• 作成日 : 2025年9月22日

キッチンカーにピザ窯を設置するには?種類や選び方、必要な届け出を解説

焼きたての香ばしい香りと、とろけるチーズが食欲をそそるピザ。キッチンカーに本格的なピザ窯を搭載できれば、イベントやランチタイムで多くの注目を集めることができるでしょう。しかし、高温のピザ窯をキッチンカーに設置するには、窯の選定、熱源の確保、そして法的な許可や安全対策など、専門的な知識が不可欠です。

この記事では、キッチンカーに設置するピザ窯の種類と選び方から、必要な許可、車両の準備、そして事業を成功させるためのポイントまで、網羅的に解説します。

キッチンカーに設置するピザ窯の種類

キッチンカーでピザを提供するためにどのようなピザ窯を選べば良いのでしょうか。ピザ窯は熱源によって主に「ガス式」「薪・ペレット式」「電気式」に分けられ、それぞれに特徴や運営上のメリット・デメリットがあります。

ガス式ピザ窯:安定性と扱いやすさ

プロパンガスを熱源とするタイプで、キッチンカーでは主流となっています。最大のメリットは、その温度管理の容易さと火力の安定性です。ダイヤルやボタンで火力を調整でき、設定した温度を保ちやすいため、焼きムラが少なく、常に安定した品質のピザを提供できます。

点火も簡単で、窯が温まるまでの時間も比較的短いため、お客様の注文が集中するピークタイムでもスピーディーに対応可能です。とくに多くの来場者が見込まれるイベント出店においては大きな強みとなるでしょう。

本格的なドーム型の石窯タイプから、省スペースな卓上タイプまで種類も豊富です。 値段の相場は、卓上型で10万円台から、大型の石窯タイプでは100万円を超えるものまで幅広くあります。

薪式・ペレット式ピザ窯:本格志向に

薪や木質ペレットを燃料として、本物の炎で焼き上げるタイプです。独特の燻製香で本格的なピザを味わえるのが魅力です。薪を燃料とするため高温に素早く達するため、ピザの縁にきれいな焦げ目をつけることができるのが大きな特長です。

とくに、薪の中でもナラやクヌギといった広葉樹は火持ちが良く、風味にも影響すると言われています。木質ペレットは、薪に比べて形状が均一で扱いやすく、火力を安定させやすい利点があります。

一方で、その運営には熟練の技術が求められます。薪の組み方や空気の取り入れ方一つで炉内の温度は大きく変動するため、常に最適な焼き加減を維持するには経験が必要です。また、煙突から出る煙や灰の処理、近隣への配慮も欠かせず、出店場所によっては使用が制限される可能性も考慮しなければなりません。

電気式ピザ窯:安全性と手軽さ

火を使わないため、安全性と操作の手軽さにおいては最も優れたタイプです。温度を制御できるため、品質がブレにくく、ピザ作りをして間もない初心者でも扱いやすいと言えるでしょう。煙や灰も出にくく、煙突などの設備が不要です。

機種にもよりますが、業務用電気オーブンをキッチンカーで稼働させるには、膨大な電力が必要になります。

また、発電機自体の購入費用が高額な上に、営業中は常に稼働音が伴います。出店場所によっては発電機の使用が禁止されていることもあります。導入の際は、慎重に検討しましょう。

キッチンカーのピザ窯と車両サイズの目安

キッチンカーで本格的なピザを提供するなら、1.5tトラックがおすすめです。

このサイズなら直径約90cmの実用的なピザ窯を安全に設置でき、一度に複数枚を焼けるため、ランチのピークやイベント時でもスムーズに提供できます。窯の周囲には、生地を伸ばす作業台やトッピングスペース、具材用の冷蔵庫、保健所の許可に必要なシンクなども効率よく配置できます。

ピザ窯は重量があり、卓上タイプでも約50kg、本格的なドーム型では300〜500kgに達します。このため、1.0t〜1.5tクラスの小型トラックが標準的で、軽トラックでは積載や安全面で不安が残ります。車両選びでは、窯の重量をメーカーで確認し、最大積載量に余裕を持たせることが重要です。

一方、小型キッチンカーを選ぶ場合は、直径60cm前後のコンパクトなピザ窯が現実的です。スペースや重量に制約はあるものの、移動や設置がしやすく、イベントや住宅街など狭い出店場所にも対応しやすいのがメリットです。限られたスペースを活かすためには、作業動線や収納レイアウトの工夫が欠かせません。

キッチンカーでピザを販売するための許可や届け出

キッチンカーでピザを販売するには、食品衛生責任者の資格と運転免許証は必須です。また、ピザを提供するには、「飲食店営業許可」を取得する必要があります。キッチンカー内での調理は法律で定められているため、営業スタイルに合わせて必要な許可を確認し、事前に整えておきましょう。

営業に必要な資格・許可

  • 食品衛生責任者資格:
    キッチンカーでも食品を扱う営業形態であるため、営業1台につき最低1名以上の「食品衛生責任者」を配置することが法律で義務付けられています。通常は各都道府県が実施する6時間の養成講習会を受けることで取得可能です。栄養士・調理師等の資格があれば講習免除となる場合があります。
  • 運転免許証:
    車両の運転には運転免許が必須です。市販ベース車両の多くは普通免許で対応できますが、車両総重量によっては中型以上の免許が必要となる場合もあるため、ご自身の車検証と照らし合わせて要確認です。
  • 飲食店営業許可:
    キッチンカーでピザ(焼成を含む調理行為)を提供するには、必ず管轄の保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。
  • 営業許可の管轄範囲:
    営業許可は「地域単位」で取得する必要があり、例えば都県をまたいでキッチンカーで営業する場合、それぞれの管轄保健所ごとに許可が必要です。

ピザ生地の準備(仕込み)に関するルール

キッチンカー車内で小麦粉から生地をこねるなどの一次加工を行うことは、認められない場合があります。こうした「仕込み」は、原則として飲食店営業許可を取得した固定の厨房(店舗や専用施設など)にて行う必要があります。

  • 方法 1:専用厨房で仕込み
    営業許可を得た厨房にて生地作り・一次発酵までを行い、キッチンカーでは成形・トッピング・焼成に専念するスタイル。衛生管理の面で自宅での仕込みは原則NGですので、専用に改装するか、飲食営業許可を取得した厨房(店舗、間借り、シェアキッチンなど)を活用します。
    営業許可取得にあたっては、車両図面や設計概要を持参のうえ、所管する保健所に事前相談を行うとスムーズです。
  • 方法 2:業者から生地を仕入れる
    製麺所や生地専門の業者などから完成近い(例:冷凍生地など)ピザ生地を仕入れ、車内調理を簡略化する方法。仕込み場の用意が不要で、効率的かつ初心者にも実践しやすい選択です。

ただし、仕込みの可否や条件は地域によって異なるため、必ず事前に管轄の保健所に確認しましょう。

ピザ窯以外にキッチンカーに搭載すべき設備

キッチンカーに「飲食店営業許可」を取得するには、ピザ窯のほかにも、保健所が定める基準を満たした設備を車内に備える必要があります。基準は自治体ごとに若干異なるため、車両製作前に必ず管轄保健所へ確認しましょう。

  • 給湯設備付き2槽シンク+専用手洗い器
    食材や器具を洗浄するためのシンクと、手を洗浄するためのシンクは、分けて設置します。多くの場合、合計で3つのシンクが必要です。また、油汚れなどを適切に処理するため、お湯が出る給湯設備も求められます。
  • 大容量の給排水タンク
    十分な量の清潔な水を使え、汚れた水を溜めておけるタンクが必要です。容量は自治体の基準(80Lや200Lなど)に従います。営業中に水が尽きると営業停止となるため、余裕を持ったサイズを選びましょう。
  • 冷蔵・冷凍設備(コールドテーブルなど)
    チーズ、ソース、サラミ、野菜といったトッピングの具材を、衛生的に低温で保存するための業務用冷蔵庫や冷凍庫です。作業台と冷蔵庫が一体化したコールドテーブルは、限られたスペースを有効活用できるため、キッチンカーでは定番の設備です。
  • 清掃しやすい作業台と収納棚
    生地に具材を乗せたりするための作業スペースと、調理器具や資材を衛生的に保管するための収納設備です。清掃しやすいステンレス製などが推奨されます。

キッチンカーでピザを販売するための事業計画

キッチンカーでピザ屋を成功させるには、資金計画・収益シミュレーション・コンセプト設計を含む事業計画の作成が欠かせません。事業計画は、開業準備の工程表であると同時に、金融機関や投資家から資金調達を受ける際の重要書類にもなります。

お店のコンセプトを定める

たとえば、「本格ナポリピッツァ」で品質を追求するのか、「片手で食べられるNYスタイル」で手軽さを打ち出すのか、あるいは「地元の野菜を使った創作ピザ」で独自性を出すのか、お店の方向性を一つに絞り込みます。このコンセプトが、ピザ窯選びやメニューの方向性を決定します。

またコンセプトに合わせて、主な顧客層を考えます。ファミリー層、イベントに参加する若者、オフィス街のランチ客など、ターゲットを具体的にすることで、出店すべき場所や効果的な宣伝方法がより明確になります。

開業資金と収支計画を立てる

まず、事業を始めるための「初期費用」と、継続するための「運転資金」を具体的に洗い出します。ピザのキッチンカーは、とくに初期費用が高額になる傾向があります。

初期費用(イニシャルコスト)の目安

  • 車両購入・改装費: 約300万円~800万円
  • ピザ窯導入費用: 約30万円~150万円以上(種類による)
  • その他厨房設備費: 約50万円~100万円 これらを合計すると、開業には最低でも400万円以上の資金が必要になることが一般的です。

運転資金(ランニングコスト)と価格設定

日々の運営には、材料費変動費)と、出店料や燃料費(固定費)がかかります。ピザの価格は、これらのコストを全て賄い、さらに利益が出るように設定しなければなりません。一般的に、材料費が売上の25%~35%に収まるように価格を決定します。

売上目標と資金調達

次に、具体的な売上目標を立て、必要な資金の調達方法を計画します。

  • 売上目標の設定
    「客単価 × 予想客数」で、1日あたりの売上目標を計算します。平日のオフィス街と週末のイベント会場では客数が大きく異なるため、出店パターンごとに現実的な数字を設定することが大切です。
  • 資金調達
    自己資金で不足する分は、融資を受ける必要があります。日本政策金融公庫の創業融資などが主な選択肢です。融資の審査では、ここで算出した費用や売上目標を具体的に記載した、説得力のある事業計画書の提出が求められます。

関連:ピザ屋の事業計画書の書き方は?テンプレートをもとに記入例を解説

ピザ窯を搭載したキッチンカーを安全に運営するために

キッチンカーでのピザ販売は、焼きたての本格的な味とライブ感をどこへでも届けられる、大きな魅力と収益性を秘めています。その運営のためには、まずお店の方向性に合わせてガス式・薪式・電気式といったピザ窯の種類を比較し、熱源や設置条件、自身のスキルに合った設備を選定することが重要です。

また、ピザ生地の調理は「飲食店営業許可」の対象となるため、保健所の基準を満たす厨房設備を車両に整える必要があります。高温になるピザ窯を安全に扱うには、設置位置や固定方法、断熱・排気対策を徹底しなければなりません。

車両選びから窯の選定、必要な許可の取得、安全対策まで、すべてを計画的に進めることで、安定した営業と高い顧客満足度を実現できます。しっかりと準備を整え、訪れる人に「また食べたい」と思わせる人気のピザキッチンカーを目指しましょう。

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