- 更新日 : 2025年1月31日
業務委託契約書はどちらが作成?記載項目やチェックポイントも解説
業務委託契約書をどちらが作成するのかについては、実務上よく議論されるポイントです。
本記事では、業務委託契約書を作成する際の委託者と受託者の役割を解説し、記載すべき項目や重要なチェックポイントを紹介します。
さらに、契約書作成の義務やメリット、契約書のテンプレート、収入印紙の負担についても触れます。
目次
業務委託契約書とは
業務委託契約書は、企業が社外へ業務を委託する際に締結する書類です。業務委託契約書には、業務の委託内容や委託料、納期などを明記します。
業務委託では、業務を発注する委託者と、業務を受ける受託者が対等な関係を結ぶため、両者の間に雇用関係は存在しません。委託者は業務の結果に対して対価を支払う立場にあり、受託者は独立した事業者として業務を遂行します。
契約書の作成後は、両当事者が署名・押印し、それぞれ1通ずつ原本を保管するのが一般的です。業務委託契約書によって、業務内容や報酬、納期などの諸条件が明確化されるため、トラブルを未然に防げます。
業務委託の種類
業務委託契約には、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3種類があります。ここでは、3つの業務委託の種類について、それぞれの特徴を解説します。
請負契約
請負契約は、成果物の納品を目的とした業務委託です。例えば、ウェブサイトの制作やアプリ開発などが該当します。受託者は、契約で定められた通りの成果物を納品する義務があり、発注者はその成果物に対して対価を支払う契約です。
委任契約
委任契約は、法律行為を委託する契約です。弁護士や税理士などが、依頼者の代わりに法律行為を行う際に結ばれる契約が代表的です。受託者は、委託された業務を誠実に遂行する義務があり、その対価として報酬を受け取ります。成果物というよりも、業務の遂行自体が目的となる契約です。
準委任契約
準委任契約は、委任契約と業務の遂行という点では同様ですが、法律行為を伴わない業務の委任です。例えば、エンジニアリングサービスやコンサルティングサービスなどが該当します。委任契約のように、受託者が業務を遂行しますが、請負契約のように成果物も伴う場合もあります。
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業務委託契約書は委託者と受託者のどちらが作成する?
契約書の作成は、委託者と受託者のどちらが行っても問題ありません。法律で作成者が定められている場合を除き、自由に選択できます。
業務委託契約書の場合、契約の重要性を考慮し、利益を最大化したい側が主導して作成するほうが有利です。これは、作成者が自社の意向を契約内容に反映しやすいためです。
契約書において重要な条件や条項が曖昧であると、後々トラブルの原因となることがあります。そのため、契約書作成者が自社の事業戦略に基づいて内容を構築できることは、契約上のリスクを避けるためにも有利です。
例えば、委託者が自社の提供するサービスや商品に関連する条項を明確にし、受託者がそれに同意する形で契約を進めることで、業務の遂行が円滑になります。
また、受託者が作成する場合でも、自社のリスクを最小限に抑え、利益を適切に保護する条項を盛り込めるでしょう。このように、契約書の作成には、どちらの立場にとっても戦略的な意味があります。
一方、契約の重要性がそれほど高くない場合や、時間と手間を省きたい場合には、相手に作成を依頼することも考えられます。その場合でも、提出された契約書に目を通し、自社の意向が反映されているかをしっかり確認することが重要です。
業務委託契約書の作成は義務?
業務委託契約書の作成は、原則として義務ではありませんが、契約内容を明確にすることは、委託者と受託者双方にとって重要です。
ここでは、業務委託契約書は原則的に作成の義務がない点と、業務委託契約書を作成したほうがいい理由について解説します。
業務委託契約書は原則的に作成の義務がない
業務委託契約では、原則として契約書作成は義務づけられていません。ただし、特定の法律では契約書作成が必要です。
例えば、下請法第3条では、親事業者は下請け業者への書面交付が必要と定められています。建設業法第19条も、建設工事の請負契約について書面による契約が必要です。
さらに、2024年11月1日から施行されたフリーランス新法では、従業員を使用する業務委託事業者がフリーランスに業務を委託する場合、当該事業者に対して、契約条件を書面または電磁的方法で明示することが義務づけられています。
このように、原則として契約書作成は義務づけられていませんが、一部の取引では、書面契約が義務となっている点には注意しましょう。
業務委託契約書を作成したほうがいい理由
業務委託契約は、口頭でも成立しますが、書面で契約内容を明確にすることは、委託者と受託者双方にとって大きなメリットがあります。
契約書を作成する主な利点は、トラブルの回避です。業務範囲や報酬、知的財産権の帰属など重要な事項を明確に書面で合意することで、認識のズレや誤解を防ぎ、後々の紛争リスクを低減できます。契約書を取り交わすことにより、安心して業務に集中できるでしょう。
また、契約書は、万が一訴訟になった場合の証拠となります。口約束だけでは「言った言わない」の争いに発展する可能性もありますが、契約書があれば、合意内容を客観的に証明できます。
このように、法的義務はなくても、業務委託契約書を作成することは、双方にとって有益です。
業務委託契約書の記載項目
業務委託契約書の一般的な記載項目は、下表のとおりです。後日、揉めることのないよう、具体的内容を契約書に記載するようにしましょう。
| 記載事項 | 説明 |
|---|---|
| 委託業務の内容 |
|
| 委託料 |
|
| 契約期間 |
|
| 支払条件・支払時期 |
|
| 成果物の権利 |
|
| 再委託 |
|
| 秘密保持 |
|
| 反社会的勢力の排除 |
|
| 禁止事項 |
|
| 契約解除 |
|
| 損害賠償 |
|
| 契約不適合責任の発生期間 |
|
| 管轄裁判所 |
|
業務委託契約書を作成する際のチェックポイント
業務委託契約書は、委託者と受託者の双方にとって重要な役割を果たす書類です。契約内容が不明確であると、後々トラブルの原因になりかねません。
ここでは、トラブルを未然に防ぎ業務の円滑な遂行のためには、各自がどのようなポイントに注意すべきかについて、委託者と受託者それぞれの視点から解説します。
委託者のチェックポイント
委託者は、契約書の作成において業務内容や期間、金額を具体的に記載する必要があります。また、知的財産権の取り扱いや機密情報の管理に関する項目も明記しましょう。
受託者の行動により損害が発生した際の責任範囲や賠償金額も、後のトラブル防止のため明確に定めておくことが重要です。
なお、紙の契約書には契約金額に応じた収入印紙が必要になりますが、電子契約を活用すれば印紙代や管理の手間を省けます。3ヶ月以上の契約では、4,000円分の収入印紙が必要となるため、長期の契約を結ぶ場合は、電子契約にしたほうが経費を抑えられます。
受託者のチェックポイント
業務委託契約書は、報酬や業務内容、納期など、業務遂行上の重要な項目が明確に定められているかを確認することが重要です。
契約内容に不明点や疑問点があれば、必ず発注者に確認し、納得したうえで契約を締結しましょう。口約束だけでは、後々トラブルに発展する可能性があります。
書面として契約内容を明確化しておくことで、双方が安心して業務に取り組めます。曖昧な点を解消し、認識を一致させておきましょう。
業務委託契約書のテンプレート
ビジネスシーンにおいて、契約書は当事者間の合意内容を明確化し、後々のトラブルを避けるために重要な役割を果たします。契約書のテンプレートを活用すると、必要な条項を網羅でき、効率的に作成できるため便利です。
マネーフォワード クラウドでは、契約書の無料テンプレートをご用意しております。無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
業務委託契約書の収入印紙は委託者と受託者のどちらが負担する?
業務委託契約書の収入印紙は、基本的に作成した側が負担します。印紙税法第3条によれば、課税文書を作成した者が納税者です。そのため、通常は委託者と受託者がそれぞれ保管する契約書に貼る印紙代を負担します。
また、原本が1通のみでコピーを用いる場合は、原本を保管する側が印紙の負担をすることが一般的です。契約時の取り決めに応じて対応が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
チェックポイントを押さえて、慎重に業務委託契約書を作成しよう
業務委託契約書は、委託者・受託者のどちらが作成しても問題ありませんが、自社の利益を最大化したい側が先に作成したほうが有利です。
法的には作成義務がない場合でも、トラブル防止や権利関係の明確化のために、書面での契約は重要です。
必要な記載項目やチェックポイントを押さえ、双方が納得できる内容で契約を結ぶことによって、安心して業務に取り組める環境を作っていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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