保険とセットで加入が求められることもあります。年間保険料は5千円〜2万円程度です。

4.動産保険

火を扱う設備があるキッチンカーでは、調理中の火災や電気系統のトラブルによる事故が起こるリスクも想定すべきです。ただし、一般的に火災保険は、自動車を補償の対象外としています。火災の被害から営業継続を守るための基本的な保険としては、車両保険や動産保険が該当します。また、冷蔵庫・フライヤー・シンクなど営業に必要な設備の破損や盗難に備える場合も、動産保険に加入していると安心です。

5. 休業損害保険

火災・交通事故・災害などにより営業が停止した期間中の売上損失をカバーします。たとえば、事故による車両修理やイベント中止などで営業できない日数に応じて、あらかじめ設定した金額が支払われます。キッチンカーは営業日が売上に直結するため、収入の安定確保という面で非常に有効な保険です。

6. 労災保険(雇用ありの場合)

アルバイトやスタッフを雇う場合は、労災保険・雇用保険への加入が必要です。調理中の火傷、熱中症、配達中の転倒など、雇用者に対して補償責任を問われる可能性があるからです。

個人事業主であっても、常時または定期的に働くスタッフがいる場合は、雇用保険の対象となることがあります。特に人を雇う場合は、法律に従って適切な保険を整備しておくことが、トラブル時の信頼にもつながります。

保険でカバーされる補償内容と具体例

保険に加入しておくことで、キッチンカー販売での思いがけない事故やトラブルに対応でき、事業継続へのダメージを最小限に抑えることが可能です。ここでは、実際に想定されるトラブルと、それに対応する保険の関係を具体的に見ていきましょう。

調理中に発生した火災で車両が全焼した

  • 対応する保険:車両保険・動産保険
    フライヤーやコンロの不注意から出火し、キッチンカーが全焼した場合、車両本体や車内設備の損失に対して補償されます。備品類や機材が対象となるのは動産保険、車そのものは車両保険がカバーします。

販売した食品が原因で食中毒が発生した

  • 対応する保険:PL保険(生産物賠償責任保険)
    提供した商品によってお客様が体調不良を起こし、治療費や慰謝料などを請求された場合、PL保険が損害賠償費用を補償します。営業停止による信頼低下を回避する意味でも重要な保険です。

お客様がキッチンカーの設備でケガをした

  • 対応する保険:施設・業務賠償責任保険
    注文時に足元のコードにつまずいた、ドアで指を挟んだ、看板が倒れてケガをした――などの第三者への事故はこの保険で対応します。損害賠償請求だけでなく、示談交渉まで代行されるプランもあります。

イベント会場で備品を破損してしまった

  • 対応する保険:対物賠償(賠償責任保険)
    テントの支柱が折れた、発電機の排気で周辺機器が損傷したなど、他人の物を壊してしまった場合も保険で対応可能です。イベント主催者からの請求に備えるためにも加入が推奨されます。

売上金や機材が盗難に遭った

  • 対応する保険:動産保険(盗難特約付き)
    営業終了後に機材が盗まれたり、現金が車両から盗難されたりした場合などは、動産保険の特約で補償を受けられるケースがあります。ただし、保管状況や施錠の有無が条件になるため、詳細は契約内容の確認が必要です。

こうした具体例を見ても分かる通り、キッチンカー営業はさまざまなリスクと隣り合わせです。次のセクションでは、保険加入にかかる費用や契約時のポイントについて解説します。

キッチンカーに関連する保険料の相場と契約のポイント

キッチンカーの保険は、種類や補償内容によって保険料が大きく異なります。ここでは、目安となる保険料と、契約時に注意すべきポイントを解説します。

保険料の相場

保険料は、補償内容や保険会社によって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。

  • 自動車保険(対人・対物+車両保険):年額6〜15万円程度
  • PL保険(生産物賠償責任):年額1〜3万円程度
  • 施設・業務賠償責任保険:年額5,000〜2万円程度
  • 火災・動産保険:年額1〜3万円程度(機材の金額による)

これらをすべて網羅した「総合パッケージ型保険」もあり、月額3,000〜10,000円程度で必要な補償をまとめて備えるプランも存在します。

保険の契約時のチェックポイント

  1. 補償範囲は営業スタイルに合っているか?
    移動販売ならではのリスク(走行中の事故、営業中の火災など)に対応できる内容になっているかを確認しましょう。
  2. 免責額(自己負担額)は適切か?
    保険金が支払われる際に、最初の数万円は自己負担となることがあります。免責額が高すぎると、小さなトラブルでは保険が役立たない可能性もあります。
  3. 食中毒や盗難などの特約が含まれているか?
    特にPL保険や動産保険では、特約を付けないと補償されない項目もあります。必要なリスクに対応できるオプションが含まれているか確認が必要です。
  4. 1日・イベント単位の加入も可能か?
    短期間の出店やスポットイベント向けに、1日単位で加入できる保険もあります。事業の規模や頻度に合わせて選びましょう。

契約前には、必ず複数社の見積もりを取り、補償内容と保険料を比較することが大切です。

キッチンカーで販売する際に保険に加入するタイミング

キッチンカーの保険は、「何かあってから」では遅く、開業前からの備えが理想です。ここでは、保険に入るべきタイミングと、実際の手続きの流れについて解説します。

保険に入る最適なタイミング

【開業準備と同時に検討を始める】

営業許可や車両購入と並行して、保険も事業計画の一部として早めに検討しましょう。特にPL保険や自動車保険は、営業開始日から有効にしておくのが望ましいです。

【出店契約前に「保険証提出」を求められることも】

イベントや商業施設での出店時には、事前に「PL保険加入済み」「賠償保険加入済み」の証明書を提出するよう求められるケースがあります。出店が決まってから慌てて手続きするのでは間に合わないこともあるため、遅くとも初出店の1〜2週間前には加入済みにしておくのが安全です。

保険の手続きの流れ

  1. 必要な保険の種類を整理する
    営業内容・設備・人員などに合わせて、自動車保険、PL保険、賠償責任保険など、加入すべき保険をリストアップします。
  2. 保険会社・代理店に相談またはオンライン見積もり
    大手損保会社(東京海上日動、損保ジャパン、楽天損保など)や保険代理店、あるいはインターネット経由で見積もり依頼を出します。
  3. 見積もりを比較し、補償内容と保険料を確認
    補償範囲や特約、免責額を確認し、実際の営業スタイルに合っているかを見極めましょう。
  4. 申込書類を提出して契約へ
    会社によってはオンライン完結できる場合もありますが、郵送や代理店経由のケースもあります。支払い方法(年払い・月払い)も選択できます。
  5. 保険証(加入証明書)を保管する
    出店先からの提出依頼に備えて、証明書はデータ・紙でそれぞれ保管しておきましょう。

キッチンカー向け保険商品サービス

キッチンカーに適した保険は、いくつかの損害保険会社から専用または汎用のプランとして提供されています。ここでは代表的な保険会社と、それぞれの特長を比較しながらご紹介します。

1. 日本食品衛生協会「あんしんフード君」

イベント出店が多いキッチンカー事業者に最も選ばれている総合型パッケージです。

  • 年間費用:約8,000~20,000円(売上高により異なる)
  • 補償内容:PL保険、施設賠償責任保険、受託物賠償責任保険
  • 特徴:ノロウイルス等の感染性食中毒にも対応。低価格で3つの補償がセット。
  • 加入条件:日本食品衛生協会への入会が必要

2. 東京海上日動「飲食店向けPL保険」

単体PL保険で選ぶなら信頼性と事故対応実績で安心感のある大手プランです。

  • 年間費用:1万円〜3万円
  • 補償内容:食中毒・異物混入などの賠償責任
  • 特徴:サポート体制が強く、柔軟な補償設定が可能。個別に相談しながら設計できる。
  • 加入条件:特になし(代理店経由が一般的)

3. 三井住友海上「動産総合保険」

キッチンカーに積載した高額機材や備品が多い事業者に適しています。

  • 年間費用:契約内容・保険対象により変動
  • 補償内容:調理器具・冷蔵庫・什器・食材などの破損・盗難・火災
  • 特徴:車両内の設備や積載品を対象にできる。水濡れ・落下にも対応可能。
  • 加入条件:保険代理店経由で契約

4. AIG損保「業務災害総合保険」

アルバイトやパートを雇用する事業者にとって、業務中のケガなどを補償する保険です。

  • 年間費用:事業規模・従業員数により見積もり
  • 補償内容:スタッフの労災、通勤災害、熱中症などの損害賠償金、訴訟対応・弁護士費用など
  • 特徴:業務中のケガ・病気の補償をまとめてカバー。通常の労災では補償されない訴訟対応や弁護士費用などにも対応
  • 加入条件:雇用あり事業者向け

5. 損保ジャパン 一般自動車保険『SGP』

キッチンカー専用の構成に対応しており、「車+設備」の同時補償を希望する場合におすすめです。

  • 年間費用:車両・補償範囲により変動
  • 補償内容:対人・対物賠償、自車損害、積載備品の補償
  • 特徴:車両事故+キッチン設備まで一体的に補償できるプラン。8ナンバー車にも対応。
  • 加入条件:車両登録情報により異なる

その他、比較サイトや保険代理店を活用する

最近は保険の比較サイト(例:価格.com保険、i保険など)でも、キッチンカー事業に合った保険プランを見つけることができます。複数社の条件を比較したい場合は、代理店経由やWeb見積もりを活用すると効率的です。

保険を選ぶ際のポイント

キッチンカーの保険を選ぶ際は、1社に決めつけず、複数社の見積もりを取り、内容・保険料・付帯サービスを比較しましょう。

インターネットの一括見積もりや保険代理店の専門家に相談するのもおすすめです。

  • 出店先や主催者が「必須としている保険」が含まれているか(PL保険など)
  • 自分の車両・機材に合わせた補償金額になっているか
  • 営業停止リスクを避けたい場合は、休業損害保険や営業補償特約を追加
  • スタッフを雇う場合は、労災・業務災害補償が含まれているか
  • トラブル発生時にサポート体制が整っているか(示談代行、24時間対応など)

キッチンカー販売に保険は「必須」の備え

キッチンカーは自由な営業スタイルが魅力ですが、同時に火災、事故、食中毒、盗難、自然災害といった多くのリスクと常に隣り合わせです。こうした事態に備えるために、キッチンカー保険の加入は「任意」ではなく「必須の備え」として考えるべきです。

自動車事故や火災には自動車保険・火災保険、来店中のケガや施設の損壊には賠償責任保険、食品によるトラブルにはPL保険など、営業形態に合わせた適切な保険を組み合わせて加入することで、もしものときの負担を最小限に抑えることができます。

また、イベント出店や施設契約時には保険加入が求められることも多く、未加入では営業自体ができないケースもあります。保険は「安心して営業を継続するためのライセンス」と言っても過言ではありません。

あなたのキッチンカーを長く、安全に続けていくために、リスクに備えた保険の見直し・加入をぜひ検討してください。備えあれば憂いなし。保険という“目に見えない味方”が、あなたのビジネスをしっかり支えてくれます。


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