- 更新日 : 2025年12月8日
退職金にかかる税金とは?計算方法などをわかりやすく解説
退職金を受け取ると、税金の支払いが必要です。勤続年数などによって、どの程度の税金がかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では退職金で発生する税金の種類について詳しく解説します。具体的な計算シュミレーションも行うので、ぜひ参考にしてください。
目次
退職金にかかる税金
退職金には所得税・復興特別所得税・住民税が徴収されます。それぞれの税金の概要や考え方について解説します。
所得税
所得税とは所得に対して課税される税金です。所得税の課税方法にはほかの所得とは切り離して所得税額を計算する「分離課税」、所得の種類により合算して所得税額を計算する「総合課税」があります。退職金は退職所得に分類され、分離課税が適用されます。
退職金は一定の控除額があり、その控除額を超える金額に対して所得税が課せられます。控除額は所得税法に基づき定められており、基本的に勤続年数が長くなるほど控除額が大きくなるように設定されているのです。
参照:退職金と税|国税庁
復興特別所得税
復興特別所得税とは東日本大震災が発生した2011年に制定された、被災地の復興支援を目的とした税金です「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」が成立して、復興特別所得税が創設されました。退職金には所得税額に対して2.1%が復興特別所得税として課税されます。
参照:退職金と税|国税庁
住民税
住民税は地方税の一つとして都道府県と市区町村が課す税金です。一般的には市区町村民税と道府県民税をまとめて住民税と呼んでいます。住民税は納税義務者が均等の額を負担する「均等割」、前年の所得金額に応じて税額が決まる「所得割」に分類できます。ただし、退職金に発生する住民税については所得税と同様に分離課税が適用され、所得の生じた年にほかの所得と区別して課税されるので覚えておきましょう。税率は一律10%です。
参照:退職金と税|国税庁
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
‐入社・退職・異動編‐ 社会保険・労働保険の手続きガイド
企業において社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは必ず発生し、手続きを誤れば保険事故が発生した際に従業員が不利益を被る可能性があります。
各保険の基本的な手続き方法を入社・退職・異動のシーン別にギュッとまとめた分かりやすいガイドです。
人事・労務テンプレート集28種類! ‐採用・入社・退職編‐
人事・労務の業務で日常的に使用する、採用・入社・退職に関わる書類のテンプレートを28種類ご用意しました。
Word/Excelの2つのファイル形式でダウンロードできますので、自社で使いやすい形にカスタマイズしてご活用ください。
6つの原因から考える離職防止メソッド
少子高齢化にともなう労働人口の減少が加速する中、従業員の離職は事業継続に影響がでるほど大きな企業課題となっています。
本資料では、従業員の離職につながる6つの原因と、効果的な離職防止策について解説します。
退職勧奨の実務対応と違法リスク防止のガイド
退職勧奨は解雇に比べて手続が面倒ではないという利点がありますが、やり方を間違えると大きなトラブルを引き起こすリスクがあります。
この資料では、退職勧奨をトラブルなく行うために必要な点について解説します。
退職金にかかる税金の計算方法
退職金にかかる税金の計算方法は、受け取る方法によって異なります。退職金は一般的に一時金と年金形式という2つの受け取り方法があるため、それぞれの所得税・復興特別所得税・住民税の計算方法について解説します。
一時金として受け取る場合
退職金を一時金として受け取る場合には、退職所得として税金が発生します。税金は次のように計算します。
所得税
所得税の計算方法は以下の通りです。
退職所得と所得税率の考え方について解説します。まず、退職所得は以下の計算方法で求められます。
退職金には長期の労働に対する報償の意味合いもあるため、税金の算出では退職所得控除や1/2課税など優遇が行われるのです。退職所得控除額については勤続年数によって控除額が異なり、以下の表のように定められています。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
例えば、勤続年数10年なら400万円まで、30年であれば1,500万円までは退職金に税金はかかりません。ただし、在職中に障害を患って退職の原因になった場合には、100万円が控除額に加算されるので注意しましょう。
続いて、所得税率は以下の表のように定められています。
| 退職所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
| 195万円~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
復興特別所得税
復興特別所得税の計算方法は以下の通りです。
住民税
住民税の計算方法は以下の通りです。
一時金として受け取る場合の税金額
最後に、それぞれ算出した所得税・復興特別所得税・住民税を合計すれば、退職金を一時金として受け取る場合の税金額を算出できます。
参照:退職金を受け取ったとき|国税庁
参照:退職金と税|国税庁
年金形式で受け取る場合
退職金を年金形式で受け取る場合には、雑所得として税金が発生します。税金は次のように計算します。
所得税
所得税の計算方法は以下の通りです。
まず、退職金を年金として分割して受け取る場合には、公的年金等控除が適用されます。そのため、前準備として以下の計算式で雑所得の算出が必要です。
計算式内にある公的年金等控除額は国税庁によって定められており、公的年金などの収入金額別の雑所得は以下のように整理できます。
| 年齢 | 公的年金などの収入金額 | 公的年金などにかかる雑所得の金額 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 60万円以下 | 0円 |
| 60万円超130万円未満 | 収入金額の合計額-60万円 | |
| 130万円以上410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75-27万5,000円 | |
| 410万円以上770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85-68万5,000円 | |
| 770万円以上1,000万円未満 | 収入金額の合計額×0.95-145万5,000円 | |
| 1,000万円以上 | 収入金額の合計額-195万5,000円 | |
| 65歳以上 | 110万円以下 | 0円 |
| 110万円超330万円未満 | 収入金額の合計額-110万円 | |
| 330万円以上410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75-27万5,000円 | |
| 410万円以上770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85-68万5,000円 | |
| 770万円以上1,000万円未満 | 収入金額の合計額×0.95-145万5,000円 | |
| 1,000万円以上 | 収入金額の合計額-195万5,000円 |
なお、所得税率についての考え方は、年金を一時金として受け取る場合と同様です。
復興特別所得税
復興特別所得税の計算方法は以下の通りです。
住民税
住民税の計算方法は以下の通りです。
年金形式で受け取る場合の税金額
最後に、それぞれ算出した所得税・復興特別所得税・住民税を合計すれば、退職金を年金形式で受け取る場合の税金額を算出できます。
参照:公的年金等の課税関係|国税庁
参照:退職金と税|国税庁
退職金の税金の計算シュミレーション
退職金に発生する税金を具体的にシミュレーションしてみました。退職金を一時金として受け取るAさんと、年金として受け取るBさんを例に、実際に支払いが発生する税金を算出してみましょう。
一時金として受け取る場合
例題として、勤続年数が38年で2,500万円の退職金を受け取るAさんを例に考えてみましょう。
まずは、退職所得控除額と退職所得を算出して所得税を求めます。
- 退職所得控除額:800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円
- 退職所得金額:(2,500万円-2,060万円)×1/2=220万円
- 所得税:220万円×10%-9万7,500円=12万2,500円
次に、復興特別所得税は以下のように算出できます。
- 12万2,500×2.1%=2,572円
※端数切り捨て
続いて、住民税は以下のように算出できます。
- 220万円×10%=22万円
Aさんの年金に発生する税金の合計は以下の通りです。
- 12万2,500円+2,572円+22万円=34万5,072円
参照:退職金を受け取ったとき|国税庁
参照:退職金と税|国税庁
年金として受け取る場合
例題として、退職金を毎年10年間、合計で3000万円受け取る年齢が60歳のBさんの例を考えてみましょう。それ以外の公的年金などにかかる雑所得は0円で、ほかに所得はないものとします。
まず、雑所得を算出して、所得税を以下のように求められます。
- 雑所得:300万円×0.75-27万5,000円=197万5,000円
- 所得税:197万5,000円×10%-9万7,500円=10万円
次に、復興特別所得税は以下のように算出できます。
- 10万円×2.1%=2,100円
続いて、住民税は以下のように算出できます。
- 197万5,000円×10%=19万7,500円
Bさんの1年間分の年金に発生する税金の合計は以下の通りです。
- 10万円+2,100円+19万7,500円=29万9,600円
10年間の税金の総額は以下の通りです。
- 29万9,600円×10=299万6,000円
参照:公的年金等の課税関係|国税庁
参照:退職金と税|国税庁
退職金にかかる税金の注意点
退職金にかかる税金の注意点がいくつかあります。
まず、退職金をもらった翌年の税金についてですが、所得税と復興特別所得税に関しては会社で源泉徴収された際に納付が済んでいます。そのため、翌年に持ち越されることはありません。
残る住民税についてですが、退職をした年の給与所得が多ければ翌年の税金の支払いも増えてしまいます。退職金を受け取った翌年に、住民税が課税されるわけではないので覚えておきましょう。
次に、退職金は年収に入るのかどうかです。結論を述べると退職金は年収には含まれません。退職金は一時的な収入のため、年収としてはカウントされないのです。税金の計算の際にも退職金は退職所得として取り扱われ、税額の算出では給与とは別枠で計算を行います。
参照:退職金と税|国税庁
退職金にかかる税金について理解を深め、正しい労務管理を行いましょう!
退職金では税金の支払いを忘れてはなりません。退職金には所得税・復興特別所得税・住民税が発生します。税率や計算方法も税金によってそれぞれ異なるため、正しく理解しなくてはなりません。控除額も設定されていますが、金額は勤続年数や退職金によって異なります。税金の計算方法を整理して、適切な労務管理を行いましょう。
よくある質問
退職金にかかる税金にはどんな種類がありますか?
退職金には所得税・復興特別所得税・住民税が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。
退職金にかかる税金の計算はどのようにしますか?
所得税・復興特別所得税・住民税をそれぞれ算出して合算して求めます。所得に応じて設定されている控除額を正しく算出しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
交通費支給の基準は?自家用車・バイクの通勤手当や距離の基準も解説
交通費は、法律で支給が義務付けられた費用ではありません。よって、支給の基準は会社ごとに設定できます。 ただ「支給基準をどのように定めれば良いか分からない」と悩んでいる方もいるでしょう。一般的な支給基準や支給額を把握すれば、より良い給与制度を…
詳しくみる定額減税の給与計算やシミュレーション例をわかりやすく解説
政府の経済政策の一環として、定額減税が導入されることになりました。この制度は、従業員の税負担を軽減し、経済活性化を図るための取り組みです。給与計算の現場では、この定額減税の適用に際し、さまざまな対応が求められることになります。 本稿では、定…
詳しくみる【テンプレート付き】給与辞令とは?作成は義務?
給与辞令とは、等級変動による昇給や降給などの給与改定時に交付される辞令です。給与辞令の交付は義務ではありませんが、給与支給額の変動は社員の評価を意味するため極力交付の機会を設けると良いでしょう。なお、給与辞令に特定のフォーマットはありません…
詳しくみるサラリーマンの節税|サラリーマンが知っておくべき節税ポイント
サラリーマンが支払う所得税は、給与収入から「給与所得控除」や各種「保険料控除」、「医療費控除」「配偶者控除」「特定支出控除」などの金額を差し引き、そこに収入に応じた税率をかけることで算出します。 一部の控除項目は給与を受け取る時点で計算に含…
詳しくみる特定退職金共済制度とは?中退共との違いやメリット・デメリットを徹底解説【退職金規定テンプレ付】
特定退職金共済制度(特退共)は、国の認可を受けた商工会議所などが運営する、信頼性の高い退職金制度です。事業主が毎月掛金を支払うことで、従業員の退職金を計画的に準備できます。 本記事では、特定退職金共済制度の仕組みやメリット・デメリット、混同…
詳しくみる給与計算に必要な情報は?難しい計算を効率化するツールや法改正の影響も初心者向けに解説
給与計算は、従業員の生活を支えるだけでなく、会社の社会的信用や従業員との信頼関係を維持するための重要な業務です。しかし、初めて給与計算を担当する方や、新しい担当者になったばかりの方は、「何から手をつけていいのか」「どんな情報が必要なのか」と…
詳しくみる



