• 更新日 : 2026年1月14日

産休中にもらえる補助金は?出産手当金の支給額・対象者・申請方法を解説

出産は喜ばしいライフイベントですが、産休期間中の収入減や経済的な不安を感じる従業員も少なくありません。会社として従業員をサポートするためにも正しい知識を持つことは大切です。

この記事では、産休中に受け取れる公的な経済支援である「出産手当金」の制度内容、対象者、支給額の計算方法、そして申請手続きについて、中小企業の経営者や担当者向けにわかりやすく解説します。

産休中にもらえる補助金・手当の種類は?

産休中にもらえる“補助金”として代表的なのは、 出産育児一時金 と 出産手当金 の2種類です。

制度上は「補助金」という名称ではありませんが、産休中の生活を支える公的支援として広く利用されています。

産休中の2大補助金「出産育児一時金」と「出産手当金」

名称支給元目的もらえる金額対象者
出産育児一時金健康保険出産費用の負担軽減原則50万円(2023年4月〜)被保険者・扶養家族
出産手当金健康保険産休中の収入補填日額=標準報酬月額÷30×2/3被保険者本人

両者の違いと支給目的

  • 出産育児一時金:出産費用に充てる一時金
  • 出産手当金:産休で収入が減る期間の生活補填

このように目的が異なるため、両方を同時に受け取ることができます。

出産手当金の対象者や支給額は?

出産手当金は、産前産後休業期間中に給与の支払いがない被保険者に対し、健康保険から支給される手当金を指します。

この制度の目的は、出産に伴い会社を休んで賃金を受け取れない間の生活を保障することです。そのため、出産育児一時金(出産費用にあてられる一時金)とは性質が異なります。

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出産手当金をもらえる対象者や受給期間は?

出産手当金をもらえる対象者は、会社の健康保険に加入している本人です。正社員や契約社員、パートタイマーなど雇用形態にかかわらず、健康保険の被保険者であれば対象になります。

パートタイマーやアルバイトでも、常時勤務している正社員の概ね4分の3以上の勤務時間があれば、健康保険の加入対象となりますので、対象となる従業員が多くいる場合もあります。

支給対象期間は、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後56日までの範囲で、仕事を休んだ期間です。この期間に会社から給与が支払われていないことが条件となります。

出典:出産に関する給付 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

関連資料|産前産後・育休期間一覧表

出産手当金の支給額の計算方法

出産手当金の支給額は、以下の計算式により算出されます。

(支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3 × 支給日数

この「標準報酬月額」とは、社会保険料の計算に使われる、月々の給与を区切りの良い幅で区分した額のことです。支給開始日以前の健康保険加入期間が12ヶ月に満たない場合は、計算方法が変わる場合があります。

例えば、標準報酬月額の平均が30万円の従業員の場合、日額は(30万円 ÷ 30日)× 2/3 = 6,666円が目安となります。出産手当金は非課税なので、手取り額を計算するうえで税金の心配は不要です。

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出産手当金の申請方法

出産手当金を受け取るためには、従業員本人・医療機関・事業主の3者が申請書へ記載し、健康保険へ提出する必要があります。

とくに事業主が記入する欄は、支給可否に直結するため慎重な対応が求められます。

申請の流れと必要書類

  1. 従業員本人が記入
    出産日、休業期間、振込口座などを記入。
  2. 医療機関の記入
    医師・助産師が出産日等を証明する。
  3. 事業主の記入
    出勤状況や産休中の給与の有無を記入。
    ※ここが誤っていると“産休 補助金”としての出産手当金が不支給になる可能性があります。

申請書は協会けんぽまたは健康保険組合のWebサイトから取得できます。

関連資料|出産手当金 申請マニュアル テンプレート
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事業主が対応すべき手続きと注意点

  • 産休中の給与を支給した場合は日額比較が必須
    出産手当金の日額より会社からの給与が多ければ不支給となります。
  • 申請期限は産休開始日の翌日から2年以内
    期限切れとなるケースが多いため、従業員に明確な案内が必要です。
  • 書類の不備は審査遅延の原因に
    支給が遅れれば従業員の生活に直結するため、企業として迅速な対応が求められます。

出産手当金の入金までの期間は?

審査期間は健康保険組合などによって異なりますが、申請書が提出されてから通常1〜2ヶ月程度で、従業員が指定した銀行口座へ入金されるでしょう。

申請書の提出は、産休期間中の分をまとめて休業終了後に会社を通じて健康保険に提出するのが一般的です。ただし、従業員本人から直接提出することもできます。出産手当金 申請は、産休開始日の翌日から2年以内に行う必要があります。厳密には出産のために休業していた日ごとにその翌日から2年以内となりますが、通常産前・産後期間をまとめて申請することとなるため、産休開始日の翌日から2年と覚えておけばより安心です

出産手当金が早く欲しいというニーズをふまえ、速やかに会社側の記入を済ませることが、入金を早めるうえで重要になります。

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出産手当金をもらえないケースや注意点

以下のいずれかに該当する場合は、残念ながら出産手当金はもらえません。

  • 健康保険の被保険者ではない場合
    国民健康保険の加入者は対象外です。
  • 産休期間中に給与が支払われている場合
    会社から支払われた給与が出産手当金の日額よりも多い場合、出産手当金は支給されません。給与が出産手当金の日額より少ない場合は、差額のみが支給されます。
  • 任意継続被保険者である場合
    退職後に任意継続被保険者となった場合は、原則として出産手当金は支給されません。ただし、退職まで継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日の時点で出産手当金を受給している場合、健康保険の資格喪失後も継続給付として出産手当金を受給できます。

従業員から出産手当金がもらえないケースがあるかを問われた際には、これらの条件をふまえて説明できるようにしましょう。

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出産手当金・傷病手当金・育児休業給付金との関係

公的な経済支援には、出産手当金のほかにも傷病手当金や育児休業給付金があります。これらの制度が関わってきた際、どのように扱われるのかを理解しておく必要があります。

原則として、健康保険から支給される手当金は、同じ期間について二重に受け取ることはできません。どちらが優先されるかというルールをふまえて対応しましょう。

育児休業給付金とは?

育児休業給付金は、出産手当金の支給が終わった産後57日目以降、子どもが1歳になるまで(特別な事情がある場合は最長2歳まで)の育児休業期間中に支給される給付金です。

出産手当金が健康保険から出るのに対し、育児休業給付金は雇用保険から出ます。それぞれ対象とする期間が異なるため、同時期には支給されず、続けて受け取れる経済支援となります。

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出産手当金と傷病手当金を同時に受けられるケースは?

出産手当金と傷病手当金は、両方の支給要件を満たしている場合には、出産手当金が優先して支給され、傷病手当金は支給されません。

ただし、出産手当金の日額が傷病手当金の日額よりも低い場合は、その差額が傷病手当金として支給されることになります。たとえば、妊娠悪阻などの症状で産休に入る前から傷病手当金を受給していたケースなどがこれにあたります。

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【事業主視点】産休・育休のメリットは?

従業員が安心して産休・育休を取得できる環境を整えることは、企業のイメージ向上や離職率の低下にもつながります。またこれらの制度は、企業の金銭的な負担を減らすだけでなく、将来の給付額など従業員側のメリットにもつながります。

産休・育休中の社会保険料免除

産前産後休業期間中および育児休業等期間中(育児休業給付金の対象期間)は、従業員と事業主のどちらの社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)も免除されます。

これは、給与の支払いがない期間の従業員の負担を減らすための制度です。事業主も保険料負担がなくなるため、経済的なメリットがあります。この免除期間は、将来の年金額の計算には影響せず、免除期間も保険料を納めた期間として扱われるため、従業員にとっても安心です。

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産休・育休終了後の標準報酬月額の改定

育児休業を終えて職場に復帰した後、多くの場合、残業が減るなどにより復帰前よりも給与が下がる傾向があります。この場合、そのままでは高い社会保険料が徴収され続けることになります。

そこで、「育児休業等終了時改定」という仕組みが設けられています。これは、復帰後3ヶ月間の給与平均をふまえ、標準報酬月額を改定できる制度です。

標準報酬月額が下がると、毎月の社会保険料負担が軽減されます。ただし、将来受け取る年金額や傷病手当金、次に産休を取得した際の出産手当金の金額は、下がった標準報酬月額をベースに計算されるようになるため、従業員に制度の内容とメリット・デメリットをわかりやすく説明することが大切です。

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産休・育休時の経済的な支援制度を正しく理解しよう

この記事では、産休中に受け取れる主な公的支援である出産手当金について、対象者、支給額の計算方法、申請手続き、そして他の制度との関係性を解説しました。

産休・育休制度の正しい理解は、従業員の経済的な不安を解消し、企業に対する信頼感を高めることにつながります。これらの知識をふまえ、従業員が安心して出産・育児に専念できる環境を整備することが、結果として企業全体の生産性向上や良好な人材確保につながるでしょう。


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