• 作成日 : 2025年12月23日

合同会社から株式会社に変更するには?手続き・費用・期間を解説

起業時に合同会社を選んだものの、事業の拡大や資金調達の必要性に応じて「株式会社への変更」を検討する方は少なくありません。合同会社と株式会社では、組織の仕組みや資金調達の手段、対外的な信用力に違いがあり、それぞれに適したフェーズがあります。

本記事では、合同会社と株式会社の基本的な違いから、変更によるメリット、必要な手続きや費用・期間を解説します。

合同会社と株式会社の違いは?

合同会社と株式会社は、設立費用、組織の仕組み、運営方法、資金調達手段などに違いがあります。ここでは、それぞれの特性を解説します。

合同会社は低コストかつ柔軟に設立・運営できる

合同会社は、設立手続きが簡便で、費用を抑えられる法人形態です。 設立時には公証人による定款認証が不要で、登録免許税は最低額が6万円と比較的安価です。定款を電子定款で作成すれば収入印紙代が不要となるため、設立時にかかる法定費用は約6万円で済み、創業初期のコストを大幅に抑えられます。

また、社員全員が有限責任でありながら業務執行に関与できる仕組みを持ち、取締役会や株主総会などの機関設置も必要ありません。このため、意思決定が迅速で運営の柔軟性が高く、少人数での起業やスタートアップに適した法人形態といえます。

株式会社は信用力が高く多様な資金調達が可能

株式会社は、対外的な信用が高く、株式や社債の発行による柔軟な資金調達が可能です。

株式会社では出資者と経営者が明確に分かれており、株主が資本を出し、取締役(および代表取締役などの業務執行者)が経営を担います。法的に定められた機関設計により、ガバナンス体制が整っており、金融機関や取引先からの信用を得やすい点が大きな特徴です。株式を発行することで外部からの出資も受け入れやすく、社債発行や将来的な上場(IPO)も視野に入ります。

その反面、設立費用は定款認証や登録免許税を含めて約17万円以上かかることが一般的で、事業規模がある程度見込まれる場合に選ばれることが多い形態です。

以下の表に主要な違いをまとめます。

項目合同会社(LLC)株式会社(KK)
設立費用約6万円~(登録免許税のみ、定款認証不要)約20万円~(登録免許税15万円~+定款認証手数料5万円程度)
所有と経営の関係一致(出資者=経営者。業務執行社員が経営を担う)分離(出資者は株主、経営者は取締役等。出資者と経営陣が明確に分離)
意思決定機関社員総会(全社員)による合議制株主総会(株主)および取締役会(※任意設置可)
代表者各社員が代表権を持つ(定款で代表社員の選定も可)代表取締役(取締役会非設置会社では、代表取締役を置かない場合、取締役が代表)
役員任期なし(変更がない限り再任手続き不要)あり(通常2年、最長10年)
決算公告義務なしあり(毎事業年度、本決算の内容を官報等に公告)
利益配分出資割合に関係なく自由に決定可能(定款で定める)出資割合に応じて配分(柔軟な配分は不可)
資金調達株式発行ができないため出資者の増員や銀行借入が中心株式発行・社債発行など多様な資金調達が可能。上場により市場から資金調達も可
信用・認知度制度開始から年月が浅く、一般への認知度は低め。社名に「合同会社」とつく大企業は少数古くから主流の形態で社会的信用度が高い。知名度も高く「株式会社」は対外的な安心感がある
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合同会社から株式会社に変更するメリットは?

合同会社を株式会社に変更することで、資金調達の選択肢が増え、対外的な信用力が高まるという明確な利点があります。企業の成長や拡大を見据える際、組織変更は事業戦略上の大きな選択肢となります。

株式発行が可能になり資金調達手段が広がる

株式会社に変更すれば、株式を活用した外部出資の受け入れが可能になり、資金調達の幅が大きく広がります。 合同会社では出資できるのは原則として社員(出資者)のみに限られ、外部からの資本導入には制約があります。そのため、自己資金や金融機関からの借入に依存する傾向が強く、大規模な事業展開には不向きとされます。

株式会社に変更すると、株式を発行して外部投資家からの出資を受けられるようになり、増資によって自己資本を厚くすることも可能です。さらに、社債の発行や将来的な株式上場(IPO)といった選択肢も開け、成長ステージに応じて柔軟に資金戦略を描くことができます。

このように、資金調達面での選択肢が飛躍的に拡大することが、合同会社から株式会社への変更の大きな利点です。

社会的信用が高まり対外的な信頼が得られる

株式会社化により、取引先や金融機関からの信用が得やすくなります。 株式会社は、株主構造や役員体制の仕組みが法律で明確に定められており、組織としてのガバナンスや情報開示が整っていると見なされる法人形態です。そのため、対外的な信用度が合同会社に比べて高く評価される傾向があります。たとえば、銀行からの融資審査では、株式会社の方がガバナンス体制の整備を前提とした評価を受けやすく、条件が有利になる可能性があります。

また、社名に「株式会社」がつくことによって、消費者や取引先から「信頼できる会社」として認知されやすく、ブランドイメージの向上にも寄与します。BtoBビジネスや資金調達を見据えた企業には、社会的信用を高める株式会社化が有効です。

合同会社から株式会社に変更する手続きは?

合同会社から株式会社へ組織変更するには、会社法に基づいた法的・実務的な手続きを順番に進める必要があります。ここでは、大まかな流れを見ていきましょう。

① 組織変更計画書を作成する

まず最初に、株式会社としての基本方針をまとめた「組織変更計画書」を作成します。 この計画書には、変更後の株式会社の商号、本店所在地、事業目的、資本金、役員構成、発行する株式の種類と数、各社員に割り当てる株式数、効力発生日などを記載します。

組織変更計画書は、今後の登記手続きや債権者保護の根拠となる重要な文書です。後工程の正確性にも影響するため、内容を確認しながら慎重に作成する必要があります。

② 株式会社としての役員や組織体制を決定する

新たに株式会社として運営していくための役員体制を決定します。 代表取締役や取締役の人数・人選、監査役の設置の有無などを検討し、必要に応じて定款に定めます。現在の代表社員をそのまま代表取締役に据えることも可能です。

役員構成は組織変更計画書に記載する事項であるため、この段階で確定させる必要があります。

③ 組織変更について社員全員の同意を得る

合同会社の全社員(出資者)から、組織変更計画に対する書面での同意を取得します。合同会社は、社員全員が出資者として重要な地位を持つ性質上、組織変更には全員一致の同意が法的に求められます。口頭での同意は認められず、書面により明確な意思表示を残す必要があります。

なお、この同意手続きは、次に行う債権者保護手続きと前後して実施しても問題ありませんが、両方の完了が必須です。

④ 債権者に対する公告と催告を行う

債権者保護手続きとして、官報での公告と、個別の催告(通知)を行います。これは、組織変更によって不利益を被る可能性のある債権者に対し、異議申し立ての機会を与えるための法的措置です。官報には「株式会社に組織変更する旨」と「異議申立期間(原則1ヶ月以上)」を記載し、把握している債権者には書面で通知します。

異議があった場合には、弁済や担保の提供が必要となり、手続きが一時停止する可能性もあるため、公告の文言や送付手続きには細心の注意を払う必要があります。

⑤ 効力発生日に合わせて登記申請を行う

効力発生日を迎えたら、法務局で登記申請を行い、合同会社から株式会社への変更を完了させます。組織変更の効力が発生した日から2週間以内に、管轄の法務局で「合同会社の解散登記」と「株式会社の設立登記」を同時に申請する必要があります。

この際、「組織変更による株式会社設立」である旨を明記し、必要書類一式を添付して提出します。これらの登記が完了すると、合同会社としての法人格は消滅し、法的に株式会社として新たに設立されたものと扱われます。

合同会社から株式会社への変更にかかる費用は?

合同会社から株式会社へ組織変更する際には、登記にかかる登録免許税や官報公告費用といった法定費用に加えて、専門家へ依頼する場合の報酬が必要になります。法定費用はおおむね10万円前後で、専門家に依頼する場合はさらに10〜20万円ほど上乗せされるため、全体としては20〜30万円程度が一般的な目安です。

登録免許税は最低6万円が必要

組織変更に伴う登記手続きでは、登録免許税として最低6万円の納付が必要です。「合同会社の解散登記」と「株式会社の設立登記」にそれぞれ3万円ずつ課税される仕組みで、資本金の額によって増減するものの、多くの場合はこの最低額で収まります。

この登録免許税は、手続きを自分で行う場合でも必ず負担しなければならない法定費用であるため、変更を検討する際にはあらかじめ準備しておくことが重要です。

官報公告の掲載料は約3〜4万円が目安

債権者保護手続きの一環として、官報に公告を出す際には3〜4万円程度の掲載料が発生します。公告では、組織変更の予定日や異議申し立ての期限を明記し、債権者に対して告知します。掲載料は公告文の文字数に応じて変動しますが、通常の内容であれば3万円台で収まることが多いです。なお、法律上は日刊新聞で公告することも可能ですが、掲載料が高額になる傾向があり、実務では官報が使われるケースがほとんどです。

専門家に依頼する場合は数万〜十数万円が相場

司法書士や税理士に手続きを依頼する場合、報酬として10〜20万円台の費用がかかります。金額は依頼内容や会社の規模、作業範囲によって変動しますが、組織変更では書類作成や官報公告、登記申請など必要な工程が多いため、専門家報酬が高めになりやすい点に注意が必要です。自社で全て行えば報酬は不要ですが、専門家に依頼することで不備による再提出や手続き遅延のリスクを避けられます。業務効率や確実性を重視する場合は、専門家への相談も選択肢に入れると良いでしょう。

変更完了までにかかる期間は?

合同会社から株式会社への変更は、書類作成から登記完了まで複数の工程を含むため、一般的に2〜3ヶ月の期間が必要です。

最短でも2ヶ月、一般的には2〜3ヶ月程度かかる

組織変更手続きは複数段階にわたるため、迅速に進めても2ヶ月程度は見込んでおく必要があります。

まず、組織変更計画書の作成と社内調整に1〜2週間程度、社員全員からの同意取得にも同程度の期間がかかります。その後、債権者保護のため官報公告を掲載し、1ヶ月以上の異議申立期間を設ける必要があります。公告期間終了後にようやく登記申請が可能となり、法務局での処理にさらに1週間〜10日程度を要します。

これらを合算すると、最短でも2ヶ月前後、余裕をもって見積もれば3ヶ月程度かかるのが一般的です。

手続きの順序と公告期間がスケジュールの要

手続きには公告期間や法的要件があり、順番を間違えるとスムーズに進みません。 組織変更は、一般的に「社員全員の同意」「債権者保護手続き(公告・催告)」「登記」の順に進める必要があります。特に、債権者保護の公告期間は法定で1ヶ月以上と定められており、この期間中に債権者からの異議がなければ変更が認められます。

このため、いくら内部準備を早く済ませても公告期間そのものは短縮できず、ここが手続き全体のボトルネックになります。事業の節目や重要な資金調達、上場準備などと重なる場合は、逆算して余裕のあるスケジュールを立てておくことが重要です。

組織変更はメリットと手続きを踏まえて計画的に

合同会社から株式会社への組織変更は、事業の成長段階に応じて検討すべき重要な決断です。合同会社と株式会社にはそれぞれ特徴や違いがあり、組織変更によって資金調達力の強化や信用度の向上といったメリットが期待できる一方で、手続きには時間と費用もかかります。

組織変更は一度きりの大きな手続きになりますので、不安がある場合は早めに専門家へ相談することも検討しましょう。


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