- 更新日 : 2025年12月5日
バックグラウンドチェックとは?目的や調査項目、実施する流れを解説
企業が採用時に、候補者の信頼性や適性を確認する手段として、バックグラウンドチェックがあります。では、バックグラウンドチェックは、どのように実施されるのでしょうか?
本記事では、バックグラウンドチェックの概要について詳しく解説します。実施の目的や調査対象となる項目(学歴や職歴)、具体的な実施手順などをまとめました。
採用候補者の見極めにバックグラウンドチェックの導入を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
バックグラウンドチェックとは?
バックグラウンドチェックとは、採用選考時に候補者の経歴や情報に虚偽や問題がないかを確認する調査のことです。「採用調査」や「雇用調査」とも呼ばれます。
専門の調査会社に依頼して実施するのが一般的で、主に履歴書や職務経歴書の内容確認、前職での勤務状況を調査します。
調査方法はデータベースの照合や、前職関係者への電話確認などです。電話確認を実施する場合は、応募者本人の同意が必要です。
調査会社が結果を企業に報告し、採用の判断材料とします。
会社に不利益をもたらす人材の採用を防ぎ、組織に利益をもたらす信頼できる人材を見極めるための手法です。
リファレンスチェックとの違い
リファレンスチェックは、応募者の前職での上司や同僚、部下から協力を得て、性格や実績、仕事の取り組み方を確認する手法です。
書類や面接だけではわかりにくい個人の特徴を把握できるため、採用選考で活用されています。
バックグラウンドチェックとの大きな違いは、情報の焦点です。
リファレンスチェックはポジティブな面を重視する一方、バックグラウンドチェックは経歴の正確さや不祥事の有無など、ネガティブな情報を中心に調べます。
リファレンスチェックについてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
日本と海外のバックグラウンドチェックを比較
日本では個人情報保護法の影響で、バックグラウンドチェックで調査できる範囲が制限される傾向があります。
しかし、グローバル採用や副業の普及、外資系企業の増加に伴い、調査の重要性や対象範囲は広がりつつあるのが特徴です。
一方、欧米ではバックグラウンドチェックが採用の一般的な手順に組み込まれています。主に、身分証や犯罪歴、信用情報など、詳細な確認が日常的に行われています。
バックグラウンドチェックを実施する目的
ここでは、バックグラウンドチェックの目的や実施の理由について解説します。
1. 正しい情報をもとに採用を実施するため
履歴書や職務経歴書には、応募者による経歴の誤りや詐称が含まれる可能性があります。
バックグラウンドチェックを通じて、以下の項目を調査することで採用後のトラブルやミスマッチを防げます。
- 学歴
- 退職時期
- 専攻
- 過去の行動
- コンプライアンス意識
書類や面接だけでは見えない、正確な情報を得ることが重要です。これにより、公平かつ適切な判断にもとづいた採用が可能となります。
2. 企業のイメージを守るため
社員による不正やトラブルの発覚は、企業のブランド価値や取引先・投資家などステークホルダーの信頼に大きく影響します。
また、事後対応にかかるコストや損害賠償のリスクも考慮する必要があるでしょう。
採用の段階で適切な人材を見極めることが、企業の評判を守るうえで重要です。
企業のブランド力を高めるために、まずは従業員に対して自社のビジョンを伝えることが重要です。インナーブランディングについて理解を深めたい方は、下記の記事もご覧ください。
3. 法令遵守・コンプライアンスを徹底するため
企業は労働者派遣法や会社法、暴力団排除条例などの法令を遵守することが求められます。
バックグラウンドチェックは、採用時に意図せず法令違反者や反社会的勢力を雇用するリスクを避ける効果が期待できます。結果として、トラブル防止に役立つでしょう。
近年、法的トラブルの件数が増えていることから、企業側の事前の対策や責任意識の重要性がますます高まっています。
コンプライアンスを強化するメリットや具体的な実施方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
バックグラウンドチェックの調査項目
ここからは、バックグラウンドチェックで確認する主な調査項目について解説します。採用時に、企業がどのような情報をチェックすべきかを把握しましょう。
1. 学歴・資格
バックグラウンドチェックでは、応募書類に記載された学歴や取得資格の正確性を確認します。
たとえば、入学・卒業年月日や学位の虚偽がないかを調べるために、卒業証明書や資格証明書の提出を求めるなどです。
また、現職や前職の関係者への電話照会なども行い、情報の信頼性を確かめます。
提出内容に誤りがあった場合は、学歴詐称として扱います。
2. 職歴
バックグラウンドチェックでは、応募書類に記載された以下のような内容の正確性を確認します。
- 過去の勤務先情報
- 入退社日や雇用形態
- 職務内容
主な方法は、源泉徴収票の提出や前職・現職の関係者への電話照会です。
入退社日を偽って失業期間を短縮したり、雇用形態に虚偽があったりする場合は、経歴詐称に該当します。
とくに管理職や重要なポジションの人材を募集する際には、職歴の正確さが採用判断に直結します。
3. 勤務態度や人物像
過去の勤務先の上司や同僚に電話やWebアンケートで連絡し、勤務態度や勤怠状況を確認することも大切です。
現職および前職で問題がなかったかを調査しましょう。
候補者が確認先を指定する場合は、リファレンスチェックとして扱います。
4. 反社会的勢力との関係
候補者が反社会的勢力と関わりがないかも、確認対象のひとつです。主に、反社チェックサービスや警察庁・金融機関のデータベースを活用します。
これにより、暴力団やその他の反社会的勢力との関係がないことを事前に確認できます。
5. 民事訴訟歴
公的記録や裁判情報を用いて、民事訴訟歴や犯罪歴、逮捕歴の有無を確認します。
調査は、裁判所の公開判決記録や調査会社独自のデータベースを活用して実施します。
主に、候補者の過去の法的リスクを把握することが目的です。
6. 破産歴
候補者が過去に自己破産していないかを確認するため、官報に掲載された情報を調査します。
これにより、財務上のリスクや信用問題がないかを事前に把握することが可能です。
7. インターネット・SNS調査
候補者がインターネット上で問題行動を起こしていないか、SNSで不適切な発言や行為がないかなども調査します。
ブログやSNS投稿、ネット上の発言を確認することで、炎上リスクや不適切行動の有無を把握しましょう。主な方法として、応募者のSNSアカウントや名前をWeb上で検索して情報を収集するものが挙げられます。
主な目的は、企業のブランドイメージを守ることです。
8. その他(身分証、登記情報など)
身分証や住民票、登記情報などを法的に認められた範囲で確認し、情報の正確性を確かめます。
これにより、虚偽申請や不正な申告を防ぎ、信頼性の高い情報にもとづいた採用判断が可能となります。
企業がバックグラウンドチェックを実施するメリット
バックグラウンドチェックを実施する主なメリットは、企業のコンプライアンスを強化できる点です。
問題行動の可能性がある人材を採用せず、社内ハラスメントやSNSの不適切利用などを防ぐことで、企業イメージの毀損リスクが軽減されます。
バックグラウンドチェックをもとに候補者を正確に見極められるため、採用力も向上します。
また、優秀な人材選定には、バックグラウンドチェックと並行して適性検査を実施するのも効果的です。
適性検査について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
調査会社へ依頼する場合のバックグラウンドチェックの手順
ここからは、バックグラウンドチェックの具体的な実施方法について解説します。
企業が採用時に、どのような手順で情報を確認するのかをまとめました。
1. 候補者から実施の同意を得る
バックグラウンドチェックを採用選考で実施する場合、事前に応募者の同意を得る必要があります。
確認する項目は、以下のとおりです。
- 学歴
- 職歴
- 資格
- 反社会的勢力との関係
- 訴訟や破産歴
- SNSやメディア上の情報
採用ポジションのリスクに応じて、調査する範囲を決定しましょう。
バックグラウンドチェックは応募者の承諾なく実施すると、個人情報保護法などに抵触する可能性があります。そのため、慎重に対応してください。
2. 調査会社に依頼する
応募者の同意を得た後、企業は専門の調査会社にバックグラウンドチェックを依頼します。
あらかじめチェック項目や調査方法、料金などを相談したうえで、実際の調査を進めてもらいましょう。
自社で調査を行う場合は、必要に応じて専門機関へ直接問い合わせることで、学歴や職歴、資格などの情報を正確に確認することが可能です。
3. バックグラウンドチェックを実施する
調査会社は、事前にすり合わせた内容にもとづき、バックグラウンドチェックを実施します。
現職および前職の関係者への電話照会や、応募者本人からの書類提出を通じて、情報を収集するのが一般的です。
用いる手法や取得できる情報、調査費用などは依頼する会社ごとに異なります。
企業側も応募者に対して、卒業証明書や在籍証明書、退職証明書の提出を求めましょう。書類の記載内容と照合することで、応募情報の正確性を確認します。
4. 調査レポートを確認する
調査会社はバックグラウンドチェックの結果をレポートとしてまとめ、企業に提出します。
企業は提出されたレポートをもとに、応募者の採用可否を判断してください。
調査内容は応募者本人には開示せず、人事や採用担当者のみで共有し、選考の判断材料として活用されます。
これにより、公正かつ効率的な採用決定が可能となります。
スタートアップならではの採用のポイントについて知りたい方は、下記の記事もご確認ください。
候補者からバックグラウンドチェックを拒否された場合の対処法
バックグラウンドチェックは、基本的に候補者の同意が必要です。そのため、拒否された場合は実施できません。
候補者がバックグラウンドチェックを拒否する背景には、経歴の虚偽や面接に不利な情報が隠蔽されている可能性があります。
あくまでも、バックグラウンドチェックは「採用すべきでない人材を事前に見極める」ための手段です。
候補者から拒否の合理的な理由が得られない場合は、採用しない判断をするのが安全です。
バックグラウンドチェックを実施する際の注意点
最後に、バックグラウンドチェックを行う際の注意点について解説します。
企業が、法令遵守や候補者対応を適切に行うためのポイントをまとめました。
1. 法律に抵触しないようにする
バックグラウンドチェックでは、多くの個人情報を扱うため、応募者の同意なしに秘密裏で調査すると、以下の個人情報保護法に抵触するリスクがあります。
この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。
また、職業安定法にもとづき、社会的身分や出身地、人種、宗教、信条や病歴などで採用可否を決めることが禁止されています。
下記に抵触しないように、情報を適切に扱うことが大切です。
第三条 何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。
バックグラウンドチェックで取得した情報を、不当な理由で不採用判断に使わないようにしましょう。
個人情報保護法や職業安定法について、詳細を知りたい方は下記の記事もご覧ください。
2. 原則として内定取り消しができない
内定通知後にバックグラウンドチェックを実施し、その結果を理由に内定を取り消す場合、客観的かつ合理的な理由がなければ、不当解雇とみなされる可能性があります。
企業に法的責任が生じるリスクがあるため、注意が必要です。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
バックグラウンドチェックは、採用前に実施するのが望ましいとされています。
企業は、求職者とのトラブルを回避するために、内定を出す前にバックグラウンドチェックの結果を確認するようにしましょう。
3. 実施する理由を候補者に伝える
バックグラウンドチェックを実施する際は、候補者の同意が必須です。そのため、企業は調査の必要性を、候補者に対して丁寧に説明する必要があります。
一方的に伝えるのではなく、候補者の事情にも配慮する姿勢が重要です。
誠実に対応することで、候補者が調査を拒否した場合でも、正当な理由を聞き出せる可能性が高まります。結果として、スムーズな採用判断につながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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