- 作成日 : 2025年9月25日
10坪の飲食店で売上はいくら?目標設定から経営戦略まで解説
10坪ほどの飲食店で、どのくらいの売上が見込めるのかは一概には言えませんが、おおよその目安として、月に100万円から200万円の売上を目指すケースが多く見られます。ただし、このような数字を実現するためには、お店の立地や業種に合った現実的な売上計画を立てることがとても大切です。
本記事では、10坪の飲食店での売上目標の考え方、それに必要な開業費用や店内のレイアウト、さらに小さな店舗ならではの経営の工夫まで、わかりやすく解説していきます。
目次
10坪の飲食店で目指せる売上目標と計算方法
10坪の店舗で売上を考えるときは、現実的で無理のない目標を設定することがとても重要です。坪月商の目安としては、少なくとも10万円、平均15万円前後、繁盛店で20~30万円程度とされることが一般的です。
そのため、10坪であれば月商100万円~200万円が目安となります。ただし、これはあくまで一般的な参考値であり、店舗の場所や業種によって大きく変わる可能性があります。
売上目標の基本的な計算式
飲食店の売上は、以下のような基本的な式で考えることができます。この3つの要素を高めていくことが、売上アップのカギとなります。
- 客単価:1人のお客様が1回の来店で支払う平均金額のことです。ランチとディナーで金額が異なる場合や、業態によっても変わります(カフェ、ラーメン店、居酒屋など)。
- 席数:店内に設置されているお席の数です。10坪の広さであれば、厨房の大きさにもよりますが、だいたい10~15席程度が一般的です。
- 回転数:1日に同じ席に何人のお客様が入れ替わるかを表す数字です。ランチタイムでは2~3回、ディナーでは1~2回が目安とされています。
売上シミュレーションの具体例
たとえば、以下のような条件で1か月の売上をシミュレーションしてみましょう。
- 席数:12席
- 客単価:ランチ1,000円、ディナー3,500円
- 回転数:ランチ2回転、ディナー1.5回転
- 営業日数:25日
- 満席率:80%
- ランチ:1,000円 × 12席 × 2回転 × 80% = 19,200円
- ディナー:3,500円 × 12席 × 1.5回転 × 80% = 50,400円
- 合計:19,200円 + 50,400円 = 69,600円
- 69,600円 × 25日 = 1,740,000円
このように、具体的な数字をもとに考えることで、現実的な目標を立てやすくなります。開業前には、自分の考える業種や価格帯にあわせて、いくつかのパターンでシミュレーションしておくことが大切です。
お店を始めるにはいくらかかる?開業費の内訳をチェック
売上目標を立てると同時に、忘れてはならないのが開業にかかる資金の計画です。とくに小さな店舗では、できるだけ初期費用を抑え、早めにその投資を回収できることが、安定した運営につながります。
10坪規模の飲食店を始めるには、一般的に500万円~1,000万円ほどの費用がかかると言われています。ただし、これは物件の状態や内装の希望内容によって変動します。
物件取得費
お店を借りる際に必要な費用です。保証金(敷金)・礼金・仲介手数料・前家賃などが含まれます。特に保証金は大きな割合を占め、事業用物件では家賃の6~10ヶ月分程度とされるケースが多いです。
例)家賃15万円の物件であれば、保証金だけで90万~150万円が必要になることになります。
内装工事費
物件がどのような状態かによって費用が大きく変わります。
- スケルトン物件(内装がない状態):設計の自由度は高いですが、工事費は高くなります。坪単価で約40万~60万円が目安となり、10坪だと400万~600万円程度かかることもあります。
- 居抜き物件(以前のお店の設備が残っている):一般的には10坪で約200~400万円の費用が発生します。ただし、希望通りに改装したい場合や設備の修理が必要な場合は、追加の費用がかかることもあります。
厨房設備・什器費
調理機器やテーブル・イスなどの備品にかかる費用です。すべて新品でそろえると150万~300万円が目安ですが、中古品やリースをうまく使うことで、コストを削減できます。
運転資金
開業してすぐに売上が安定するとは限りません。安定するまでの3~6か月間、家賃や人件費、仕入れ代、水道光熱費などの運転資金を準備しておくと安心です。
例)月あたり家賃15万円、人件費30万円、その他費用20万円であれば、月65万円。その3か月分で約200万円が目安となります。
10坪飲食店のレイアウトと席数は?
10坪という限られた空間でより多くの売上を上げるためには、店内の配置(レイアウト)に工夫が必要です。ムダなスペースをなくし、お客様が快適に過ごせる空間とスタッフが動きやすい動線のバランスが大切になります。
効率的な厨房レイアウトの考え方
厨房が広すぎるとスタッフの移動距離が長くなり、作業効率が下がります。反対に狭すぎると動きにくくなってしまいます。10坪の店舗では、厨房の面積は全体の2~3坪、つまり20~30%ほどが適正とされます。
調理の流れ(下ごしらえ→調理→盛り付け→提供)に沿って設備を並べ、スタッフ同士がすれ違いやすい通路(最低でも80cm、理想は120cm)を確保することがポイントです。
顧客満足度を高める客席レイアウト
単に席数を増やすだけではなく、お客様が過ごしやすい空間にすることが大切です。
- 席数の目安:10坪の店舗であれば、1坪あたり1~1.5席とされ、10~15席が標準的です。カウンター席を中心に配置することで、効率よく席数を確保しやすくなります。
- テーブル配置:お客様同士の間隔や通路の幅を適切に取ることが重要です。通路幅は最低でも60cmは必要です。
- カウンター席の活用:一人や二人での来店が多いお店では、カウンター席が特に有効です。厨房との距離が近く、会話も生まれやすく、満足度の向上にもつながります。
デッドスペースをなくす工夫
壁際のスペースに荷物置きをつくったり、高さのある棚を使って収納スペースを作ったり、無駄な空間をできるだけ減らす工夫も売上に貢献します。
たとえば、鏡を壁に設置して空間を広く見せる工夫も有効です。
10坪飲食店のメリットと売上アップ戦略
10坪ほどの小さな飲食店には、大きなお店にはない魅力や強みがあります。そうした特徴をしっかりと理解し、うまく活かしていくことで、安定した売上を目指すことができます。
固定費を抑えやすい
小さな店舗の一番のメリットは、家賃や人件費などの「毎月必ずかかる費用(固定費)」を抑えやすいという点です。固定費が少なければ、それだけ少ない売上でも利益が出しやすくなります。その分、食材に少しこだわったり、他のお店にはないサービスを取り入れたりするなど、内容に力を入れることも可能になります。
お客様との距離が近い
オーナーやスタッフとお客様との距離が近いのも、小さな店舗ならではの魅力です。一人ひとりのお客様の顔や名前、好みを覚えることで、個別に丁寧な接客ができるようになります。こうした対応は信頼関係を築きやすく、常連のお客様につながっていきます。常連さんは安定した売上を支えてくれる存在であるだけでなく、知人に紹介してくれるなど、新しいお客様を呼び込んでくれる力も持っています。
コンセプトを明確に打ち出しやすい
お店の規模が小さいほど、コンセプトをはっきりと伝えやすくなります。たとえば、「〇〇県の地酒だけをそろえた日本酒バー」や「動物性の食品を使わないヴィーガンカフェ」など、特定のジャンルに特化したお店を作りやすくなります。
このような個性がはっきりしていれば、他のお店との差別化もしやすく、強いファンを持つお店に育てることも可能になります。
デリバリーやテイクアウトとの連携
店内でのお食事だけでなく、お持ち帰りや配達にも対応することで、席数に関係なく売上を増やすことができます。
特に10坪のようなコンパクトなお店では、客席の数を抑え、そのぶん厨房スペースを広めにとって、配達や持ち帰りを中心にしたスタイルにすることもできます。地域のお客様のニーズをよく調べながら、どの販売方法が最適かを見極めていくことが大切です。
10坪飲食店の経営を失敗させないための注意点
魅力が多い10坪の飲食店ですが、小さな店舗ならではの注意点もいくつかあります。事前にこうしたポイントを押さえておけば、トラブルや失敗のリスクを減らすことができます。
コンセプトのブレによる集客不振
小さなお店では、コンセプトの「わかりやすさ」がとても重要になります。売上が思うように伸びないときに、あれこれとメニューを増やしたり、ターゲットを広げすぎてしまうと、お店の「らしさ」が見えにくくなってしまいます。
そうなると、「何のお店なのかわからない」と思われてしまい、本来来てほしいお客様にも敬遠されてしまうおそれがあります。開業時に決めたコンセプトは、大きく変えないように意識することが大切です。
ワンオペの限界とリスク
費用を抑えるために、一人で営業(ワンオペ)を行う方も多いですが、これは無理が生じやすい方法でもあります。特にランチの混雑時などでは、お客様を長くお待たせしてしまったり、料理や接客の質が下がってしまったりすることがあります。
また、体調を崩したときなど、急に営業できなくなるリスクもあります。そういった事態に備えて、最低限の人手を確保しておくことは、長く安定してお店を続けていくためにとても大切です。
認知度を上げるのが難しい
大きなお店のように、派手な看板を立てたり、大規模な広告を出したりするのは難しいかもしれません。その代わりに、SNSを活用して情報を発信したり、地域で行われるイベントに参加したり、メディアに取り上げてもらえるようにプレスリリースを送ったりと、費用をかけずにお店を知ってもらうための工夫が必要です。
さらに、お店の外観や看板のデザインにも気を配り、通りかかった方が「ちょっと入ってみたいな」と思えるような雰囲気づくりを心がけましょう。
10坪飲食店の成功への第一歩は「具体的な計画」から
10坪というコンパクトなお店で安定した売上を出すためには、開業前の準備が何より大切です。「客単価 × 席数 × 回転数」という基本的な考え方をもとに、自分のお店のスタイルに合った、無理のない売上予測を立てましょう。
また、物件を借りるための費用や内装にかかる費用、さらには数か月分の運転資金など、必要となるお金をしっかり見積もっておくことも重要です。小さなお店ならではのメリットである、費用の軽さやお客様との距離の近さを活かしながら、レイアウトの工夫やデリバリーの活用なども組み合わせていくことで、売上を最大限に伸ばすことができます。
このように、しっかりとした準備と計画を行うことが、10坪という限られた空間での経営を成功へと導くポイントになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
飲食店のビジネスモデルとは?考え方や俯瞰図の作り方、成功事例を解説
飲食店のビジネスモデルは、売上の仕組みや事業戦略を考えるうえで欠かせない考え方です。立地やメニューだけでなく、客単価や回転率、原価といった数字のバランスまで含めて設計することが、継続的な経営には欠かせません。この記事では、飲食店のビジネスモ…
詳しくみるデリバリー専門の飲食店を開業する流れやメリット・デメリットを解説
近年、ライフスタイルの変化に伴い、デリバリー専門の飲食店が注目を集めています。開業を検討する際には、店舗設立の流れから運営におけるメリット・デメリットまで幅広い知識が必要です。デリバリー特化型のビジネスモデルは、従来の飲食業とは異なる戦略を…
詳しくみるコンカフェ開業ガイド!資金や年収の目安、資格、手続きまとめ
コンカフェ(コンセプトカフェ)を開業したいと考えたとき、何から始めればよいのか、どれだけお金が必要なのか、不安になる人は多いです。この記事では、開業資金や資格、年収の目安、手続きの流れなど、コンカフェを開業するために押さえるべき基本情報をま…
詳しくみるバー(bar)の開業で失敗を防ぐには?潰れる確率と儲かる仕組みを解説
バー開業は、緻密な計画と経営知識がなければ失敗のリスクが高い事業です。しかし、失敗する原因をあらかじめ理解し、適切な対策を講じることで、その確率を大きく下げられます。この記事では、バー開業で失敗するパターンを徹底分析し、失敗を防ぐための仕組…
詳しくみる飲食店開業に必要な情報提供はどこで受けられる?資金調達から事業計画、許可・資格の準備まで完全解説
飲食店の開業準備では、最初の一歩をどう踏み出すかが重要です。成功するためには、信頼できる情報を効率的に集めることが欠かせません。 この記事では、飲食店の開業準備を始めたい方のために、開業までのステップ、資金調達の具体的な方法、必須となる許可…
詳しくみる飲食店がクラウドファンディングで開業資金を集めるには?成功の5つのコツも解説
「お店を開きたい。でも資金が足りない」そんな飲食店経営者の強い味方となるのがクラウドファンディングです。インターネットを通じて共感してくれた支援者から資金を集めることで、初期投資を抑えながら開業を実現できる手法として注目されています。 本記…
詳しくみる