- 作成日 : 2026年1月14日
会社の目的の決め方は?定款の書き方や事例の検索方法、注意点などをわかりやすく解説
会社設立の手続きにおいて、最も頭を悩ませるのが定款に記載する「会社の目的(事業目的)」です。目的は登記事項であり、適法性や明確性が求められますが、ゼロから考えるのは容易ではありません。
本記事では、会社設立時の目的の基本的なルールに加え、同業他社の事例を検索できるデータベースの活用法や、業種別の事例集を使った効率的な決め方について解説します。
目次
そもそも会社の目的とは?
会社の目的とは、定款に記載しなければならない事業内容のことです。会社設立時には必ず定款を作成し、その中に事業目的を明記して法務局で登記する必要があります。
これは単なる形式的な手続きではなく、取引先や金融機関に対して「何をしている会社なのか」を示す、会社の信頼性を担保する重要な情報です。法務局で登記が受理されるためには、以下の3つの要件を必ず満たす必要があります。
1. 明確性
事業目的は、誰が読んでも具体的に理解できる表現でなければなりません。定款に記載された目的は、法務局の登記簿(登記事項証明書)に反映され、誰でも閲覧可能な公開情報となります。
取引先や金融機関は、登記簿を見てその会社の実態を確認します。そのため、業界用語や専門用語を多用しすぎず、一般的かつ客観的に「どのような事業を行っているか」が伝わる言葉を選ぶ必要があります。曖昧な表現では登記が通らない可能性があるため注意しましょう。
2. 適法性
当然のことですが、法律に違反する事業や公序良俗に反する内容は、会社の目的として記載できません。例えば、覚醒剤の売買、賭博、詐欺的な商法などを目的とすることは不可能です。
また、弁護士法や医師法など、特定の資格がないと行えない業務(非弁行為など)を、資格を持たない法人の目的として記載することも適法性を欠くと判断される場合があります。適法性は会社存続の前提条件となるため、確実な確認が求められます。
3. 営利性
株式会社や合同会社は営利法人であるため、利益を追求する事業であることが要件となります。ボランティア活動や寄付活動のみを目的とすることは認められません。
もちろん、企業の社会的責任(CSR)としてボランティアを行うことは可能ですが、定款の目的として掲げるメインの事業は、あくまで収益を生み出すビジネスである必要があります。NPO法人などとは異なり、営利性が必須であることを理解しておきましょう。
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会社の目的を決める際のデータベースや検索の活用法は?
適切な言い回しに迷った際は、ゼロから言葉を作るのではなく、既存企業の目的を閲覧できるデータベースや検索サービスを活用するのが最も確実です。
すでに登記が通っている他社の事例を参考にすることで、「どのような表現なら審査に通るのか」という基準がわかり、審査のリスクを減らすことができます。ここでは具体的なリサーチ方法を紹介します。ただし、他社の事業目的をそのまま転記するのではなく、自社の実態や将来計画に合わせて調整することが重要です。
同業他社やモデル企業の登記情報を確認する
競合他社や、自社が目指しているモデル企業が定款にどのような目的を記載しているかを確認しましょう。これが最も実践的で失敗の少ない方法です。
具体的な手段としては、企業信用調査会社などが提供する企業情報データベースや、一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」を利用し、他社の登記簿を取得する方法があります。
また、上場企業であれば、有価証券報告書や公式サイトの「会社概要」ページに事業目的が詳細に記載されていることが多いため、Web検索だけでも十分な情報が得られます。
参考:登記情報提供サービス
会社設立専門サイトの事業目的検索機能を活用する
会社設立支援サービスや行政書士事務所のWebサイトには、キーワードを入力するだけで使える「事業目的検索」機能が用意されていることがあります。
例えば「IT」「飲食」「不動産」などの業種キーワードで検索すると、その業種でよく使われている汎用的な目的の文言が一覧で表示されます。ヒットした文言をそのまま使うこともできますし、自社の事業に合わせて微調整して使用することも可能です。専門家が監修しているケースが多いため、確認の上信頼性の高い文言を効率よく見つけることができます。
【業種別】会社の目的の書き方 事例集
多くの会社で採用されている汎用的な目的記載例を、業種別に紹介します。これらはすでに多くの企業で登記実績のある表現ですので、ベースとして活用し、自社の特徴に合わせてカスタマイズしてください。
IT・Web関連
IT業界は技術の進化やトレンドの変化が非常に激しいため、将来的な事業拡大を見越して、広範な解釈ができる表現を含めるのがコツです。特定の技術名に限定しすぎると、技術が廃れた際に定款変更が必要になるリスクがあります。
- インターネットを利用した各種情報提供サービス
- ウェブサイト、ウェブコンテンツの企画、制作、販売及び運営
- コンピュータシステムの企画、開発、販売及び保守に関する業務
- アプリケーションソフトウェアの企画、開発及び販売
- インターネット上の広告事業
クリエイティブ・デザイン
フリーランスから法人化するケースも多いデザイン・映像制作業では、単なる「制作」だけでなく、それに伴うコンサルティングや広告運用まで含めておくと業務の幅が広がります。
- グラフィックデザイン、ウェブデザインの企画、制作及び販売
- 映像、音声、文字等のコンテンツの企画、制作、編集及び販売
- 広告宣伝の代理業務
- 各種イベントの企画、制作、運営及び管理
- イラストレーション、商業デザインの企画、制作
コンサルティング・人材関連
コンサルティング業は実態が見えにくいため、具体的に「何について助言するのか」を記載するのが一般的です。人材系の場合は、将来的に有料職業紹介等の許認可を取る可能性も考慮しましょう。
- 経営コンサルティング業務
- 人材育成のための教育事業、研修の企画及び運営
- 企業の営業活動及びマーケティング活動に関する企画、代行並びにコンサルティング
- 広報・PRに関する企画、実施及びコンサルティング
- 有料職業紹介事業及び労働者派遣事業(※許認可が必要)
貿易・輸出入
貿易業では、取り扱う商品の種類を細かく書きすぎると、新商品が出るたびに定款変更が必要になります。「日用雑貨」や「衣料品」といった大きなくくりに加え、「前各号に関連する商品の輸出入」などで包括すると便利です。
- 各種商品の輸出入、販売及びその仲介
- 衣料品、食料品、日用雑貨の企画、製造、販売及び輸出入
- 化粧品、美容用品の輸出入及び販売
- 海外の工芸品、民芸品の輸入及び販売
- インターネットを利用した通信販売業務及び海外発送代行業務
教育・学習塾
学習塾やスクール運営では、教室での指導だけでなく、オンライン教材の販売やフランチャイズ展開などを記載しておくと、事業の多角化に対応しやすくなります。
- 学習塾、カルチャースクールの経営
- 各種資格取得講習会の主催及び通信教育事業
- 書籍、教材、教育用機器の企画、制作、出版及び販売
- 語学教室の経営及び語学指導
- インターネットを利用した教育コンテンツの配信
医療・福祉・介護
医療や介護事業は、行政の指定や許可を受けるために、定款の目的が法令上の事業名と一致している必要があります。指定申請を行う予定の行政窓口で事前に文言を確認することをおすすめします。
- 介護保険法に基づく居宅サービス事業
- 訪問介護、訪問入浴介護及び通所介護事業
- 鍼灸、マッサージ院の経営
- 医薬品、医薬部外品、医療用機器の販売及び賃貸
- 高齢者専用住宅の経営及び管理
美容・サロン
美容室やエステサロンは、施術サービスの提供だけでなく、シャンプーや化粧品などの「物販」、スタッフ育成の「スクール事業」も収益の柱になりやすいため、記載しておきましょう。
- 美容室、エステティックサロン、ネイルサロンの経営
- 化粧品、美容用機器、健康食品の販売及び輸出入
- 美容に関する技術指導及びセミナーの開催
- オリジナル美容商品の企画、開発及び販売
農業
農業法人の場合、単に農作物を作るだけでなく、それを加工して販売する(6次産業化)ケースが増えています。直売所の運営や観光農園なども記載しておくと事業展開がスムーズです。
- 農産物の生産、加工、販売
- 農産物直売所の経営
- 貸農園、市民農園の開設及び運営
- 農業体験イベントの企画及び運営
- 農作業の受託及び管理
資産管理(プライベートカンパニー)
節税や相続対策を目的とした資産管理会社では、不動産や有価証券の保有・運用が主な事業となります。自身の保有する資産の種類に合わせて記載します。
- 不動産の売買、賃貸、管理、仲介及び保有
- 有価証券の取得、保有、運用及び売買
- 株式、国債、社債等の投資及び保有
- 生命保険の募集に関する業務(※法人契約の保険を扱う場合など)
飲食・小売業
飲食店や小売業の場合、単に店舗での販売だけでなく、将来的なEC(通信販売)やフランチャイズ展開、オリジナル商品の開発なども視野に入れて記載することをおすすめします。
- 飲食店の経営
- 食料品、飲料水、日用雑貨の販売及び輸出入
- 衣料品及び服飾雑貨の企画、製造、販売及び輸出入
- インターネットを利用した通信販売業務
- フランチャイズチェーンシステムによる加盟店の募集及び指導
建設・不動産
建設業や不動産業は、開業にあたって行政庁の許認可(建設業許可や宅建業免許など)が必要になるケースがほとんどです。この場合、定款の目的に「許可申請の要件となる特定の文言」が含まれていないと、許可が下りない可能性があります。
- 建築工事、土木工事、大工工事、左官工事等の請負、施工、設計及び監理
- 宅地建物の取引業
- 不動産の売買、賃貸、管理及びそれらの仲介
- 損害保険代理業
会社の目的作成で失敗しないためのポイントは?
登記後に目的を追加・変更するには、原則として株主総会の特別決議が必要になるほか、法務局での変更登記申請に登録免許税(3万円)がかかります。無駄な出費を避けるために、以下のポイントを必ず押さえておきましょう。
将来やるかもしれない事業も含める
会社設立時点では実施していなくても、将来的に参入する可能性がある事業はあらかじめ記載しておきましょう。やるかもしれないレベルであっても、定款に記載すること自体に法的な問題はありません。
事業目的の数に厳密な上限はありませんが、あまりに多すぎると(例えば50個以上など)、何をする会社なのか不明確になり、金融機関からの融資審査などでマイナスになる可能性があります。一般的には10個〜20個程度に収めるのが適切ですが、将来の可能性はできるだけ網羅しておくのが賢明です。
最後に必ず「附帯関連する一切の事業」を入れる
事業目的リストの最後には、必ず「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文を入れてください。
この一文があることで、メインの事業に関連して発生する細かな業務や派生ビジネスも、定款の目的範囲内であると法的に解釈されやすくなります。例えば、Web制作会社がサーバーを貸し出したり、飲食店が店舗でイベントを開催したりする場合でも、この一文があれば「関連事業」として正当に活動できます。書き漏らしのリスクをカバーする保険のような役割を果たします。
会社設立時に目的をしっかりと選定しましょう
会社設立における「目的」は、会社の社会的信用や許認可の取得を左右する重要な要素です。
ゼロから考えるのが難しい場合は、同業他社の事例をデータベースで検索したり、本記事の業種別事例集を活用したりして、「明確性・適法性・営利性」を満たす文言を選定しましょう。また、将来の事業展開も見据えて幅広く記載し、最後に「附帯関連する一切の事業」を添えることが、スムーズな経営への第一歩となります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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