- 更新日 : 2024年12月3日
社会保険の厚生年金とは
社会保険に含まれる厚生年金保険はその名のとおり「保険」の意味をもちます。社会保険は主に会社員が保険の加入者(被保険者)となり、万が一の場合には被保険者やその家族を対象に年金の給付が行われます。
注意していただきたい点ですが、「社会保険」という言葉には二つの異なった意味があります。ひとつは公的年金・保険全般という意味での「社会保険」で、これにはさまざまな立場の方を対象とした多くの保険が含まれています。
もうひとつは会社員などが加入する「社会保険」、いわゆる「社保」のことで、健康保険と厚生年金保険がその両輪です。この記事で言う「社会保険」は、この後者の意味で用いられています。
厚生年金の位置づけ
日本の年金制度は2重構造で、最初の層にあたるのが国民年金、あるいは基礎年金と呼ばれるものです。すべての国民が加入する国民年金の金額は全国民共通ですが、加入期間の長さにより受給額が異なります。
それに対して、社会保険でカバーされる厚生年金や共済年金は2層目に例えられ、加入期間や報酬により保険料が変わります。
すべての国民の最低保証額となるについて、保険料が同額となる国民年金に比べ、2層目の厚生年金は人によりかなり金額に差があります。
厚生年金の給付
社会保険の代表選手である厚生年金保険では、要件を満たした場合に老齢・障害・死亡について年金給付が行われます。
老齢厚生年金
65歳になると老齢基礎年金を受け取ることになりますが、以前に厚生年金に加入していて、必要要件を満たしていれば、さらに上乗せされる形で老齢厚生年金も受け取れます。
ただし、当分の間は経過措置として、定められた期間国民年金を納めており、厚生年金への加入経験が1年以上ある場合には、生年月日や性別により60歳から65歳になるまでの間「特別支給の老齢厚生年金」が支給されます。
特別支給の老齢厚生年金の額は、「報酬比例部分」と「定額部分」の合計額となりますが、まずは定額部分の支給開始年齢が65歳まで引き上げられ、その後に報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げが行われます。
支給開始年齢や、定額部分と報酬比例部分がそれぞれ支給されるかどうかは、生まれた年や男女の性別の違いにより異なります。
障害厚生年金
障害厚生年金は、疾病や負傷などの傷病で一定の障害状態になったときに生活の安定が損なわれることがないように支払われる年金のことです。
国民年金の保険料納付要件を満たし一定以上の障害に該当した場合、全国民に共通する障害基礎年金の受給が可能になりますが、厚生年金保険の被保険者で、障害等級が1・2級の場合は、障害基礎年金に上乗せする形で障害厚生年金が受給できます。
さらに、国民年金にはない特色として、2級よりも軽い障害の場合に支給される年金(3級)や一時金もあります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、被保険者または被保険者であった者が下記の支給要件のいずれかを満たした場合、一定要件を満たす遺族が受給できる年金のことです。
支給要件は、厚生年金保険への加入期間が比較的短い者の死亡(短期要件)と、比較的長期である者の死亡(長期要件)に分類されます。
1.短期要件
・被保険者が死亡したとき(行方不明時に被保険者であり、失踪の宣告を受けた者を含む)
・厚生年金加入時に傷病で診察を受け、その後5年以内に亡くなり、亡くなった時点で被保険者ではないとき
・障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
2.長期要件
・老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金の受給資格期間を満たす者が死亡したとき
厚生年金の保険料
保険料率
厚生年金保険料の料率は、2004年に原則として毎年1,000分の3.54(第3種被保険者は1,000分の2.48)ずつ引き上げられ、2017年9月以降は1,000分の183.00で固定されることが決定しています。
標準報酬月額
厚生年金保険の被保険者が負担する保険料額は、報酬額に比例します。しかし、実際に支給される報酬は毎月変動があるため、保険料や給付額の計算に手間がかかります。その手間を省くため計算用の枠を設け、これを「標準報酬月額」として算定の基礎としています。
標準報酬月額を決定するタイミングには、下記の4つの決まりがあります。
1.資格取得時決定(厚生年金保険への加入時に決定)
2.定時決定(毎年4~6月の報酬から標準報酬月額を見直す)
3.随時改定(大幅に報酬が増減した際の改定)
4.育児休業等終了時改定(育児休業等終了時の報酬から改定)
まとめ
社会保険の厚生年金保険は国民年金と比べ被保険者の年齢幅が広く、保険料は全国民共通ではなく報酬に比例するため、受け取る年金額も報酬や加入期間に比例した金額となります。年金支給額の計算方法も生まれた年により細かく定められており、法改正以前の厚生年金保険法との整合性をはかり、各々の世代が支払った保険料に応じて公平に支給がなされるように工夫されています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
雇用保険の給付の種類とそれぞれの受給資格
雇用保険の給付には、失業時にもらえる基本手当(失業保険)のほかにも、さまざまな種類があるのをご存じですか? ここでは、雇用保険の4つの給付の説明と、各給付の主な手当、そしてその受給資格について紹介します。 求職者給付 求職者給付とは、定年や…
詳しくみる随時改定に残業代は含む?標準報酬月額との関係や社会保険料に与える影響を解説
残業代が増減した場合、随時改定の対象になるのか疑問を抱く方もいるでしょう。 結論、残業代の増減だけでは随時改定の対象にはなりません。ただし、支給割合や固定残業代に変更があった場合は、対象となるケースがあります。 本記事では、随時改定の概要や…
詳しくみる雇用保険とはどんな保険?
雇用保険とはどのような保険でしょうか。「雇用保険とは……」と聞くと、失業した際にお金が給付される失業等給付のことを思い浮かべる人が多いでしょう。 しかし、雇用保険とは、失業保険だけでなく、さまざまな機能があります。今回は、雇用保険の概要につ…
詳しくみる労災認定とは?基準・保険給付の金額・会社が被るデメリット4つを解説
労災認定とは、労働災害によって発生した怪我や病気に対して、労災保険の認定を受けることです。対象の従業員が申請し、要件を満たしていれば各種の保険給付を受け取れる仕組みになっています。労災保険の保険料は全額事業主負担であるため、どのような条件に…
詳しくみる賞与・ボーナスにも社会保険料がかかる?計算方法も分かりやすく解説!
社会保険料は、給料と同じように、賞与・ボーナスにもかかります。標準報酬月額の代わりに賞与・ボーナスの社会保険料の計算には、標準賞与額が用いられます。 率は給料と同じ値です。賞与・ボーナスからは、社会保険料の他に所得税や雇用保険料も控除されま…
詳しくみる社会保険の同日得喪手続き
「同日得喪」という言葉は、あまり聞きなれないと思いますが、「どうじつとくそう」と読みます。 漢字から連想される通り、社会保険の資格取得と資格喪失を「同日」に行う手続きです。 今回は、この「同日得喪」手続きについて解説します。 「同日得喪」手…
詳しくみる