- 作成日 : 2025年11月6日
キッチンカーでバーを開業するには?必要な資格・許可から儲かるメニュー戦略、成功のポイントまで解説
自由な場所で自分らしいお店が持てるキッチンカー(フードトラック)は、飲食業界で注目の業態です。中でも、夜のイベントやお祭りでひときわ目を引くのが「キッチンカー バー」ではないでしょうか。移動式バーというユニークなスタイルは、お客様に特別な体験を提供できる可能性を秘めています。
この記事では、キッチンカーでバーや居酒屋を開業したい方に向けて、必要な資格や許可、開業資金の目安、儲かるためのメニュー戦略、そして事業を成功に導くためのポイントまで、具体的かつ網羅的に解説していきます。
目次
キッチンカーのバーとはどんな業態か?
キッチンカーのバーとは、車両にビールサーバーやカクテル作りの設備を搭載し、お酒と簡単なおつまみを提供する移動販売形式の店舗です。イベント会場や商業施設の一角で、気軽に立ち寄れる立ち飲みスタイルのバーや居酒屋として営業する形態が一般的といえます。
キッチンカーバーの魅力と特徴
キッチンカーバーの最大の魅力は、その「機動力」と「非日常感」にあります。音楽フェスや地域の祭り、ナイトマーケットなど、人が集まる場所へ自ら出向いて出店できるため、高い集客が見込めます。また、「車がおしゃれなバーになる」という非日常的な空間は、お客様の心を引きつけ、SNSでの拡散も期待できるでしょう。
通常のバー経営との違い
固定店舗のバー経営と比較すると、キッチンカーのバーは開業・運営においていくつかの大きな違いがあります。
| 項目 | 固定店舗のバー | キッチンカーのバー |
|---|---|---|
| 初期費用 | 高額(物件取得費、内装工事費など) | 比較的安価(車両費が中心) |
| 立地 | 一度決めると変更不可 | 自由に変更可能 |
| 集客 | 店舗周辺の顧客が中心 | イベントなど人の集まる場所を狙える |
| 営業の自由度 | 天候に左右されにくい | 天候や季節に売上が変動しやすい |
| スペース | 比較的広い | 限られたスペースでのオペレーション |
キッチンカーでバーを開業するために必要な資格や許可は何か?
キッチンカーでバーを開業するには、最低でも「食品衛生責任者」の資格と、出店地域を管轄する保健所からの「飲食店営業許可」が必要です。お酒の提供方法によっては、さらに「酒類販売業免許」が求められる場合があるため、注意深く確認しましょう。
必須の資格①:食品衛生責任者
食品を扱う営業を行う場合、施設ごとに1名以上の食品衛生責任者を置くことが法律で義務付けられています。各都道府県の食品衛生協会が開催する養成講習会を受講することで取得可能です。調理師や栄養士などの資格を持っている場合は、講習を受けずに資格者となることができます。
必須の許可②:飲食店営業許可(保健所)
キッチンカーで調理した飲食物を提供するためには、営業する地域を管轄する保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。許可を得るためには、保健所が定める車両の設備基準(給排水タンクの容量、シンクの数など)を満たさなければなりません。出店したい地域が複数にまたがる場合は、それぞれの地域を管轄する保健所での許可申請が必要になるケースがあるため、事前の確認が不可欠です。
【重要】お酒を提供するための免許:酒類販売業免許は必要か?
キッチンカーでお酒を提供する際、「酒類販売業免許」が必要かどうかは、販売形態によって異なります。
- 免許が不要なケース:開栓したお酒をカップに注ぎ、その場で飲んでもらう場合(=飲食店と同じ提供方法)
- 免許が必要なケース:缶ビールや瓶ビールなど、栓を開けずにそのまま販売する場合や、ボトル販売をする場合
多くのキッチンカーバーは前者の「その場で提供する」形態のため、酒類販売業免許は不要な場合がほとんどです。しかし、テイクアウト販売などを検討している場合は、管轄の税務署で「一般酒類小売業免許」の取得が必要となるため、必ず事前に相談しましょう。
開業資金の目安はどのくらいか?
キッチンカーでバーを開業するための資金は、車両を新車で製作するか中古にするか、また搭載する設備によって大きく変動しますが、一般的に250万円から500万円程度が目安とされています。内訳は大きく初期費用と運営費用に分けられます。
初期費用(イニシャルコスト)の内訳
開業時に一度だけかかる費用です。最大の割合を占めるのは車両関連費です。
| 項目 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 車両製作・購入費 | 150万円~400万円 | 中古車やDIYでコスト削減も可能 |
| 設備費 | 50万円~100万円 | ビールサーバー、冷蔵庫、製氷機、調理器具など |
| 許認可取得費用 | 5万円~10万円 | 営業許可申請手数料、書類作成費など |
| その他(運転資金) | 50万円~ | 開業当初の仕入れ費、出店料、ガソリン代など |
| 合計 | 255万円~510万円 |
運営費用(ランニングコスト)の内訳
毎月継続的に発生する費用です。売上からこれらの費用を差し引いたものが利益となります。
資金を抑える方法
開業資金を少しでも抑えたい場合は、中古のキッチンカーを購入する、レンタルやリースを利用する、DIYで内装を仕上げるなどの方法が考えられます。ただし、中古車両は故障のリスクや、保健所の基準を満たすための追加改装費がかかる可能性も考慮に入れましょう。
キッチンカーのバーで儲かるためのメニュー戦略とは?
キッチンカーバーの成功は、魅力的で利益率の高いメニュー構成にかかっています。ドリンクとフードの両方で、他店との差別化と効率的なオペレーションを意識することが重要です。
ドリンクメニューの考え方
ドリンクはバーの主役です。定番メニューで安定した売上を確保しつつ、オリジナリティのあるメニューで顧客の心を掴みましょう。
- 定番メニュー:生ビール、ハイボール、レモンサワーは必須。回転率が高く、安定した人気があります。
- 差別化メニュー:全国のクラフトビールを週替わりで提供したり、季節のフルーツを使ったオリジナルカクテルを用意したりすることで、付加価値と客単価を高められます。
- ソフトドリンク:お酒が飲めないお客様やドライバー向けに、こだわりの自家製レモネードやノンアルコールカクテルなども揃えておきましょう。
フードメニューの重要性
お酒が進むフードメニューは、客単価アップに直結します。キッチンカーの限られたスペースでも提供しやすい、「簡単・早い・美味しい」を兼ね備えたメニューが理想です。
- 揚げ物:フライドポテト、唐揚げ、フィッシュアンドチップスなど、少量でも満足感のあるメニュー。
- おつまみ:ナッツ、ピクルス、枝豆など、仕込みが少なくすぐに提供できるもの。
- 限定メニュー:出店場所の客層に合わせて、ホットドッグやケバブなど少しボリュームのあるメニューを用意するのも効果的です。
ビールなどの値段設定のコツ
ドリンクの価格設定は利益を大きく左右します。生ビール1杯の値段は、原価(ビール代、ガス代、カップ代など)の3倍から4倍程度が一般的です。周辺の競合店の価格をリサーチしつつ、お店のコンセプトや提供価値に見合った価格を設定しましょう。
バー営業におすすめのキッチンカー車両は?
バー営業用のキッチンカーは、提供したい雰囲気やオペレーションに合わせて選ぶことが大切です。ベース車両の大きさや内装の設計が、働きやすさとお店の魅力に直結します。
車両のベースとなる車種選び
- 軽トラックベース:小回りが利き、狭いスペースにも出店しやすいのがメリット。初期費用も抑えられますが、積載できる機材や作業スペースが限られます。
- 普通車(1.0t~1.5tトラック)ベース:最も一般的なタイプで、作業スペースと積載量のバランスが良いのが特徴です。ビールサーバーなど大型機材の設置にも対応できます。
内装・設備でこだわるべきポイント
移動式バーカウンターのデザインは、お店の顔となります。お客様が立ち寄りやすい高さやデザインを追求しましょう。また、ビールサーバーは冷却機能の維持に多くの電力を消費するため、十分な容量の発電機やバッテリーシステムの準備が不可欠です。雰囲気作りのための間接照明や装飾にもこだわり、魅力的な空間を演出しましょう。
キッチンカーのバーを成功させるためのポイントは何か?
キッチンカーバーの成功には、他のキッチンカーとの差別化を図る明確なコンセプト設定と、ターゲット顧客が集まる場所を見極める戦略的な出店が鍵となります。
魅力的なコンセプト設定
「何を専門とするバーなのか」を明確にすることで、お店の個性が際立ちます。例えば、「国産クラフトビール専門」「世界のウイスキーが楽しめる立ち飲みバー」「女性バーテンダーが接客するガールズバー風」など、コンセプトを絞り込むことで熱心なファンを獲得しやすくなります。
戦略的な出店場所の選定
お酒の需要が高い場所を見極めて出店することが売上アップの近道です。
- 音楽フェス、お祭り:最も高い売上が期待できる場所。
- ナイトマーケット、フリマ:おしゃれな雰囲気のイベントは、クラフトビールやカクテルとの相性が良いです。
- オフィス街のランチタイム後:夕方以降、仕事帰りの一杯を狙う需要があります。
- スポーツイベント会場周辺:試合観戦後の需要が見込めます。
SNSを活用した集客とファン作り
InstagramやX(旧Twitter)を活用し、出店情報や限定メニューの告知を積極的に行いましょう。お店の世界観が伝わる写真や動画を投稿し、お客様とのコミュニケーションを通じてファンを増やすことが、安定した経営に繋がります。
キッチンカーでバーを営業する際の注意点は?
移動販売ならではの注意点を理解し、事前に対策を講じておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
- 天候による売上の変動:雨や荒天の日は、客足が大きく落ち込むことを想定し、無理な出店は避ける判断も必要です。
- 飲酒運転の防止徹底:お客様に「飲んだら乗るな」の声かけを徹底し、必要に応じて運転代行サービスの案内なども準備しておくと親切です。
- 深夜営業と騒音問題:出店場所のルールを確認し、深夜営業の可否や営業時間を遵守しましょう。特に住宅街の近くでは、お客様の話し声やBGMが騒音とならないよう配慮が求められます。
あなただけの移動式バーで、新たな挑戦を
キッチンカーでのバー開業は、固定店舗に比べて低リスクで始められる魅力的なビジネスです。成功のためには、入念な準備と計画が欠かせません。この記事で解説した「資格・許可」「資金」「メニュー戦略」「成功のポイント」を参考に、まずはあなただけのキッチンカー バーのコンセプトを具体的に描くことから始めてみてはいかがでしょうか。あなただけの移動式バーが、多くの人々に特別な時間と空間を提供することを楽しみにしています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
キッチンカーの仕込み場所はどこにすべき?営業許可の条件から探し方まで解説
キッチンカーを出店するには、適切な「仕込み場所」の確保が不可欠です。食品衛生法上、保健所の営業許可を得た施設を用意しなければなりません。 この記事では、キッチンカーの仕込み場所に関する基本的なルールから、レンタルキッチン、自宅の改装、仕込み…
詳しくみるケバブのキッチンカーは儲かる?年収相場やおすすめメニュー
ケバブのキッチンカーは、手軽に美味しい料理を提供できる魅力的なビジネスモデルとして注目されています。特に、肉と新鮮な野菜を使ったケバブは、幅広い消費者に受け入れられやすく、出店場所によっては高い収益を見込むことが可能です。この記事では、ケバ…
詳しくみるおにぎり屋のキッチンカーは儲かる?おすすめメニューや開業までの流れ
近年、多様な料理を提供するキッチンカーが人気を集めています。その中でも、おにぎり屋のキッチンカーは、手軽さと健康志向の高まりから注目されています。おにぎりは種類が豊富で、具材を工夫することで独自のメニューを展開可能です。本記事では、おにぎり…
詳しくみるキッチンカーに最適なフライヤーの選び方とは?ガス式・電気式の比較から油の処理、おすすめまで徹底解説!
キッチンカーでフライドポテトや唐揚げといった定番の揚げ物メニューを提供したいなら、フライヤーの導入は不可欠です。しかし、限られたスペースと設備の中で最適な一台を選ぶには、ガス式と電気式の違い、適切なサイズ、価格、そして意外と見落としがちな油…
詳しくみるキッチンカーでアイスを売るには?開業に必要な資格や許可を徹底解説
キッチンカー(移動販売)でのアイス販売には、出店する地域の「食品衛生責任者」の資格と管轄保健所の「飲食店営業許可」を取得し、適切な設備を搭載した車両が必要です。ただし、ソフトクリームの販売は衛生管理の基準が厳しく、自治体の許可が難しいのが実…
詳しくみるキッチンカーでクレープ屋を始めるには?おすすめのメニューや注意点など解説
近年のフードトラックブームに乗り、キッチンカーでクレープを提供するビジネススタイルも一般的になりました。キッチンカーを利用することで、特定の場所に依存せずに集客が可能となり、さまざまなイベントや場所で多くの人々に美味しいクレープを楽しんでも…
詳しくみる