• 作成日 : 2025年6月30日

低予算でも立ち飲み屋を開業できる?費用や内装・資格、節約のコツを解説

立ち飲み屋は、低コストで開業できる飲食業態として注目されています。初期費用を抑えて、自分らしいお店を持ちたいと考える人にとって、有力な選択肢です。

本記事では、開業に必要な費用や資格、内装や物件選びの工夫、集客方法まで、低予算で成功するための実践的なポイントを解説します。

目次

低予算でも立ち飲み屋を開業できる?

立ち飲み屋は、他の飲食店と比べて開業費用を抑えやすい業態です。日本政策金融公庫が実施した「2023年度 新規開業実態調査」によると、全業種の開業費用の平均値は1,027万円、中央値は550万円となっています。

一方で、立ち飲み屋は小規模な店舗や簡素な内装で営業できるため、初期費用を大きく抑えることが可能です。例えば、居抜き物件の活用や設備投資の最小化によって、一般的な飲食店よりも少ない資金で開業できるケースが多く見られます。実際に、立ち飲み屋の開業資金は200万円~500万円程度が目安とされており、これは他の飲食業態と比較しても低い水準です。

このように、立ち飲み屋は省スペース・省設備での運営が可能なため、工夫次第で初期コストを抑えた開業が実現しやすい、という点が大きな特徴です。

出典:2023年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫

立ち飲み屋のコンセプトが開業の予算配分を左右する

立ち飲み屋を開業するうえで、最初に決めるべきは「どんなお客様に、どんな価値を提供するのか」というコンセプトです。ターゲットを明確にすることで、物件選び、内装、メニュー、宣伝など、あらゆる場面で判断がしやすくなり、無駄な出費を避けることができます。

例えば、「仕事帰りのサラリーマンが一杯飲める立ち飲み屋」を想定した場合、重視すべきはアクセスの良さと短時間滞在のしやすさです。駅近で5〜8坪の物件に、立ったままでもリラックスできるカウンターと、スピーディに出せる一品料理のメニュー構成が合います。内装は手作り感のある木目調や、清潔な照明に予算を集中させ、装飾は最小限でも十分でしょう。

一方、「女性一人でも入りやすいおしゃれな立ち飲みバル」というコンセプトであれば、明るい照明や清潔感のある内装、ヘルシーなメニューやワインなどが良いでしょう。

また、「地元の常連客を中心に、週末にゆったり飲める場所にしたい」なら、住宅街近くの家賃が安い物件でもOK。間取りに余裕を持たせ、客同士や店主との会話が生まれるよう、カウンターに奥行きを持たせたり、音楽や照明でくつろげる空間をつくったりすると効果的です。料理も惣菜風の手作りメニューにするなど、温かみが演出のカギになります。

このように、ターゲット層が限られていれば、それに合わせたメニューに絞り込むことができ、食材のロスを減らせます。また、ターゲット顧客が集まるエリアを選ぶことで、宣伝費を抑えつつ効果的な集客が期待できます。

立ち飲み屋の店を低予算に抑える物件選びのコツ

立ち飲み屋の物件選びは、開業資金の中で大きな比重を占めます。無理のない範囲で賃料や内装費用を抑えるには、立地や物件タイプに対する正しい知識が欠かせません。

物件の大きさ

立ち飲み屋は、一般的に10坪程度の小さなスペースで運営されることが多いです。狭い物件を選ぶことで、賃料や保証金などの物件取得費を抑えることができます。最近では、3坪程度のさらに小さな立ち飲み屋も存在します。ただし、小さすぎる場合は、お客様同士やスタッフの動線が悪くなる可能性もあるため、広さと効率性のバランスを考える必要があります。

賃貸か間借りか

物件を賃貸する初期費用には、敷金、礼金、仲介手数料、前家賃などがかかります。これらの費用は、賃料の数ヶ月分になることもあり、大きな負担となります。

そこで検討したいのが、既存の店舗や施設の一部を借りて営業する「間借り」という方法です。例えば、昼間は別の業種が営業している場所を、夜間だけ立ち飲み屋として利用するといった形です。間借りであれば、賃料を抑えられるだけでなく、初期の内装工事費や設備費も最小限で済む可能性があります。

間取りと水回り

立ち飲み屋の間取りは、カウンターを中心としたシンプルなレイアウトが一般的です。コの字型のカウンターは、お客様同士やスタッフとのコミュニケーションが取りやすく、狭いスペースでも効率的に動きやすいとされています。

水回りに関しては、最小限の厨房設備とトイレがあれば十分でしょう。特に、料理を最小限に抑えるのであれば、大掛かりな厨房設備は不要な場合もあります。

居抜き物件を活用する

以前の飲食店が使用していた物件をそのまま利用する「居抜き物件」は、内装や厨房設備が残っているため、初期費用を大幅に抑えることができます。ただし、既存の設備が自店のコンセプトに合わない場合や、老朽化している可能性もあるため、十分な確認が必要です。また、居抜き物件によっては、造作譲渡料が発生する場合もあります。

空中階や地下の物件、郊外も検討する

一般的に、1階の路面店は賃料が高い傾向にあります。空中階や地下の物件も視野に入れることで、賃料を抑えられる可能性があります。ただし、路面店に比べて視認性が低くなるため、看板や広告宣伝などで工夫が必要です。

また、都心の一等地は集客力が見込めますが、賃料も高額です。多少不便な場所でも、ターゲット顧客層に合ったエリアであれば、低予算で開業できる可能性があります。

不動産業者と良好に連携する

飲食店の物件に強い不動産業者を見つけ、希望条件を詳細に伝えることで、掘り出し物の物件を紹介してもらえる可能性があります。

物件を選ぶ際には、賃料だけでなく、物件の状態や周辺環境、ターゲット顧客層との相性などを総合的に判断することが重要です。

立ち飲み屋の内装費を抑え魅力的な空間にする工夫

立ち飲み屋の内装は、豪華さよりも「居心地の良さ」「雰囲気づくり」「機能性」が重要です。限られた予算内で効果的に空間を仕上げるには、優先順位を明確にし、工夫と選択が求められます。

カウンター中心で省スペース設計にする

立ち飲み屋は着席スペースが不要な分、カウンターのみで完結できるレイアウトが理想です。客の回転率が高く、コミュニケーションが取りやすくなるため、一人での接客・調理・配膳にも適しています。設置するカウンターは、木製合板や足場板などの安価な素材でDIYすることで、数万円程度に費用を抑えることが可能です。

照明と素材で雰囲気を演出する

照明は空間の印象を決定づける要素です。ダウンライトやスポットライトを使って、明るすぎず落ち着ける雰囲気を演出します。裸電球やレトロ調の照明は安価で、立ち飲み屋のカジュアルな空気感にも合います。

壁や床の素材選びにもこだわりましょう。壁はベニヤ板の塗装やOSB合板のままでも個性が出ます。床はクッションフロアや剥がせるフローリング材を用いれば、施工も簡単で費用も1万円台から購入できる資材もあります。

中古・DIYでコストを大幅カット

テーブルや厨房設備は、中古品専門サイトや業務用リサイクル店を活用すると大幅なコスト削減が可能です。冷蔵庫、製氷機、コンロ、シンクなどは状態の良い中古で十分です。新品の半額以下で手に入ることも多く、保証付きの製品を選べば安心です。

さらに、壁塗装、棚の取り付け、照明器具の設置などをDIYすれば、内装業者に頼むよりも数十万円の節約になります。初めてでもYouTubeやSNSでDIY方法を学べば、簡単な作業は自力で対応できます。

「見せ場」だけにお金をかける

すべてを完璧に仕上げようとするとコストが膨らみます。そこで、「お客様の目に最も触れる部分」だけに予算を集中させるのが効果的です。例えば、カウンター正面の壁や入口周辺、メニュー表のデザインなどです。それ以外の場所は機能優先で十分です。

必要なのは高額な装飾や高級素材ではなく、「落ち着ける空間」をどう演出するかという視点です。限られた費用でも、工夫と手間をかければ、魅力ある店舗作りは十分実現できます。

立ち飲み屋の開業に必要な資格と手続き

立ち飲み屋を開業するためには、いくつかの資格取得と行政手続きが必要です。最低限必要なのは「飲食店営業許可」と「食品衛生責任者」です。店舗の図面を用意し、保健所の施設基準を確認したうえで申請します。資格は1日講習で取得可能です。

営業に必要な基本資格

飲食店営業許可

飲食店を営業するには、保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。申請は営業開始の10日前までに行うのが原則です。

許可を得るためには、店舗の厨房や手洗い場、換気設備、床・壁の材質などが食品衛生法に基づく施設基準を満たしている必要があります。保健所による事前相談と現地確認が行われるため、内装工事の前に必ず保健所へ図面を持って相談するのがスムーズです。

食品衛生責任者

飲食店を営業するには、店舗ごとに「食品衛生責任者」を1名以上配置する義務があります。資格は各都道府県の食品衛生協会が実施する1日講習(6〜7時間程度)を受けることで取得可能です。

すでに調理師や栄養士の資格を持っている場合は、講習を受けなくても代替可能です。講習費用は地域によって異なりますが、1万円前後が一般的です。

営業形態に応じた追加手続き

アルコール提供の手続き

アルコールを店内で提供する場合、保健所での飲食店営業許可の取得のみで原則可能です。税務署への届出や「酒類販売業免許」は不要です。ただし、持ち帰り販売やネット販売を行う場合は、酒類小売業免許の取得が必要になります。用途に応じて税務署への確認を行いましょう。

防火管理者の選任(必要な場合)

立ち飲み屋は一般的に小規模な店舗が多く、収容人数が30人未満となるケースがほとんどです。ただし、消防法上の収容人数は店舗の面積などで算定され、椅子の有無にかかわらず30人を超える場合は防火管理者の選任が必要です。詳細は開業地の消防署に確認しましょう。

深夜営業を行う場合(0時〜6時)

深夜0時から翌朝6時までの間に酒類を提供する場合は、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」の提出が必要です。所轄の警察署を通じて、都道府県公安委員会に届出を行います。

税務署への開業手続き

開業届

個人事業として開業する場合は、税務署に開業届を提出する必要があります。

これらの資格取得や手続きには時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めることが大切です。

立ち飲み屋の宣伝費を抑えて集客する方法とは?

立ち飲み屋の集客で重要なのは、開業初期から「来店してくれる見込み客」にアプローチできるかどうかです。低予算で開業する場合、広告費に多くはかけられませんが、SNSの活用で、開業までの準備状況や内装工事の様子をInstagramやXで発信し、開業日を広く知らせましょう。

オープン初日に合わせたキャンペーン(ワンドリンク無料、割引券配布など)も効果的です。地域情報誌やGoogleマップへの掲載、無料ブログでの情報発信も取り入れると、認知が広がります。

開業前に効果的な宣伝活動を行うことは、低予算でも集客を成功させるための重要なポイントです。

SNSで開業までを発信する

X(旧Twitter)、Instagram、FacebookなどのSNSは、無料で始められる強力な広告ツールです。開業準備の段階からこれらのSNSを活用し、店舗の進捗を発信しましょう。内装DIYの様子、試作メニュー、看板の設置など、「お店ができていく過程」をリアルタイムで公開することで、開店前から店舗に親しみを持ってもらえます。

SNSでは、「#立ち飲み」「#駅名+グルメ」などのハッシュタグを活用し、近隣住民や働く人のタイムラインに表示されるよう工夫します。顔写真入りの投稿や、オーナーの思いを添えた文章は特に反応が高くなります。

Googleビジネスプロフィールなど無料で使える媒体に登録する

Googleマップ上にお店の情報を掲載することで、地域のお客様に見つけてもらいやすくなります。営業時間や電話番号、メニュー、写真などを登録し、口コミを積極的に集めることも重要です。口コミ投稿用のQRコードを発行し、お客様が手軽に口コミを投稿できる仕組みをつくるのも良いでしょう。

あわせて、食べログ・Retty・ホットペッパーなどのグルメサイトにも無料プランで掲載を行い、WEB上の存在感を高めましょう。

開業初日がその後の集客を左右する

オープン初日の盛り上がりが、その後の集客を左右します。人通りの多い時間帯を狙って看板を設置し、チラシ配布や通行人への一声がけも効果的です。

また、オープニングキャンペーンとして「ドリンク1杯無料」「フォローで割引」などの特典を設けることで、来店ハードルを下げられます。近隣店舗や常連客に協力を依頼して、最初の人の流れをつくることも忘れずに。

地域密着のつながりを活かす

地域の商店会、自治体の商業振興団体、ローカルイベントなどと連携するのも有効です。チラシ設置や紹介掲示、フリーペーパーの取材など、意外なところに集客の種があります。

開業を通じて地元との接点を増やすことで、口コミや紹介による来店につながる可能性が高まります。

低予算でも継続できる立ち飲み屋運営の工夫

開業できたとしても、その後の運営が安定しなければ意味がありません。特に人手や資金に余裕がない小規模な立ち飲み屋では、日々の運営効率が継続のカギを握ります。ここでは、低予算でも持続可能な運営を実現するための具体的な工夫を紹介します。

メニュー数は絞って原価管理をしやすくする

立ち飲み屋では、品数よりも“定番の強さ”が重要です。メニューはドリンク5〜7種、フードも5〜10種程度に絞り、どれも簡単に仕込めて保存が利くものにすることで、食材ロスや仕入れコストを抑えられます。

また、ドリンクは原価率が低いため、客単価アップに貢献します。ハイボールやチューハイは利益率も高く、売上の柱にしやすいアイテムです。

一人運営を前提とした業務設計にする

低予算で人件費をかけられない場合は、「ワンオペでも無理なく回せる」体制を整えることが必要です。カウンター内で注文、提供、会計がすべて完結するレイアウトにすることで、少人数でも問題なく営業が可能になります。

仕入れも週2〜3回にまとめ、保存しやすい食材に絞ることで効率的に運営できます。営業時間も無理をせず、ピークタイム(18時〜23時など)に集中することで体力的な負担も軽減されます。

キャッシュレス導入で業務効率アップ

POSレジを使わずとも、スマホやタブレットで使える無料のレジアプリとキャッシュレス決済(PayPay・Squareなど)を導入すれば、会計時間を短縮でき、ミスも減ります。

現金管理が不要になることで、閉店作業や翌日の準備にも余裕が生まれます。また、電子決済はレジの導入コストも抑えられるため、初期費用削減にも貢献します。

定休日と営業時間を明確にし、無理のない営業を

毎日営業すれば売上は上がると思われがちですが、疲労とコストの蓄積は長期的に経営を圧迫します。週に1〜2日休みを設け、メリハリのある運営を心がける方が継続しやすくなります。

また、営業終了時間をきっちり決めておくことで、無駄な残業や深夜帯の無駄な電気代・人件費を防げます。

立ち飲み屋開業に活用できる融資・補助金制度

立ち飲み屋を低予算で開業する際、自己資金だけでは不足する場合があります。そのような場合、公的な融資制度や補助金を活用することで、資金調達の選択肢が広がります。

日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」

日本政策金融公庫では、創業者向けに「新規開業・スタートアップ支援資金」という融資制度を提供しています。

  • 対象者:新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
  • 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 返済期間:設備資金は20年以内、運転資金は10年以内(いずれも据置期間5年以内)
  • 利率:基準利率。ただし、女性、35歳未満または55歳以上の方、創業塾等を受講した方などは特別利率が適用される場合があります。

詳細は日本政策金融公庫の公式サイトをご参照ください。

地方自治体の創業支援制度

多くの地方自治体では、創業者向けの支援制度を設けています。例えば、東京都では「創業助成事業」を実施しており、一定の条件を満たすことで助成金を受け取ることができます。また、各自治体の商工会議所や商工会でも、創業支援の相談窓口を設けている場合があります。詳細は、お住まいの地域の自治体や商工会議所の公式サイトをご確認ください。

補助金・助成金の活用

補助金は「返済不要」の支援制度であり、採択されれば資金の後押しになります。以下のような制度が活用可能です。

  • 小規模事業者持続化補助金
    商工会議所に所属している小規模事業者が、広報費・看板作成・ウェブサイト制作などの販路開拓や業務効率化のための費用に対して申請できます。補助額は通常枠で最大50万円、特別枠で最大200万円、インボイス特例の適用でいずれも上限が50万円加算されます。
  • IT導入補助金
    会計ソフトやPOSレジ、予約管理システムなどのITツール導入費用の一部を補助。補助率は最大2/3。
  • 地域創業促進支援事業(自治体ごと)
    市区町村単位での家賃補助、設備導入補助など。各自治体のホームページで随時募集。

ただし、補助金は予算に限りがあり、審査制で必ず採択されるわけではない点に注意が必要です。申請書には事業の目的や見込効果、実行体制などを記載した「事業計画書」も提出する必要があります。

立ち飲み屋の開業にはコンセプトを明確にしよう

立ち飲み屋は低予算で開業でき、個人でも挑戦しやすい飲食店スタイルです。明確なコンセプトとターゲットを設定し、物件や内装、資格取得、集客方法まで戦略的に選べば、限られた資金でも開業は十分可能です。融資や補助金の活用も視野に入れて、自分らしい一歩を踏み出しましょう。


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