• 作成日 : 2023年3月17日

法定内残業とは?計算方法や義務について解説!

法定内残業とは?計算方法や義務について解説!

残業には法定内残業と法定外残業があります。法定内残業は労働基準法に定める法定労働時間内での残業、法定外残業は法定労働時間を超える残業です。法定内残業と法定外残業の違いは割増賃金の支払いと36協定が必要かどうかです。法定内残業時間に対しては法定の割増率で算出する割増賃金を支払ったり、36協定を締結したりする必要はありません。

法定内残業とは?

法定内残業は法定外残業に対して用いられる言葉です。法定内残業と法定外残業は以下のように異なっています。

  • 法定内残業 労働基準法に規定されている法定労働時間内である残業時間
  • 法定外残業 労働基準法に規定されている法定労働時間外である残業時間

労働基準法は法定労働時間を「1日8時間、1週40時間」と定めています(法36条)。この労働基準法の定めによる法定労働時間内での残業を「法定内残業」と言い、法定労働時間を超える残業を「法定外残業」と言います。なお、就業規則でなど定めている労働時間を所定労働時間と呼んでいます。

例) 1日の所定労働時間が7時間の場合の1時間の残業は「法定内残業」
1日の所定労働時間が8時間の場合の1時間の残業は「法定外残業」
1日の所定労働時間が7時間の場合の2時間の残業は、前半の残業は「法定内残業」、後半の残業は「法定外残業」

時間外労働との違い

労働基準法では、法定外残業のことを時間外労働と呼んでいます。時間外労働は割増賃金の支払いが必要です。労働基準法では、それ以外にも休日労働、深夜労働について、それぞれ割増賃金が必要であると規定しています。法定内残業は法定労働時間内での残業で、割増賃金を支払う必要はありません。

普通残業との違い

通常、所定労働時間終了後に残って仕事をすることを「残業」と呼びます。これに対して所定労働時間前に仕事をすることを「早出残業」と言い、早出残業と区別するために、通常の残業を指して「普通残業」と言うこともあります。普通残業でも早出残業でも、残業時間が法定労働時間内の場合は法定内残業になります。

36協定との関わり

36協定(さぶろくきょうてい)とは、労働者に時間外労働や休日労働をさせる場合に必要な労使協定です。労働基準法第36条に根拠規定があるため、36協定と呼ばれています。使用者は36協定の締結と所轄労働基準監督署への届出なしに労働者に時間外労働をさせることはできません。ただし、法定内残業は、法定労働時間内であるため、時間外労働に該当せず、36協定の締結と届出は必要ありません。

残業の種類 – 割増賃金の発生および割増率

残業には割増賃金の支払いが必要なものと、不要なものがあります。どのような残業に対して割増賃金支払いが必要なのでしょうか?割増賃金が発生する残業・発生しない残業、割増率について確認しましょう。

法定内残業

法定内残業に割増賃金を支払う必要はありません。1時間あたりの賃金を、法定内残業の時間数に対して支払います。

法定時間外残業

法定労働時間外の残業は時間外労働になるため、割増賃金の支払いが必要です。割増賃金とは労働基準法が定める労働時間以外にさせた労働に対して、通常の賃金より多く支払わなければならない賃金です。割増賃金を支払わなければならないことも労働基準法で定められています(法37条)。

時間外労働させた場合には25%以上、の割増賃金を支払わなければなりません。また、1カ月の時間外労働が60時間を超える場合、割増率は50%になります(2010年4月から適用)。

なお、1カ月の時間外労働が60時間を超える場合の割増率は、中小企業については猶予措置がありましたが、2023年4月1日からは大企業と同じ50%に引き上げられます。

深夜労働

深夜労働は22:00以降、翌朝5:00までの労働を指し、深夜労働に対する割増賃金率は25%になっています。時間外労働が深夜に及んだ場合は、それぞれ割増賃金率が合計されて50%や75%となります。

法定休日における労働

法定休日とは、労働基準法では、「毎週少くとも1日」または「4週間を通じて4日以上」の休日を与えなければならないとしています(法35条)。法定休日とは、この最低限となる週1日の休日のことです。法定休日労働に対する割増賃金率は35%です。

法定外休日における労働

法定外休日とは法定休日以外の休日を指します。土・日曜日を休日としている場合、就業規則でどちらか一方を法定外休日とすることができます。法定外休日労働に割増賃金支払いは必要ありませんが、労働基準法に定める「1週に40時間」の労働時間を超えると時間外労働に対する割増賃金が発生します。

法定内残業における賃金の計算方法

法定内残業に対しては、1時間あたりの賃金を計算して支払います。月給制の場合の計算方法は以下の通りです。

1時間あたりの賃金=月給÷1カ月の平均所定労働時間

月給には以下のものは含まれません。

  • 臨時に支払われるもの 結婚祝い金や傷病手当金など
  • 3カ月を超える期間ごとに支払われるもの 賞与など
  • 法令や労働協約に基づかない現物給与

その他賃金制の場合、1時間あたりの賃金の計算方法は、以下の通りです。

時給制の場合 時給

日給制の場合 日給÷1日の所定労働時間数

出来高制の場合 出来高給÷1カ月の総労働時間数

法定時間外残業における賃金の計算方法

法定時間外残業に対しては、割増賃金を計算して支払います。割増賃金を計算する際は以下のものを除外することが労働基準法や労働基準法施行規則で定められています。

  • 割増賃金の計算に含まない賃金
  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当・住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

法定時間外残業に対する賃金は、上記の割増賃金の計算に含まない賃金を除外して1時間あたりの賃金を求め、割増率をかけて計算します。

1時間あたりの賃金が2,000円の場合
1カ月60時間までの時間外労働に対する割増賃金 2,000×1.25=2,500(円)
1カ月60時間までの時間外労働に対する割増賃金 2,000×1.50=3,000(円)

法定内残業における注意点

法定内残業には通常の1時間あたりの賃金を支払えばよく、割増賃金を支払う必要はないことに注意が必要です。割増賃金の計算方法や裁量労働制の場合、固定残業代の場合には以下の点にも気をつける必要があります。

裁量労働制の場合の割増賃金は発生する?

裁量労働制とは実際の労働時間とは関係なく、あらかじめ定めておいた時間を労働したものとして扱う制度です。労使協定の締結した所定労働時間を働いたとみなす制度で、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2つがあります。

裁量労働制であっても深夜に労働させた場合、休日に労働させた場合はそれぞれ深夜労働に対する割増賃金、休日労働に対する割増賃金を支払う必要があります。また1日8時間を超える労働時間を定めておいた場合は、超えた労働時間に対して割増賃金支払いが必要です。

固定残業代の場合の割増賃金は発生する?

固定残業代とは毎月支払う残業代をあらかじめ定め、実際の残業時間に関わらず固定の金額を支払う場合の残業代です。「毎月○時間の残業代として○○円を支払う」として、毎月の同じ金額の残業代を支払う制度です。

固定残業代の場合、想定の〇時間までの残業については固定残業代の○○円を支払うことで残業代支払いは完結します。ただし想定の〇時間を超える残業残業に対しては、割増賃金を支払う必要があります。

法定内残業と法定外残業の違いを理解し、正しく残業代を支払おう

労働基準法は法定労働時間を1日8時間・1週40時間と定めています。所定労働時間を超えて労働させる場合でも、法定労働時間の範囲であれば時間外労働には該当せず、割増賃金を支払う必要はありません。割増賃金の支払いが必要とされるのは、法定労働時間を超えた時間外労働に該当する場合です。法定労働時間内の残業を法定内残業、割増賃金の支払いが必要になる時間外労働を法定外残業と言います。

法定外残業にあたる時間外労働や深夜労働、休日労働に対しては、割増賃金を支払わなければなりません。法定内残業と法定内残業の違いや割増率を理解し、正しい残業代支払いを行いましょう。

よくある質問

法定内残業とは何ですか?

労働基準法に規定されている法定労働時間(1日8時間・1週40時間)の範囲内での残業です。詳しくはこちらをご覧ください。

普通残業との違いを教えてください

普通残業とは、所定労働時間後の残業に対して用いられることがありますが、法定労働時間内であれば法定内残業です。詳しくはこちらをご覧ください。


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