- 更新日 : 2024年7月12日
【簡単に】サプライチェーンとは?仕組みや手順・SCM事例を解説
サプライチェーンとは、製品が完成するまでの原材料や部品の仕入れから、製造工程、在庫の管理、物流、販売を通じて、最終的に消費者へ届けられるまでの一連のプロセスを指します。
2025年の物流法改正を経て、モノを運ぶコストと難易度が上がった現在、このつながりを最適化できるかどうかが企業の利益に影響します。
本記事では、経営者やバックオフィス担当者が今押さえておくべきサプライチェーンの基礎知識から、最新のセキュリティリスク、業務を効率化するマネジメント手法(SCM)までをわかりやすく解説します。
目次
サプライチェーンとは?
サプライチェーンは、自社だけではなく取引先や物流業者を含めた「供給の連鎖」を指します。「Supply(供給)」と「Chain(連鎖)」という言葉が示す通り、一つの製品ができるまでには、多くの企業や部門が鎖のように繋がっています。
私たちは普段、スーパーで食品を買ったり、ネット通販で家電を注文したりします。その商品が手元に届くまでには、国境を越え、数え切れないほどの人々の手が関わっていることを意識する機会は少ないかもしれません。
ビジネスにおいてこの流れを理解すると、コスト管理やリスク対策につながります。
原材料から消費者までの5つの工程
サプライチェーンは、原材料の調達から消費者に届くまでを、一つの鎖(チェーン)に見立てた概念です。
サプライチェーンは主に5つのプロセスで構成されています。これらがスムーズに連携することで、私たちは欲しい時に欲しい物を手に入れることができます。
- 調達:原材料や部品をサプライヤーから仕入れる
- 製造:工場で製品へと加工・組み立てる
- 物流:物流センターや倉庫へ輸送・保管する
- 販売:小売店やECサイトを通じて顧客へ提供する
- 消費:ユーザーが製品を利用する
例えば、あなたがカフェで飲む一杯のコーヒーを想像してみてください。
そのコーヒー豆は、南米やアフリカの農園で栽培・収穫(調達)され、加工工場で焙煎(製造)されます。
その後、船やトラックで海を越えて日本の倉庫へ運ばれ(物流)、カフェやスーパーマーケットに並び(販売)、ようやくあなたの手元に届く(消費)のです。
バリューチェーンとの違い
サプライチェーンは「モノの流れ」、バリューチェーンは「価値の積み上げ」に着目した考え方です。
サプライチェーンがいかに効率よくモノを届けるか(Supply)を重視するのに対し、バリューチェーン(価値連鎖)は、各工程でどのような付加価値(Value)が生み出されたかを分析し、競合優位性を探るために用いられます。
| 項目 | サプライチェーン | バリューチェーン |
|---|---|---|
| 視点 | モノと情報の流れ | 価値の付加とコスト |
| 目的 | 供給の効率化・全体最適 | 競合優位性の確立 |
| 関与者 | 自社+取引先・物流会社 | 自社内の活動が主 |
業界別の具体例(製造業・建設業・小売業)
業界によってチェーンの長さや関わるプレイヤーの複雑さが異なります。
基本的な構造は同じですが、業種ごとに特徴的な課題があります。
- 製造業(自動車など):
部品点数が数万点に及ぶため、調達先が多岐にわたります。例えば、小さな「半導体」や「ボルト」が1つ不足するだけで、完成車のライン全体が停止し、大規模な損失につながるリスクがあります。 - 建設業:
「元請(ゼネコン)→下請→孫請」という重層構造が特徴です。海外からの「木材」や「住宅設備(トイレ・給湯器)」の納入が遅れると、工期(スケジュール)全体が遅延し、施主への引き渡しができなくなる恐れがあります。 - 小売業:
消費者の需要変動をダイレクトに受けます。「季節限定のスイーツ」や「流行のアパレル」などは、販売データ(POSデータ)を即座に調達へ反映させなければ、大量の売れ残り(廃棄ロス)や販売機会の損失につながります。
サプライチェーンマネジメント(SCM)はなぜ必要?
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料の調達から消費までの全プロセスを一元管理し、最適化する経営手法です。
従来は「調達部」「製造部」「営業部」がそれぞれの目標で動いていました。たとえば、製造部は「安く作るために大量生産したい」と考え、営業部は「欠品させないために在庫を多く持ちたい」と考えます。これらが連携しないと、過剰在庫という大きなムダが発生します。
SCMは、企業や組織の枠を超えて情報を共有することで、全体としての効率化を目指します。
中小企業がSCMに取り組むメリット
中小企業がSCMに取り組むメリットは、在庫リスクの低減によるキャッシュフローの改善と、正確な納期管理による顧客からの信頼度向上です。
在庫が適正化されキャッシュフローが改善される
在庫は、会計上は「資産」として計上されますが、実態は「現金化されるのを待っている」状態です。
これが長く続くと手元の現金が減り、黒字倒産のリスクさえ生まれます。
SCMの考え方を取り入れ、販売予測に基づいて必要な分だけを調達・製造できるようになれば、在庫回転率が上がり、キャッシュフローが改善します。
データに基づいた判断ができるようになるのがSCMの強みです。
機会損失の防止と顧客の信頼獲得につながる
在庫過多も問題ですが、逆に欠品(在庫切れ)も大きな痛手です。
特に中小企業の場合、大手取引先からの注文に対し「在庫がないので来月になります」と答えてしまうと、「納期の守れない会社」というレッテルを貼られ、次の取引がなくなる恐れがあります。
サプライチェーン全体を可視化し、調達から納品までのリードタイムを正確に把握しておけば、無理な受注を避けることも、早めに手を打って納期を守ることもできるようになります。
中小企業がSCMに取り組まない場合のリスク
需要予測のズレが増幅し、過剰在庫や欠品による機会損失を招きます。
SCMが機能していない状態でよく起こる現象に「ブルウィップ効果」があります。
これは、消費者の需要がわずかに変化しただけでも、小売→卸→メーカー→部品工場へと情報が伝わる過程で、その変動幅が大きくなってしまう現象を指します。たとえば、ある商品が通常より少し売れた際に、各段階の担当者が欠品を防ごうとして注文数を上乗せしたり、情報伝達にタイムラグが生じたりすることが主な原因です。
サプライチェーンの上流に遡るほど実際の需要とはかけ離れた発注量の振れ幅が生じ、結果として過剰な在庫や不要な設備投資を抱え込むことになりかねません。これは資金繰りを悪化させ、経営を圧迫する大きな要因となります。
【2026年】直面しているサプライチェーンリスク
2026年現在、サプライチェーンを取り巻く環境は厳しさを増しています。経営者が認識し対策すべき3つの主要リスクを紹介します。
慢性的な物流危機(2024年問題のその後)
2024年の法改正によるドライバーの時間外労働規制適用から1年半以上が経過し、輸送能力の不足とコスト増は一時的なものではなく、構造的な課題として定着しました。
荷物を運びたくても車両が確保できなかったり、輸送費の高騰が利益を圧迫したりする状況は今後も続く見込みです。2030年に向けてさらなる人手不足が予測されるため、積載率の向上や物流DXによる省人化など、抜本的な対策が急務となっています。
高度化するサプライチェーン攻撃(セキュリティ)
セキュリティ対策が手薄な取引先や子会社を侵入経路として悪用し、ターゲットとなる企業へ攻撃を仕掛ける手口です。
ランサムウェアなどのサイバー攻撃は年々巧妙化しています。自社のセキュリティを強固にしていても、ネットワークでつながっている関連会社や委託先の脆弱性を突かれることで、被害を受ける事例が増加しています。特に中小企業は、大企業へ侵入するための起点として狙われるケースが多く見られます。サプライチェーン全体でセキュリティレベルを統一し、包括的な対策を講じることが必須です。
地政学リスクの高まりと調達網の分断
国際情勢の不安定化により、特定の国やルートからの供給が寸断されるリスクです。
ここ数年で顕在化した地政学的な緊張や、気候変動による災害リスクによって、海外からの部品供給が突如停止する事例が後を絶ちません。特定の国や1社のサプライヤーに依存するリスクは以前にも増して高まっています。事業継続計画、いわゆるBCPの観点からも、調達先の分散や国内回帰を含めた調達網の再構築が検討されています。
サプライチェーンを最適化する手順
自社のサプライチェーンを見直し、効率化するためのステップを解説します。いきなりシステムを入れるのではなく、まずは現状把握から始めることが肝要です。
STEP1. 現状の可視化と課題特定
モノと情報の流れを図式化し、どこに滞留やムダがあるかを洗い出します。
まずは自社のサプライチェーンを構成する要素(調達先、倉庫、配送ルートなど)をすべて書き出します。
その上で、「特定の倉庫に在庫が長期間滞留している」「発注から納品までの情報伝達に時間がかかっている」といった箇所を確認します。アナログな電話やFAXでのやり取りがボトルネックになっているケースが多く見られます。
STEP2. デジタル化とデータ連携
アナログデータをデジタルに置き換え、部門間で共有できる状態にします。
紙の伝票や属人的なExcel管理から脱却します。
在庫数、発注数、販売数などのデータをデジタル化し、関係者がいつでもアクセスできるようにします。クラウドサービスを活用すれば、外出先やテレワーク環境からでも状況を確認できるようになります。
STEP3. システム(ERP)の選定と導入
全社のデータを一元管理できるERPなどのシステムを導入し、自動化を進めます。
部分的なツールではなく、会計・人事・販売・在庫などの基幹業務を統合管理できるERP(Enterprise Resource Planning)システムが有効です。
サプライチェーンの情報と会計情報が連動することで、「どの製品がどれだけ利益を出しているか」がリアルタイムで分かるようになります。選定時は、自社の規模や業種に合った機能があるか、サポート体制は十分かを確認しましょう。
STEP4. 従業員教育と運用定着
システムを使う現場の従業員に対し、操作方法と導入目的を丁寧に教育します。
高機能なシステムを導入しても、現場が使いこなせなければ意味がありません。また、「なぜやり方を変えるのか」という目的が伝わっていないと、現場の反発を招くこともあります。
マニュアルの整備や研修を行い、新しい業務フローを定着させます。
STEP5. AI活用も含めた継続的な改善
KPIを設定し、最新技術も取り入れながら微調整を繰り返します。
「在庫回転率」や「欠品率」などの指標(KPI)を監視し、目標通りに運用できているか確認します。
最近ではAIによる需要予測機能を備えたシステムも普及しており、これらを活用してさらに精度を高めていく改善(PDCA)サイクルを回すことが重要です。
企業のSCMの取り組み事例
企業のSCM(サプライチェーンマネジメント)の具体的な取り組み事例を、公式情報を基に5社紹介します。
1. トヨタ自動車:トヨタ生産方式(TPS)
「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」作る「ジャスト・イン・タイム」を徹底し、在庫のムダを極限まで排除しています。後工程が前工程に取りに行く「かんばん方式」により、サプライチェーン全体での製造リードタイム短縮とキャッシュフローの最大化を実現しています。
参照: トヨタ生産方式|トヨタ自動車
2. ニトリホールディングス:製造物流IT小売業
商品の企画から原材料調達、現地生産、輸入、店舗販売、配送までをすべて自社グループで完結させる独自のビジネスモデルを構築しています。商社や物流会社への中間マージンをカットすることで、圧倒的な低価格と高い利益率を両立させ、品質管理も徹底しています。
3. ファーストリテイリング(ユニクロ):有明プロジェクト
全商品にRFID(ICタグ)を貼付し、瞬時の在庫管理やセルフレジ会計を実現しました。「情報製造小売業」を掲げ、Google等と提携して顧客の要望や販売データをリアルタイムに分析し、その情報に基づいて必要な分だけ生産・供給する体制へと変革しています。
参照:有明プロジェクトについて(PDF)|ファーストリテイリング
4. 味の素・カゴメ他(F-LINE):食品物流プラットフォーム
深刻化するドライバー不足や物流コストの上昇に対処するため、競合関係にある食品メーカー5社(味の素、カゴメ、日清製粉ウェルナ、ハウス食品グループ本社、Mizkan)が協力体制を構築しました。「競争は商品で、物流は共同で」を理念に、共同配送や物流拠点の共有化を行い、積載率向上とCO2削減を実現しています。
5. コマツ:KOMTRAX(コムラックス)
自社の建設機械にGPSやセンサーを搭載し、世界中の車両の位置や稼働状況を遠隔監視するシステムです。盗難防止だけでなく、稼働データから「部品の交換時期」や「地域の需要」を正確に予測し、最適なタイミングで部品や新車を供給する高度な在庫管理に活用しています。
参照: KOMTRAX(機械稼働管理システム)|コマツカスタマーサポート
サプライチェーンマネジメント(SCM)で企業の未来を拓く
サプライチェーンとは、原材料から消費者に届くまでのビジネスの一連の流れです。2026年現在、物流の制約やリスクの多様化により、情報を連携させて全体最適を図る「サプライチェーンマネジメント(SCM)」が重要になっています。
部門や企業の壁を超えてデータを共有し、ERPなどを活用してリアルタイムにリソースを配分することが、災害や変化に強い企業を作ります。まずは自社の現状を見直してみてはいかがでしょうか。
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最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
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