- 作成日 : 2025年8月19日
ランチ営業は儲からない?成功のヒントや夜営業へのつなげ方を解説
「ランチ営業は儲からない。夜と比べて利益が出にくい」と言われることがありますが、一概にそうとは言い切れません。夜の営業とは異なる利益構造や特性を理解し、戦略的に取り組めば、売上の確保だけでなく、飲食店のファンを増やし、夜の営業を活性化させることにもつながるでしょう。
しかし、やり方を間違えると、ただ忙しいだけで利益が出ない状況に陥ることもあります。この記事では、ランチ営業の利益構造の基本から、成功するための詳しい戦略、さらには夜の営業へつなげる方法まで、わかりやすく解説します。
目次
ランチ営業は本当に儲からない?
ランチ営業の利益は、夜の営業とは異なる指標で考える必要があります。客単価が低くなりがちな点を、いかに回転率や効率的な運営でカバーできるかが、儲かるかどうかの分かれ目になるでしょう。
ランチの平均売上と利益率の目安
ランチの客単価は800円~1,000円程度が中心という調査結果もあり、ディナータイムに比べて低くなる傾向があります。
また、一般的に飲食店の利益率は10%程度が目標といわれますが、ランチは食材の原価や人件費の比率が高くなりやすく、これを下回ることも少なくありません。
大切なのは、自店のコンセプトや周辺の市場環境をふまえたうえで、現実的な売上目標と利益計画を立てましょう。
たとえば、「1日のランチ売上目標10万円、利益10,000円(利益率10%)」のように、詳しい数字を意識することから始まります。
出典:【外食(昼食)に関する調査】直近1年間に昼食を外食した人は8割強、2021年調査より増加。1回あたりの支出額は「800~1,000円未満」がボリュームゾーン
客単価の低さを「回転率」でどう補うか
客単価が低いランチ営業で利益を出すには、回転率を高めることが欠かせません。限られた時間内(例えば11:30~13:30の2時間)に、いかに多くのお客様を迎え入れられるかで売上が決まります。
回転率を上げるための工夫には、以下のようなものがあります。
- 提供スピードの短縮
注文から提供までの時間をいかに短くできるかが勝負です。調理工程が少なく済むメニュー構成にしたり、ピーク前に仕込みを済ませておいたりする工夫が求められます。 - メニュー数の絞り込み
メニュー数を絞ることで、お客様が注文で悩む時間を減らし、厨房の調理効率も上がります。定番の「定食」や日替わりランチなどが人気なのは、このためです。 - 効率的な座席配置
1人客や2人客が多いランチタイムでは、カウンター席や2人掛けテーブルを多めに配置することで、席効率を高められます。
夜の営業とは異なる原価管理の考え方
ランチの原価率は、一般的に30%が目安とされますが、これもメニュー構成によって変わります。夜の営業で使っている食材をランチにも活用できれば、食材のロスを減らし、全体の原価率を抑えることにつながります。
例えば、居酒屋であれば夜に使う魚のアラで出汁を取ってランチの味噌汁にしたり、焼肉店であれば肉の端材を加工してランチのハンバーグやカレーに使ったりする方法があります。
ランチ単体では厳しい原価率でも、食材の廃棄ロス削減という観点から見れば、店全体の利益に貢献しているケースは少なくありません。ランチとディナーの食材をうまく連動させることが、賢い原価管理のコツといえるでしょう。
飲食店がランチ営業を始めるメリット・デメリット
ランチ営業を始めるかどうかを判断するには、メリットとデメリットの両面をしっかりと理解しておく必要があります。売上以外の効果や、見落としがちなコストとのバランスも検討しましょう。
ランチ営業がもたらす4つのメリット
ランチ営業には、昼の時間帯の売上が増えること以外にも、以下のようなメリットがあります。
お店を知ってもらうきっかけになる
夜は入りづらいと感じる高級店や居酒屋でも、ランチ営業であれば気軽に利用できると感じる人は少なくありません。
ランチ営業は、新規顧客にお店を知ってもらうきっかけとなり、とくにオフィス街や商業地域の「近く」にある店舗にとっては、自然な宣伝活動の役割も果たします。
昼間の時間も売上に変えられる
通常であればお客様がいない時間帯、いわゆる「アイドルタイム」は、家賃や光熱費などの固定費がかかるだけの時間です。
この時間をランチ営業にあてることで、空白時間を収益化し、店舗全体の売上アップに貢献できます。
食材のムダを減らせる
夜営業で使い切れなかった食材や端材をランチメニューに活用することで、廃棄を減らせます。
食材を有効に使うことで原価率の改善にもつながり、同時に食品ロスの削減という観点からも望ましい運営が実現できます。
夜営業(ディナー)につなげる
ランチで良い体験をしたお客様が、次はディナータイムに来店するきっかけになります。
「お試し」の場としてランチ営業を活用し、夜の売上につなげる導線として活用できます。
知っておきたいランチ営業の3つのデメリット
一方で、ランチ営業には人件費や光熱費の増加、スタッフへの負担などデメリットもあります。
利益が出にくいことがある
ランチは客単価が低く、どうしても薄利多売になりがちです。
回転率が上がらなければ、忙しいだけで利益が出ないという状況に陥るリスクがあります。
人件費や光熱費が増える
ランチ営業を追加することで、営業時間が延び、シフト人員の調整が必要になります。
人件費や水道光熱費が増えるため、それ以上の売上を確保できなければ、全体として赤字になるおそれもあります。
スタッフの負担が大きくなることも
ランチからディナーまでの通し営業になると、スタッフの拘束時間が長くなり、休憩も取りにくくなります。
疲労が蓄積すれば、サービスの質の低下や離職の原因にもなり、夜営業の仕込み時間の確保も難しくなることがあります。
成功するランチ営業の戦略と人気メニュー開発のコツ
ランチ営業を成功させるには、しっかりとした戦略が必要です。誰に、何を、どのように提供するのかをはっきりさせることで、安定した収益につながりやすくなります。
どんなお客様に、どんなメニューを届けるかを決める
まずは、お店の立地や周辺環境を分析し、ターゲット顧客をはっきりさせましょう。
オフィス街なら「早くて安い満足ランチ」
近隣の会社員が中心になるため、「早い・安い・うまい」が求められます。
提供スピードを意識した1,000円以下の定食や丼ものが人気です。
住宅街なら「ゆったりできるセットメニュー」
主婦層や地域住民がターゲットになるケースが多く、会話を楽しみながらゆっくり食事したいというニーズが強めです。
見栄えのするセットランチやデザート付きのメニューが好まれるでしょう。
観光地なら「写真映えする名物料理」
観光客が多い場所では、特別感のある地元食材を使った料理や、思わず撮りたくなる見た目のインパクトも大事です。
「ここでしか食べられない」と思わせるような工夫が差別化につながります。
誰に来てほしいかを決めることで、価格やメニュー内容、サービスの方向性が自然と見えてきます。
リピートにつながる人気ランチメニューの作り方
ターゲットが決まったら、次はメニュー開発です。お客様に「また来たい」と思わせる人気メニューには、いくつかの共通点があります。
自慢の看板メニューを1つ作る
「このお店といえばこれ!」と覚えてもらえる料理を用意しましょう。
たとえば、「〇〇店の唐揚げ定食」「△△絶品煮込みハンバーグランチ」など、名前にお店を入れると印象に残りやすくなります。
限定やサービスで来店意欲を高める
「1日20食限定」や「週替わりランチ」は、特別感を演出できます。
また、「ご飯大盛り無料」「サラダ・スープ付き」などのプチサービスも満足度を上げる要素になります。
幅広い価格帯をそろえる
たとえば、850円の「日替わり定食」、1,000円の「定番の焼肉定食」、1,300円の「少し贅沢なご褒美ランチ」のように、松竹梅の価格帯を用意することで、さまざまな利用動機のお客様を取り込めます。価格帯に幅を持たせることで、目的や予算が異なるお客様にも対応できます。
混雑時間帯でもうまく回るオペレーションを作る
お客様を待たせず、かつ従業員に過度な負担をかけずに営業を続けるには、効率的なオペレーションの構築が欠かせません。
仕込みはできるだけ前倒しで
ピーク前に、ソース・付け合わせ・副菜などはあらかじめ作っておき、注文が入ったらすぐ盛り付けられるように準備しましょう。
段取り次第で、提供スピードは大きく変わります。
ホール業務は仕組みで効率化
注文はハンディ端末やタブレットで、ドリンクはセルフサービス、支払いは食券機…などの導入で作業を減らせます。
スタッフは配膳や接客に集中でき、お客様とのやりとりも丁寧になります。
役割分担を明確にして連携アップ
「Aさんは注文と配膳」「Bさんは調理補助と洗い場」など、ピークタイムの役割を事前に決めておくと混乱を避けられます。
無駄な動きを減らすだけで、回転率の改善につながります。
ランチ営業から夜の営業(ディナー)へつなげる工夫
とくに居酒屋、焼肉店、レストランやバーといった夜の営業がメインの飲食店にとって、ランチ営業はディナーへの橋渡しとして大きな意味を持ちます。ランチ客を夜の顧客へと育成する仕掛けづくりを考えましょう。
ランチで夜の魅力をさりげなく伝える
ランチメニューの中に、ディナーの雰囲気や料理の一部を取り入れてみましょう。お客様に自然な形で効果的にディナータイムの魅力を伝えられます。
例えば、焼肉店であれば、夜に提供している高品質な肉を使った「焼肉屋さんの本気カレー」を提供したり、居酒屋であれば、夜の人気メニューである「鶏の唐揚げ」や「もつ煮込み」を定食のメインに据えたりします。
お客様はランチを楽しみながら、「この店の肉(料理)は美味しいから、夜に来たらもっと色々な種類が食べられるんだろうな」と期待を抱くようになります。
ランチ後すぐの再来店につなげる仕掛け
ランチで良い印象を持ってもらえたら、その熱が冷めないうちに次の一手を打ちましょう。次回のディナー来店を直接的に促す仕掛けが有効です。
ディナーで使えるクーポンを渡す
会計時に「1ドリンク無料券」や「10%OFFクーポン」などを配布すると、次の来店動機になります。
「ランチご利用のお客様限定」など、特別感を持たせることで効果が高まり、有効期限を短めに設定することで来店タイミングを早めることもできます。
ポイントカードでリピートを促す
昔ながらの方法ですが、ショップカードやポイントカードは依然として有効です。
「ランチでもポイントが貯まります」と伝えておけば、自然に継続利用の流れができ、ディナー利用にもつながりやすくなります。
SNSやWebを使って夜の魅力を発信する
店内の告知だけでなく、オンラインでのアピールも組み合わせることで、効果はさらに高まります。
ランチで来店したお客様に、お店のLINE公式アカウントやInstagramのフォローを促しましょう。その場でフォローしてくれたらドリンクを1杯サービスする、といった特典を用意するとスムーズです。
そして、そのSNSアカウントで、ディナー限定のメニューや、お酒の種類、宴会コースの案内、店内の雰囲気などを積極的に発信します。ランチでつながったお客様に継続的にアプローチすることで、お店を忘れられるのを防ぎ、ディナーの予約や来店へと結びつけることができます。
ランチ営業をやめる判断基準はある?
多くの飲食店がランチ営業に挑戦する一方で、「儲からない」「負担が大きい」といった理由から撤退を考えるケースも少なくありません。ランチ営業をやめることは、リソースを夜の営業に集中させるための前向きな戦略転換と捉えることもできます。
売上や利益だけで判断しないやや撤退のシグナル
ランチ営業をやめるかどうかは、単純に赤字・黒字だけで判断するべきではありません。以下のようなシグナルが現れたら、撤退を検討するタイミングかもしれません。
スタッフの疲れが目立ってきた
ランチ営業の準備やピーク対応でスタッフが疲弊し、表情が暗くなってきていませんか?
離職が増えている場合は、無理な営業によって職場環境が悪化しているおそれもあります。
夜営業に影響が出始めている
ランチの仕込みや片付けに追われ、ディナー営業の準備が後回しになっていませんか?
新メニューの開発時間が確保できなかったり、仕込み不足で夜の提供がスムーズにいかなくなっている場合は、優先順位の見直しが必要です。
お店のイメージとずれてきている
高級感や静かな空間を売りにしているレストランが、安価なランチで価格競争に巻き込まれていないでしょうか?
ランチ内容がブランドイメージを損ねていないか、定期的に見直すことが大切です。
これらのシグナルを客観的に評価し、ランチ営業を続けることの機会損失が大きいと判断した場合は、勇気をもって撤退することも一つの選択肢です。
ランチをやめる際に顧客へ配慮すべきこと
ランチ営業をやめる際は、これまで利用してくれていたお客様への誠実な対応が重要です。突然営業をやめてしまうと、「勝手な店だ」というネガティブな印象を与えかねません。
十分な告知期間を設ける
店頭ポスターやSNSで、できるだけ早めに最低でも1ヶ月前にはお知らせしましょう。
「夜営業にもっと注力するため」といった前向きな理由を添えると、納得感が生まれやすくなります。
感謝の気持ちをしっかり伝える
「これまでありがとうございました」といった言葉はもちろん、最終日に向けて「ありがとうランチ」を提供するのもひとつの方法です。
常連のお客様にも「応援してよかった」と思ってもらえるような締めくくりが理想です。
夜営業への誘導もさりげなく
「今後はぜひディナーでお会いしましょう」と伝え、夜営業で使えるクーポンをお渡しするなど、関係が途切れない工夫をしましょう。
ランチのファンを、夜の常連へとつなげる最後のチャンスにもなります。
ランチ営業はお店の魅力を広げるきっかけに
ランチ営業は、単に昼の売上をつくるためだけの手段ではありません。
お店を知ってもらう機会を広げたり、夜営業の集客へとつなげたりと、店舗全体に良い影響を与える可能性があります。
ただし、ランチ営業には夜とは異なる難しさもあり、運営方法を間違えるとかえって負担が増える結果になりかねません。
大切なのは、自店の立地や客層、スタッフ体制に合った形で戦略的に取り組むことです。
そして、ランチ営業を続けることで他の営業に支障が出ている場合には、思いきって見直すことも選択肢になります。
続けるか、やめるか。どちらにしても、明確な目的と判断基準を持つことで、店舗全体の運営がより安定しやすくなるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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