• 作成日 : 2026年1月19日

ストックオプションの本源的価値とは?計算方法や会計処理、未上場企業の特例をわかりやすく解説

ストックオプション(新株予約権)における「本源的価値」とは、権利行使時点での株価と権利行使価格の差額、つまり「今すぐ権利を行使したらいくら儲かるか」を示す数値です。企業の会計処理や報酬設計において、「時間的価値」と共に公正な評価単価を構成する重要な要素です。

本記事では、本源的価値の定義から計算方法、会計上の取り扱い、そして未上場企業における特例措置まで徹底解説します。

ストックオプションの本源的価値とは?

ストックオプションの本源的価値とは、そのオプションの保有者が「現時点で権利を行使した」と仮定した場合に、直接得ることができる利益の金額を指します。 シンプルに言えば、「現在の株価」から、あらかじめ決められた「権利行使価格」を引いた差額がこれに当たります。

この価値は、ストックオプションの公正な評価単価を構成する基礎的な要素であり、会計処理や税務判断において極めて重要な意味を持ちます。

ストックオプションの本源的価値の計算方法は?

本源的価値は、「対象株式の時価(株価)」から「権利行使価格」を引くことで算出されます。

本源的価値 = 株価 – 権利行使価格

計算結果がマイナスになる場合(権利行使価格の方が高い場合)は、価値なしとして「ゼロ」として扱います。

株価の状態による3つの分類

株価の状態によって価値の有無が変わるため、以下の3つの状態(イン・ザ・マネー、アット・ザ・マネー、アウト・オブ・ザ・マネー)を理解しておくことが重要です。

状態の名称定義本源的価値具体例
イン・ザ・マネー株価 > 権利行使価格プラス株価1,000円、権利行使価格800円
→ 本源的価値 200円
アット・ザ・マネー株価 = 権利行使価格ゼロ株価1,000円、権利行使価格1,000円
→ 本源的価値 0円
アウト・オブ・ザ・マネー株価 < 権利行使価格ゼロ株価800円、権利行使価格1,000円
→ 本源的価値 0円

本源的価値と時間的価値の違いは?

ストック・オプションの価値全体(公正な評価単価)は、ここまで解説した「本源的価値」に「時間的価値」を加えることで算定されます。

公正な評価単価 = 本源的価値 + 時間的価値

時間的価値とは?

時間的価値とは、「将来、株価が変動することによって利益が得られるかもしれない」という期待値を指します。 現時点で本源的価値がゼロ(アウト・オブ・ザ・マネー等)であっても、権利行使期間(満期)までに株価が上昇する可能性が残されている限り、オプションには価値(時間的価値)があるとみなされます。

時間的価値が減少する理由は?

時間的価値は、満期に近づくにつれて減少し、満期日にはゼロになります。 これは、時間が経過するにつれて「株価が大きく変動して利益が出るチャンス」が減っていくためです。したがって、満期日直前のストックオプションの価値は、ほぼ本源的価値と等しくなります。

一般的にブラック・ショールズ・モデルや二項モデルなどの算定モデルは、この時間的価値を含めた公正価値を算出するために用いられます。

公開企業と未公開企業の会計処理の違いは?

日本の会計基準(ストック・オプション会計基準)では、企業が公開企業(上場企業)か未公開企業(未上場企業)かによって、公正な評価単価の算定方法や会計処理のアプローチが異なります。

公開企業(上場企業)の場合

公開企業の場合、現在利用可能な算定技法を用いれば、市場での株価データ等から将来の変動リスクを予測することが可能です。そのため、以下のルールが適用されます。

  • 算定方法:本源的価値に時間的価値を加えた「公正な評価単価」を算定しなければなりません。
  • 評価モデル:ブラック・ショールズ・モデルや二項モデルなどの高度な数理モデルを使用します。
  • 時間的価値の扱い:将来のボラティリティ(株価変動性)などを考慮した期待値が含まれます。

参考:ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針||企業会計基準委員会(ASBJ)

未公開企業(未上場企業)の場合

未上場企業の場合、市場価格が存在せず、過去の株価データも乏しいため、将来の株価変動性(ボラティリティ)を客観的かつ正確に見積もることが極めて困難です。そのため、特例として以下の処理が認められています。

  • 特例措置:公正な評価単価の代わりに、本源的価値のみを用いて会計処理を行うことが許容されています。
  • 理由:時間的価値の計算に必要なボラティリティの合理的な見積もりが困難であるためです。
  • 評価単位の考え方:本源的価値を「公正な評価単位(単価)」の代替として使用します。

未上場企業における費用計上ゼロのメリットは?

未公開企業が本源的価値法を採用することは、実務上、会計上の費用負担を大幅に減らすメリットにつながることが一般的です。

費用計上が発生しないロジック

ストック・オプションを付与する際、通常は「権利行使価格」を「付与日の株価(評価額)」と同等か、それ以上に設定します。

  1. 設定:権利行使価格 ≧ 付与日の株価
  2. 計算:付与日の株価 - 権利行使価格 ≦ 0
  3. 結果:本源的価値はゼロとなる。

未公開企業の特例では「本源的価値=費用計上すべき単価」となるため、付与時点での本源的価値がゼロであれば、会計上の費用(株式報酬費用)もゼロとなります。これにより、上場準備中の企業などは、損益計算書(P/L)の利益を圧迫することなくインセンティブプランを導入できるというメリットがあります。

参考:企業会計基準第8号ストック・オプション等に関する会計基準|企業会計基準委員会(ASBJ)ストックオプション税制|経済産業省

ストックオプションの本源的価値を確認する手順は?

自社または保有するストックオプションの本源的価値を知るためには、現在の株価と契約内容(権利行使価格)を確認し、単純な引き算を行います。

1. 権利行使価格の確認

ストックオプション割当契約書を確認し、1株あたりの「権利行使価格」を特定します。これは、将来株を買うことができる固定された価格です。

2. 現在株価の確認

上場企業であれば市場の「現在株価」を確認し、未公開企業であれば直近の資金調達単価や類似会社比準方式などで算定された「評価額」を参照します。

3. 差額の計算

「現在株価 - 権利行使価格」を計算します。結果がプラスであれば、それが1株あたりの本源的価値です。マイナスの場合は、現時点で行使しても損失が出るため、本源的価値はゼロと判断します。

ストックオプションの本源的価値についてよくある質問

最後に、ストックオプションの本源的価値についてよくある質問をまとめました。

本源的価値が高いほど良いストックオプションですか?

従業員にとっては利益が大きい状態ですが、権利行使価格の設定次第です。

本源的価値がプラス(イン・ザ・マネー)の状態は、すぐに行使して利益が出る状態を意味します。しかし、付与時点から本源的価値が高い(=権利行使価格が株価より低い)ストックオプションは、税制適格要件を満たさない場合が多く、税務上のメリットを受けられない可能性があります。

上場後に本源的価値はどう変わりますか?

株価の変動に合わせてリアルタイムに変動します。

上場後は市場株価が日々変動するため、本源的価値も常に変動します。株価が上昇すれば本源的価値(含み益)は拡大し、株価が権利行使価格を下回れば本源的価値はゼロになります。

本源的価値の理解が資本政策のポイント

ストックオプションの本源的価値は「株価と権利行使価格の差額」であり、現時点での確実な利益を表します。

特に未上場企業においては、ボラティリティ算定の難しさから、「本源的価値のみでの評価」という特例が認められています。この仕組みを正しく理解し、権利行使価格を適切に設定することで、会計上の費用計上を抑えつつ従業員へのメリットある報酬制度を設計することが可能です。

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