• 作成日 : 2025年8月29日

就労支援の開業ガイド|移行支援・A型・B型の立ち上げ方法や必要な資格、資金を解説

障害のある方の社会参加と自立を支える就労支援事業は、社会貢献性が非常に高く、大きなやりがいを感じられる仕事です。その重要性の高まりから、福祉分野での独立や新規事業として開業を検討する方が増えています。

しかし、いざ就労支援施設の開業を目指すとなると、「A型やB型、移行支援って何が違うの?」「どんな資格が必要?」「開業資金はいくら必要で、本当に儲かるの?」「経営者としての年収は?」といった、多くの疑問や不安がつきものでしょう。

この記事では、就労支援事業の全体像から具体的な立ち上げのステップ、気になる収益性や経営のリアルまでわかりやすく解説します。

そもそも就労支援事業とは?

就労支援事業と一言でいっても、対象者や支援内容によっていくつかの種類に分かれます。まずは代表的な「就労移行支援」「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」の3つの事業がどのような役割を担っているのか、詳しく見ていきましょう。

1. 就労移行支援

就労移行支援は、障害のある方が一般企業へ就職するために必要なスキルや知識を習得するための訓練を提供する事業所です。

利用者は原則2年間という期間の中で、ビジネスマナーやPCスキル、コミュニケーション能力などを学び、職場探しや実習、就職後の定着支援まで一貫したサポートを受けられます。安定した一般就労への移行を目的としているため、利用者の就職率や定着率が事業所の評価に直結する点が特徴です。

2. 就労継続支援A型

就労継続支援A型は、一般企業での就労が難しいものの、雇用契約に基づく労働が可能な方に対して、働く機会を提供する事業所です。

利用者(従業員)と事業所が雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給与が支払われます。就労継続支援A型で重要なのは、利用者への支援と同時に、収益を確保する必要がある雇用型の福祉サービスであるという点です。生産活動から利益を生み出す事業戦略が求められます。

3. 就労継続支援B型

就労継続支援B型は、年齢や体力、心身の状況から雇用契約を結んで働くことが難しい方へ、比較的簡単な作業などの生産活動の機会を提供する事業所です。利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、非雇用型と呼ばれます。

自分の体調やペースに合わせて通所できるのが大きな特徴で、利用者は生産活動に対する対価として工賃を受け取ります。近年増加傾向にあり、新規参入が多く競争が激化している事業形態です。

就労支援事業の開業は儲かる?

結論から言えば、就労支援事業のビジネスモデルを深く理解し、適切な経営を行えば、安定した収益を確保することは十分に可能です。

就労支援事業の収入源

事業の主な収入源は、利用者数やサービス提供実績に応じて自治体から支払われる訓練等給付費(基本報酬、加算の算定)です。これに加えて、A型やB型では生産活動による売上が収益の柱となります。

事業形態主な収入源収益性の特徴
就労移行支援訓練等給付費
  • 利用者一人あたりの給付費単価が比較的高く設定されている。
  • 利用者が就職し6ヶ月以上定着すると「就労定着支援」として追加報酬が見込めるため、高い収益性を狙える可能性がある。
  • ただし、成果が求められる分、高い専門性と支援力が必須。
就労継続支援A型訓練等給付費 + 生産活動収益
  • 給付費に加え、事業として行った生産活動の売上が収益となる。
  • 利用者に最低賃金以上の給与を支払う義務があるため、給付費だけでは赤字になる構造。収益性の高い事業モデルを構築できるかが経営の鍵。
就労継続支援B型訓練等給付費 + 生産活動収益
  • 給付費と生産活動の売上が収益となる。
  • 生産活動で得た収益から、必要経費を差し引いた額を利用者に「工賃」として支払う。
  • 安定した収益を上げるには、高い平均工賃を目指すことが重要となり、それが事業所の評価にも繋がる。

経営者の年収の目安

経営者の年収は、法人から受け取る役員報酬によって決まります。事業所の利益の中から、人件費や家賃、その他経費を支払った上で設定するため、事業所の規模や収益性によって大きく変動します。

開業当初は利益が安定せず、役員報酬を低めに設定せざるを得ないケースも少なくありません。しかし、定員稼働率が高く、生産活動も順調であれば、安定した収益性が見込まれます。年収を上げるためには、安定した収益を生み出す持続可能な経営体制を築くことが不可欠です。

就労支援施設の開業に必要な資格は?

実は、就労支援事業の経営者自身に特定の福祉資格は必須ではありません。しかし、事業所として指定を受けるためには、法令で定められた人員を配置する義務があります。

法人格

まず大前提として、個人事業主として就労支援事業を開業することはできません。事業所の指定を受けるには、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人といった法人格を持っていることが絶対条件です。それぞれ設立費用や手続き、運営の自由度が異なるため、ご自身の事業計画や理念に合った法人格を選択しましょう。

人員配置基準で求められる専門資格

最も重要なのが、人員配置基準を満たすことです。これには管理者、職業指導員、生活支援員などの役職があり、特に中心的な役割を担うのが「サービス管理責任者(サビ管)」です。

サビ管は、利用者の個別支援計画の作成や関係機関との連携などを担う、事業の質を左右する重要なポジションであり、各事業所に1名以上の配置が義務付けられています。サビ管になるには、相談支援業務で5年以上または直接支援業務で8年以上の実務経験に加え、所定の基礎研修および実践研修の修了が必要です。

就労支援事業を開業するまでの流れは?

就労支援事業の開業は、情熱だけでは成し遂げられません。明確なビジョンと、それを実現するための着実な準備が必要です。ここでは、事業計画の策定から利用者の募集まで、開業に向けた具体的なステップを5段階に分けて解説します。

1. 事業計画の策定とコンセプトの明確化

まず、どのような事業所にしたいのか、その理念やコンセプトを明確にします。地域のニーズや競合の状況を分析し、「誰に」「どのような支援を」「どのように提供するのか」を具体化しましょう。その上で、収支計画や資金計画を含む詳細な事業計画書を作成します。この計画書が、後の資金調達や行政への申請、事業運営の全ての土台となります。

2. 法人設立と物件の選定

事業計画が固まったら、事業の受け皿となる法人を設立します。株式会社や合同会社など、メリット・デメリットを比較検討して決定しましょう。

並行して、物件探しを進めます。訓練室や相談室など、法令で定められた設備基準を満たせる広さや構造であることはもちろん、利用者が通いやすい立地であるかどうかも重要な選定ポイントです。

3. 人員の採用・育成

事業の質は、スタッフの質で決まります。特に、要となるサービス管理責任者は早めに確保する必要があります。求人広告や人材紹介サービスを活用し、事業所の理念に共感してくれる人材を集めましょう。採用後は、開業に向けて理念の共有や業務研修を行い、質の高いサービスを提供できるチームを作り上げていきます。

4. 指定申請と設備基準の確認

人員と物件が確定したら、いよいよ管轄の行政窓口(都道府県または市区町村)に対して指定申請を行います。申請には、事業計画書や人員の資格者証、物件の平面図など、多くの書類が必要です。申請前に、消防法や建築基準法、バリアフリー法などの関連法規を遵守できているか、設備基準を全て満たしているかを再度、入念に確認しましょう。

5. 利用者募集

行政から無事に事業所として指定を受けたら、最後は利用者の募集です。ただ待っているだけでは利用者は集まりません。地域のハローワークや相談支援事業所、特別支援学校などに地道に足を運び、事業所の特色や支援内容を説明する営業活動が不可欠です。Webサイトやパンフレットを作成し、魅力を分かりやすく伝える努力を続けましょう。

就労支援施設の開業資金はいくら必要?

事業計画と並行して進めるべきなのが、資金計画です。特に、事業所の設立にはまとまった初期投資が必要となります。事業所の規模や地域、物件の状態によって大きく変動しますが、ここでは一般的な目安となる内訳と金額を見ていきましょう。

初期費用

開業時に必要となる初期費用は、大きく分けて物件関連費、設備・備品費、法人設立費などです。

  • 物件取得費:保証金、敷金、礼金、仲介手数料、前家賃など
  • 内装工事費:消防設備設置、バリアフリー対応工事など
  • 設備・備品費:訓練用のPC、机、椅子、相談室の備品、送迎用の車両購入費など

これらを合計すると、一般的に800万円〜1,500万円程度を見ておくとよいでしょう。居抜き物件を活用するなど、初期投資を抑える工夫も重要です。

運転資金

事業を開始しても、収入(訓練等給付費)が実際に入金されるのはサービス提供から約2ヶ月後です。それまでの人件費や家賃、水道光熱費などを支払うための運転資金をあらかじめ準備しておく必要があります。最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金を確保しておくと、安心して事業の立ち上げに集中できます。

自己資金

融資を受ける場合でも、一定額の自己資金は必要です。一般的には、開業資金総額の2割〜3割程度の自己資金があると、融資の審査が通りやすいとされています。例えば、総額2,000万円の開業資金を計画する場合、400万円〜600万円の自己資金が一つの目安となります。コツコツと準備を進めることが、夢の実現に向けた確実な一歩です。

就労支援事業の開業で活用できる補助金・助成金は?

多額の資金が必要となる就労支援事業の開業ですが、国や自治体の制度をうまく活用することで、自己資金の負担を軽減することが可能です。

自治体の補助金制度

自治体によっては、就労支援事業所の開設を支援するための補助金制度を設けている場合があります。特に、就労継続支援B型の開設を対象に、施設の整備費用や備品購入費の一部を補助する制度が見られます。補助額や要件は自治体によって大きく異なるため、開業を予定している市区町村の障害福祉課などに早めに問い合わせ、情報を確認することが大切です。

創業融資制度

自己資金だけでは足りない場合、融資を受けるのが一般的です。中でも、政府系金融機関である日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、これから事業を始める方にとって利用しやすい制度です。民間金融機関に比べて金利が低く、無担保・無保証人で利用できる場合もあります。説得力のある事業計画書を作成し、相談してみる価値は十分にあります。

就労支援事業の成功の鍵は社会貢献と事業性の両立

就労支援事業の開業は、障害のある方の未来を支える、非常にやりがいのある挑戦です。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、事業ごとの特性理解、綿密な資金計画、そして求められる人員基準のクリアなど、多くの準備が求められます。社会貢献という高い理念を掲げつつも、持続可能な事業モデルを構築することが成功の分かれ道です。

この記事で解説した立ち上げのステップを一つひとつ着実に進め、あなたの熱意を形にしてください。障害のある方が自分らしく輝ける社会の実現に向け、あなたの挑戦が大きな一歩となることを願っています。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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