- 更新日 : 2025年4月3日
契約書のドラフト(draft)とは?ビジネスでの意味や確認・修正のやり方を解説
契約書を作成することになった場合、相手方から「ドラフトはどちらが作りますか」と聞かれることがあります。今回はドラフトの意味や、ドラフトを作ることで得られるメリット、ドラフトの修正方法、修正できない場合の対処方法について解説します。
目次
契約書のドラフト(draft)の意味
ドラフトとは、英語の「draft」のことで、「草稿」や「下書き」という意味です。したがって契約書におけるドラフトは、契約書の下書きを意味します。契約を締結する場合、内容の大枠については口頭で議論し合意しますが、細かい点については契約書のドラフトを作成して、相互に確認しながら文言を修正していくのが一般的です。
ドラフトを修正する過程で、口頭で議論していた時には気づかなかった問題を発見することがあります。その場合は再度協議を行い、契約条項に反映していくことになります。
契約書のドラフトの作成は当事者自らが作ることもあれば、弁護士や行政書士などの専門家に依頼して作ってもらうこともあります。専門家に依頼するメリットは、法令に適合しているかチェックしてもらえることと、合意内容を正確に反映してもらえることです。一方で、専門家に依頼するデメリットは、費用がかかることです。
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契約書のドラフトとひな形の違い
契約書のドラフトとひな形は似ているようで、役割が異なります。
ドラフトは、特定の取引内容を反映させるための下書きであり、当事者間で協議を重ねながら修正し、最終的な契約書へと仕上げていくものです。
一方、ひな形は、汎用的に使える契約書のテンプレートであり、基本的な条項が記載されていますが、実際の契約内容には合致しない場合があります。
ひな形を利用すれば、ゼロから契約書を作成する手間は省けますが、そのまま使うと個々の契約に合わない部分が生じることもあります。そのため、ひな形をベースにドラフトを作成し、細かい部分を調整するのが一般的です。
ドラフトを作成することで、契約の内容をより具体的に詰めることができ、抜け漏れやリスクを防ぐことにもつながります。
契約書のドラフトを作成するメリット
契約書のドラフトを作成するメリットは、書面化することで契約の細かい点について確認できることです。上司の決裁や確認を取る必要がある場合でも、ドラフトを見せて確認を取ったり、修正指示を受けたりすることができます。
契約書のドラフトは修正が可能であることと、相手との交渉による変更ができることもメリットです。これらについて詳しく解説します。
契約内容の確認・修正ができる
契約書のドラフトを作成することで契約内容を確認でき、間違いがあった場合は修正することができます。人間が行うことなので、タイプミスや認識の相違などが発生することがありますが、契約書のドラフトを複数の人がチェックすることでそれらを未然に防ぐことができます。
契約書のドラフトを作成せずに契約書を交わすと、後で間違いが見つかった場合に修正する手間と時間がかかります。契約書を作り直して決裁を取り直し、製本して記名・押印をしなければならないからです。
契約書のドラフトを作ることは、間違いのない契約書を作ることにつながります。これが契約書のドラフトを作ることで得られる最大のメリットといえるでしょう。
相手との交渉による変更もできる
契約の内容は強行規定等に反しない限り、両当事者が合意すれば自由に定めることができます。前述のとおり、契約の実務では話し合いで大枠の合意を形成し、契約書のドラフトを作成して細かい点を詰めていきます。
つまり契約書のドラフトをたたき台として、細かい点についての交渉が行われます。本来であれば、細かい点についての交渉だけが行われることになりますが、事情が変わった場合には、大枠での合意を変更して大幅に契約内容を変えることもあります。これも、契約書のドラフトと作成するメリットといえます。
ドラフトであれば修正が容易なので、まずは大まかに作成し、徐々に精度を高めていくことができるというメリットもあります。
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契約書のドラフトで確認すべきポイント
契約書のドラフトが送られてきたら、内容を細かくチェックすることが重要です。契約は一度締結すると後からの変更が難しいため、初めの段階で認識の齟齬をなくし、合意内容を正しく反映させることが求められます。
契約の内容に、自社に不利な条項が含まれていないかはもちろんのこと、以下のようなポイントにも気をつける必要があります。
契約内容に間違いや抜け漏れがないか
契約の目的や範囲が明確になっているかを確認しましょう。契約書に記載された当事者の情報が正しいか、業務内容や納期、支払条件などに誤りがないかもチェックが必要です。特に、口頭で合意した内容が契約書に反映されているかは慎重に確認すべきポイントです。あとで「そんな話はしていない」と言われないためにも、文書として明文化されていることを必ず確かめましょう。
契約条項が法律に適合しているか
契約書の条項が、関連する法律や業界の規制に違反していないかを確認することは非常に重要です。例えば、消費者契約法や独占禁止法に抵触するような条項が含まれていないか、取引の内容に応じた適切なルールが守られているかをチェックする必要があります。特に、業界ごとに適用される法律やガイドラインが異なるため、業務内容に即した条文になっているか慎重に見直しましょう。
契約書全体の整合性と文書の精度
契約書の条項同士が矛盾していないかを確認することも忘れてはいけません。例えば、支払条件と違約金の条項で内容が食い違っていると、どちらの条項が優先されるのかが問題になります。また、契約書内で使われている用語が統一されているか、誤字や脱字がないかも重要なポイントです。契約書は正式な文書であるため、細かなミスがあってもそのまま締結すると、後々問題になる恐れがあります。
契約書のドラフトの修正方法
両当事者が契約書のドラフトの内容を確認し、細かい点について修正を加えていきます。ドラフトを修正する方法には、変更履歴を用いて修正する方法とコメント機能を使って修正する方法があります。これらの修正方法について解説します。
変更履歴で修正する
契約書のドラフトを作成する際はMicrosoft社のWordを使うことが多いため、Wordでの変更履歴機能の使い方を紹介します。なお、バージョンによって多少操作が異なる場合があります。まず、Wordで契約書のドラフトを作成します。
相手方に渡す前に「校閲」のタブをクリックします。その中に、「変更履歴の記録」という項目があり、デフォルトでは「オフ」になっているので、それをクリックして「オン」にします。
操作はこれだけです。変更履歴の記録をオンにすると、それ以降文字を追加したり削除したりした場合は、文字色が変わるため追加・削除された箇所がわかります。契約の相手方が修正を希望する箇所を変更すると、その箇所の色が変わるためすぐにわかります。
修正箇所を確認して問題がなければ、「校閲」タブの中にある「承諾」というボタンをクリックすると、修正箇所が本文として確定します。修正が受け入れられない場合は、「元に戻す」ボタンをクリックすると元の文書に戻ります。
コメント機能を使う
変更履歴には修正がしやすいというメリットがありますが、相互に修正を加えていくとオリジナルの文書がどうだったのか、わからなくなるというデメリットがあります。その場合は、コメント機能を使って修正を進める方法もあります。
コメント機能は、「校閲」タブをクリックして、コメントを入れたい箇所にカーソルを当てて「新しいコメント」を選択します。すると右側にコメント欄が表示されるので、そこにどのように修正して欲しいかを記入します。
コメントを受け取った側は、それが受け入れられる内容であれば、契約書のドラフトにその内容を反映し、再度相手方に確認を依頼します。受け入れられない場合は、コメントの下に受け入れられない理由を書いて相手に送ります。
契約相手の修正をさらに修正する方法
契約相手が修正を行った場合、それを受け入れられるのであれば反映するだけで済みますが、「このままでは受け入れられないが、一部修正すれば受け入れられる」という場合は再度修正が必要になります。
契約相手の修正をさらに修正する方法には、上書きする方法と文書に追記する方法があります。これらについて詳しく解説します。
上書きする
契約の相手方が修正した内容を確認し、受け入れられない部分を上書きして修正する方法です。常に最新の状態になるので条項が読みやすく、内容を確認しやすいというメリットがあります。ただし、相手方が修正した内容が上書きによって消えるため、どちらがどのように修正したかわからなくなってしまうというデメリットがあります。もっとも、相手方が修正したドラフトを別の名前を付けて保存しておけば修正の過程がわかるので、このデメリットは回避できます。
文書に追記する
上書きする方法では相手が修正した内容が消える可能性があるため、相手が修正した部分はそのままにして追記するという方法もあります。追記する方法は、相手の修正部分も自分の修正意見も表示されるので、修正のやり取りの記録が残るのがメリットです。一方で情報が多くなる分、わかりにくくなるというデメリットがあります。
契約書のドラフトが修正できない場合の対応方法
契約書のドラフトをPDFファイルなどで受け取って、開いてみたら修正ができないようにロックがかかっていることがあります。ロックをかけている理由は、相手が勝手に内容を変更した契約を締結してしまうことを避けるためです。
これは相手との信頼関係にもよりますが、会社の方針として契約書のドラフトは編集不可に設定して送付することをルールとしているところもあります。この場合はどうすればよいのでしょうか。
まずは相手に連絡して修正したい箇所がある旨を伝え、どうすればよいか確認するとよいでしょう。そうすれば、修正可能なファイルを再送してくれるかもしれません。修正可能なファイルを再送してくれない場合は、相手がメールで修正箇所を教えて欲しいということであればメールで連絡し、印刷して手書きで追記して欲しいということであれば手書きで追記して、PDF化して返送するとよいでしょう。
ドラフト作成に自信がなければ専門家の方に確認依頼しよう
今回は契約書のドラフトの意味や、契約書のドラフトを作成するメリット、ドラフトの修正方法などについて解説しました。契約の実務においては、契約書のドラフトを作成しないということは通常ありません。それくらい契約書のドラフトを作ることは重要です。
契約書のドラフトを作成するためには法律の知識だけでなく、契約書の様式や条項の作り方などの知識も求められます。一度契約書が交わされると契約書の内容が契約内容をとなるため、契約書のドラフトの作成に自信がない場合は、弁護士や行政書士などの専門家に確認してもらうことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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