• 作成日 : 2025年6月13日

法人の登記変更、期限はいつまで?過ぎてしまった場合も解説

法人登記の変更には、変更の事実が生じた日から2週間という法定の期限があり、怠ると過料の対象になるリスクがあります。

本記事では法人の登記変更の期限について、確認方法や変更が必要な事例、申請手続きの方法などを詳しく解説します。

登記変更には期限がある

法人が登記内容を変更する場合、会社法などにより、原則としてその事実が生じた日から2週間以内に変更登記を行う義務があります(会社法第915条第1項等)。そのため取締役の選任や会社本店の移転などがあった際には、遅滞なく登記手続きを行わなければなりません。

この期限は、会社法上の義務であるとともに、法人の透明性を確保し、取引先や関係機関に正確な情報を提供するという社会的責任とも深く関係しています。仮に登記を怠ると、代表者に対して過料が科される可能性があり、また融資審査や契約手続きに支障をきたす場合もあります。

なお、一般社団法人やNPO法人などについても同様に登記義務が課されているため、法人形態に関わらず、登記変更の期限遵守は重要です。

参考:e-Gov法令検索 会社法
参考:e-Gov法令検索 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

期限が過ぎてしまったら?

登記変更の期限を過ぎてしまった場合、どのような影響があるのか、またどのように対応すべきなのかも把握しておきましょう。

ここでは、自社の登記義務が発生した日付の確認方法について、また期限超過時のリスクと対応策について解説します。

自分の期限日を確認しよう!

登記の申請期限である「2週間以内」の計算方法を、正確に理解しておきましょう。民法の規定により、期間の初日は算入しません。また、期間の末日が休日の場合は翌営業日が期限になります。

例を挙げると、5月1日(月)に変更事由が発生した場合、5月2日(火)が起算日になり、期限が満了するのは5月15日(月)です。

なお、一部の変更登記については例外的な期限が定められています。募集株式の発行において払込期間を定めた場合は、当該期間の末日から2週間以内に登記を申請すれば足りる、とされています(会社法第915条第2項)。また、新株予約権の行使や取得請求権付株式の行使による変更登記は、毎月末日から2週間以内に申請すれば問題ありません(会社法第915条第3項)。

期限が過ぎてしまった場合

期限を過ぎてしまった場合でも、登記申請自体は可能です。しかし、会社法第976条第1項の規定により、正当な理由なく登記を怠った場合、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。

また、複数回の変更登記を忘れていた場合は、それらをまとめて申請しなくてはなりません。

参考:e-Gov法令検索 会社法
参考:e-Gov法令検索 民法

どんなときに変更が必要?

実際に登記の変更が必要になるケースは、以下のとおりです。

  • 役員の変更
  • 代表者の住所変更
  • 新規事業の立ち上げ・撤退
  • 会社所在地の移転
  • 支店の設置、変更
  • 増資・減資
  • 会社形態の変更

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

役員の変更(就任、辞任、退任、解任など)

取締役や監査役の就任、辞任、退任、解任などがあった場合には、その都度、変更登記を行う必要があります。

役員変更の登記には、変更登記申請書のほか、臨時株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書、印鑑証明書もしくは本人確認証明書、定款の写し、辞任届や死亡届など、変更の態様に応じた書類が必要です。

また、任期満了によって再任される場合、いわゆる「重任」であっても登記しなければならない点に注意しましょう。株主総会議事録の作成や、再任同意書の用意も求められます。

代表者の住所変更

代表者の住所変更は、法人登記に反映すべき重要事項のひとつです。法人の代表者は、契約締結権限を有するほか、訴訟時の送達先としても機能するため、登記簿上の情報が正確であることは極めて重要です。

登記上では、代表者の住所欄に住民票上の現住所が記載されるため、引っ越しや転居が生じた場合には速やかに変更申請を行う必要があります。変更登記申請書とともに、住民票を用意して申請しましょう。

新規事業の立ち上げ・撤退

法人が新たな事業を開始する場合、事業目的の追加が必要となることがあります。これは、定款に記載されていない業種や業務を営むことが法的に制限されているためであり、目的追加を行う際には定款変更とその登記が必要です。逆に、事業の撤退により目的を削除する場合も、不要な目的を削ることで事業の実態と登記事項の整合性を保つ効果があります。

この場合の登記変更には、定款変更を決議した株主総会議事録(または同意書)などの書類が必要です。

会社所在地の移転

法人の本店所在地を変更する場合は、その変更内容を登記に反映させる必要があります。住所変更は郵便物の配達先や契約先住所など、外部との連絡手段に関わるため、正確な反映が不可欠です。

なお、所在地の変更には同一法務局管内での移転である「管轄内本店移転」と、区域外へ移転する「管轄外本店移転」があり、それぞれ必要書類が異なります。また後者の場合は移転前・移転後の2ヶ所の法務局での手続きが必要です。

このケースでは、移転先での営業を開始した日から2週間以内が手続きの期限になります。

支店の設置、変更

支店を新たに設置したり、既存の支店を移転・廃止したりする場合にも変更登記を行わなければなりません。

支店の登記は本店所在地にて行い、支店の設置は1ヶ所につき6万円、廃止は1ヶ所につき3万円の登録免許税がかかります。なお、かつては本店所在地と支店所在地で手続きする必要がありましたが、2022年9月以降は支店の所在地における登記は廃止になっているため、支店の所在地における登記は不要です。

増資・減資

資本金の額を増加させる増資や、減少させる減資を行う場合も、変更登記が必須です。

増資の場合、登録免許税は増加した資本金額の0.7%または3万円のどちらか多い方となります。一方、減資の場合は1件につき3万円の登録免許税がかかります。

会社形態の変更

株式会社から合同会社への変更など、会社形態を変更する場合も変更登記をしましょう。この場合、登記の変更だけではなく株主総会での特別決議や債権者保護手続きなど、複雑な手続きが必要になります。

会社形態の変更は、会社の基本的性質に関わる重要な変更であるため、専門家への相談が望ましいでしょう。

登記変更にかかる日数は?

登記変更のスケジュールを正しく管理することは、リスク管理や企業統治の観点からも極めて重要です。ここでは、変更登記にかかる日数や登記変更の方法について見ていきましょう。

変更するまでにかかる日数は?

法人登記変更の手続きにかかる日数は、申請先の法務局によって異なるため一概に何日、とはいえません。登記申請をした日に審査が完了することもあれば、2週間程度かかることもあります。

法務局での審査期間は、申請内容の複雑さや法務局の混雑状況によって左右されるため、会社変更などは審査が長引く傾向があります。また、書類に不備があった場合は、補正のために追加の日数がかかるため、入念にチェックして不備のないようにしておきましょう。

登記変更する3つの方法

変更登記の申請方法には、以下の3つの方法があります。

法務局窓口での直接申請

必要書類を持参して法務局の窓口で直接申請する方法です。窓口で不備を指摘してもらえるメリットがあるため、不明点がある場合などに適しています。

郵送による申請

必要書類を、郵送で法務局に送付する方法です。郵送の場合、書類に不備があったときに時間がかかりがちになる点は理解しておきましょう。

オンラインによる申請

法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」を利用して申請する方法もあります。登記所の窓口よりも対応時間が長く、登記完了までの時間が短いメリットがあり、利便性が高いため多く活用されています。

法人の変更登記については、こちらの記事もご覧ください。

法人登記は期限内に変更手続きをしよう

法人登記の変更は法律上の義務であると同時に、取引先や行政機関からの信頼を確保するうえでも極めて重要です。定められた申請期限を過ぎれば過料のリスクもあるため、後回しにせず速やかに手続きを行うようにしましょう。

申請手続きなどに不安がある場合は専門家に相談し、リスクの回避とスムーズな運営体制の確保を心がけてください。


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