- 更新日 : 2025年12月3日
定款に定める「公告方法」はどう選ぶのが正解?費用等から検討!
会社の設立に際して決めなければならない事項のひとつに、公告の方法があります。会社が設立を公告をする方法は、定款の絶対的な記載事項ではありませんが、ほとんどの定款に記載されています。
そこで今回は、公告が必要になる場合や公告方法の種類、おすすめの公告方法など、定款に定める公告方法について解説していきます。
目次
会社には公告義務がある
会社法第440条で、株式会社は貸借対照表を公告しなければならないと定めています。いわゆる決算公告です。この公告を怠ったり、不正な公告をしたりした場合には、100万円以下の過料というペナルティが用意されています。
そのほか、合併や分割や資本金の減少など、会社の債権者に不利益が出るおそれがある場合にも公告をする義務があると規定されています。これらの公告は、債権者に異議を申し出る機会を与えるためのものであり、債権者保護手続きとして行われています。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気のガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
会社設立時に決めることチェックリスト
「会社設立時に決めることチェックリスト」では、会社設立の基本事項や、株式会社・合同会社別の決めることチェックリストなどを、1冊にまとめています。
図解でカンタンにまとめており、完全無料でダウンロードいただけます。
補助金をまるっと理解!会社設立時の補助金ガイド
補助金の概要や各制度の内容に加え、会社設立直後の企業でも使いやすい補助金や実際の活用事例などについてまとめました。
「使えたのに知らなかった!申請が漏れてた!」といったことを防ぐためにも、会社設立時の資金調達方法の一つとしてお役立てください。
法人成り手続きまるわかりガイド
初めて法人成りを考える方に向けて、法人成りの手続きや全体の流れ、個人事業の整理方法など、必要な情報をわかりやすくご紹介したガイドです。
多くの個人事業主の方にダウンロードいただいておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。
起業家1,040人への調査でひも解く!先輩起業家が一番困ったことガイド
マネーフォワード クラウド会社設立では、会社設立の経験がある方1,040名に対して、会社設立に関する調査を実施しました。
先輩起業家が悩んだ部分や、どのように会社設立を行ったかを、定量的に分析していますので、ぜひご活用ください。
公告をするタイミング
会社法には、決算公告は定時株主総会後「遅滞なく」行う必要があると記されています。「遅滞なく」というのは、「直ちに」や「速やかに」ほどの即時性は求められず、急ぐ必要はあるが、やむを得ない理由があれば、多少遅れても仕方がないというようなイメージです。
一方、合併や資本減少など債権者保護手続きのための公告は、当該事項を決定した時点で行います。
3種類の公告方法
会社の公告方法には、次の3種類があります。
- 官報
- 日刊新聞紙(時事に関する事項を掲載するもの)
- 電子公告
どの公告方法を選ぶかは自由ですが、日刊新聞紙または電子公告によって公告する場合には、その旨を定款で決めておかなければなりません。定款で公告方法を決めなければ、自動的に、官報によって行うものとみなされてしまうからです。
電子公告の場合、公告を掲載するアドレスを定款に記載する必要はありませんが、登記は必要です。なお決算公告などは、定款に定めた方法で行いますが、合併時などの債権者保護手続きに関する公告は、必ず官報で行う必要があります。
官報公告とは
官報は、政府が毎日発行している新聞のようなもので、約9割の会社が公告方法として官報を選択しているといわれています。
官報は、独立行政法人国立印刷局が発行しており、法律・政令・条約などの公布や公告などが掲載され、国民に広く知らせる役割を担うものです。土日・祝日と年末年始以外は毎日発行されます。会社の合併や吸収分割・新設分割、組織変更、資本金や準備金の減少、解散についての広告は、会社法で官報による公告が義務付けられているのです。
官報に会社設立を公告する場合は、官報販売所に連絡をして掲載を依頼しましょう。官報販売所のサイトから、インターネットで申し込みも可能です。必要事項を記入し、広告の原稿を入力します。その後、原稿を校正し、問題なければ校了、掲載となります。
官報掲載ルールとして、以下のようなものがあります。
- 番地には漢数字の「千」「百」「十」は使用しない。ただし、丁目には「十」を使用する。
- 日付には漢数字の「十」を使用する。
- 官報の掲載頁中3桁には「十」を使用しない。
また、決算公告で官報を利用する場合、貸借対照表や損益計算書の要旨のみの掲載で良いとされています。
いつまでに会社設立を広告する必要があるのか、については、明確に定められているわけではありません。しかし、前述のとおり決算公告は定時株主総会後「遅滞なく」行う必要があると定められています。基本的には、設立から1〜2ヶ月以内に公告することが多いです。
日刊新聞紙とは
日刊新聞紙とは、会社法第939条第1項第3号で定められている「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙」のことです。日本経済新聞などの全国紙はもちろん、東京新聞などの地方紙でも問題ありません。ただし、スポーツ新聞や隔日・週刊などの新聞は、日刊新聞紙として認められていないため、注意が必要です。
日刊新聞紙に公告を掲載してもらう場合は、上記のような新聞を発行する新聞社に依頼しましょう。決算公告の場合、官報と同様に貸借対照表や損益計算書の要旨のみの掲載で問題ありません。ただし、官報より掲載に費用がかかる点は、要注意です。
電子公告とは
電子公告とは、会社のホームページや帝国データバンクなど、インターネット上で情報を公開することによって行う方法です。
平成17年2月1日から施行された「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律」により、電子公告が新たに認められました。
自社のホームページであれば費用はかからず、すぐに掲載できるのがメリットです。しかし、電子公告の場合は、決算公告であっても貸借対照表や損益計算書の要旨だけではなく、全文を公開する必要があります。また、5年間公告を掲載する必要がある点に注意が必要です。
おすすめの公告方法は?
では、どの公告方法を選択するのがよいのでしょうか。
それぞれの公告方法の費用
まず日刊新聞紙による公告ですが、掲載費用が50万円以上必要と、非常に高額であるため、この方法を採用する会社はごく少数しかありません。したがって、これから会社を設立するのなら、官報または電子公告の二択ということになります。
債権者保護手続き等の公告とは異なり、決算公告は毎年必要であるため、公告にどの程度の費用がかかるのかは、公告方法を選ぶ際のひとつの目安になります。官報公告であれば、1年間の費用は6万円程度です。
一方、電子公告は、会社のホームページ上などに掲載すれば良いので、ほとんど費用はかかりません。つまり、決算公告に限れば、電子公告が圧倒的にお得ということになります。
ところが、債権者保護手続きに関する公告については事情が異なります。電子公告の場合、「法律で定められた公告期間中、継続的に公告が掲載されていた」ことを証明しなければならず、そのため、専門の機関に調査委託する必要があります。そして、この費用が10万円以上することもあり、多くの場合、官報よりも高額になります。
決算公告は電子公告、債権者保護手続きは官報公告
つまり、決算公告は電子公告で行い、債権者保護手続きについては、官報で行うというのが理想的※といえます。いかにも都合の良すぎる考え方ですが、会社法はそれを認めています。
具体的な方法としては、まず定款に定める公告方法を「官報に掲載する方法により行う」とします。その上で、「貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項」として、公告を掲載するアドレスを登記するのです。
※決算公告を電子公告で行い、債権者保護手続を官報で行う方法は、マネーフォワード クラウド会社設立では対応しておりません。
こうすることによって、決算公告には費用をかけず、債権者保護手続きの際にも最低限の費用で公告を行うことができるようになります。
ただし、官報等による決算公告では、貸借対照表の要旨を掲載するだけで良いところ、電子公告による場合は、貸借対照表の全てを、5年間掲載しなければならないため注意が必要です。
なお、合同会社の場合には、決算公告の義務がなく、電子公告を選択するメリットがないので、官報公告がおすすめです。
公告方法の変更の仕方
会社の公告方法を変更することは可能ですが、ほとんどの会社では定款に記載されているため、株主総会の特別決議が必要です。
また、登記事項であるため、変更するには変更登記を申請しなければならず、その際には登録免許税3万円を納付しなければなりません。
電子定款と電子公告を組み合わせたコスト削減
公告方法として電子公告を選択する企業は、会社設立時の「電子定款」活用も併せて検討すべきです。電子定款とは、紙の定款をPDF化し電子署名を付与したもので、印紙税法上、収入印紙代4万円が不要になるメリットがあります。
この節約分は、電子公告運用に必要な自社ウェブサイトの構築・維持費用に充てることができます。定款で電子公告を選択した場合、公告掲載用URLの登記が必要となるため、早期のサイト準備が求められます。電子定款による初期費用削減は、こうしたデジタルインフラ整備の原資として有効活用できるのです。
また、設立時から電子定款を採用し、決算公告も電子化することで、一貫したペーパーレス化とコスト削減を実現できます。官報公告では決算公告に年間約6万円かかるところ、電子公告なら費用はほぼゼロ。設立から運用まで、デジタル化による経済的メリットを最大限に享受できる組み合わせといえるでしょう。
マネーフォワード クラウド会社設立の利用者へのアンケートによると、電子定款の利用者は98.07%(紙定款の利用者は1.93%)というデータがあります。
出典:マネーフォワード クラウド会社設立、利用後のユーザー様へのアンケート(回答者:1449名、集計期間:2022年7月~2025年9月)
しっかり検討して、会社に合った公告方法を選択しよう!
公告方法によっては、思わぬ費用がかかったり、余計な手間が必要になったりするおそれがあります。ほとんどの会社が官報を選んでいるからと安易に考えるのではなく、これから会社を設立するのであれば、公告方法もしっかりと検討して決めるようにしましょう。
よくある質問
おすすめの公告方法は?
決算公告は電子公告で行い、債権者保護手続きについては、官報で行うのがおすすめです。詳しくはこちらをご覧ください。
公告方法の変更はできる?
会社の公告方法を変更することは可能ですが、ほとんどの会社では定款に記載されているため、株主総会の特別決議が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
定款の関連記事
新着記事
弁護士は儲からない・稼げない・食えないは嘘?年収の実態や業界の将来性も解説
「弁護士は儲からない」「稼げない」「食えない」——。かつて高収入の代名詞であった弁護士について、このような言葉を耳にする機会が増えました。司法制度改革による弁護士人口の急増や競争激化を背景に、「弁護士になって後悔した」という声すら聞かれるの…
詳しくみる不用品回収は儲かる?ビジネスモデルや儲からない理由、開業方法、年収・月収まで解説
不用品回収ビジネスが儲かると注目されています。しかし、その具体的なビジネスモデルや、開業後のリアルな収益について疑問を持つ方も多いでしょう。 この記事では、いわゆる廃品回収業で利益を生む儲かる仕組みから、必要な許可、フランチャイズの活用法、…
詳しくみる派遣会社設立は儲かる?経営者の年収や利益率、マージン率、儲かる仕組みまで解説
派遣会社設立は儲かるビジネスとして注目されることがありますが、その経営は容易ではありません。実際の平均営業利益率は約1.2%と低く、薄利多売になりがちです。加えて資金繰りリスク等もあり、高い収益を上げ、経営者として高い年収を得るには、緻密な…
詳しくみる珍しい野菜で儲かる仕組みを作る!品種選びや栽培方法、高付加価値な販売戦略まで解説
農業経営において高い収益を目指す際、珍しい野菜の栽培は競合農家との差別化を図る有効な手段です。しかし、ただ珍しいだけでは儲かるとは限りません。 この記事では、珍しい野菜で儲かる仕組みを作るために、その希少価値を付加価値に変え、ブランド化して…
詳しくみる竹パウダーは本当に儲かる?ビジネスモデルや作り方、粉砕機の価格なども解説
放置竹林の問題解決と新たな収益源を両立させる可能性を秘めた「竹パウダー」。しかし、「竹パウダービジネスは本当に儲かるのか?」「どうやって作るのか?」「デメリットはないのか?」といった疑問が、成功への第一歩を阻んでいるかもしれません。 この記…
詳しくみる太陽光発電は儲かる?実際の収支や利回り、やめたほうがいい理由まで解説
太陽光発電は本当に儲かるのでしょうか。実際、儲かったという声もあれば、やめたほうがいいという意見も存在します。 この記事は、太陽光発電投資を検討する方に向けて、収益性の実態、利益を生み出す仕組み、実際の収支シミュレーション(実質利回り)、そ…
詳しくみる


