• 更新日 : 2025年4月3日

景品表示法(景表法)とは?禁止事項や違反となる事例、罰則をわかりやすく解説

ECサイトを開設・運営する人が増えています。中には会社員をしながら副業としてECサイトの運営を始めるか検討している方もいるでしょう。

ネットショップに限らず、お店で商品の販売の際に粗品や賞品などを付ける場合、注意すべき法律に「景品表示法」があります。この記事では、景品表示法の概要、制限や禁止事項、注意すべきポイントのほか、違反した場合の罰則などについて解説していきます。

景品表示法(景表法)とは

景品表示法は、一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止するために景品類の最高額、総額等を規制する法律です。正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といいます(昭和37年法律第134号)。

オンラインショップや実店舗など何かしらのお店を運営する場合、粗品やおまけなどの景品をつけることで売上につなげたいというのは、ごく自然な発想です。しかし、過大な景品に惑わされた消費者が質のよくない商品や割高な商品やサービスを購入してしまい、不利益を被る可能性があります。

一方、事業者も過大景品による競争をエスカレートさせて商品やサービスの質の向上に力を入れなくなり、本末転倒になってしまうケースがあります。

景品表示法は、こうした悪循環を防ぐ目的で制定されています。景品表示法違反については、消費者庁が所管しています。

景品表示法の不当表示の禁止とは

景品表示法では、消費者に実際よりも著しく優良又は有利と誤認させる不当な表示を禁止しています。「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般を意味しています。

具体的には、チラシ・パンフレット・カタログ、ダイレクトメール・ファクシミリ広告、新聞・雑誌・出版部、テレビ・ラジオのCM、ネット上の広告、メールなど広範に及びます。

景品表示法で禁止されている不当表示には、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他誤認されるおそれのある表示」の3つの種類があります。

優良誤認表示の禁止

優良誤認表示(法5条1項1号)とは、商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示であり、以下のものが挙げられます。

  • カシミヤ混用率が80%程度のセーターであるにもかかわらず、「カシミヤ100%」と表示したような場合
  • 「この技術を用いた商品は日本で唯一、当社のものだけ」と表示しているものの、実際は他の競争業者でも同じ技術を用いた商品を販売している場合

なお、故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、優良誤認表示に該当する場合は、景品表示法の規制対象となります。

また、優良誤認表示を効果的に規制するため、不実証広告規制が設けられています。消費者庁長官は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、期間を定めて事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。

この場合、事業者が求められた資料を期間内に提出ない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、その表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(法7条第2項、法8条第3項)。

有利誤認表示の禁止

有利誤認表示(法5条1項2号)とは、商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示のことであり、以下のものが挙げられます。

  • 当選した先着100人だけが割安料金で契約できると表示していたところ、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていたような場合
  • 「他社商品の半額です」と表示していながら、実際には、他社と同程度の料金にすぎなかったような場合

有利誤認表示でも、故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、上記に該当する場合は、規制対象となります。

その他の禁止されている表示

その他の禁止されている表示(法5条1項3号)とは、商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ、総理大臣が指定する表示であり、以下の6つが挙げられます。

  1. 無果汁の清涼飲料水等についての表示
  2. 商品の原産国に関する不当な表示
  3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  4. 不動産のおとり広告に関する表示
  5. おとり広告に関する表示
  6. 有料老人ホームに関する不当な表示

景品表示法の景品類の制限及び禁止とは

景品表示法における「景品類」とは、次の3つのいずれにも該当するものを指しています。

  1. 顧客を誘引するための手段であること
  2. 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供すること
  3. 物品、金銭その他の経済上の利益であること

これらを踏まえて、どのような景品規制があるのかみていきましょう。

一般懸賞に関する景品金額の上限規制

商品・サービスの利用者に対し、くじなどの偶然性、特定行為の優劣などによって景品類を提供することを意味します。

具体的には、一部の商品だけに景品類を付けて、外観上それが判別できないケースやパズル・クイズなどの解答の正誤によって提供するケースなどが該当します。

懸賞による取引価額は、5,000円未満の場合で最高額は取引価額の20倍、5,000円以上の場合で10万円が最高額になっており、いずれの場合も総額は懸賞に係る売上予定総額の2%とされています。

共同懸賞に関する景品金額の上限規制

商品・サービスの利用者に対し、一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供することです。

具体的には、お中元や歳末セールの時期に商店街が実施するケースなどが該当します。

共同懸賞における景品類の限度額は、最高額や取引価額にかかわらず30万円、総額は懸賞に係る売上予定総額の3%とされています。

総付景品に関する景品金額の上限規制

懸賞ではなく、商品・サービスを利用したり、来店したりした人にもれなく景品類を提供することを意味します。

具体的には、商品・サービスの購入者全員に提供するケース、来店者全員に提供するケース、申込みまたは入店の先着順に提供するケースなどが該当します。

総付景品の限度額は、取引価額が1,000円未満の場合には最高額が200円、1,000円以上の場合は取引価額の10分の2とされています。

景品表示法の改正によりステマ規制が導入

2023年10月から、景品表示法にステマ(ステルスマーケティング)規制が追加されました。ステマ規制とは、広告であることを隠して商品やサービスを宣伝することへの規制を指します。

ステマに該当する宣伝方法としては、第一に「企業自身が第三者になりすまして行う宣伝」が挙げられます。単に企業が自社の公式サイトなどで商品を宣伝する場合はまったく問題ありません。しかし、例えば一般消費者になりすましてSNSや口コミサイトで「このサプリを飲んだら体の調子が良くなった」などとアピールすることはステマに該当します。

第二に、企業がインフルエンサーや芸能人・有名人に「宣伝であることは隠して自社商品についてSNSに投稿してください」などと高評価を依頼することも、ステマ規制の対象です。インフルエンサーなどに自社商品の宣伝を依頼する場合は、必ず企業から依頼を受けての宣伝であることがわかる投稿をしてもらうようにする必要があります。

ステマ規制に反しただけで罰金が科せられることはありませんが、ステマの事実が一度でも世間に知られると、企業の信用が大きく失墜することになりかねません。また、ステマをしただけでなく表示内容に「優良誤認」や「有利誤認」といった不当表示があると認められる場合は、措置命令とともに100万円以下の罰金が科せられることもあるため注意しましょう。

景品表示法に違反した事例

どのような表示をすると景品表示法違反に該当するのかについては、実際の事例を知ることでイメージが湧きやすくなります。そこで、実際に景品表示法に違反した事例を4つ紹介します。

「おせち」と称する加工食品

Webサイト上で、自社で販売するおせち料理のメニュー内容として「キャビア」「焼き蛤」などと記載し、あたかもそれらが対象のおせちに入っているかのように一般消費者に思わせたケースです。実際は、対象商品のおせちには上記食材は入っておらず、別の食材が入っていました。

これが景品表示法第5条(第4条第1項)第1号の「優良誤認」に該当すると判断されています。

痩身効果を標ぼうする食品

Webサイト上で、自社の商品について「余分なブヨブヨを燃やして流す」などと記載することにより、あたかも対象商品を摂取するだけで簡単に痩身効果が得られると一般消費者に思わせたケースです。

該当企業は、上記記載内容を裏付ける合理的根拠を示せなかったため、景品表示法第7条(第4条)第2項、第5条(第4条第1項)第1号に基づき「優良誤認」と判断されました。

スーパーで販売する食料品

スーパーのチラシに、実際の販売価格に「当店価格」と称する比較対照価格を併記することで、あたかも実際の販売価格がいつもの価格よりも安いかのように一般消費者に思わせたケースです。

実際は、「当店価格」と称する比較対照価格は該当スーパーで販売予定あるいは販売されていた価格ではありませんでした。これが景品表示法第5条(第4条第1項)第2号の「有利誤認」に該当すると判断されました。

スーツ等衣料品

チラシやテレビCMにおいて「スーツ・コート・ジャケット 全品半額」などと記載することにより、あたかも店舗で販売されるスーツ・コート・ジャケットの全商品が表示価格の半額で買えるかのように表示したケースです。

実際は、一定金額以上のスーツ・コート・ジャケットのみが表示価格の半額で買えるというものでした。この表示が景品表示法第5条(第4条第1項)第2号の「有利誤認」に該当すると判断されました。

景品表示法に違反した場合の罰則

景品表示法に違反した場合、消費者庁や都道府県による措置命令等を受けることがあります。不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、まず、消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。

調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為をしないことなどを命ずる「措置命令」を行います。

また、事業者が不当表示をした場合、消費者庁から課徴金の納付を命じられる可能性があります。

景品表示法に関するガイドライン

景品表示法で定められた規制の内容をより具体的に示すために、消費者庁ではさまざまなガイドラインを作成しています。

ここでは、景品表示法に関するガイドラインの中から4つを紹介します。

インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項

このガイドラインは、インターネットを使用した取引について景品表示法上で気をつけなければならない点を示したものです。口コミサイト、フラッシュマーケティング(割引クーポン等を期間限定で販売する マーケティング手法)、アフィリエイトプログラム(販売事業者のサイトへのリンク広告を貼るサイトに対し、リンク広告のクリック回数等に応じた報酬が支払われる広告手法)などについて、不当表示に該当する具体例や注意点が解説されています。

「おとり広告に関する表示」等の運用基準

「おとり広告」とは、商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、あたかも購入できるかのような表示を指します。おとり広告と判断されると、消費者庁から措置命令を受けることになります。

一方、現実問題として、商品が想定よりも早く完売してしまい、欠品状態となることもあるでしょう。どこまでがおとり広告にあたるのか、その線引きについて運用基準や事例をガイドラインに記載しています。

比較広告に関する景品表示法上の考え方

「比較広告に関する景品表示法上の考え方」は、適正な比較広告の要件や注意事項を示すガイドラインです。

景品表示法第5条は、企業の商品・サービスについて、競合他社のものよりも、著しく優良・有利であると一般消費者に誤認される表示などを不当表示として規制しているものの、比較そのものは禁止していません。

そこで、どのような比較広告であれば適正といえるのか、本ガイドラインに沿って判断できるようになっています。

メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方

このガイドラインは、2010年代にレストランやホテルのメニューや食品に関する偽装表示が相次いだことを受け、その対策として公表されたものです。

料理のメニューや食品の表示について、社会常識や用語の一般的な解釈、社会的に定着していると認められる基準などを踏まえて、一般消費者がそのメニュー表示から受ける印象・認識との間に差が生じる可能性が高いといえるかを個別の事案ごとに判断できるように作られています。

その他景品表示法関連のガイドライン

景品表示法関連のガイドラインは多数あり、上記で紹介したもの以外にも以下のようなガイドラインがあります。

  • 「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
  • 「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
  • インターネット上で行われる懸賞企画の取り扱いについて
  • オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について

景品表示法に関して事業者が注意すべきポイント

不当表示等を未然に防止するため、事業者は、その規模や業態、取り扱う商品またはサービスの内容等に応じ、必要かつ適切な範囲でガイドラインに挙げられている具体的な措置を講ずる必要があります。

具体的には、次の7つの措置を講じなければなりません。

  1. 景品表示法の考え方の周知・啓発
    景品表示法に関する勉強会を定期的に開催することなどが該当します。
  2. 法令遵守の方針等の明確化
    法令遵守の方針を社内規程、行動規範として定めることなどが該当します。
  3. 表示等に関する情報の確認
    生産・製造・加工が仕様書・企画書と整合しているかどうか確認することなどが該当します。
  4. 表示等に関する情報の共有
    社内イントラネットや共有電子ファイルを利用して、関係従業員が表示等の根拠となる情報を閲覧できるようにしておくことなどが該当します。
  5. 表示等を管理するための担当者等(表示等管理担当者)を定めること
    会社のトップが表示等を管理している場合にトップを「表示等管理担当者」と定め、自ら表示等の内容を確認するケースなどが該当します。
  6. 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
    表示等の根拠となる情報を記録し、保存しておくことなどが該当します。
  7. 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
    不当表示してしまったときに関係していた従業員に対して必要な教育・研修等を改めて行うことなどが該当します。

景品表示法について正しく知っておきましょう

景品表示法の概要、制限や禁止事項、注意すべきポイントのほか、違反した場合の罰則などについて解説してきました。景品表示法を遵守することは、企業やショップのイメージを大切にする上でも非常に重要です。

ショップを運営し、景品等の提供を企画している場合は、景品表示法とともにガイドラインを確認しておきましょう。


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