- 更新日 : 2022年8月10日
持分会社とは?株式会社との違いやメリット、設立手続きを解説!
持分会社は、株式会社と似たところもありますが、そうでないところもあります。例えば持分会社である合同会社を設立し、社員になるとどのようなメリットがあるのでしょうか?
この記事では、社員における有限責任社員、無限責任社員の区別やそれぞれの責任の違いなどについても触れていきます。
目次
持分会社とは?
私企業とは、一般に民間が経営している企業のことを言います。私企業には大きく分けて、個人経営のものと共同経営(法人)のものがあります。
法人のうち、組合形式のものを除くと、いわゆる「会社」と呼ばれる組織となり、これには4種類の会社があります。株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4つです。
持分会社とは、下のように株式会社と並ぶ会社の類型のことで、持分会社と呼ばれるのは具体的には、合名会社、合資会社、合同会社の3つです。
持分会社においては、会社に出資した者を「社員」と呼びます。ここでの「社員」とは、一般にパート社員と区別し社員、正社員などと呼ぶのとは、意味合いが異なります。ここで「持分」とは、ひと言でいえば会社全体の出資のうち「所有割合」のことです。

持分会社の特徴については、株式会社との比較で詳しく説明するとして、先に持分会社である3つの会社について解説してきます。
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持分会社の種類は?
持分会社は、株式会社における株主にあたる「社員」が持分をそれぞれ持っている会社ということです。持分会社の社員になると、「持分」により、会社の重要な決定事項について決定に参加することができます。
持分会社の社員には、有限責任社員と無限責任社員がいます。
| 会社の債務に対して、出資額の限度内で責任を有する社員 | |
| 会社の債務に対して、全財産をもって弁済の義務がある社員 |
例えば、ある持分会社が1億円の借金を残して倒産したとします。そのとき、その会社の有限責任社員は自分が出資した額までの責任で済みますが、無限責任社員は身銭を切ってでも責任を全うしなければなりません。
このように、有限責任社員は出資額までの有限責任であるのに対し、無限責任社員は会社の借金が自分の借金になる可能性もある無限責任を負います。持分会社に3つの類型があるのは社員構成、すなわち、有限責任社員と無限責任社員の組み合わせによるものです。
会社法の第576条1項には、持分会社の定款に「社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別」を記載することとされていますが、これによって3つの類型のどれになるのかが明らかになります。
合同会社(有限責任社員1名以上)
合同会社とは、有限責任社員のみで構成される持分会社です。合同会社の設立には最低1人必要であり、その有限責任社員だけでの設立も可能です。
合同会社の社員は、株式会社の株主と同様、会社の借金が返せなくなった場合でも自分が持分会社に出資した範囲内での責任が問われるのみです。
合同会社は2006年に会社法が改正された際に、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルに創設された会社です。アメリカのLLCも日本の合同会社も有限責任社員から構成されることや責任範囲が出資額までであることは同じですが、違いとしては、課税が挙げられます。アメリカのLLCは、課税について法人課税か、社員個人の所得への課税(パススルー課税を選択できますが、日本の合同会社は法人課税のみです。
合同会社には有名な会社として、グーグル合同会社、アップルジャパン合同会社、アマゾンジャパン合同会社などが挙げられます。
合同会社の詳細については、こちらの記事をご確認ください。
合資会社(無限責任社員1名以上、有限責任社員が1名以上)
合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員で構成される持分会社です。合資会社設立には、無限責任社員と有限責任社員をそれぞれ1名以上、合計で2名以上が必要です。
合資会社において、無限責任社員は経営に介入するほか、会社への出資において、金銭的な出資だけでなく、労働することを出資する「労務出資」やその社員個人が持つ信用力を出資する「信用出資」でもよいとされています。
会社設立時において、資金の出資を有限責任社員に、技術力や信用力を無限責任社員という分担が可能となります。合資会社の例はあまり多くなく、同族経営などの小規模な企業が多いようです。
合名会社(無限責任社員1名以上)
合名会社とは、無限責任社員のみで構成される持分会社です。合名会社の設立には最低1人が必要であり、その無限責任社員だけでの設立も可能です。
合名会社の社員は無限責任社員であり、厳しい責任を負うものです。会社の経営を自らがしっかり管理し、運営することによってそのリスクを軽減するしくみとなっています。合名会社は、個人事業の事業主が複数人で共同事業化したような状態とも言えますが、設立例としてはこちらも多くないようです。
持分会社と株式会社の違いを比較!
ここで、持分会社と株式会社との比較をしてみましょう。それぞれの構成社員、定款、設立費用について違いを解説します。
社員の責任範囲の違い
株式会社においては、会社のオーナーである株主と業務執行者としての取締役、つまり会社の「所有」と会社の「経営」が分かれています。
したがって、下の表には書ききれない「株主」が存在しますが、社員の種類だけをみると次のようになります。会社を構成する社員について、〇で示しています。
会社法上の株式会社は、役員交代の際には登記が必要であり、決算公告をする必要があり、基本的にそれらは株主総会で意思決定します。しかしながら、株式会社にも小規模なものもあって、社長自身が株主となっている場合などは実質的には合同会社と変わらないと言えます。
定款における違い
定款とは、会社設立において最も重要な書類の1つとされ、その会社を運営するためのルールブックと言えます。したがって、株式会社であれ、持分会社であれ、会社設立時においては、会社運営の基本ルールを記載した定款を必ず作成することとされています。
株式会社では定款を作成した場合、認証が必要となります。定款の認証とは、公証人によって、その定款が正当な手続きにより作成されたことを証明する手続きです。定款認証には、公証人の報酬約5万円と印紙代4万円(電子申請の場合には印紙代不要)が必要となります。さらには定款の謄本手数料2,000円などが必要となります。
株式会社においては、後日になって、株主と業務執行者、業務執行者間、株主間などでトラブルが発生した場合に、「本来の会社のルールはどうであったか」が問われることがあります。このとき、設立時に作られた定款で改ざんされてないものであることを保証するために認証があるのです。
一方、持分会社においては、オーナー=業務執行者であるため、株式会社のようなトラブルは起こりにくいと考えられ、認証までは求められていません。
まとめると、次のようになります。〇は必要であることを示しています。
会社の設立費用の違い
株式会社は、設立にあたって「株式会社設立登記申請書」を提出しますが、この登記申請にかかる登録免許税は、会社の資本金の「1,000分の7」です。ただし、税額が15万円未満になるときは、1件につき15万円となります。
一方、持分会社の登記申請にかかる登録免許税は、合同会社の設立登記の登録免許税も、会社の資本金の「1,000分の7」です。ただし、税額が6万円未満になるときは、1件につき6万円でとなります。合名会社、合資会社については1件につき6万円です。
そして、上記で説明した定款認証費用の有無が大きく異なります(下の表では電子申請でない場合とします)。
持分会社を設立するメリットは?
持分会社設立のメリットについてまとめると、次のようになります。
- 会社設立時の費用が安い
- 定款認証の必要がない
- 決算公告をする義務がない
- 株主総会等の機関を置かなくてもよい
- 出資者と経営者が同じため、意志決定が速い
持分会社は、資金調達においては株式会社のように大規模に行うことは難しいと言えます。しかし、事業が安定稼働し、組織を株式会社に変更することは可能です。
また、持分会社は設立手続きが株式会社に比べて簡単だと言われています。どのような手続きなのかを次で見ていきましょう。
持分会社の設立手続きは?
2006年に改正された会社法では、会社設立において設立者の視点に立った規制の見直しが行われました。新たに創設された合同会社の設立手続きは簡易であると言われます。
例として一般的な合同会社の設立手続きは次のようになります。
| 定款の作成 | 定款を作成し、社員全員が署名・押印する | |
| 出資(金銭、現物出資)の履行 | 社員は登記をするときまでに、出資に係る金銭の全額を払い込むか、出資に係る金銭以外の財産の全部を給付する | |
| 設立の登記申請※ | 本店の所在地において登記申請する 添付書類として、定款、出資を証する書面、代表社員の印鑑証明書などが必要 登録免許税の納付 | |
| 成立 | 合同会社の成立 |
※申請方法は、持参、郵送のほかオンライン申請も可能です。

持分会社に社員が入社・退社するときの注意点は?
持分会社に社員が入社することや持分会社から社員が退社することは、会社のメンバーが変動するだけでなく、会社の根本である「出資」つまり、資本金と密接な関係があります。
持分会社への入社とは
新たな社員を合同会社に迎えるにあたって、現社員全員が新たな社員の加入に同意する必要があります。
持分会社の定款には、社員の氏名及び住所を記載することとされています。そして、持分会社においては定款の変更時にも社員全員の同意を必要とします。したがって、新たな社員を加えるために定款を変更する手続きが発生するのです(登録免許税が発生します)。
さらに、基本的に社員は出資をしなければなりません。会社法では、有限責任社員にあっては金銭等に限るとされていますから、例えば合同会社に入社するためには出資金が必要となります。もちろん、出資する金額についても元社員全員の同意が必要となります。
持分同会社からの退社とは
持分会社の社員は一定の要件の下、やむを得ない事由により退社することが認められています。退社した社員は、その持分の払戻しを金銭で受けることができるとされます。したがって、持分会社の社員が退社するにあたっては、「出資の払戻し」を考える必要があります。つまり、社員の退社により会社の資本金が減り、かつ、現預金が減ることになります。
これは会社にとって大きな影響を与える事項となります。社員の退社が会社の解散理由となることさえあるのが持分会社の大きな特徴と言えるでしょう。
事業に適した企業形態を検討しましょう
株式会社と異なり、社員の技量や影響力、さらに社員間の信頼関係が会社運営に大きな影響を与えるのが持分会社です。持分会社の中では有限責任社員のみからなる合同会社の設立が一番多いようですが、設立にあたっては社員を1人にするか、複数名にするかはよく検討する必要があるでしょう。
よくある質問
持分会社とはどんな会社ですか?
持分会社とは、株式会社における株主にあたる「社員」が持分をそれぞれ持っている会社であり、合名会社、合資会社、合同会社の3つの形態があります。詳しくはこちらをご覧ください。
有限責任社員と無限責任社員の違いは?
例えば、会社が1億円の借金を残して倒産したとき、有限責任社員は自分が出資した額までの責任で済みますが、無限責任社員は身銭を切ってでも責任を取らなければならない、といった責任範囲が異なります。 詳しくはこちらをご覧ください。
持分会社の定款認証は必要?
持分会社においては、オーナー=業務執行者であるため、株式会社のようなトラブルは起こりにくいと考えられ、定款の認証までは求められていません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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