• 更新日 : 2025年8月19日

フランチャイズの途中解約で違約金は発生する?ケースや払えない場合を解説

フランチャイズ契約を途中で解約すると、違約金が発生するケースがあります。契約書に定めがあれば、自己都合や手続き上の不備による解約でも請求される可能性があります。ただし、すべてのケースで支払い義務が生じるとは限らず、契約内容や解約理由によって変わります。

この記事では、フランチャイズの違約金が発生する条件から相場、払えない場合の対処法、トラブルを避けるためのポイントまでをわかりやすく解説します。

フランチャイズの途中解約で違約金は発生する?

フランチャイズ契約を期間の途中で解約する場合、契約書に定められていれば、原則として違約金の支払い義務が発生します。これは、加盟店側の都合で契約を終えることにより、フランチャイズ本部が将来得られるはずだった利益(ロイヤルティなど)を失うことや、ブランドイメージが損なわれることへの損害賠償という側面を持つためです。

ただし、契約内容や解約の理由によっては、違約金が減額されたり、発生しなかったりするケースもあります。

違約金の定義は「契約違反があった場合に、あらかじめ定めた損害賠償額」とされており、民法第420条で規定されています。本部が実際に被った損害額にかかわらず、契約上に定められた金額を請求される仕組みです。

契約満了時の解約や合意解約の場合は発生しないことも

ただし、すべての解約で違約金が発生するわけではありません。

まず、契約書で定められた契約期間をすべて満了し、契約を更新しない「期間満了による解約」の場合、通常は違約金は発生しません。ただし、「契約終了の意思表示は〇か月前までに行う」といった規定があることが一般的なので、その点は注意が必要です。

また、加盟店の経営状況の悪化や健康上の理由など、やむを得ない事情がある場合に、本部との話し合いによって双方が納得の上で解約する「合意解約」という方法もあります。

この場合、交渉次第で違約金が免除されたり、減額されたりするケースもあります。スムーズに解決するためには、誠意をもって本部に相談してみましょう。

解約金と違約金の違い

「解約金」という用語は法律で定義されているものではなく、実務上、「契約を正当な手続きで終了する際に支払う費用」という意味で使われることがあります。一方、「違約金」は民法第420条で定められており、契約違反に対する損害賠償額の予定として機能するものです。

たとえば、契約で「3か月前の予告で解約可能、違約金なし」と定められていれば、適切に手続きを踏めば解約金のみが発生し、違約金は請求されません。

違約金の条項が契約に含まれている理由

多くのフランチャイズ契約には、「中途解約の場合には〇〇万円を違約金として支払う」といった条項が設けられています。これは、本部側が加盟者の撤退によって受ける損害やブランド毀損のリスクを軽減するためのものです。

とくに、開業時に初期投資や指導を行っている場合には、それを前提に事業計画を立てているため、途中で辞められると回収が困難になります。したがって、フランチャイズ契約において違約金の定めは一般的だといえるでしょう。

フランチャイズ契約で違約金が発生する主なケース

フランチャイズでの違約金は、契約違反や一方的な解約など、本部に損害を与える行為があった場合に発生することがあります。

自己都合での途中解約

加盟者が契約期間の途中で一方的に解約を申し出た場合、多くの契約では違約金が発生するよう定められています。とくに開業直後の解約は、本部側の投資(指導、人材派遣、広告支援など)が十分に回収されていないと判断され、請求される傾向が強まります。

また、契約期間が「5年間」など長期にわたる場合、残存期間に応じた違約金が定められていることもあります。たとえば、契約終了までの残年数に応じてロイヤリティ相当額を請求する方式などがよく見られます。

契約違反行為(競合での営業、ロイヤリティ未払いなど)

加盟店側に契約違反(債務不履行)があった場合、本部側が契約を強制的に解除し、その上で違約金や損害賠償を請求してくることがあります。

具体的には、以下のような行為が契約違反にあたります。

  • ロイヤルティや仕入れ代金の支払いを繰り返し滞納する
  • 本部が指定する以外の食材や材料を無断で使用する
  • 本部の営業方針やマニュアルに従わず、独自の営業を続ける
  • 衛生管理の怠りや不適切な接客など、ブランドイメージを著しく損なう行為
  • 競業避止義務に違反し、同業他社を経営する

違約金が無効、減額される可能性のあるケース

フランチャイズ本部から請求された違約金が、必ずしも法的に全額認められるとは限りません。過去の判例では、さまざまな事情をふまえて違約金が無効となったり、減額されたりした事例があります。

違約金の額が不当に高額な場合

違約金の定めは、本部に生じる平均的な損害を超える部分については無効とされることがあります。例えば、残りの契約期間がわずかにもかかわらず、数年分のロイヤルティを請求されるなど、実際の損害に比べてあまりに高額な場合は、裁判で減額が認められる可能性があります。

本部に契約上の義務違反がある場合

「契約時に説明されたような経営指導が全くない」「安定した商品供給がされない」など、本部側が契約で約束したサポートを十分に果たしていない(債務不履行)と認められる場合、それを理由に違約金の支払いを拒否したり、減額を求めたりする交渉の余地が出てきます。

本部の説明が不十分だった場合

契約締結時に、本部が売上予測などについて客観的な根拠なく過大な見通しを伝えたり、契約の重要な部分について十分な説明を怠ったりした場合、加盟店は錯誤を理由に契約の無効を主張できるケースもあります。

フランチャイズの違約金の相場と支払い義務

フランチャイズの違約金に法律で定められた一律の相場はありませんが、その支払い義務は契約書の内容が基本となります。しかし、契約書に定められていれば、いかなる金額でも請求が認められるわけではありません。過去の裁判では、違約金の額が著しく高額である場合、その条項自体が公序良俗に反して無効、または一部減額されるべきとの判断が示されています。

違約金の相場は契約や業種により異なる

フランチャイズの違約金の金額や算定方法について、法的な決まりはありませんが、一般的に、違約金の算定方法は契約書に以下のように定められています。

  • ロイヤルティ基準型
    「残りの契約月数 × 直近1年間の月平均ロイヤルティ額」といった、将来本部に支払われるはずだったロイヤルティを基準に計算する方式です。
  • 固定額型
    事業の規模や残りの契約期間にかかわらず、「中途解約の場合は一律〇〇〇万円」のように、あらかじめ決められた金額を支払う方式です。

契約書にどの方式が採用されているか、具体的な計算式まで必ず確認しておきましょう。

違約金の算定根拠となる主な内訳

フランチャイズの違約金は、加盟店の途中解約によって本部が被る損害を補うためのものです。その請求額の内訳として、主に以下のような種類があります。

  • 逸失利益
    契約満了まで得られたはずのロイヤルティ等の利益。
  • ブランド価値毀損への賠償
    店舗閉鎖によるチェーン全体のイメージ低下に対する補填。
  • 投下資本の未回収分
    開業支援や研修で本部が先行投資したコストの回収分。
  • 原状回復費用
    看板撤去や内外装を契約前の状態に戻す費用(※)。

※違約金とは別に、実費で請求されることも多い費用です。

これらの項目が、契約書の中でどのように規定されているかを確認することが大切です。

違約金の妥当性が争われた過去の判例

過去の判例では、違約金の額が「本部に生じる平均的な損害額」を大きく超える場合、その条項は公序良俗に反して無効であると判断される傾向にあります。

例えば、月額ロイヤルティの2年分(24ヶ月分)を違約金とする契約について、裁判所は「加盟店も独立した事業者として合意の上で契約した」ことなどを理由に、その規定を有効と判断しました(東京地裁令和2年2月27日判決)。

一方で、ロイヤルティの10年分(120ヶ月分)という長期の違約金は、残存期間の長短にかかわらず一律に課すのは社会的に相当な額を超えており、高すぎる部分は無効と判断した判例もあります(東京高裁平成8年3月28日判決)。

これらのことから、ロイヤルティの2〜4年分程度が認められやすい一つの水準と考えられますが、それを超える高額な設定は無効となるリスクがあるといえるでしょう。

フランチャイズの違約金が払えない場合の対処法

高額な違約金を請求され、支払いが困難な状況に陥ることも考えられます。そのような場合は、まずは本部に事情を説明し、減額や分割払いの交渉を試みましょう。当事者間での解決が難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。

1. まずは本部に交渉する

フランチャイズの違約金の請求書が届き支払いが難しいと感じたら、「無視」や「放置」をせず、速やかに本部の担当者に連絡をとりましょう。そして現在の経営状況や支払いが困難な理由を誠実に説明します。

決算書資金繰り表などの客観的な資料を提示しながら、「支払う意思はあるが、現状ではどうしても難しい」という姿勢で対話に臨むことが大切です。本部としても、裁判などの法的な手続きには時間と費用がかかるため、話し合いによる解決を望んでいるケースも少なくありません。

2. 支払い計画の変更を申し出る

交渉の際は、こちらから実現可能な代替案を提示します。

  • 減額交渉
    「請求額の全額は難しいですが、〇〇円であれば用意できます」といったように、支払える上限額を具体的に示し、減額を願い出る方法です。
  • 分割払いの交渉
    「一括での支払いは困難ですが、月々〇万円ずつであれば支払えます」と、分割での支払いを申し出る方法です。

支払い計画について本部と合意ができた場合は、口約束で終わらせてはいけません。後々のトラブルを防ぐため、必ず合意内容を記載した書面(合意書や覚書など)を作成し、双方で署名・捺印の上、保管しておきましょう。

3. どうしても払えない場合は法的整理も視野に

当事者間での交渉がまとまらない場合や、そもそも支払い能力が全くないという深刻な状況では、法的な手続きを検討する必要が出てきます。

弁護士に相談する

まずはフランチャイズ問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士が代理人として交渉することで、本部側の態度が軟化し、有利な条件で和解できることがあります。また、請求されている違約金の額が法的に妥当かどうかの判断もしてもらえます。

法的整理(自己破産など)

あらゆる手段を尽くしても支払いの見込みが立たない場合の最終手段が、自己破産や民事再生といった法的整理です。裁判所に申し立て、会社の財産や個人の資産を清算する代わりに、原則として全ての債務(違約金を含む)の支払い義務が免除されるのが自己破産です。

法的整理は影響の大きい決断です。必ず弁護士などの専門家と十分に相談した上で、慎重に判断するようにしてください。

違約金トラブルを避けるフランチャイズ契約前のチェックポイント

後々の違約金トラブルを防ぐためには、フランチャイズ契約を締結する前の段階での確認が重要です。以下のポイントを必ずチェックしましょう。

中途解約条項と違約金の算定根拠を確認する

フランチャイズ事業が計画通りに進まない可能性もふまえ、万が一の途中解約に関するルールを確認しておきましょう。とくに「違約金がどのように計算されるのか」という算定根拠は重要です。「残存期間のロイヤリティ全額」といった、一方的に加盟店が不利になるような内容ではないか、注意深く読み込む必要があります。

契約期間と更新の条件をはっきりさせる

フランチャイズの契約期間が何年で、自動更新なのか、更新にはどのような条件があるのかを正確に把握しておきましょう。気づかないうちに契約が更新され、辞めたいタイミングで解約できなくなる事態を防ぐためです。

競業避止義務の範囲と期間は妥当か

フランチャイズの契約終了後、同じような事業を一定期間、特定の場所で行うことを禁じる「競業避止義務」はよくある条項です。しかし、その制限される期間や場所、業務の範囲が広すぎないか、必ず確認してください。この内容が厳しすぎると、契約終了後に新たなスタートを切ろうとしても、事業再開の大きな妨げになってしまう可能性があります。

フランチャイズの違約金は契約と対応次第で変わる場合も

フランチャイズ契約で途中解約をすると、違約金が請求されるケースは少なくありません。ただし、契約内容や解約理由、交渉の有無によって、発生しない・軽減される可能性もあります。違約金の妥当性は法的に争われることもあり、無効や減額が認められた判例もあります。

まずは契約書の条項をしっかり確認し、請求された際は誠実に対応することが重要です。支払いが困難な場合でも、本部との交渉や弁護士への相談によって、現実的な解決策が見いだせる可能性があります。契約前・契約中を問わず、常に冷静な判断と準備を心がけましょう。


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