- 更新日 : 2024年12月3日
英文契約書を作成するには?構成や記載内容、確認方法を解説
英文契約書の作成は、国際ビジネスにおいて重要なスキルです。本記事では、英文契約書の基本構成や作成のポイント、確認方法について詳しく解説します。
英文契約書の作成は、企業の国際展開を成功させるための第一歩です。 英文契約書作成に関する理解を深め、円滑な国際ビジネスの実現を目指しましょう。
目次
英文契約書と日本の契約書との違い
契約書は、商取引において重要な役割を果たしますが、国ごとに形式や重視する点が異なります。ここでは、英文契約書と日本の契約書の主な違いについて詳しく解説します。
口頭より契約内容を重視
英文契約書では、契約内容が特に重視されます。これは、口頭での約束よりも、書面に残された契約条項が優先されるとする英米法の考え方に基づくものです。
一方で、日本の契約書は当事者間の信頼関係を重視し、詳細な規定は設けず、概括的な内容に留めることが多い傾向にあります。
しかし、国際取引では文化や商慣習が異なる当事者間で信頼関係だけに頼るのは難しいため、英文契約書のように詳細な内容が明記された契約書に基づいて対応することが重要です。
より詳細な取り決めが必要
英文契約書は、日本の契約書とは異なり、詳細な取り決めが求められます。英米法では、契約書が「最終合意」を示すものとされ、契約内容を口頭証拠で補完することは原則として認められないためです。
国際標準の契約書では、すべての事項を契約書内に明確に記載し、有事の際の対応を具体的に定めることが求められます。日本とは異なる契約の重視点を理解し、誠実交渉への過度な期待を避けることが重要です。
日付や住所の位置
英文契約書では、表題の直後にある前文に、契約締結日や当事者の氏名、住所が記載されます。また、前文には取引内容や契約に至った経緯といった基本事項も含まれ、契約の全体像が示されます。
一方で、日本の契約書では、締結日や当事者情報は末尾の署名欄にまとめられるのが一般的です。このような記載位置の違いは、契約書における形式や慣習の違いを反映しています。
甲乙丙の扱い
英文契約書では、日本の契約書で使用される「甲」「乙」に相当する表現として、「Party A」「Party B」が一般的に用いられます。契約書の冒頭で当事者を「Party」として定義します。
ただし、海外の契約書では、当事者を具体的な役割に基づいて表記することが一般的です。例えば、売主は「Seller」、買主は「Buyer」といった形で記載されます。このような表記により、役割が明確になり、誤解を減らせます。
数字・通貨の扱い
英文契約書では、数字はアラビア数字と英語表記を併記するのが一般的です。これは、改ざん防止のためであり、数字に食い違いがある場合は、英語表記が優先されます。
通貨は、国名と通貨名を併記し、ドルの場合は「US dollars」のように発行国を明確にします。曖昧な表現は思わぬトラブルを招く可能性があるため、英文契約書では正確に記述することが重要です。
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英文契約書の作成で特に重要なポイント
英文契約書の作成時には、言語の壁や異なる法制度による誤解を避けるため、明確で具体的な条項設定が求められます。
特に国際契約においては、文化や法律の違いから紛争のリスクが増大するため、細心の注意が必要です。以下では、英文契約書の作成における重要なポイントについて詳しく解説します。
(準拠法)どの国の法律が適用されるか明確にする
英文契約書では、「準拠法」を明確に定めることが重要です。特に国際契約では、当事者が異なる国に所在しているため、各国の法律解釈の違いが紛争の原因となりかねません。そのため、契約書にはどの国の法律を適用するかを明記します。
ただし、日本法を準拠法としたとしても「法の適用に関する通則法」により外国法が適用される可能性もあるため、以下のような条項を加えることが一般的です。
「without reference to principles of conflict of laws 法の抵触ルールは適用しない」
(合意管轄条項)紛争時にどの裁判所で訴訟を行うか定める
英文契約書では、紛争発生時にどの裁判所が訴訟を取り扱うかを定める「合意管轄条項」を明記することが重要です。これは、準拠法とは異なり、裁判を行う場所に関する取り決めです。
多くの場合、準拠法と同一の国の裁判所を指定します。また、契約内容により、専属的合意管轄(特定の裁判所のみが管轄権を持つ)や、非専属的合意管轄(他の裁判所も管轄権を持つ可能性がある)のどちらかを選択します。
トラブル防止のためにも明確な表現を用いる
英文契約書では、誤解や解釈のズレによるトラブルを防ぐために、明確な表現を用いることが重要です。特に「promptly(すぐに)」や「reasonable time(合理的な時間)」といった曖昧な時間表現は避け、具体的な期限を記載します。
また、代名詞ではなく具体的な名詞を使用し、主観的な表現を避けることにより、双方が契約内容を正確に理解できるようにする必要があります。
英文契約書の基本構成
英文契約書の基本的な構成は、下表のとおりです。
| 構成項目 | 説明 | 記載例 |
|---|---|---|
| 表題(タイトル) |
|
|
| 前文 |
|
|
| 本文 |
|
|
| 後文・署名欄 |
|
|
| 別紙 |
|
|
各項目を正確に記載し、英文契約書の信頼性を高めましょう。
英文契約書でよく使われる表現・用語
英文契約書は、内容を理解するために一定の知識が必要な独特の言い回しが多く用いられます。特に以下の表現は頻繁に登場するため、あらかじめ覚えておくとスムーズに読み進められるでしょう。
| 英語の表現 | 意味 | |
|---|---|---|
| A | according to… | ~に従って |
| amend (amendment) | 変更する(変更) | |
| as of… | ~の時点で | |
| E | execute (execution) | 締結する(締結) |
| H | herein, hereof, hereunder | この契約書において |
| O | on behalf of… | ~を代理(代表)して |
| P | party | 当事者 |
| provided in…(stipulated in…) | ~に定められている | |
| provided that, however… | ただし~の場合には(例外) | |
| provided that… | ~の場合には | |
| S | shall… | ~するものとする(義務) |
英文契約書のレビュー・確認方法
英文契約書を確認する際の主なポイントは、以下のとおりです。
- 自社に不利な条項の確認
- 過去の契約書との比較
- 関連する他の契約との整合性
- 法的リスクの評価
以下で、それぞれ見ていきましょう。
自社に不利な条項の確認
英文契約書をレビューする際は、自社に不利な条項が含まれていないかを確認することが重要です。
契約は双方の合意に基づいて締結されるため、すべてを自社に有利な内容にするのは、現実的ではありません。しかし、自社の権利を適切に保護し、リスクを最小限に抑える努力は欠かせません。
さらに、民法や商法の原則と照らし合わせて不当な不利益がないかを確認し、不利な条項が見つかった場合は、相手方と調整を図る必要があります。
ただし、自社に有利な内容にしすぎると、違法となるリスクや相手方から拒絶される可能性もあるため、契約内容のバランスを保つことが重要です。
過去の契約書との比較
過去に同様の契約を締結したことがある場合は、差異を確認し検証することが重要です。特に相手方からのドラフトをもとにした場合は、過去の契約と比較し、不利益となる変更がされていないかを慎重にチェックする必要があります。
目視での確認だけでなく、機械的な比較ツールを活用して変更箇所を明確にすることで、自社の利益に影響を及ぼす修正が含まれていないかを確実に確認しましょう。
関連する他の契約との整合性
英文契約書と関連する契約との整合性を確認することは、法的トラブルを回避するうえで重要です。原契約に対して個別契約や覚書を締結する際には、双方の規定や条項に矛盾がないよう照合しなければなりません。
また、過去の締結済み契約を確認し、当事者間における約定内容の一貫性を担保することが求められます。契約期間や支払条件、準拠法といった重要事項については、慎重な照合が必要です。
法的リスクの評価
英文契約書のリーガルチェックは、日本法とアメリカ・イギリスの法制度(英米法)の差異を理解したうえで実施する必要があります。
なかでも、準拠法の確認は重要です。日本企業にとって、日本法を適用することで安心感を得られる場合が多いものの、契約内容や取引形態によっては英米法の影響を受けることも避けられません。
そのため、法的リスクを正確に評価するためには、各国の法制度に精通した専門家による詳細なチェックが不可欠です。
英文契約書へのサイン(署名)の書き方
英文契約書への署名(署名)欄では、署名者の氏名(Name)、役職(Title)、署名日(Date)を記入します。署名はボールペンや万年筆で行い、会社から署名権限を与えられた担当者によって行われることが一般的です。
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日付の記載は月/日/年の順にします。署名はローマ字で記載するのが通例です。これらの点に注意して、署名を行いましょう。
英文契約書のリーガルチェックを依頼するには?
英文契約書のリーガルチェックを依頼する際は、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。専門家は法令や判例に精通しており、契約内容の正確なチェックやトラブル予防のための条項を盛り込めるでしょう。
ただし、費用と時間がかかる点に留意する必要があります。弁護士の場合、リーガルチェックの費用相場は1件あたり5〜15万円程度ですが、顧問契約を結ぶことでコストを抑えられる場合もあります。定期的なリーガルチェックが必要な場合は、顧問契約を検討するとよいでしょう。
英文契約書の基本を押さえて、グローバルビジネスを加速させよう
英文契約書の作成は、国際ビジネスを成功に導く鍵となるため、詳細な内容の理解は欠かせません。日本と英米法の違いを意識しつつ、具体的な条項を設定し、言語や文化による誤解の防止に努めることが大切です。
特に準拠法や管轄条項の明確化、明確な条項の記載は必須であり、リーガルチェックにおいては法的リスクを評価することが求められます。英文契約書について理解を深め、正確で効果的な英文契約書を作成し、グローバルビジネスの成功へとつなげましょう。
なお、英文契約書の詳細は、以下の記事もあわせてご参照ください。
▶︎英文契約のルールは?基本的な構成やサイン前の注意点を解説
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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