更新日 : 2025年8月19日

飲食店がクラウドファンディングで開業資金を集めるには？成功の5つのコツも解説

「お店を開きたい。でも資金が足りない」そんな飲食店経営者の強い味方となるのがクラウドファンディングです。インターネットを通じて共感してくれた支援者から資金を集めることで、初期投資を抑えながら開業を実現できる手法として注目されています。

本記事では、飲食店がクラウドファンディングで開業資金を集める仕組みや進め方、成功・失敗のポイント、サイト選びのコツまでをわかりやすく解説します。

飲食店がクラウドファンディングを活用するには？
飲食店がクラウドファンディングをするメリット・デメリット
- 飲食店のメリット
- 飲食店のデメリット
飲食店がクラウドファンディングを実施する流れ
飲食店のクラウドファンディングを成功に導く5つのポイント
飲食店クラウドファンディングの失敗事例と回避策
飲食店のクラファン成功は「共感」と「信頼」から生まれる

飲食店がクラウドファンディングを活用するには？

クラウドファンディングは、店舗の開業や新商品開発といった目的に対して、共感してくれる人から資金を集める仕組みです。飲食店にとっては、開業資金を確保する手段であると同時に、顧客との関係を築くコミュニケーション手段としても注目されています。

クラウドファンディングの基本的な仕組み

クラウドファンディング（Crowdfunding）は、不特定多数の人からインターネットを通じて少額ずつ支援を募る資金調達の方法です。支援者は、プロジェクトの内容や発信者の思いに共感し、対価として「リターン」と呼ばれる商品やサービスを受け取ります。

主な仕組みには2種類があります。

All or Nothing型：目標金額に到達した場合のみ資金を受け取れる
All in型：目標未達でも支援金を受け取れる（Makuakeなどで採用）

飲食店の開業など、達成を前提に準備を進めるプロジェクトでは、万が一目標に届かなかった場合に資金計画が白紙に戻せる「All or Nothing型」が、リスク管理の面から選ばれることもあります。

飲食店とクラウドファンディングの相性が良い理由

飲食店は、クラウドファンディングとの相性が良い業種のひとつとされています。理由は以下の通りです。

共感を得やすい：飲食店には「地域の食文化に貢献したい」「地元食材を使いたい」など、応援されやすいストーリーが豊富
リターンが設計しやすい：食事券や限定メニュー、先行予約など、顧客にとって魅力的かつ実現可能なリターンを設定しやすい
ファンの獲得につながる：開業前から支援者を募ることで、オープン時にすでに応援者が存在する状態を作れる
小規模でも始めやすい：少額からプロジェクトを立ち上げられるため、個人経営の飲食店でも導入しやすい

飲食店での主な活用シーン

クラウドファンディングの活用方法は、新規開業の資金集めだけではありません。以下のような多様なシーンで活用されています。

新規開業資金：店舗の賃料、内装工事費、厨房設備の購入費用など。
新メニュー・商品開発：新しいレシピの開発費用や、ECサイトで販売するレトルト商品の製造費用など。
店舗の改装・リニューアル：老朽化した内外装の改修や、バリアフリー化工事の費用。
運転資金の確保：厳しい経営状況を乗り越えるための運転資金。
イベント開催：周年記念イベントや、地域の食フェス出店費用など。

クラウドファンディングサイトの種類と違い

主なクラウドファンディングサイトは、主に「購入型」と呼ばれるタイプが飲食店のプロジェクトで利用されます。これは支援者がリターンとして商品やサービスを受け取る形式です。

代表的なサイトには「CAMPFIRE（キャンプファイヤー）」や「Makuake（マクアケ）」などがあります。サイトごとにユーザー層や得意なジャンル、手数料が異なるため、自分のプロジェクトに合ったサイトを選ぶことが重要です。

サイト名	特徴	手数料（目安）
CAMPFIRE	飲食店や地域密着型のプロジェクト事例が多い。個人利用に強い	17%（※決済手数料込み）
Makuake	商品開発・先行販売型に強く、法人向けが中心	20%（※決済手数料込み）
READYFOR	社会貢献性の高いプロジェクトが多く、非営利でも活用可	（※運用手数料・決済手数料込み）
BOOSTER	パルコ運営。カルチャーやアート系飲食店と親和性が高い	17%（※ベーシックプランの場合、サイト手数料・決済手数料込み）

たとえば「まちづくりに貢献する飲食店を開業したい」というケースならCAMPFIREが適していますし、「新しい食体験を商品として売り出したい」ならMakuakeの方がマッチします。プロジェクトの性格に応じて最適なサービスを選びましょう。

このように、クラウドファンディングは飲食店との親和性が高く、目的と手段がマッチすれば資金面だけでなく顧客開拓にもつながる手法です。

飲食店がクラウドファンディングをするメリット・デメリット

クラウドファンディングは、飲食店にとって資金調達手段であると同時に、マーケティングやファンづくりの観点からも魅力的な方法です。しかし一方で、適切な準備がなければ失敗に終わるリスクもあります。ここでは、飲食店がクラウドファンディングを行う際の主なメリットとデメリットを整理します。

飲食店のメリット

資金調達と同時に顧客を獲得できる
支援者の多くは店舗の理念やコンセプトに共感し、開業後の来店を前提に支援してくれます。資金集めと同時に、初期顧客となるファン層を形成できる点が大きな強みです。
開業前の認知拡大につながる
SNSやクラウドファンディングのページを通じて、店舗の存在や魅力を広く発信できるため、オープン前から話題づくりが可能です。地域外からの注目も集めやすくなります。
テストマーケティングとして活用できる
リターンの反応や支援の集まり具合を見れば、メニューや価格、店舗の方向性が市場に受け入れられるかを事前に把握できます。開業前の意思決定のヒントにもなります。

飲食店のデメリット

成功には広報・拡散力が必要
支援を集めるには、SNSや知人ネットワークなどを活用した継続的な情報発信が欠かせません。特に初速が肝心で、公開初日からある程度の支援が集まらないと、他の人の支援意欲も高まりにくくなります。
リターンの設計や履行に手間がかかる
支援に対するお礼として提供するリターンは、準備・原価管理・配送手続きなど事務的な負担が発生します。金額設定を誤ると、赤字リスクもあるため注意が必要です。
プロジェクトが不成立だった場合のリスクもある
「All or Nothing型」のクラウドファンディングでは、目標金額に届かなければ資金を受け取れず、プロジェクト自体が“失敗”として認識されてしまいます。その情報がWeb上に残り、今後の信頼性や出資者との関係性に影響を与える可能性もあります。また、支援を期待していた人への説明責任や心理的なプレッシャーが生じる点も、無視できないリスクです。

飲食店がクラウドファンディングを実施する流れ

飲食店がクラウドファンディングを実施するには、プロジェクトの事前準備から運用、終了後の対応まで、段階的に進めます。一般的な実施の流れを順を追って解説します。

クラウドファンディングの成功は、最初の設計段階がとても大切だと言われています。支援者が共感できる「目的」と、現実的で納得感のある「金額・期間設定」が欠かせません。

① プロジェクトの目的・目標金額・期間を具体的に設計する

■ 目的を明確にする

飲食店がクラウドファンディングを行う主な目的は、以下のように分かれます。

目的	具体例
開業資金の一部調達	内装費100万円、厨房機器60万円の一部補填など
新メニューの開発・先行提供	地元食材を使った新ラーメン、ヴィーガンメニューの開発
店舗改装・移転	移転費用、バリアフリー対応の工事資金など
イベント・周年企画の実施	地域向けマルシェ、1周年感謝パーティなど

支援者は「なぜそれをやるのか？」に共感して支援をします。そのため、プロジェクトページでは背景・きっかけ・店舗のビジョンまでしっかり伝えることが重要です。

■ 目標金額の考え方

目標金額は「必要な実費」だけではなく、以下を加味して算出する必要があります。

実費（例：設備費50万円＋広告費10万円＝60万円）
リターン原価（目安：支援金額の30～40％）
プラットフォーム手数料（12〜20％。CAMPFIREは17％）

たとえば「60万円の実費 + リターン原価20万円 + 手数料15万円」なら、目標金額は約95万円が妥当です。

また、一般的な支援単価は1人あたり3,000〜10,000円が中心のため、95万円を達成するには約100〜200人の支援者が必要となります。支援人数の想定も逆算しておくと現実的です。

■ 実施期間の設定

実施期間は一般的には30〜45日が最適とされます。60日以上は勢いが落ちやすく、逆効果になることもありますので「長ければ良い」というわけではありません。
終盤の「追い込み支援」を想定して、前半・後半で戦略を分けるのが有効です。
さらに、「ストレッチゴール」（目標金額を超えた場合の追加目標）を用意しておくと、支援の勢いを維持できます（例：「100万円達成で店内に小上がり席を追加」など）。

② リターンを設計する

飲食店へのクラウドファンディングの支援を集めるうえで、リターン（支援者へのお礼・特典）は特に重要です。魅力的でわかりやすいリターンがあるかどうかで、支援率が大きく変わります。飲食店の場合、店舗やメニューの魅力を活かしつつ、無理のない原価で設計することが求められます。

■ 人気価格帯と構成例

実際に支援が多く集まる価格帯は以下のとおりです（CAMPFIRE統計データより）。

3,000円台：支援者数が最も多い
5,000円台：バランスが良く、実質的な資金源に
10,000円以上：少数でも資金インパクトが大きい

価格帯ごとにリターン内容を工夫し、支援の「選びやすさ」と「満足度」の両立を図りましょう。

金額帯	リターン例
1,000円	応援メッセージ＋SNSでお礼の投稿
3,000円	ドリンク無料券＋店内に支援者名掲載
5,000円	限定ランチセット券＋優先予約権
10,000円	ペアディナーコース＋オープン前試食会招待
30,000円以上	店舗貸切プラン・命名権・周年イベントへの特別招待など（数量限定に）

■ 原価率と採算の考慮

リターン設計で注意すべきは「赤字にならないこと」です。

原価率は支援金額の30〜40％以内が目安
（例：5,000円のリターン→原価1,500〜2,000円）
配送がある場合は送料も原価に含める必要があります
プラットフォーム手数料（12〜20％）と合わせて逆算し、利益や運営資金が残る設計を意識しましょう

■ リターンの設計におけるポイント

数量限定リターンは希少価値を高め、支援を加速させます（例：「先着30名限定のオープンイベント」など）
リターン内容にストーリー性を持たせることで共感を生みます（例：「地元農家の食材を使った一皿」など）
複数の価格帯で選択肢を用意することで、さまざまな支援意欲に対応できます

③ 広報と支援募集を進める

プロジェクトページを公開したあとは、支援を集めるための広報活動が本番です。クラウドファンディングの成否は、「どれだけ多くの人に、継続的に、効果的に届けられるか」にかかっています。特に初日と前半の勢いが成功の分かれ目になります。

■ 初動で支援額の10〜30％を集めるのが理想

CAMPFIREなどの実績によれば、初日に支援額の10〜30％を集めたプロジェクトの成功率は圧倒的に高いことがわかっています。

初動の支援は「人気・信頼できるプロジェクト」としての空気を作ります
公開初日に支援してくれるのは、主に身近な人（家族・友人・常連客など）。事前に告知・協力依頼をしておくことが不可欠です

■ SNS・LINE・リアル店舗をフル活用する

支援の拡大にはオンラインとオフラインの両方を活用しましょう。

Instagram／X（旧Twitter）／Facebookなどで週3〜5回発信投稿例：完成イメージ、店主の想い、食材の紹介、進捗レポート、支援者の声など
LINE公式アカウントやメルマガで定期リマインド
既存の店舗があればチラシ配布やPOP掲示も効果的
クラウドファンディング中は「今日の支援額」など進捗報告も投稿することで、支援の流れを生み出します

■ 支援者とのコミュニケーションを大切に

支援者は「お金を払ったお客様」ではなく、あなたの挑戦を共に応援してくれる仲間です。

コメントやメッセージが届いた際は、できるだけ早く、丁寧に返信することが大切です。一方的に発信するのではなく、やり取りを通じて信頼関係を築くことで、プロジェクトへの関心と愛着が深まります。

また、感謝の気持ちはその都度きちんと言葉にして伝えることで、支援者の満足度が高まり、プロジェクトの再拡散や追加支援につながることもあります。

お店の熱意に共感した人たちが、さらにその熱を周囲に伝えてくれるよう、支援者自身も「仲間」として巻き込んでいく姿勢が、支援の輪を広げるためには欠かせません。

支援が伸び悩んだ場合も、進捗を率直に共有することで、共感による後押しを受けることがあります。

④ 終了後のリターン対応と関係構築

飲食店のクラウドファンディングのプロジェクトが終了した後は、支援者との約束を果たす重要なフェーズに入ります。中でもリターンの履行と、感謝の気持ちを誠実に伝えることは、信頼関係を築くうえで不可欠です。

リターンは通常、プロジェクト終了から1〜2か月以内に提供するのが理想とされます。もし予定より遅れる場合は、理由と新たなスケジュールを速やかに連絡することで、支援者の不安を防げます。支援してくれた人たちは「応援したい」という気持ちで参加しているため、たとえトラブルが起きても誠実な姿勢を見せることが信頼の維持につながります。

特に以下のような「感謝」と「報告」を丁寧に行うことが大切です。

支援者全体へのお礼メールやメッセージの送信
SNSでの進捗・完成報告（例：「無事オープンしました」「目標達成のおかげで厨房機器を導入できました」など）
店内への支援者名の掲示（事前了承のうえ）や、オープン時の特別なご案内

こうした報告や感謝の表現は、支援者に「応援してよかった」と感じてもらうきっかけになり、再来店や次回プロジェクトの支援にもつながっていきます。

支援者は、資金提供者というだけでなく、今後の店舗の成長をともに見守ってくれる「パートナー」や「ファン」のような存在です。リターンを届けて終わりではなく、むしろそこからの関係性をどう育てていくかが、店舗の未来に重要なポイントとなります。

飲食店のクラウドファンディングを成功に導く5つのポイント

飲食店のクラウドファンディングで支援を集める飲食店の中には、目標を大きく上回る成果を出す店舗も少なくありません。ここでは、実際に成功したプロジェクトの特徴をもとに、共通する工夫や戦略を紹介します。初めて挑戦する方にとっても参考になるポイントが数多くあります。

応援したくなるストーリーと明確なコンセプト

「美味しい料理を提供します」だけでは、支援者の心は動きません。なぜあなたのお店でなければならないのか、そのお店が生まれることで誰が幸せになるのか、といった独自のストーリーが共感を呼びます。自身の経歴やお店への想い、地域への貢献などを盛り込み、一貫したコンセプトを伝えましょう。

支援者にとって価値のあるリターンの設定

リターンの魅力は、プロジェクトの成功を大きく左右します。お得感のある食事券はもちろん、「体験」や「限定感」、「特別感」を盛り込むことが重要です。

例えば、「新メニュー開発会議への参加権」や「1日店長体験」、「支援者の名前入りオリジナル丼ぶり」など、お金では買えない価値を提供できないか考えてみましょう。

事前準備とSNSでの告知戦略

成功しているプロジェクトの多くは、公開前から周到な準備をしています。友人や知人に事前にプロジェクトについて伝え、開始と同時に支援してもらえるようお願いしておくことで、良いスタートダッシュが切れます。

また、SNSでは単に「支援してください」とお願いするだけでなく、プロジェクトの裏側や準備の様子を発信し続けることで、フォロワーを巻き込み、ファンにしていくことができます。

定期的な活動報告による信頼関係の構築

プロジェクト期間中、支援者は「プロジェクトは順調に進んでいるだろうか」と気にしています。内装工事の進捗、メニューの試作風景、リターン品の準備状況などをこまめに活動報告でシェアしましょう。顔の見える誠実なコミュニケーションが、支援者の不安を解消し、信頼関係を深めます。これが追加支援や新たな支援者の呼び込みにつながることもあります。

第三者を巻き込む広報活動

自分の力だけで情報を広めるには限界があります。友人や知人はもちろん、影響力のあるインフルエンサーや、地域のメディア、関連業者など、第三者に協力してもらい、情報を拡散してもらうことが成功の鍵となります。

地域の商工会議所や、付き合いのある業者などに相談してみるのも良いでしょう。

飲食店クラウドファンディングの失敗事例と回避策

華やかな成功事例の裏には、残念ながら目標を達成できなかったプロジェクトも数多く存在します。失敗から学び、リスクを回避するための方法を知っておきましょう。

目標金額に届かない資金調達の失敗

最も多い失敗が、目標金額に届かないケースです。主な原因は、プロジェクトの魅力が伝わっていない、広報活動が不足している、目標金額が高すぎるといったことが挙げられます。

【回避策】 プロジェクトページを公開する前に、第三者に読んでもらい、客観的な意見をもらいましょう。また、身の丈に合った現実的な目標金額を設定することも重要です。

プロジェクトの遅延やリターンが実行できないトラブル

プロジェクトが無事に成功しても、計画の遅れからリターンの提供が大幅に遅れたり、最悪の場合、提供できなくなったりするケースがあります。これは支援者の信頼を大きく損なう、最も避けたいトラブルの一つです。

【回避策】 無理のない余裕を持ったスケジュールを立てることが鉄則です。特に、工事の遅延や仕入れの問題など、不測の事態も考慮に入れて計画を立てましょう。

誤解を招く表現による炎上事例

プロジェクトページやリターンの内容に誤解を招く表現があったり、支援者への対応が不誠実だったりすると、SNSなどで批判が殺到し「炎上」に発展することがあります。一度失った信頼を回復するのは非常に困難です。

【回避策】 ページの内容は誰が読んでも誤解しないよう、明確かつ誠実な言葉で記述します。支援者からの指摘や批判には、感情的にならず、真摯に対応する姿勢が求められます。

失敗や炎上を避けるための対策

これらの失敗を避けるためには、「透明性」と「誠実さ」が何よりも重要です。資金の使い道を明確に公開し、進捗をこまめに報告し、支援者とのコミュニケーションを丁寧に行う。当たり前のことですが、この基本を徹底することが、トラブルを未然に防ぎ、万が一問題が起きても支援者からの理解を得るための最善策となります。