• 作成日 : 2025年9月25日

たこ焼き屋の廃業率は高い?厳しい現実と成功戦略

「手軽に開業できて儲かりそう」というイメージのあるたこ焼き屋。しかし、その裏で多くの店がオープンから数年で姿を消している現実があります。近年の原材料高騰などを背景に「お好み焼き・たこ焼き店」の倒産件数は過去最多を更新しており、決して楽な経営ではないことがうかがえます。

この記事では、最新の倒産データから見えるたこ焼き屋の厳しい現実、失敗の主な要因、そして競争を勝ち抜いて成功するための具体的な収益構造や経営戦略を、専門的な視点でわかりやすく解説します。

たこ焼き屋の倒産・廃業が増加している厳しい現実

たこ焼き屋の開業を考えるうえで、まず直視すべきは近年の厳しい経営環境です。実際の倒産データと、なぜ廃業に追い込まれる店が増えているのか、その背景にある理由を解説します。

「たこ焼き屋等」の倒産件数は過去最多を更新

たこ焼き屋に限定した廃業率の公式データはありませんが、信用調査会社の東京商工リサーチが公表したデータが、その経営の厳しさを明確に示しています。調査によると、「お好み焼き・たこ焼き・焼きそば店」の2023年の倒産件数は32件にのぼり、前年の16件から2倍に急増。2年連続で過去最多を更新するという深刻な状況です。倒産の主な原因は「販売不振」が最も多く、多くの店が売上の維持に苦しんでいる実態が浮き彫りになっています。

出典:「お好み焼き・たこ焼き・焼きそば店」の倒産、2年連続で過去最多を更新|東京商工リサーチ

なぜたこ焼き屋の倒産・廃業が増加しているのか

倒産件数が増加している背景には、たこ焼き屋が直面する特有の課題があります。

  • 原材料と光熱費の歴史的な高騰: 小麦粉や食用油、タコといった主原料はもちろん、ソースやマヨネーズ、持ち帰り用のパック容器に至るまで、あらゆるコストが上昇しています。さらに、電気代やガス代といった光熱費の高騰も、利益を直接圧迫する大きな要因です。
  • 価格転嫁の難しさ: 「安くて、手軽で、おいしい」という大衆的なイメージが強いのがたこ焼きです。そのため、コストが上がっても安易に値上げすると、お客様が離れてしまうのではないかという懸念から、多くの店が価格転嫁に踏み切れずにいます。
  • コロナ関連融資の返済開始: コロナ禍を乗り越えるために利用した、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化しています。売上が回復しない中で返済の負担が重くのしかかり、資金繰りが悪化して事業継続を断念するケースが増えています。

これらの要因が複合的に絡み合い、体力の乏しい小規模な店舗から、経営が立ち行かなくなっているのが現状です。

たこ焼き屋の廃業率を高める主な失敗要因

厳しい外部環境に加え、経営上の判断ミスが廃業を早めることも少なくありません。倒産・廃業に至る典型的なパターンを知り、同じ轍を踏まないようにしましょう。

安易な立地選定

たこ焼き屋の売上は、立地が8割といわれるほど重要です。人通りが多ければ良いというわけではありません。スーパーの入り口、学校の近く、住宅街、駅前など、場所によって客層や売れる時間帯はまったく異なります。「家から近いから」「家賃が安いから」といった安易な理由で決めると、ターゲットとする客層がおらず、売上が伸び悩む原因となります。

他店との差別化不足

周りを見渡せば、多くのたこ焼き屋や類似の粉もの店が存在します。その中で「なぜ、あなたのお店で買う必要があるのか」を明確に示せなければ、お客様はより安い店や便利な店に流れてしまいます。生地の味、ソースの種類、具材のクオリティ、接客態度など、何か一つでも「あそこのたこ焼きは違う」と思わせる独自性がなければ、激しい競争の中で埋もれてしまうでしょう。

甘い売上・収支計画

「一日あたり50パック売れれば、月収〇〇万円になるはず」といった希望的観測だけで事業計画を立てるのは危険です。とくに、近年の原材料高騰のような外部環境の変化を織り込まずに計画を立てると、想定以上に利益が圧迫されます。

売上には必ず波があり、天候や季節によっても変動します。材料費、家賃、水道光熱費、人件費、広告宣伝費、税金といったコストを正確に把握し、現実に即した収支計画がなければ、あっという間に資金繰りが悪化します。

集客の工夫不足

「美味しければお客様は自然と来てくれる」というのは幻想です。とくに開業初期は、お店の存在を知ってもらうための積極的なアプローチが欠かせません。SNSでの情報発信、チラシのポスティング、地域イベントへの出店、ポイントカードの導入など、地道な集客努力を怠ると、お店は誰にも気づかれないまま廃業へと向かってしまいます。

たこ焼き屋の廃業率を乗り越え儲けるための収益構造

倒産が増えている厳しい現実がある一方、たこ焼き屋は利益率の高いビジネスモデルでもあります。失敗要因を避け、収益構造を正しく理解すれば、成功の道は見えてきます。

たこ焼き屋の売上と利益の目安

たこ焼き屋の売上は、立地や価格、営業時間によって大きく変わります。たとえば、1パック500円のたこ焼きを平日に50パック、休日に100パック売ると仮定した場合の月間売上は以下のようになります。

  • 平日:500円 × 50パック × 22日 = 550,000円
  • 休日:500円 × 100パック × 8日 = 400,000円
  • 月間売上合計:950,000円

ここから材料費や家賃、人件費などの経費を差し引いたものが利益となります。成功しているごく一部の店舗では、業種・立地・利益率などの条件が揃えば、年収1,000万円超を実現する例もあります。

原価率と利益率の考え方

たこ焼きの原価率は、一般的に25%~35%程度といわれ、飲食店の中では比較的低いのが特徴です。しかし、これはあくまで平時の話であり、前述のとおり近年の原材料高騰によって利益は圧迫されやすくなっています。

この低い原価率というメリットを活かすには、廃棄ロスを徹底して減らし、水道光熱費などの経費をいかに抑えるかという、シビアな管理能力がこれまで以上に問われます。

客単価を上げる工夫

売上を伸ばすには、パック数を売るだけでなく、お客様一人あたりの購入金額(客単価)を上げる工夫も効果的です。

  • セット販売: ドリンクや唐揚げなどのサイドメニューとセットで販売し、お得感を演出します。
  • トッピングの充実: チーズ、明太マヨ、ねぎ塩だれなど、追加料金で選べる豊富なトッピングを用意します。
  • 個数のバリエーション: 6個入り、8個入り、12個入りなど、さまざまなニーズに対応できる個数を用意し、より多い個数への誘導を図ります。

これらの工夫で客単価を100円でも上げることができれば、コスト増をカバーし、利益を確保しやすくなるでしょう。

開業スタイル別にみる、たこ焼き屋の廃業リスクと費用

たこ焼き屋の開業にはいくつかのスタイルがあり、それぞれ初期費用やリスクが異なります。自社に合ったスタイルを選ぶことが、廃業リスクの軽減につながります。

店舗型(固定店舗)のメリット・デメリット

固定店舗は、地域に根ざした営業ができ、常連客を掴みやすいのが最大のメリットです。天候に左右されにくく、イートインスペースを設ければ客単価アップも狙えます。

一方で、物件取得費や内装工事費、厨房設備などで500万円~1,000万円程度の高い初期費用がかかります。また、一度場所を決めたら簡単に移動できないため、立地選定の失敗が致命的になるリスクがあります。

キッチンカー(移動販売)のメリット・デメリット

キッチンカーは、平日と休日で場所を変えたり、イベントに出店したりと、人が集まる場所に移動して販売できるのが強みです。初期費用も車両購入・改造費で300万円~500万円程度と、店舗型より抑えられます。

ただし、天候の影響を直接受けやすく、出店場所の確保や営業許可の取得に手間がかかるというデメリットがあります。また、水道や電気の制約も考慮しなくてはなりません。

自宅開業・間借り(ゴーストレストラン)のメリット・デメリット

自宅のガレージなどを改装したテイクアウト専門窓口や、既存の飲食店の厨房を借りる「間借り」というスタイルです。初期費用を数十万円レベルにまで抑えられるため、最も低リスクで始められます。

しかし、立地が限られるため集客に工夫が必要であり、デリバリーサービスへの登録が前提となることも多いです。まずは副業として小さく始めたい、という方に向いているでしょう。

廃業率を下げるための現代的なたこ焼き屋経営戦略

参入障壁が低いからこそ、他店との差別化と時代に合った経営戦略が不可欠です。倒産・廃業の波を乗り越えるための現代的なアプローチを紹介します。

SNSとオンラインでのファン作り

お店の情報を発信し、お客様とコミュニケーションをとるためにSNSの活用は欠かせません。焼きたてのたこ焼きの魅力的な写真や動画、新トッピングの紹介、店主のこだわりなどを発信することで、お店のファンを増やしましょう。

InstagramやX(旧Twitter)、LINE公式アカウントなどを活用し、フォロワー限定のクーポンを配布するなど、来店動機につながる仕掛けが有効です。

デリバリーサービスへの対応

Uber Eatsや出前館といったデリバリーサービスへの対応は、新たな顧客層を獲得し、雨の日などの売上減少をカバーする強力な武器になります。手数料はかかりますが、商圏を大きく広げることが可能です。テイクアウト専門の容器や、配達中に冷めにくい工夫などもあわせて検討すると良いでしょう。

独自メニューと限定商品での差別化

原材料高騰や価格競争から脱却するためには、付加価値の高いメニュー開発が鍵となります。「たこ」にこだわらず、エビやチーズ、地域の特産品を入れた創作たこ焼きや、「ここでしか食べられない」限定ソースなどで独自性を打ち出しましょう。価値が伝われば、お客様は多少高くても納得して購入してくれます。

効率的なオペレーションの構築

キャッシュレス決済の導入は、会計時間を短縮し、お客様の利便性を高めるだけでなく、現金を管理する手間やリスクを軽減します。また、モバイルオーダーシステムを導入すれば、お客様は事前に注文・決済を済ませ、待たずに商品を受け取れます。これにより、行列による機会損失を防ぎ、店舗の回転率を上げることができます。

たこ焼き屋の廃業率を理解し計画的な開業準備を進める

本記事では、たこ焼き屋の倒産件数の増加という厳しい現実と、その背景にある失敗要因、そして成功に向けた具体的な戦略について解説しました。飲食業の中でもとくに参入しやすいビジネスである一方、コスト高騰や競争激化によって、多くの店舗が廃業に追い込まれています。しかし、廃業する店には共通した失敗のパターンが存在します。

その逆もまた然りで、成功している店は、外部環境の変化に対応しながら、明確な戦略と地道な努力を積み重ねています。これからたこ焼き屋の開業を目指すのであれば、この厳しい状況を単なるリスクとして恐れるのではなく、失敗から学ぶべき教訓として受け止めることが大切です。

徹底した市場調査と現実的な事業計画、そして他店にはない独自の価値を提供し続けることが、倒産の波を乗り越え、長く愛される店を作るための確かな道筋となるでしょう。


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