• 更新日 : 2025年11月25日

法人登記はどこでする?管轄法務局の調べ方、移転や複数登記する場合を解説

法人登記は、会社の本店所在地を管轄する法務局またはその出張所などで行います。そのため、どの法務局へ申請するかは、会社の住所によって一律に決まります。企業の担当者にとって、会社設立準備を進める中で、「自分の会社は一体どこで法人登記すればいいのか」「本店所在地はどこにすべきか」といった疑問は、最初につまずきやすいポイントではないでしょうか。

本記事では、管轄法務局の調べ方から、本店所在地の選択肢まで、わかりやすく手順を追って解説します。

そもそも法人登記とは何か?

法人登記とは、会社の基本情報(商号、本店所在地、代表者・役員、事業目的など)を法務局の登記簿に記録し、社会に公示するための手続きです。株式会社や合同会社などの会社は、「設立の登記」をすることで法人格を取得します。登記事項や手続きは会社法・商業登記法等に基づき定められ、登記により第三者に対する公示・対抗の効果が認められます。

法人登記の基本的な役割

法人登記の最も基本的な役割は、会社の信用を担保することにあります。登記された情報は誰でも閲覧できるため、取引先や金融機関は、その会社がどのような会社であるかを客観的に確認できます。これにより、取引の安全性が確保された円滑な経済活動が成り立っています。

参照:商業・法人登記申請手続|法務省

商業・法人登記と不動産登記の違い

法務局が扱う登記には、大きく分けて「商業・法人登記」と「不動産登記」があります。これらは登記という共通の仕組みを持ちながらも、目的や対象がまったく異なります。

項目商業・法人登記不動産登記
目的会社の情報を公示し、取引の安全を守る土地や建物の権利関係を公示し、不動産取引の安全を守る
対象会社や各種法人土地、建物
具体例会社設立、役員変更、本店移転など不動産の売買、相続、抵当権設定など

会社設立時に必要なのは「商業・法人登記」です。一方で、会社が自社で所有する土地や建物を登記する場合は、別途「不動産登記」の手続きが必要になります。

参照:不動産登記|法務省

【設立時】法人登記はどこで行う?

法人登記の申請先は、会社の「本店所在地」をどの市区町村に置くかによって決まります。この申請先となる法務局を「管轄法務局」と呼びます。会社を設立する際は、まず本店所在地を定め、その所在地を管轄する法務局へ登記申請を行います。

STEP1:会社の本店所在地を決める

まず、会社の住所となる「本店所在地」を決定しましょう。賃貸オフィスや自宅、バーチャルオフィスなど、登記上の住所にはいくつかの選択肢があります。どこを本店所在地にするかによって、登記を申請する管轄法務局が変わります。

STEP2:法務局のウェブサイトで管轄を調べる

本店所在地が決まったら、法務局の公式ウェブサイトで管轄を確認します。全国の法務局はブロックごとに分かれており、それぞれのウェブサイトに管轄区域の一覧が掲載されています。

具体的な調べ方の手順
  1. 管轄の法務局ウェブサイトにアクセスする
    本店所在地を管轄する法務局のウェブサイトを開きます。例えば、本店所在地が東京都内であれば、東京法務局のウェブサイトを確認します。
  2. 「管轄のご案内」ページを探す
    法務局のウェブサイトには、「管轄のご案内」または「管轄一覧」といったページがあります。ここで、各支局・出張所が担当する市区町村が一覧で確認できます。
  3. 本店所在地の市区町村から担当法務局を特定する
    一覧表の中から、自社の本店所在地に該当する市区町村を探し、担当する法務局(本局、支局、出張所)を確認します。

例:東京都千代田区に本店を置く場合
東京法務局のウェブサイトで確認すると、千代田区の管轄は「東京法務局 本局」となっています。したがって、法人登記の申請書類は東京法務局の本局へ提出することになります。

参照:管轄のご案内|東京法務局

【移転時】本店移転の法人登記はどこで行う?

会社が引っ越しをした(本店を移転した)場合、その変更を登記簿に反映させるための「本店移転登記」が必要です。この申請先(管轄法務局)は、移転のパターンによって異なります。

同じ管轄法務局のエリア内で引っ越す場合

現在の本店所在地と、新しい本店所在地が、同じ法務局の管轄エリア内であるケースです。例えば、「東京法務局 渋谷出張所」の管轄である渋谷区内での移転(渋谷区内の別住所への移転など)が該当します。この場合、登記の申請は移転後の本店所在地を管轄する法務局、すなわち移転前と同じ法務局で行います。

  • 申請先: 移転前と移転後の本店所在地を管轄する法務局(1か所)
  • 登録免許税: 3万円

異なる管轄法務局のエリアへ引っ越す場合

現在の本店所在地と新しい本店所在地で、管轄する法務局が異なるケースです。例えば、「東京法務局 渋谷出張所」が管轄する渋谷区から、「横浜地方法務局 本局」が管轄する横浜市中区へ移転する場合などが該当します。

この場合、旧本店所在地を管轄する法務局に、旧所在地分と新所在地分の登記申請書をまとめて提出します。

  • 申請先: 移転前の旧本店所在地を管轄する法務局(旧・新2か所分の登記をまとめて提出)
  • 登録免許税: 6万円(旧管轄3万円+新管轄3万円)

どちらのパターンでも、実際に本店を移転した日から2週間以内に申請する義務があります。期限を過ぎると過料の対象となる場合があるため、早めの手続きが必要です。

【複数設立時】複数法人の登記はどこで行う?

複数の法人を設立する場合でも、登録申請先の原則は変わりません。それぞれの法人の本店所在地を管轄する法務局へ、会社ごとに個別に申請手続きを行います。

法人ごとに管轄を判断する

法人はそれぞれが独立した法人格を持つため、登記手続きも個別に行う必要があります。たとえ代表者が同じ人物であっても、設立する会社が2社あれば、2社分の登記申請が必要です。

  • 本店所在地が異なる場合
    例えば、1社目を東京都千代田区、2社目を大阪府大阪市に設立するとします。この場合、1社目は東京法務局、2社目は大阪法務局へ、それぞれ申請することになります。
  • 本店所在地が同じ場合
    同じ住所に複数の法人を設立することも可能です。この場合、すべての法人が同じ管轄法務局へ申請しますが、登記申請自体は会社ごとに分けて行います。

事業戦略上、複数の法人を設立・運営する場合でも、「1法人につき1申請」が原則です。その申請先は、あくまで各社の本店所在地によって決まるという基本ルールを押さえておきましょう。

法人登記の本店所在地はどこにできる?

設立時や移転時において、本店所在地をどこにするかは、会社運営に大きく影響する重要な決定です。近年では、賃貸オフィス以外にも自宅やバーチャルオフィスなど、選択肢は多様化していますが、それぞれにメリットと注意点があります。

自宅を本店所在地にする場合

コストを抑えられる最も手軽な方法です。ただし、自宅住所が会社の公式情報として登記簿に記載され、一般に公開される点には注意が必要です。また、マンションなどの集合住宅では、管理規約や賃貸契約の内容によっては事業目的での利用や法人登記が禁止されている場合もあるため、事前に必ず確認しましょう。

賃貸・レンタルオフィスを本店所在地にする場合

社会的信用を得やすい選択肢です。特に、都心の一等地にオフィスを構えることは、企業のブランディングや取引先からの信頼獲得にもつながります。一方で、敷金・礼金や毎月の賃料といったコストがかかります。契約時には、法人登記が可能かどうかを貸主側に確認することが不可欠です。

バーチャルオフィスを本店所在地にする場合

物理的な執務スペースを借りずに、住所や電話番号だけをレンタルするサービスです。低コストで都心の一等地の住所を利用できるメリットがあります。ただし、業種によっては許認可が下りにくいケース(例:士業、古物商など)や、銀行口座の開設で審査が厳しくなる可能性も考慮しなくてはなりません。

比較表:本店所在地の選択肢

種類メリットデメリット・注意点
自宅
  • コストが最も安い
  • 通勤時間が不要
  • プライバシーの問題
  • 管理規約や賃貸契約の確認が必要
賃貸オフィス
  • 社会的信用度が高い
  • 来客対応や会議が可能
  • 初期費用や賃料が高い
  • 契約内容の確認が必要
バーチャルオフィス
  • 低コストで一等地の住所が使える
  • 郵便物の転送サービスがある
  • 許認可や融資で不利な場合がある
  • 来客対応ができない

法人登記の申請方法は?

法人登記の申請方法は、主に「窓口」「郵送」「オンライン」の3つがあります。それぞれの特徴をふまえて、自社に合った方法を選びましょう。

窓口での申請

管轄法務局の窓口へ直接、申請書類を持参して提出する方法です。書類に不備があった場合にその場で担当者から指摘を受け、修正できる可能性があります。ただし、法務局ごとに窓口の受付時間や取扱業務が異なるため、事前に必ず公式ウェブサイトなどで最新の受付時間を確認しておきましょう。

郵送での申請

完成した申請書類一式を、管轄法務局宛てに郵送する方法です。法務局へ直接出向く時間が取れない場合に便利です。書類が法務局に到着した日が申請日となるため、日付に注意が必要です。また、郵送の際は、書留郵便など追跡可能な方法を利用し、封筒の表面に「登記申請書在中」と明記して送付しましょう。

オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)

法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、インターネット経由で申請する方法です。法務局へ行く必要がなく、平日夜間まで利用できる点が大きなメリットです。また、登録免許税の納付をオンラインで行えるなど、手続きの効率化が図れます。利用には、マイナンバーカードやICカードリーダライタ、専用ソフトのインストールなど、事前の準備が必要です。

申請書の入手方法

法人登記に必要な各種申請書の様式は、法務局のウェブサイトからダウンロードできます。記載例も用意されているため、参考にしながら作成を進めるとよいでしょう。

参照:商業・法人登記の申請書様式|法務省

法人登記後の重要手続き「登記事項証明書」の取得とは?

法人登記が完了したら、会社の公的な証明書となる「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得しましょう。この書類は、法人口座の開設、税務署への届出、社会保険手続き、融資の申し込みなど、会社のあらゆる場面で必要になります。

登記事項証明書とは?

登記事項証明書とは、法務局に登記されている会社の情報を証明する公式な書類です。一般的に「会社の登記簿謄本」とも呼ばれ、商号(名称)、本店所在地、役員構成、資本金、設立日などの基本情報が記載されています。

登記事項証明書はどこで取得できるのか?

登記事項証明書は、全国どこの法務局の窓口でも取得できます。また、郵送での請求や、登記・供託オンライン申請システムを利用して請求することも可能です。オンライン請求は手数料が安く、指定した住所への郵送か、最寄りの法務局での受け取りを選べます。

参照:登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと|法務省

登記事項証明書はどんな場面で必要になるのか?

登記事項証明書は、会社の様々な手続きで提出を求められる重要な公的書類です。

  • 銀行での法人口座の開設
  • 税務署や都道府県、市町村への法人設立届の提出
  • 社会保険や労働保険の加入手続き
  • オフィスや店舗の賃貸借契約の締結
  • 融資の申し込みや補助金の申請
  • 許認可申請など、行政機関への各種手続き

法人設立登記が完了したら、これらの手続きに備えて、あらかじめ数通の登記事項証明書を取得しておくとスムーズです。

法人登記の内容を変更するには?

会社を運営していく中で、本店を移転したり、役員が変わったりすることがあります。登記した内容に変更が生じた場合は、その都度「変更登記」の申請をしなくてはなりません。

変更登記が必要な主なケース

  • 本店移転:会社が引越しをした場合
  • 役員変更:役員が就任、退任、辞任、死亡した場合や、氏名・住所が変わった場合
  • 商号変更:会社の名前を変更した場合
  • 目的変更:事業内容を追加・変更した場合
  • 増資・減資:資本金の額を変更した場合

これらの変更があった日から、原則として2週間以内に変更登記を申請する義務があります。

変更登記を自分で行う手順と必要書類

変更登記も、設立登記と同様に自分で行うことが可能です。例えば本店移転の場合、株主総会議事録や取締役会議事録など、移転を決定したことを証明する書類と変更登記申請書を準備し、管轄する法務局へ提出します。必要書類は変更内容によって異なるため、事前に法務局のウェブサイトで確認しましょう。

参照:商業・法人登記申請手続|法務局

注意点:登記懈怠(とうきけたい)のリスク

定められた期間内に変更登記を怠ることを「登記懈怠」と呼びます。登記懈怠の状態になると、会社の代表者個人に対して100万円以下の過料(罰金に相当する行政上の制裁)が科される可能性があります。会社の信頼や取引にも影響するおそれがあるため、登記事項は常に最新の状態に保つことが重要です。

法人登記の申請先は本店所在地の管轄法務局

法人登記をどこでするかという問いの答えは、設立・移転・複数設立のいずれの場合も「本店所在地」を管轄する法務局が基本となります。まずは会社の本店所在地を決め、その所在地を管轄する法務局を、公式ウェブサイトで正確に確認しましょう。

特に会社が移転した場合は、管轄が変わるかどうかによって申請先や手続きが異なるため注意が必要です。複数法人を設立する場合も、法人ごとに個別に申請します。

これらのポイントをしっかりおさえることで、会社運営に関わる登記手続きはスムーズに進むはずです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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