- 更新日 : 2025年8月20日
給与計算業務を効率化するには?システム導入による自動化のメリット・デメリットも解説
給与計算は、1円の間違いも許されない正確性が求められます。しかし、勤怠の集計、残業代の計算、社会保険料や税金の控除など、作業は非常に複雑です。手作業やExcelでの管理では、ヒューマンエラーのリスクが常に付きまとい、法改正のたびに計算方法を見直す手間も発生します。
この記事では、煩雑な給与計算業務を効率化し、担当者の負担を軽減するための具体的な方法を解説します。特に、給与計算システムを活用した自動化に焦点を当て、メリット・デメリットから自社に最適なシステムの選び方まで、詳しく掘り下げていきます。
目次
給与計算業務の流れと課題
給与計算システムが、具体的に業務のどの部分を効率化してくれるのかを理解するために、まずは給与計算の基本的な流れと、各工程に潜む課題を把握しておきましょう。
1. 勤怠データの集計
給与計算の最初のステップは、従業員一人ひとりの労働時間や出勤日数、欠勤、遅刻、早退などの勤怠データを集計することです。タイムカードや出勤簿からの転記は、入力ミスや読み間違いが起こりやすい作業の代表例です。勤怠管理システムと連携すれば、打刻データが自動で集計され、この工程を自動化できます。
2. 総支給額の計算
次に、集計した勤怠データをもとに、総支給額を計算します。基本給に加えて、時間外手当、休日出勤手当、深夜労働手当などの割増賃金や、役職手当、通勤手当といった各種手当を加算します。給与計算システムでは、従業員情報や就業規則に沿った設定をしておけば、これらの複雑な計算を自動で正確に行います。
3. 控除額の計算
総支給額から、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料といった社会保険料と、所得税、住民税を差し引きます。これを控除と呼びます。保険料率や税率は法改正で頻繁に変更されるため、手計算では特に間違いやすく、専門知識が求められる部分です。システムを使えば、最新の料率で自動的に控除額が算出されるため、常に正確な計算が保証されます。
4. 差引支給額の確定と明細書作成
総支給額から控除額の合計を差し引いた金額が、最終的な手取り額、つまり差引支給額です。システムはこれらの計算を完了させると同時に、支給項目と控除項目が記載された給与明細書を自動で作成します。Web明細機能を使えば、印刷や封入、配布といった物理的な手間も削減できます。
5. 振込・納付
最後に、確定した差引支給額を各従業員の口座へ振り込み、控除した社会保険料や税金をそれぞれの機関へ納付します。多くの給与計算システムは、全銀フォーマットに対応したFB(ファームバンキング)データを作成する機能を備えています。これにより、インターネットバンキングを通じて一括で振込手続きを完了でき、振込作業も大幅に効率化されます。
給与計算業務を効率化する方法
煩雑な給与計算業務から解放されるためには、現状のやり方を見直す必要があります。ここでは、代表的な3つの方法を紹介し、それぞれの特徴を比較検討します。
Excelテンプレートの活用
多くの企業で最初に取り組むのが、Excelの関数やマクロを活用した効率化です。インターネット上で配布されているテンプレートを使用したり、自社で計算シートを作成したりすることで、一定の自動計算は可能になります。初期費用がかからず手軽に始められる点が魅力ですが、法改正のたびに手動で計算式を修正する必要があり、専門知識が不可欠です。また、データの破損や紛失のリスク、属人化が進みやすいという課題もあります。
給与計算代行(アウトソーシング)
社会保険労務士事務所や専門の代行業者に給与計算業務そのものを外部委託する方法です。専門家が業務を行うため、計算の正確性や法令遵守の面で高い安心感が得られます。社内に専門知識を持つ人材がいない場合や、担当者がコア業務に集中したい場合に有効な選択です。
ただし、従業員数に応じた委託費用が毎月発生し、社内にノウハウが蓄積されないという側面もあります。勤怠データなど、社内から外部へ渡す情報の準備にも手間がかかります。
給与計算システムによる自動化
現在、効率化の方法として主流になりつつあるのが、給与計算システムや給与計算ソフトの導入です。勤怠管理から給与計算、明細書発行、さらにはWeb明細の配信まで、一連の業務を自動化できます。
法改正にもベンダーがアップデートで対応してくれるため、担当者の負担を大幅に軽減します。またクラウド型のサービスであれば、場所を選ばずに作業できる柔軟性も手に入ります。
導入コストはかかりますが、長期的な視点で見れば最も費用対効果の高い選択肢となりうるでしょう。
給与計算システムによる自動化のメリット
給与計算の自動化は、単に作業時間を短縮するだけではありません。企業経営全体に好影響をもたらす様々な効果が期待できます。
業務時間を大幅に短縮できる
システム導入による最大のメリットは、業務の自動化による時間創出です。これまで手作業で行っていた勤怠データの入力、各種手当や社会保険料の算出といった一連の作業をシステムが代行します。
これにより、数日かかっていた業務が数時間で完了することも珍しくありません。生まれた時間を、人事評価制度の企画や従業員の満足度向上施策など、より付加価値の高い業務に充てることが可能になります。
計算ミスを防止できる
給与計算システムは、あらかじめ設定された計算式にのっとり、正確な計算を実行します。手作業で起こりがちだった転記ミスや計算間違いといったヒューマンエラーを根本から排除できます。
給与額の間違いによる従業員からの問い合わせや信頼の低下を防ぎ、再計算や修正といった無駄な手戻り作業もなくなります。
法改正にすばやく対応できる
社会保険料率の改定や所得税法の変更など、給与計算に関連する法改正は頻繁に行われます。これらの情報を常に収集し、正確に計算へ反映させるのは担当者にとって大きな負担です。
多くの給与計算システムでは、法改正があるとベンダー側がシステムを自動でアップデートしてくれます。担当者は常に最新の法令に準拠した状態で給与計算を行えるため、法令違反のリスクを回避できます。
勤怠管理や労務管理と連携できる
最新の給与計算システムの多くは、勤怠管理システムや労務管理システムとシームレスに連携できます。タイムカードやICカードで打刻された勤怠データが自動で給与計算システムに取り込まれるため、手入力の手間が一切かかりません。
また、入退社手続きや身上異動などの情報も連携させることで、各種帳票の作成も効率化でき、バックオフィス業務全体の生産性が向上します。
給与計算システムによる自動化のデメリット
多くのメリットがある一方で、給与計算システムの導入には考慮すべき点も存在します。デメリットを事前に理解し、対策を講じることで、導入後のミスマッチを防ぐことができます。ここでは、導入前に把握しておくべき3つのデメリットを解説します。
導入・運用コストが発生する
給与計算システムを利用するには、初期費用や月額利用料といったコストが発生します。Excelでの管理や手計算と比較すると、直接的な金銭負担が増えることは避けられません。費用は、従業員数や利用する機能、サービスの提供形態(クラウド型かインストール型か)によって大きく異なります。ただし、このコストは業務効率化によって削減される人件費や、ヒューマンエラー防止による損失回避といった側面から、投資として捉える視点も重要です。
自社に合わせた設定の手間がかかる
システムを導入したからといって、すぐに使えるわけではありません。就業規則や賃金規程に合わせた初期設定が必要です。例えば、企業独自の特殊な手当や複雑なシフト体系がある場合、設定作業に時間と手間がかかることがあります。導入をスムーズに進めるためには、ベンダーのサポート担当者と十分に連携し、自社の給与体系を正確に伝えることが不可欠です。導入時の負担を軽減するサポート体制が整っているかどうかも、選定の重要なポイントになります。
業務フローがシステムに依存する
一度システムを導入すると、給与計算の業務フローがそのシステムに大きく依存することになります。将来的に他のシステムへ乗り換える際には、データの移行などに手間がかかる可能性があります。また、イレギュラーな給与体系やごく稀なケースに対応する場合、システムの仕様上、手作業での調整が必要になったり、柔軟な対応が難しかったりする場面も想定されます。システムの標準的な機能で自社の運用がカバーできるか、事前に確認することが大切です。
給与計算を効率化するシステムの選び方
数多く存在する給与計算システムの中から、自社に最適なものを選ぶためには、いくつかの視点から比較検討することが重要です。ここでは、選定時に失敗しないための4つのポイントを解説します。
クラウド型かインストール型か
給与計算ソフトには、インターネット経由で利用するクラウド型と、自社のPCにソフトをインストールして利用するインストール型があります。現在、法改正への自動対応や場所を選ばない利便性から、クラウド型が主流です。初期費用を抑えられ、サーバー管理も不要なため、特に中小企業におすすめです。一方、インストール型はオフラインでも作業でき、カスタマイズ性が高い場合がありますが、法改正時のアップデートは手動で行う必要があります。
企業の規模や従業員数
給与計算システムは、対象とする企業の規模によって機能や価格帯が大きく異なります。数名から数十名規模の中小企業であれば、比較的安価で基本的な機能を備えたクラウド型サービスが適しています。一方、数百名以上の大企業では、複雑な人事制度や複数拠点に対応できる高機能なシステムが求められます。自社の現在の従業員数だけでなく、将来的な事業拡大の計画も見据えて、拡張性のあるシステムを選ぶことが賢明です。
必要な機能
給与計算の自動化以外に、どのような機能が必要かを明確にしましょう。例えば、ペーパーレス化を推進したいのであれば「Web給与明細機能」は必須です。年末調整の申告も電子化できる「年末調整機能」があれば、担当者の負担を大幅に削減できます。マイナンバーの管理機能や、勤怠管理・労務管理システムとの連携機能の有無も重要な確認項目です。自社の課題を解決するために必要な機能をリストアップし、優先順位をつけて比較検討しましょう。
サポート体制
システムの導入時や運用中に不明点やトラブルが発生した際、迅速かつ的確なサポートを受けられるかは非常に重要です。電話やメール、チャットなど、どのようなサポート窓口が用意されているか、対応時間は自社の業務時間に合っているかを確認しましょう。初期設定を代行してくれるサービスや、導入後の運用を支援するコンサルティングの有無も比較ポイントです。無料トライアル期間などを活用し、実際のサポート品質を体験してみるのも一つの方法です。
給与計算システムで業務の効率化を進めましょう
本記事では、ミスが許されない給与計算業務の効率化について、その具体的な方法を解説しました。手作業やExcelでの給与計算には、ヒューマンエラーや法改正への対応といった多くの課題があり、給与計算システムの導入による自動化が最も有効な解決策です。
本記事で紹介した選び方のポイントを参考に、複数のシステムを比較検討することから始めてみてはいかがでしょうか。適切なシステムを選ぶことが、給与計算業務の負担を大幅に軽減する第一歩となるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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