• 更新日 : 2024年7月16日

【チェック付】インクルージョンとは?企業の導入手順を簡単に解説

インクルージョン(Inclusion)とは「包括・包含」を意味し、ビジネスにおいては「従業員一人ひとりの違いが受け入れられ、個々の能力が活かされている状態」のことです。単に多様な人材がいるだけでなく、全員が組織に参加し、貢献できているかどうかが焦点となります。

近年、多様な人材の確保が難しくなり、採用してもすぐに辞めてしまうといった課題を抱える企業が増えています。これらを解消し、組織の成果を最大化するために、インクルージョンは欠かせない考え方となりました。

本記事では、言葉の定義からダイバーシティとの違い、企業の導入手順までをわかりやすく解説します。

インクルージョンとは?

インクルージョンとは、組織内のすべての人が「居場所がある」と感じ、自分らしく貢献できている状態を指します

「個」が尊重され、組織と一体化している状態

インクルージョンが実現されている職場では、マイノリティ(少数派)であるかどうかにかかわらず、個人の意見や特性が尊重されます。意思決定プロセスに参加できたり、独自の視点が業務に活かされたりすることが特徴です。これにより、従業員は「自分はこの組織に必要とされている」という帰属意識を持つことができます。

ダイバーシティ(多様性)との違い

ダイバーシティは「人材の多様さ(属性の違い)」を指すのに対し、インクルージョンは「その多様性が活かされている状態」を指します。よく使われる例えに、「ダイバーシティはパーティーに招待されること、インクルージョンはダンスに誘われること」という言葉があります。

参照:“𝘿𝙞𝙫𝙚𝙧𝙨𝙞𝙩𝙮 𝙞𝙨 𝙗𝙚𝙞𝙣𝙜 𝙞𝙣𝙫𝙞𝙩𝙚𝙙 𝙩𝙤 𝙩𝙝𝙚 𝙥𝙖𝙧𝙩𝙮. 𝙄𝙣𝙘𝙡𝙪𝙨𝙞𝙤𝙣 𝙞𝙨 𝙗𝙚𝙞𝙣𝙜 𝙖𝙨𝙠𝙚𝙙 𝙩𝙤 𝙙𝙖𝙣𝙘𝙚.”Vernā Myers|Linked in

例えば、多国籍な社員や高い専門性を持つシニア人材を採用(ダイバーシティ)しても、彼らの意見を聞かずに会議を進めているなら、インクルージョンはありません。彼らに話を振り、その意見を議論に取り入れて初めて(ダンスに誘われて初めて)、組織の競争力が高まります。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)への進化

近年は、ダイバーシティ(D)とインクルージョン(I)に、エクイティ(Equity:公平性)を加えた「DE&I」という概念が主流です。

経済産業省の調査報告書によると、エクイティとは「人材が能力を十分発揮できるよう、制度や業務プロセス等における阻害要因を是正し、適切な機会を提供すること」と定義されています 。

例えば、育児・介護中の社員に対して、時間や場所に縛られずに成果を出せるよう「フルリモート勤務やフレックス制度」で制約を取り払うことや、経験が異なる社員に対して、不足している知識を補う「オンボーディング支援」を行い、早期に専門性を発揮できる土台を作ることなどです。

どの社員にもパフォーマンスを最大化させる戦略的なアプローチをすることが、結果として企業価値の向上につながります。

参照:企業経営におけるDEI(ダイバーシティ&エクイティ&インクルージョン)の浸透や多様な人材の活躍に向けた調査事業 報告書|みずほリサーチ&テクノロジーズ(経済産業省委託事業)(令和6年度経済産業政策関係調査事業)

なぜ企業にインクルージョンが必要なのか?

企業経営においてインクルージョンが求められる理由は、市場環境の変化と労働人口の減少に対応するためです。

労働力不足の解消と人材定着

少子高齢化が進む日本において、従来の「日本人・男性・正社員」を中心とした採用だけでは、事業の維持が困難です。 女性、シニア、外国人、障がい者など、多様な人材を受け入れる体制がなければ、人手不足倒産のリスクが高まります。インクルージョンがある職場は心理的安全性が高く、離職率を抑制できるため、採用コストの削減にも寄与します。

イノベーションの創出と企業価値の向上

同質的なメンバーだけで議論をしても、新しいアイデアは生まれにくく、変化の激しい市場ニーズに対応できません。 異なる背景を持つメンバーが意見を出し合うことで、従来の常識にとらわれないサービスや商品が生まれます。また、DE&Iへの取り組みはESG投資の観点からも評価対象となり、株主や取引先からの信頼獲得、ひいては企業価値向上に直結します。

インクルージョン推進がもたらすメリット

インクルージョンに取り組むことで、従業員エンゲージメント(意欲)の向上と、意思決定の質が高まります。結果として、企業の組織パフォーマンスが向上します。

従業員エンゲージメントと生産性の向上

自分の意見が尊重される環境では、従業員の仕事に対する意欲(エンゲージメント)が高まります。 「失敗しても責められない」「異論を唱えても排除されない」という心理的安全性が担保されると、報告・連絡・相談がスムーズになり、ミスやトラブルの早期発見につながります。結果として、業務の手戻りが減り、チーム全体の生産性が向上します。

意思決定の質の向上とリスク回避

多様な視点からの意見を統合することで、意思決定の死角をなくすことができます。 特定の層だけで物事を決めると、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)により、一部の顧客ニーズを見落としたり、コンプライアンス上のリスクを招いたりすることがあります。

インクルーシブな議論を経ることで、多角的な検証が可能となり、ビジネスの失敗確率を下げられます。

【実践編】明日からできるインクルージョンの取り組み

大掛かりな制度変更の前に、日々の業務の中でできるインクルージョン施策があります。

会議運営のルールを見直す

会議において特定の人ばかりが発言しないよう、進行ルール(ファシリテーション)を工夫します。 例えば、「発言を遮らない」「役職に関係なく全員が一度は発言する」「否定から入らない」といったグランドルールを設けます。

また、発言が苦手な人のために、チャットツールでの意見出しや、事前のアイデア共有を許可することも有効です。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を知る

「男性だから残業できるだろう」「若手だから経験不足だ」といった無意識の思い込みに気づく機会を作ります。 社内研修やワークショップを通じて、自身のバイアスを自覚するだけで、コミュニケーションの質が変わります。

管理職が率先して「自分にも偏見があるかもしれない」という姿勢を示すことが、風通しの良い職場づくりの第一歩となります。

柔軟な働き方の選択肢を用意する

時間や場所の制約を取り払うことで、様々な事情を持つ人が働き続けられる環境を整えます。 テレワーク、フレックスタイム制、短時間勤務制度などは、育児・介護中の社員だけでなく、通院が必要な社員や、集中して作業したい社員にとっても有益です。

制度があるだけでなく、「使っても評価が下がらない」という空気醸成もセットで行う必要があります。

インクルージョンを社内に浸透させる5つのステップ

組織にインクルージョンを定着させるには、経営層のコミットメントから始め、制度と意識の両輪で進めます。

STEP1:現状の把握(サーベイ・ヒアリング)

自社の現状を数値や定性データで把握します。 従業員満足度調査(エンゲージメントサーベイ)や匿名のアンケートを行い、「意見が言いやすいか」「公平に評価されていると感じるか」などを調査します。ここで見えた課題が、取り組みの優先順位を決める根拠となります。

STEP2:経営層による方針の明文化と発信

経営トップが「なぜやるのか」を自身の言葉で語り、コミットメントを示します。 「流行りだからやる」のではなく、「わが社の成長のために必要だ」というメッセージを明確にします。企業理念や行動指針(バリュー)にインクルージョンの要素を組み込み、全社的な目標として掲げることが求められます。

STEP3:制度・環境の整備

多様な人材が物理的に働きやすい環境を整えます。 これには、バリアフリー化やジェンダーフリートイレの設置といった設備面だけでなく、人事評価制度の改定も含まれます。例えば、長時間労働を評価する仕組みを廃止し、時間当たりの成果やチームへの貢献度を評価項目に加えます。

STEP4:意識改革・研修の実施

制度を作っても、使う人の意識が変わらなければ形骸化します。管理職向けのマネジメント研修、全社員向けのDE&I研修などを実施します。特に管理職は、多様な部下をマネジメントするスキルが求められるため、1on1ミーティングの技法や、ハラスメント防止に関する教育を重点的に行います。

STEP5:効果測定とフィードバック

取り組みの結果を定期的に測定し、改善サイクルを回します。女性管理職比率、男性の育休取得率、障がい者雇用率などのKPI(重要業績評価指標)に加え、サーベイのスコア推移をモニタリングします。成果が出た事例を社内で共有し、称賛することで、インクルーシブな文化を根付かせます。

【簡易診断】組織のインクルージョン度チェックリスト

自社の現状に当てはまる項目にチェックを入れてください。経営層だけでなく、現場のリーダーやメンバーと一緒に実施することで、認識のズレを発見できます。

No.質問項目チェック
01会議では、役職や社歴に関わらず、全員が発言する機会がある
02メンバーが反対意見や懸念を述べたとき、否定されずに受け止められている
03失敗やトラブルを報告しても、個人攻撃されず「仕組み」の改善議論になる
04「男性は営業、女性は事務」のような、性別・年齢による無意識の役割固定がない
05育児・介護・通院などの事情がある社員が、罪悪感なく制度を利用できている
06重要な意思決定のプロセスや背景が、現場メンバーにも共有されている
07雑談や業務外の会話において、個人の趣味や価値観が尊重されている
08リモートワークと出社組の間で、情報格差や評価の不公平感がない
09評価基準が明確で、「長時間労働=頑張っている」という風潮がない
10経営層やリーダーが「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性を言葉にしている
  • チェックが0〜3個: 要注意。まずは会議での「発言ルール」作りから始めましょう。
  • チェックが4〜7個: 発展途上。制度の利用しやすさや、評価の納得感を高める施策が必要です。
  • チェックが8個以上: インクルージョン先進企業。さらに多様な人材の採用・活躍に挑戦してください。

インクルージョン導入時によくある課題と対策

インクルージョン推進においては、現場からの反発や誤解が生じることがあります。

「逆差別」という不満への対応

例えば、女性など特定の属性への支援を手厚くすると、男性社員から優遇されすぎではないか、という不満が出ることがあります。 これを防ぐためには、「全員が働きやすくなるための取り組みである」ことを繰り返し説明する必要があります。

エクイティ(公平性)の概念を伝え、支援が必要な人に必要なリソースを配分することの合理性を説きます。

コミュニケーションコストの増加

多様な価値観を持つ人が集まれば、合意形成に時間がかかり、初期段階では業務効率が落ちたと感じることがあります。 これは一時的な投資期間と捉えるべきです。阿吽の呼吸で進む組織は楽ですが、変化に弱くなります。

丁寧に言語化し、対話を重ねるプロセス自体が組織の筋肉となり、長期的には強靭なチームワークを生み出します。

インクルージョンは組織の成長戦略そのもの

インクルージョンとは、すべての従業員が個性を活かし、組織の一員として尊重されている状態のことです。単なる福利厚生やCSR(社会的責任)活動ではなく、人手不足を解消し、企業の競争力を高めるための「成長戦略」です。

ダイバーシティ(多様性)を取り入れ、エクイティ(公平性)を担保し、インクルージョン(包括)を実現することで、従業員は安心して能力を発揮できるようになります。まずは会議での小さなルール作りや、現状を知るアンケートから始めてみてはいかがでしょうか。小さな一歩の積み重ねが、選ばれる強い企業を作ります。

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