- 作成日 : 2026年4月15日
借り上げ社宅を全額会社負担にすると課税される?賃貸料相当額・従業員負担割合を解説
借り上げ社宅の全額会社負担は、原則として現物給与として課税されます。従業員が賃貸料相当額の50%以上を負担すれば課税されません。
- 全額会社負担は原則課税
- 賃貸料相当額が判断基準
- 賃貸料相当額の50%以上負担で非課税
借り上げ社宅の従業員負担は家賃の2〜3割程度が多く、この負担割合で賃貸料相当額の50%基準を満たすケースが多いです。
借り上げ社宅は、企業が住宅を借り上げて従業員に貸与する福利厚生制度の一つです。会社が家賃の大部分を負担することで、従業員の住宅費を軽減できるため、多くの企業で導入されています。一方で、社宅の家賃を会社が全額負担すると給与課税が発生する場合があるなど、税務上のルールには注意が必要です。
この記事では、借り上げ社宅の課税ルールや一般的な従業員負担割合、家賃以外の費用の扱いなどを解説します。
目次
借り上げ社宅を全額会社負担にすると課税される?
借り上げ社宅の家賃を会社が全額負担する場合、原則としてその利益は現物給与として課税対象になります。社宅制度は福利厚生として広く利用されていますが、従業員が住居を無償で利用できる状態になると、税務上は「経済的利益を受け取った」と判断されるためです。
従業員負担が賃貸料相当額の50%以上かどうかで課税の有無が決まる
社宅制度では、従業員が住宅を利用することによって経済的利益を受け取っていると考えられます。しかし、従業員が一定額の社宅使用料を支払っている場合には、その利益は給与として扱わないという仕組みが設けられています。その判断基準となるのが「賃貸料相当額の50%以上を従業員が負担しているか」という条件です。
【従業員負担が賃貸料相当額の50%以上】給与課税は発生しない
借り上げ社宅では、従業員が支払う社宅使用料が「賃貸料相当額の50%以上」であれば、会社が負担している家賃部分は給与として課税されません。この条件を満たしている場合、会社負担の家賃は福利厚生として扱われ、従業員の給与所得には含まれない仕組みになっています。
たとえば、賃貸料相当額が4万円の社宅で従業員が2万円以上の社宅使用料を支払っている場合、会社が残りの家賃を負担していても給与課税は発生しません。この場合、会社が支払う家賃は福利厚生費として処理でき、従業員側にも給与課税は生じない形で社宅制度を運用できます。
【従業員負担が賃貸料相当額の50%未満】差額が給与課税される
従業員の社宅使用料が賃貸料相当額の50%未満である場合には、賃貸料相当額との差額が給与として課税されます。 この差額は現物給与として扱われ、従業員の給与所得に加算される仕組みです。
社宅制度では、従業員の負担額が一定水準より低い場合、従業員が支払っている社宅使用料と賃貸料相当額の差額が給与として扱われ、所得税や住民税の課税対象になります。
たとえば、賃貸料相当額が4万円の社宅で従業員が1万円しか負担していない場合、4万円と1万円の差額である3万円が給与として課税されます。
このように、借り上げ社宅では「賃貸料相当額」と「従業員の負担額」の関係によって課税額が決まるため、企業が社宅制度を設計する際には従業員の負担額が賃貸料相当額の50%以上になるよう設定することが一般的です。
参考:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁
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賃貸料相当額とは?計算方法は?
賃貸料相当額とは、会社が従業員や役員に社宅を貸与したときに、その住宅を利用することで得ている経済的利益を税務上の基準で評価した金額です。借り上げ社宅や社有社宅の課税関係を判断する際には、この賃貸料相当額が基準になります。
賃貸料相当額は税務上の計算式で算出される
賃貸料相当額は、住宅の固定資産税評価額や床面積などをもとに計算されます。一般的な住宅の場合、次の3つの要素を合計して月額の賃貸料相当額を算出します。
- 建物の固定資産税の課税標準額× 0.2%
- 12円 ×(建物の総床面積㎡ ÷ 3.3)
- 敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%
これらを合計した金額が、その住宅の賃貸料相当額となります。借り上げ社宅の場合でも、この計算式を用いて賃貸料相当額を算出し、従業員や役員が支払う社宅使用料の基準として利用します。
この金額は税務上の基準として用いられるため、会社が実際に支払っている家賃とは一致しないことが多い点が特徴です。
賃貸料相当額は一般的な家賃相場より低くなることが多い
賃貸料相当額は固定資産税評価額などをもとに算出されるため、一般的な賃貸市場の家賃よりも低くなるケースが多く見られます。市場の家賃は立地や需要などの影響を受けて決まりますが、賃貸料相当額は税務上の算定式によって計算されるためです。
そのため、借り上げ社宅では会社が実際に支払う家賃と賃貸料相当額の間に差が生じることがあります。この仕組みにより、従業員が賃貸料相当額の一定割合を負担していれば、会社が負担している家賃の多くを給与課税の対象にせず福利厚生として扱うことができます。
一般的な借り上げ社宅の従業員負担割合は何割くらい?
借り上げ社宅では、会社が家賃の大部分を負担し、従業員が一部を社宅使用料として支払う形が一般的です。企業によって制度内容は異なりますが、多くの会社では家賃の2割から3割程度を従業員負担とするケースがよく見られます。
家賃の2割〜3割を従業員負担とする企業が多い
借り上げ社宅では、従業員が家賃の2割から3割程度を負担する制度が広く採用されています。これは、企業が住宅支援を福利厚生として提供しながら、従業員にも一定の自己負担を求める制度設計です。
たとえば、家賃10万円の物件を借り上げ社宅として提供する場合、従業員負担は2万円〜3万円程度に設定されることがあります。残りの家賃は会社が負担し、福利厚生費として処理されます。このような制度により、従業員は市場の賃貸住宅よりも低い負担で住宅を利用できるため、企業にとっても採用や人材定着の面でメリットがあります。
賃貸料相当額の50%以上を満たすために設定されることが多い
借り上げ社宅の従業員負担割合が2割〜3割程度になる理由の一つは、税務上の課税ルールに対応するためです。前述のとおり、社宅制度では、従業員が賃貸料相当額の50%以上を負担していれば、会社が負担する家賃部分は給与として課税されません。
賃貸料相当額は税務上の計算式で算出される金額であり、一般的な賃貸市場の家賃より低くなるケースが多くあります。そのため、実際の家賃の2割〜3割程度を従業員が負担していれば、この税務基準を満たすことが多くなります。
現金支給の住宅手当や、従業員名義の契約は課税される?
借り上げ社宅と住宅手当は似ているように見えますが、税務上の扱いは大きく異なります。社宅制度では一定の条件を満たすことで会社負担の家賃が給与課税の対象にならない場合がありますが、住宅手当や従業員名義の賃貸契約の場合は原則として給与として課税されます。
【現金で支給される住宅手当】給与として課税される
住宅手当を現金で支給する場合、その金額は給与所得として課税されます。これは、会社から従業員に直接金銭が支給されるため、通常の給与と同じ扱いになるためです。
住宅手当は家賃の補助として支給されるケースが多いものの、税務上は特別な非課税制度が設けられているわけではありません。そのため、住宅手当として支給された金額は給与に加算され、所得税や住民税、社会保険料の計算対象になります。
たとえば、毎月3万円の住宅手当を支給している場合、その3万円は給与と同様に課税対象となります。この点が、一定の条件を満たせば給与課税を避けられる借り上げ社宅制度との大きな違いです。
【従業員名義の賃貸契約を会社が負担する場合】給与として課税される
従業員名義で契約している賃貸住宅の家賃を会社が負担する場合も、原則として給与課税の対象になります。 この場合、会社は住宅を貸与しているわけではなく、従業員の家賃を補助していると判断されるためです。
借り上げ社宅として税務上認められるためには、住宅の賃貸契約を会社名義で締結し、会社が住宅を借りて従業員に貸与する形である必要があります。一方で、従業員が個人で契約した賃貸住宅の家賃を会社が負担している場合は、住宅手当と同様の扱いとなり、その負担額は給与として課税されます。
役員が社宅に入居する場合の課税ルールは?
役員が社宅に入居する場合、税務上の扱いは従業員の社宅とは異なります。従業員の場合は賃貸料相当額の50%以上を負担していれば給与課税を避けられますが、役員の場合はこの50%ルールは適用されません。役員に対する社宅は会社から役員への利益供与とみなされやすいため、より厳しい基準で課税関係が判断されます。
役員は賃貸料相当額以上を負担しないと給与課税が発生する
役員が社宅に入居する場合、役員が支払う家賃が「賃貸料相当額以上」であれば給与課税は発生しません。逆に、役員の負担額が賃貸料相当額より少ない場合には、その差額が役員給与として課税されます。
役員社宅では、従業員社宅のように賃貸料相当額の50%以上で非課税という基準は認められていません。そのため、役員が社宅を利用する場合には、賃貸料相当額を基準に家賃を設定する必要があります。
たとえば、賃貸料相当額が6万円の社宅で役員が3万円しか負担していない場合、6万円と3万円の差額である3万円が給与として課税されます。役員社宅ではこのように差額が役員報酬とみなされるため、家賃設定には注意が必要です。
豪華社宅と判断される場合は市場家賃が基準になる
役員が入居する社宅が高額な住宅である場合、「豪華社宅」と判断されることがあります。
豪華社宅に該当すると、通常の賃貸料相当額ではなく、実際の市場家賃に近い金額を基準に課税が判断されます。
豪華社宅とみなされる住宅には明確な定義がありますが、一般的には床面積が大きい住宅や高級設備を備えた住宅などが該当する可能性があります。この場合、役員が市場家賃に相当する金額を負担していないと、その差額が給与として課税されることになります。
共益費・駐車場代・光熱費・敷金礼金更新料の扱いは?
借り上げ社宅では、家賃以外にも共益費や駐車場代、水道光熱費、敷金・礼金・更新料などさまざまな費用が発生します。これらの費用はすべて同じ扱いになるわけではなく、費用の性質によって会社負担と従業員負担の考え方が異なります。
社宅関連費用の一般的な負担区分
借り上げ社宅で発生する主な費用と、一般的な負担区分は次の通りです。
| 費用項目 | 一般的な負担者 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 敷金 | 会社 | 退去時に会社へ返還される |
| 礼金 | 会社 | 社宅契約費用として処理されることが多い |
| 更新料 | 会社 | 社宅維持費として処理されることが多い |
| 家賃 | 会社+従業員一部負担 | 社宅制度の条件を満たせば課税なし |
| 共益費・管理費 | 会社負担が多い | 家賃と一体の費用として扱われることが多い |
| 駐車場代 | 従業員負担が多い | 会社負担だと給与課税の可能性 |
| 水道光熱費 | 従業員負担が一般的 | 会社負担だと給与課税の可能性 |
社宅制度では費用の負担範囲を決めておくことが重要
借り上げ社宅では、会社が物件を契約して従業員に貸与する形になるため、敷金・礼金・更新料などの契約費用は会社が負担するケースが多く見られます。敷金は退去時に返還されるため会社が預け入れ、退去時に会社へ返還される形で処理されます。
駐車場代や水道光熱費などの費用まで会社が負担すると、従業員が個人的に得ている利益とみなされ、給与課税の対象になる可能性があります。そのため、多くの企業では社宅規程を作成し、会社負担と従業員負担の範囲をあらかじめ定めて制度を運用しています。
借り上げ社宅制度を正しく理解して税務リスクを避けよう
借り上げ社宅は、企業が住宅を借り上げて従業員に貸与することで、住宅支援を福利厚生として提供できる制度です。一定の条件を満たせば会社が負担する家賃を経費として処理でき、従業員側にも給与課税が発生しない場合があります。
社宅制度では賃貸料相当額を基準に課税関係が判断されるほか、役員社宅の扱いや、共益費・光熱費などの費用負担の考え方も異なります。借り上げ社宅を適切に運用するためには、社宅使用料の設定や契約形態、費用負担の範囲を整理し、税務上のルールを踏まえて制度を設計しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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