- 作成日 : 2025年9月25日
キッチンカーで焼き芋屋を開業するには?始め方から成功のコツまで解説
キッチンカーで焼き芋を販売するビジネスは、比較的少ない初期費用で始められ、利益率も高めに設定しやすいため、多くの人から注目されています。とはいえ、成功させるにはしっかりとした準備と計画が欠かせません。
この記事では、焼き芋屋をキッチンカーで始めたいと考えている方に向けて、開業までの流れ、メリット・デメリット、必要な資金、出店場所の選び方、そして現代に合った集客の工夫まで、知っておきたいポイントをわかりやすく整理してご紹介します。
目次
キッチンカーで焼き芋屋を開業するメリット・デメリット
キッチンカーでの焼き芋販売には、少ない元手で始められるなどのメリットがある一方で、天候や季節に売上が左右されるといったデメリットも存在します。事業を始める前に双方を正しく理解し、対策を立てることが重要です。
キッチンカーで焼き芋屋を開業するメリット
- 低い初期投資で開業できる:実店舗と比べて店舗取得費や内外装工事費がかからないため、開業資金を大幅に抑えられます。とくに焼き芋はシンプルな設備で始められるため、中古のキッチンカーを選べばさらにコストを削減できるでしょう。
- 高い利益率が期待できる:焼き芋は原価率が低い商材で、一般的にさつまいもの仕入れ値は販売価格の20%~40%程度に収まることも珍しくありません。これは飲食業の中でも良好な水準であり、効率的に利益を上げやすいビジネスモデルです。
- 出店場所を柔軟に変えられる:固定店舗と違い、イベント会場やオフィス街、住宅街など、集客が見込める場所へ移動して販売できます。曜日や時間帯に合わせて最適な場所を選べるのは、キッチンカーならではの強みです。
キッチンカー焼き芋のデメリット
- 天候に売上が大きく左右される:屋外での営業が基本のため、雨や雪、強風の日は客足が大きく落ち込みます。安定した収益のためには、天候に左右されにくい屋根付きの出店場所を探すなどの工夫が求められます。
- 季節による需要の変動:焼き芋の主な需要期は秋から冬にかけてです。夏場の売上をどう確保するかが大きな課題となります。「冷やし焼き芋」や関連スイーツなど、年間を通して販売できるメニュー開発が必要です。
- 出店場所の確保が難しい場合がある:移動できる自由がある反面、常に魅力的な出店場所を確保し続けなければなりません。好条件の場所は競争が激しく、出店料もかかります。地道な交渉や専門のマッチングサービスの活用が不可欠です。
- 労働環境が過酷になることがある:とくに夏場の車内は非常に高温になり、熱中症のリスクが伴います。また、冬場は寒さ対策が必要です。限られたスペースでの長時間の立ち仕事になるため、体力的な負担も考慮しなくてはなりません。
キッチンカーで焼き芋屋を開業する具体的な手順
キッチンカーで焼き芋屋を始めるには、資格の取得から車両の準備、営業許可の申請まで、いくつかのステップをふむ必要があります。一つひとつの手順を確実に進めることで、スムーズな開業につながります。事業計画を立て、計画的に準備を進めていきましょう。
資格取得と営業許可の申請
キッチンカーで飲食物を提供するには、まず「食品衛生責任者」の資格が必要です。これは各都道府県の食品衛生協会が実施する講習会を受講することで取得できます。
次に、営業の拠点となる地域を管轄する保健所で「飲食店営業」の許可を取得します。キッチンカーの設備が、保健所が定める基準(給排水タンクの容量など)を満たしているかどうかが審査されます。基準は自治体によって異なる場合があるため、事前に管轄の保健所に相談することが大切です。
事業計画と資金調達
なぜこの事業を始めるのか、どのような顧客に、どのような価値を提供するのかを明確にするために事業計画を立てます。売上目標や費用、資金計画などを具体的に数字に落とし込むことで、事業の実現性が高まります。
自己資金だけで不足する場合は、資金調達を検討します。日本政策金融公庫の創業融資や、地方自治体の制度融資、補助金・助成金などが活用できる場合があります。事業計画書は、これらの融資審査においても重要な書類となります。
キッチンカーの選び方と準備
キッチンカーの車両は、事業の根幹をなす重要な要素です。新車で購入するほか、中古車を購入したり、レンタルやリースを利用したりする方法があります。
- 新車:自由に設計できますが、費用は高くなります。相場は300万円~500万円程度が目安です。
- 中古車:初期費用を抑えられますが、車両の状態を慎重に見極める必要があります。150万円~300万円程度が相場とされていますが、整備状態や厨房設備によって価格は大きく変動します。
- レンタル・リース:開業時の負担は少ないですが、月々の支払いが発生します。お試しで始めたい場合や、短期的な運営を考えている場合に適しています。
ベースとなる車両は、軽トラックや1t~1.5tトラックが一般的です。焼き芋の販売は比較的省スペースで可能なため、軽トラックでも十分に運営できるでしょう。
焼き芋の仕入れと機材の選定
焼き芋の味を左右するのが、さつまいもの品質と調理機材です。さつまいもは、ねっとり系の「紅はるか」や「シルクスイート」、ほくほく系の「紅あずま」など、さまざまな品種があります。
複数の品種を扱ったり、季節によって変えたりすることで、顧客に飽きさせない工夫ができます。仕入れ先は、農家からの直接仕入れや、卸売市場、専門の業者などを検討しましょう。
焼き芋器には、主に以下の種類があります。
- ガス式:火力が安定しており、扱いやすいのが特徴です。多くのキッチンカーで採用されています。
- 電気式:安全性が高く、商業施設など火気厳禁の場所でも出店しやすいメリットがあります。ただし、大容量の発電機が必要です。
- 壺焼き:遠赤外線効果でじっくりと焼き上げるため、非常に甘く仕上がります。伝統的な製法で、他店との差別化につながります。
このほか、のぼりや看板、メニューボード、レジ、必要に応じて発電機などの備品も準備します。
成功のカギを握るキッチンカーの出店場所戦略
どれだけ美味しい焼き芋を作っても、お客さまがいなければビジネスは成り立ちません。キッチンカーの成功は、出店場所の選定にかかっているといっても過言ではないでしょう。どこで、どのようにして販売場所を見つけるかが、売上を大きく左右します。
焼き芋の移動販売はどこでできる?
焼き芋のキッチンカーが出店できる場所は多岐にわたります。ターゲットとする客層に合わせて場所を選ぶことが重要です。
- スーパーマーケットや商業施設の軒先:買い物客が多く、とくに主婦層やファミリー層にアプローチしやすい場所です。
- イベント会場:お祭りやフリーマーケット、音楽フェスなどは多くの人が集まり、短時間で高い売上が期待できます。
- オフィス街:ランチタイムや仕事帰りのビジネスパーソンをターゲットにできます。スイーツとしての需要も見込めるでしょう。
- 住宅街:地域住民の日常的なおやつ需要を狙います。ルートを固定化することで、リピーターを獲得しやすくなります。
- 大学のキャンパス:学生向けの軽食として需要が期待できます。
出店場所の見つけ方と交渉術
出店場所を見つけるには、自ら足を運んで探す方法と、専門のプラットフォームを活用する方法があります。 スーパーや商業施設に出店したい場合は、直接店舗の責任者に交渉します。その際は、事業内容やキッチンカーのコンセプトがわかる資料を持参すると、話が進めやすくなります。
近年では、キッチンカーと出店場所をマッチングするプラットフォームも増えています。これらのサービスを利用すると、自分で探す手間が省け、さまざまな場所に出店するチャンスが広がります。
東京都内での出店ポイント
東京は人口が多く、多様な出店機会がある魅力的な市場です。オフィス街が広がる丸の内や大手町、若者や観光客が集まる渋谷や原宿、ファミリー層が多い世田谷区や練馬区の住宅街など、エリアによって客層が大きく異なります。
ただし、都内は競合も多く、出店料が高めに設定されている傾向があります。また、車両の駐車スペースの確保も課題となります。出店を希望するエリアの特性をよくリサーチし、採算がとれるかどうかを慎重に判断することが大切です。
キッチンカー焼き芋の収益性と費用
事業を継続するためには、収益と費用のバランスを正確に把握することが不可欠です。キッチンカーでの焼き芋販売にかかる費用を洗い出し、現実的な売上シミュレーションを行うことで、健全な経営計画を立てることができます。
初期費用と運転資金の目安
キッチンカーで焼き芋屋を開業するための費用は、大きく「初期費用」と「運転資金」に分けられます。車両や機材のグレードによって大きく変動しますが、目安を把握しておきましょう。
まず、開業時にかかる初期費用の目安は、合計で215万円から640万円程度です。主な内訳は以下のとおりです。
- 車両取得・改造費:150万円~500万円 キッチンカー本体の購入費や、内装・外装の工事費が含まれます。
- 厨房・調理機材費:50万円~100万円 焼き芋器、シンク、冷蔵庫、レジ、発電機などの購入費用です。
- 許認可取得費:5万円~10万円 保健所の営業許可申請や、食品衛生責任者の講習受講料などです。
- その他:10万円~30万円 看板やのぼりの制作費、開業当初の仕入れ費用などにあたります。
次に、月々の運営にかかる運転資金の目安は、合計で21万円から58万円程度です。
中古キッチンカー活用のメリット・デメリット
初期費用を抑えるために、中古のキッチンカーを検討する方も多いでしょう。最大のメリットは、新車に比べて安価に購入できる点です。数百万円単位で費用を圧縮できる可能性があり、開業のハードルを大きく下げてくれます。
一方で、デメリットも存在します。前の所有者の使用状況によっては、車両や厨房設備が劣化している場合があります。購入後に思わぬ修理費がかかるリスクを考慮しなくてはなりません。
また、自分の理想とするレイアウトやデザインになっていない場合、追加の改造費用が必要になることもあります。中古車を選ぶ際は、信頼できる販売業者から、車両の状態を十分に確認したうえで購入することが重要です。
焼き芋の販売価格と売上シミュレーション
焼き芋の販売価格は、1本あたり400円~600円程度が相場です。原価を100円と仮定した場合、1本あたりの粗利は300円~500円となります。 この条件で、簡単な売上シミュレーションをしてみましょう。
- 平日(オフィス街で出店) 客単価500円で50本販売した場合、売上は25,000円、粗利は20,000円となります。
- 休日(イベントで出店) 客単価500円で150本販売した場合、売上は75,000円、粗利は60,000円です。
上記はあくまで一例です。実際にはここから出店料や燃料費などの経費が引かれます。安定した収益を得るには、平日は住宅街やオフィス街、休日はイベント会場といったように、複数の出店パターンを組み合わせて、継続的に売上を確保する戦略が求められます。
現代のキッチンカー焼き芋屋が信頼を得る方法
昔ながらの「石焼き芋〜」というスピーカーの声に懐かしさを感じる一方、一部では「どこから来たのかわからない」「少し怪しい」というイメージを持つ人もいます。現代においてキッチンカービジネスを成功させるには、美味しさだけでなく、安心感や信頼感をいかにして作り出すかが重要になります。
「石焼き芋の車は怪しい」イメージを払拭するデザイン
キッチンカーの外観は、お店の顔です。清潔感のある明るいデザインや、おしゃれなカフェを思わせるような外装は、とくに若い世代や女性客に安心感を与えます。
車両のカラーリングやロゴ、タペストリーなどを工夫し、思わず写真を撮りたくなるようなデザインを心掛けることで、従来のイメージを覆すことができます。また、メニューや価格を車外からでもはっきりとわかるように表示することも、信頼感につながる大切な要素です。
SNSを活用してお客さまに見つけてもらう仕組みづくり
「焼き芋の移動販売車を捕まえたいのに、どこにいるかわからない」という声に応えるのが、SNSの活用です。X(旧Twitter)やInstagramを使って、その日の出店場所や時間をリアルタイムで告知しましょう。「#キッチンカー」「#焼き芋」「#(地名)」などのハッシュタグをつけることで、焼き芋を探している潜在的な顧客に情報を届けられます。
出店スケジュールを週単位や月単位で公開すれば、リピーターもお気に入りの場所で購入しやすくなります。お客さまとのコミュニケーションの場としてSNSを育てることで、ファンを作り、安定した集客基盤を築くことが可能です。
差別化を図るメニュー開発のヒント
焼き芋そのものの美味しさを追求することはもちろんですが、他店との差別化を図るための独自メニューも有効な戦略です。
- トッピング:バターやはちみつ、アイスクリーム、チーズなどをトッピングするだけで、特別なスイーツに変わります。
- ドリンクセット:コーヒーや紅茶、ほうじ茶など、焼き芋に合う温かい飲み物とのセット販売は、客単価の向上に貢献します。
- 加工品:焼き芋を使ったプリンやスイートポテト、シェイクなど、加工品を開発することで、新たな顧客層を獲得できる可能性があります。
- 冷やし焼き芋:夏場の売上対策として、ひんやり甘い冷やし焼き芋は定番になりつつあります。
さつまいもの品種にこだわったり、オーガニック素材を使ったりすることも、健康志向の顧客に響く強力なアピールポイントになるでしょう。
焼き芋キッチンカーの成功には、計画的な準備が欠かせません
キッチンカーで焼き芋を販売するビジネスは、少ない資金で始められる点が魅力ですが、だからこそ綿密な計画が重要になります。事業を軌道に乗せるには、出店場所の選定、車両や機材の手配、必要な許認可の取得など、進めるべきステップがいくつもあります。
また、天候や季節による売上の変動も想定し、柔軟に対応できる工夫も必要です。時代のニーズに合ったマーケティングを取り入れながら、自分らしい焼き芋ビジネスをじっくり育てていきましょう。本記事で紹介したポイントを参考に、あなただけの計画を立ててみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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