- 作成日 : 2025年8月19日
飲食業から異業種への転職は難しい?経験が生かせる仕事と対策を解説
飲食業から異業種への転職は、働き方や求められるスキルの違いによって、準備の仕方で結果が大きく変わります。一方で、転職市場では業種や職種の枠を越える動きが広がっており、飲食業出身者が別の分野で活躍する例も見られます。
この記事では、飲食業から異業種へ転職を考える理由や向いている仕事、注意点までをわかりやすく解説します。
目次
飲食業から異業種への転職は難しい?
飲食業界は人手不足のため転職市場での需要は高いものの、異業種への転職は簡単ではありません。これまでのスキルや経験を、転職先でどう活かせるかを明確に伝えられなければ、選考で苦戦する場合があります。
他の業界構造や求められるスキルが異なるため、事前準備や情報収集をしっかりと行うようにしましょう。
飲食業から異業種への転職する人も一定数いる
飲食業から異業種に転職する人も一定数います。その背景には、転職市場全体で業種や職種の枠を越える「越境転職」が広がっていることが挙げられます。
株式会社リクルートの調査(2023年)によると、2022年度に「異業種×異職種」へ転職した人は全体の39.3%にのぼり、過去10年で最も高い割合となりました。
出典:「異業種×異職種」転職が全体のおよそ4割、過去最多に 業種や職種を越えた「越境転職」が加速
この調査は業種を限定したものではありませんが、年齢や経験にかかわらず、従来の職種・業種にとらわれないキャリア選択が広がっている傾向を示しています。特に20代では職種や業種を変える動きが多く、年齢が上がるにつれて職種を維持しながら異業種へ移る傾向が見られます。
また、飲食業においても、長時間労働や収入の不安定さ、将来への懸念を理由に転職を検討する人は少なくありません。コロナ禍以降、安定した勤務形態や生活との両立を重視する傾向が強まり、他業種への関心が高まっています。
労働市場では人手不足が続いており、未経験者の採用に積極的な企業もあります。職種によっては、接客や現場対応の経験が評価されることもあり、応募先の特性を見極めたうえでの準備が求められます。
「飲食業出身」というだけで不利になるわけではない
飲食業出身だからといって不利になるわけではありません。採用側は業種経験以上に「どのようなスキルを持っているか」「自社で活かせるか」を見ています。
たとえば、飲食業での接客経験や現場マネジメントのスキルは、営業職や小売業、カスタマーサポートなどで評価されやすいものです。
また、調理業務や店舗運営経験は、商品開発やフード関連企業、教育・指導職への応用も考えられます。
重要なのは、自分の経験をそのまま伝えるのではなく、「異業種でも活かせる形」で言語化することです。異業種転職では「即戦力」よりも「再現性」が問われる傾向にあります。
職種選びと準備の仕方で転職の難易度は変わる
飲食業から異業種に移る際、業種だけでなく職種選びにも注目しましょう。営業職やカスタマーサポートなどは、コミュニケーション能力を活かせるため未経験からでもチャレンジしやすいと言われています。
事務職は人気が高く、製造・物流は専門性を問われる場合もあるなど、職種によって求められる要件は異なります。
また、専門職(ITエンジニア、財務、マーケティングなど)は即戦力を求められる場面も多く、独学や資格取得などの準備が必要になることもあります。ただし、飲食業で経理や売上管理に関わっていた場合、会計職などに応募する際にはその実務経験が強みになる場合もあります。
転職の難しさは「業種そのもの」ではなく、「職種との相性」や「準備の有無」によって左右されるといえるでしょう。
飲食業から異業種に転職する理由
飲食業から異業種への転職を考える理由は、労働環境の見直しや収入面への不安、将来のキャリア形成など多岐にわたります。現場で働く人の声からは、転職の決断に至るまでの背景が見えてきます。
労働時間の長さと休暇の少なさ
飲食業から異業種に転職を考える理由として最も多いのが、長時間労働と休暇の取りづらさです。土日や祝日に勤務が集中するため、家族や友人との時間が取りにくく、ワークライフバランスに悩む人が少なくありません。
特に30代以降は、ライフステージの変化とともに「このままでいいのか」と将来を見つめ直すタイミングが訪れやすく、異業種転職のきっかけとなっています。
収入の不安定さと将来性の見通し
飲食業は景気や災害、社会的変化の影響を受けやすく、勤務先の倒産や営業時間の短縮など、収入が不安定になるケースもあります。とくに2020年以降のコロナ禍では、急な営業停止や雇止めのリスクが顕在化し、多くの従業員が将来への不安を強く感じるようになりました。
その結果、「安定した業界で長く働きたい」「福利厚生が整った職場に移りたい」と考える人が増えています。
キャリアの広がりを求めて
飲食業では、ある程度の年数が経つと「現場の責任者」や「マネージャー」などポジションが固定され、スキルの伸びしろを感じにくくなることもあります。「将来、ずっとこの働き方を続けていけるのか」と疑問を持ち、専門性やキャリアパスの広がりを求めて異業種への転職を決意するケースも見られます。
特に20代~30代前半は「手に職をつけたい」「新しいことに挑戦したい」という前向きな理由で異業種を選ぶ人も少なくありません。
飲食業の経験を活かせる異業種・職種の例
飲食業で培った経験は、業種や職種を選べば異業種でも活かすことができます。実際の業務内容を言語化し、共通点のある職種に目を向けましょう。
接客経験を活かせる職種
接客業務で身につけたコミュニケーション力やクレーム対応力は、多くの業界で高く評価されます。とくに以下のような職種で活かしやすいとされています。
- 営業職:顧客との関係構築や提案力が求められるため、飲食での接客経験が自然と役立ちます。
- 販売・サービス業:アパレル、家電、旅行代理店など。顧客ニーズに合わせた対応力が共通しています。
- カスタマーサポート職:電話やメール対応でも「相手の意図をくみ取る力」が活かされます。
いずれも「丁寧に接する姿勢」や「相手の立場で考える力」が伝わるように自己PRすることが効果的です。
調理・食品関連の業務を活かせる職種
調理スキルは食品製造業や給食、ケータリング、商品開発などで活かせます。
- 食品工場・加工業:手順の正確さや衛生管理の経験が重宝されます。
- 給食事業や福祉施設の厨房:栄養バランスへの理解や複数食の調理経験が評価対象となります。
- 商品開発・メニュー企画:調理経験がある人は、調理工程やコストを理解しているため、開発担当としての適性があります。
製造現場などでは調理師免許や食品衛生責任者の資格が歓迎されることもあり、取得済みであればアピール材料になります。
店舗運営・マネジメント経験が活かせる職種
店長や副店長としての経験がある場合は、数値管理や人材育成の経験を活かして別業界のマネジメント職へ転職することも可能です。
- 小売・流通業界の店舗管理:シフト管理、売上分析、スタッフ教育など共通点が多く、即戦力と見なされやすい分野です。
- フランチャイズ本部やSV(スーパーバイザー)職:現場経験が豊富な人材が重宝されます。
- 教育・研修担当職:店舗でのOJTや新人指導経験がある場合、企業の人材育成部門でも適性があると判断されることがあります。
評価されやすいのは「人数・売上規模・改善実績」など数字で示せる管理経験です。面接では数値や成果を交えて伝えましょう。
事務・経理経験が活かせる職種
飲食業でも、日報作成や売上計上、発注業務などに関わっていた場合は、事務職や経理補助への転職も視野に入れられます。
- 一般事務・営業事務:データ入力や在庫管理の実務が活きます。
- 経理補助:仕入れや売上の帳簿管理、領収書の整理などに携わっていれば、その経験が評価対象になります。
- 受付・総務:接客経験との親和性が高く、電話対応や来客応対にも適応しやすいとされます。
事務職は経験者優遇が多い反面、PC操作や基本的なビジネスマナーがあれば未経験でも応募できる求人もあります。
飲食業から異業種へ転職する年齢別のポイント
飲食業から異業種への転職は、年齢によって求められる視点や準備の内容が変わります。年齢に合った戦略を立てることで、選択肢が広がりやすくなります。
20代は可能性を広げやすい時期
20代は「未経験歓迎」の求人にチャレンジしやすい年代です。企業側も将来的な成長を見込み、ポテンシャル重視で採用する傾向があります。そのため、経験よりも「人柄」「意欲」「将来性」といった点が評価されやすくなります。
とくに20代前半は、これまでの職歴が短くても大きな不利にはなりにくく、IT業界や事務職、営業など幅広い選択肢が見込めます。興味関心と長く続けられるかどうかを重視して職種を絞ることがポイントです。
30代は経験の言語化と再整理が必要
30代では即戦力や再現性がより重視されるようになります。飲食業での経験を「異業種でも活かせる形」で整理することが求められます。
たとえば「売上管理」「シフト作成」「新人教育」といった業務経験は、マネジメントや業務改善などの文脈で捉え直すと、他業界でも評価されやすくなります。
また、30代になると「なぜ今この業種を志望するのか」という志望動機もより明確さが求められます。転職回数が増えてきた場合は、その理由と今後のビジョンも合わせて整理しておくことが大切です。
40代以降はマネジメント経験や専門性が軸になる
40代以降の転職では、これまでのキャリアで積み上げてきた「専門性」や「管理経験」をどのように伝えるかがポイントになります。たとえば、店長としてスタッフ20名を管理していた、売上目標を継続して達成していたなど、具体的な成果を数字で伝えられると説得力が増します。
一方で、「未経験職種」への転職になると年齢によるハードルが上がる傾向もあるため、これまでの経験と親和性の高い業種・職種を選ぶことが現実的な選択になります。あわせて資格の取得や、転職エージェントを活用した客観的なキャリア分析も検討しましょう。
飲食業からの転職活動で意識したいこと
飲食業から異業種へ転職する際は、応募企業の業界理解や自己PRの工夫など、いくつか意識すべきポイントがあります。やみくもに応募するのではなく、戦略的に準備を進めましょう。
求人情報の見極め方
飲食業から異業種への転職では、「未経験歓迎」とされる求人であっても、実際には一定のスキルが求められるケースがあります。たとえば「営業職」の場合、ノルマや外回りへの適応力が必要であり、想像と違うと感じることもあるでしょう。
そのため、求人票だけで判断せず、企業の採用ページや口コミ、転職エージェントからの情報など複数の視点で確認することが大切です。仕事内容の理解を深めておけば、入社後のミスマッチを減らせます。
面接でのアピール方法
飲食業から異業種への転職では、これまでの経験を「どう活かせるか」に視点を置いた自己PRが必要です。
飲食業で培ったスキルを「顧客対応力」「臨機応変な判断力」「チームで動く力」など、他業種でも通用する言葉に変換し、具体的なエピソードとともに伝えましょう。
また、「なぜ異業種に挑戦したいのか」という質問に対しては、「過去への不満」ではなく「将来への展望」を軸に答えることで、前向きな印象を与えやすくなります。
業界研究と応募企業の理解
飲食業から異業種に進む際は、業界の構造や仕事の仕組みをあらかじめ理解しておくことが欠かせません。特に、初めて挑戦する業種であれば、以下のような情報を調べておくと安心です。
- 主要な企業や市場規模
- 成長性や今後の見通し
- どのような人材が活躍しているか
また、応募企業ごとの特徴や理念に目を通しておくと、志望動機や自己紹介がより伝わりやすくなります。「企業の求める人物像に自分がどう合っているか」を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
飲食業から異業種に移る前に確認しておきたい労働条件の違い
異業種に転職すると、働き方や待遇に対する価値観が大きく変わることがあります。入社後のギャップを避けるには、飲食業との違いを事前に把握しておきましょう。
勤務時間や休日の取り方が大きく異なる
飲食業ではシフト制が一般的で、土日や祝日の出勤が日常的でした。一方で、事務職や営業職などの平日勤務が中心の職種では、週末や祝日は休みであることが多く、年間休日も増える傾向にあります。
ただし、営業職やIT業界のプロジェクト制の職場では、残業や繁忙期の休日出勤が発生することもあるため、業界・職種によって「働き方の実態」を確認しておくことが重要です。
求人票の「完全週休2日」「年間休日120日以上」といった記載は、実際の休みやすさと異なる場合もあるため、面接時などに質問しておくと安心です。
給与体系と評価の仕組みに違いがある
飲食業では、基本給のほかに深夜手当・休日手当などで月収が構成されるケースが多く、時間外労働によって手取り額が左右されやすい傾向があります。
異業種の中には、「固定残業代込み」の給与体系を採用している企業もあり、時間あたりの単価で見ると以前より下がる場合もあります。また、昇給は年1回、賞与は業績連動といった形で、「頑張った分だけすぐに反映される」とは限らない環境に戸惑う人もいます。
評価制度が数値化されていたり、半期ごとの査定によって給与が決まるなど、飲食業とは異なる仕組みが一般的です。成果主義か年功序列型かなど、社風や制度を事前にチェックしておきましょう。
福利厚生や働く環境の差も意識しておく
異業種では、社会保険や退職金制度のほかに、住宅手当・通勤補助・資格取得支援などの福利厚生が充実している企業もあります。これまで自費で負担していた部分が会社から支給されるようになると、実質的な待遇アップになることもあります。
一方で、福利厚生が整っている分、評価や昇格の基準が厳しくなる場合もあり、「長く勤めること」を前提とした制度設計になっていることも特徴です。
また、パソコンを使った業務が中心となるため、身体的な疲労が減る代わりに、座りっぱなしや画面への集中が求められ、働く負荷の種類が変わることも押さえておきたい点です。
飲食業から異業種への転職を考えるとき整理しておきたいこと
飲食業から異業種への転職を成功させるには、経験の活かし方に加え、希望条件や転職理由を丁寧に整理することが大切です。焦らず、順を追って準備を進めましょう。
まず、飲食業で培ったスキルや価値観を明らかにします。「接客力」「現場対応力」「マネジメント経験」といった強みは、表現を変えれば他業種にも通じる武器になります。
また、なぜ飲食業を離れたいのか、どんな働き方を望むのかという「転職の軸」を固めておけば、職種選びや志望動機で迷いません。
勤務時間、休日、評価制度、社風といった労働条件は業種によって大きく異なります。企業研究や面接での質問を通じて、納得できる選択を重ねていくことが、後悔しないキャリアチェンジにつながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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