- 更新日 : 2023年11月7日
年末調整で「配偶者控除」を受けられないケースとは?具体的な年収をもとに解説
年末調整のシーズンがやってきました。毎年11月頃になると勤務先から書類の提出を求められますが、後回しにしてまだ手続きをしていない方もいることでしょう。
2017年度の税制改正の影響を受け、「配偶者控除」の仕組みが変わりました。主な変更点を確認しましょう。
夫の年収1,220万円で「配偶者控除」なし
2017年度の税制改正で「配偶者控除及び配偶者特別控除」の見直しがあり、配偶者控除の額が改正されています。
これまで最大控除額の38万円が適用される対象は、配偶者の年収(※ここでは給与のみを前提にする)が103万円以下の場合のみでした。しかし、改正後は配偶者の年収が150万円の場合まで基準額が引き上げられています。
引用:平成30年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除の取扱いについて|国税庁
ただ、これは年末調整を行う“給与所得者本人”の年収が1,120万円以下のケースの話。
2017年までは給与所得者本人の年収による制限はありませんでしたが、2018年からは本人の年収が1,120万円以下の場合、1,120万超~1,170万円以下の場合、1,170万超~1,220万円以下の場合ごとに控除額が分かれ、1,220万円を超えると配偶者(特別)控除の適用を受けられなくなりました。
例えば、これまではパートの妻の収入が103万円を超えないよう気を付け、夫が年末調整を行い、38万円の配偶者控除を受けていたとしても、そもそも夫が年収1,220万円を超えていたら控除対象外になってしまいます。
配偶者控除の恩恵を受けていた家庭も、2018年以降は税負担が増える場合があるので要注意です。
配偶者の年収201万円以下まで控除対象
とはいえ、最大額の38万円とまでは言わなくても、配偶者控除は受けたいものです。
2017年までは、配偶者特別控除の対象となるには、配偶者の年収が141万円未満でなければなりませんでしたが、2018年以降は年収201万円まで対象となります。
次の図の「【参考】配偶者の収入が給与所得だけの場合の配偶者の給与等の収入金額」の欄では、配偶者の「年収ベース」で控除額を確認できます。(※「配偶者の合計所得金額」とは、細かい計算方法はありますが、平たく言うと<収入>から<経費>を差し引いた金額です。収入金額とは異なるので注意しましょう)
出典:配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて|国税庁
「源泉所得税の改正のあらまし(平成29年4月)」を加工して作成
控除を受けられる配偶者の年収額は引き上げられましたが、収入が増えるといわゆる「130万円の壁」と言われる社会保険の話が出てきます。
配偶者が、社会保険への加入が必要なケースがありますので、ここにも注意しながら、いくらまで稼ぐかを家庭で検討する必要があります。ただし、従業員数が101人以上の企業で一定の要件を満たしていれば、130万円未満であっても、社会保険に加入する場合もあるため注意が必要です。
新たな書類! 「配偶者控除等申告書」が増えた
またガラッと変更があったのは、新たな書類として「配偶者控除等申告書」が増えたことです。
2017年までは、配偶者控除の申告は「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」という保険料控除の申告も兼ねた1枚の書類で手続きしていました。
しかし、配偶者控除の改正があり記入項目が増えたことで、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」が別々の2枚の書類に分かれています。
2018年以降の年末調整では、配偶者控除を受けるには「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出する必要があるので注意しましょう。
【参考】
■配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて(国税庁)
http://www.nta.go.jp/users/gensen/haigusya/index.htm
■平成 30 年分の年末調整における留意事項等(国税庁)
http://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2018/pdf/04-07.pdf
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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