- 更新日 : 2024年7月12日
サプライチェーンとは?構成要素や導入手順などを解説
サプライチェーンとは、ある商品の「原材料調達」から「消費者の手元に届く」までの一連のプロセスを指します。現代のビジネスにおいて、サプライチェーンの構築および管理は重要な経営課題の1つだといえます。
一方で、サプライチェーンにはさまざまなリスクが潜んでいたり、問題点を抱えていることも少なくありません。
そこで本記事では、サプライチェーンの概要をはじめ、サプライチェーンマネジメント(SCM)の実施手順やよくある課題の解決策などについて解説します。
目次
サプライチェーンとは
はじめに、サプライチェーンについて解説します。
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、原材料調達をはじめ、製造や販売という工程を経て、最終的に消費者に商品やサービスが届くまでの一連の流れを指します。なお、サプライチェーンは自社だけではなく、原材料メーカーや物流会社などの取引先企業も含みます。
サプライチェーンは一連の流れがそれぞれ「鎖」のようにつながっていることから、日本語では「供給連鎖」と呼ばれています。
企業が収益を上げるためにはサプライチェーンをしっかりとつなげ、そのつながりを維持することが重要です。
バリューチェーンとの違い
サプライチェーンと似た言葉に、バリューチェーンというものがあります。
両者の共通点は、商品やサービスが消費者に届くまでの流れに関連する言葉である点です。しかし、サプライチェーンは「消費者に商品が届くまでのプロセス」であるのに対して、バリューチェーンは「各プロセスが商品にどのような付加価値を与えているか」にフォーカスしている点が異なるといえます。
サプライチェーンの構成要素
サプライチェーンは主に次の要素で構成されています。
構成要素 | 概要 |
---|---|
調達 | 商品を製造するために必要となるさまざまな原材料を各メーカーなどから仕入れる作業を指す。 |
製造(生産) | 原材料をもとに商品を作り出すことを指す。 |
在庫管理 | 製造した商品の在庫を管理することを指す。 過度な在庫は商品の劣化や保管費用の増大を招く。 一方で在庫切れは機会損失につながる。 |
物流 | 製造した商品を全国の店舗などに輸送することを指す。 |
販売 | 輸送された商品を店舗などで販売することを指す。 |
サプライチェーンマネジメントの実施手順
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、サプライチェーン全体を最適化する取り組みのことです。
サプライチェーンマネジメントに取り組むことで、コスト削減やリードタイム短縮などの効果が期待できます。
本章では、サプライチェーンマネジメントの実施手順を解説します。
STEP1. 自社サプライチェーン上の課題特定および改善目標設定
まずは自社のサプライチェーンを構成する要素を整理した上で、サプライチェーンの各要素および全体に潜んでいる課題や問題点を検出しましょう。
課題や問題点を把握したら、それぞれの課題などに対して改善目標を設定する必要があります。
STEP2. デジタル化の可否検討
次はサプライチェーンを構成する各要素について、デジタル化の可否を検討します。
サプライチェーンのデジタル化を実現できれば、効率的なサプライチェーンマネジメントが可能となります。
ただし、デジタル化はあくまでも複数存在する手段の1つであるため、費用対効果などを十分に考慮した上で検討することが重要です。
STEP3. システムの選定
導入すべきシステムはサプライチェーンの構成要素によって異なります。
サプライチェーンマネジメント全体には、SCMシステムやERPシステムの導入が有効です。
ただし、SCMシステムはサプライチェーンのみに対する最適化・効率化がメインとなります。
一方でERPは、サプライチェーンを含む企業全体のリソースや情報の一元管理を行えます。
STEP4. 従業員に対する教育
サプライチェーンを円滑に進めるためには、従業員に対して導入したシステムのトレーニングを行う必要があります。
サプライチェーンマネジメントによってさまざまなメリットを得られる可能性はありますが、それは従業員が期待する成果を出すことが前提となります。
そのため、現場で働く従業員に対して丁寧な説明や教育を行いましょう。
STEP5. システム運用(監視と改善)
全ての準備が整ったらシステムの運用を開始しましょう。
なお、システム運用後も定期的にサプライチェーンを監視し、課題や問題点の早期検出および対策の検討・実施を繰り返すことが重要です。
サプライチェーンマネジメントの課題と解決策
本章では、サプライチェーンマネジメント(SCM)に関するよくある課題と解決策を紹介します。
外的要因に関するリスク
サプライチェーンに関するリスクは、内的要因と外的要因の2つに分けられます。
特に注意したいのは外的要因に関するリスクです。
例えば、サプライヤー側の問題(品質低下・納期遅延)などによって、サプライチェーン全体がネガティブな影響を受けるリスクなどが考えられます。
また、世界情勢や天候なども外的要因によるリスクの1つです。
このような外的要因によるリスクへの対策としては、以下が有効です。
- サプライヤーの選定基準厳格化
- 複数のサプライヤーとの関係構築
- BCP計画の策定
非効率なリソース配分
実は定期的にサプライチェーンを改善している企業は多くありません。
多くの企業では、時間の経過とともにサプライチェーンが複雑化し、気付かない内に非効率な状態に陥っているケースがあるのです。
また、グローバル化やビジネススピードそのものがアップしていることも複雑化を助長している原因の1つだといえます。
このようなサプライチェーンの複雑化によって、企業のリソースが適切に配分されていない(そもそも正しくリソースが管理されていない)ケースが少なくありません。
全体最適を考慮したリソース配分を行うためには、ERPなどの導入によって企業内に存在するあらゆる情報を、一元的かつリアルタイムに管理することが有効です。
サプライチェーンマネジメントの改善事例
本章ではサプライチェーンマネジメントの改善事例として、次の2社を紹介します。
産業車両の販売およびサービスを事業とするT社
T社は各種製品の在庫データを手動でスプレッドシートに入力していましたが、正確な在庫情報が管理できない、納品までに時間を要するなどの課題を抱えていました。
クラウド型のERP導入後は、さまざまな拠点に存在する複数のオフィスから倉庫まで、在庫データの一元管理に成功。
結果的に従業員の生産性向上や、納期までのリードタイム短縮を実現しました。
アパレル小売業A社
A社は毎年6,000個のアイテムを展開するアパレルメーカーです。
同社はこのような莫大なアイテムの在庫情報を正確に管理できていないことに課題を感じていました。
そこでERPを導入し、リアルタイム性のある在庫管理を実現。
その結果、顧客ごとにカスタマイズされた商品提案やプロモーションを行うことが可能となりました。
顧客が自分の好みやニーズが理解されていると感じることで顧客満足度も高まったため、大幅な成約率アップにも成功しました。
まとめ
本記事ではサプライチェーンの概要をはじめ、サプライチェーンマネジメント(SCM)の課題および解決策や改善事例などを解説しました。
サプライチェーンマネジメントに関するさまざまな課題を解決するためには、サプライヤー選定やマルチ化をはじめ、ERP導入なども有効です。
自社のサプライチェーンに関して課題を感じている方は、ぜひERPの導入もご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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