• 更新日 : 2024年7月16日

ガバナンスとは?コンプライアンスとの違いや体制づくりの手法を解説!

Pointガバナンスの意味とは?

ガバナンスとは、企業が健全かつ持続的に経営を行うための統治・管理体制を指し、不正防止や信頼性向上に欠かせない仕組みです。

コンプライアンスは法令遵守、ガバナンスは組織全体を健全に統治する枠組みで、より広い概念です。

ガバナンスとは、主に統治の意味で用いられる言葉です。コーポレートガバナンスは企業統治の意味で、企業経営健全化のために必要とされる管理体制や取り組みを指す言葉です。ステークホルダーの利益確保を目的に、法令遵守を意味するコンプライアンスや企業リスクの適正な管理を示すリスクマネジメントとともに強化を図ることが求められます。

目次

ガバナンスとは?

ガバナンスとは、組織や企業が不正や混乱を防ぎ、持続的かつ健全に運営されるための「統治」や「管理体制」を指します。内部統制や意思決定の仕組み、透明性の確保などを含めた広い意味で使われます。企業においては、信頼性を高め、社会的責任を果たすために不可欠な考え方とされています。

企業を健全に運営するための管理体制

ガバナンス(governance)は、本来「統治」や「支配」を意味する英語で、企業経営においては、経営の透明性、公正性、説明責任を確保するための体制や仕組みを指します。たとえば、社外取締役の設置、内部監査、コンプライアンス体制の整備などが含まれます。これにより、不祥事の予防、意思決定の質の向上、リスク管理の強化が図られます。

ガバナンスの強化は信頼性向上と資金調達にもつながる

ガバナンスの強化は、内部管理の充実にとどまらず、企業の社会的信頼の向上や投資家・取引先からの評価の向上にも直結します。上場企業では、株主やステークホルダーからの支持を得るためにも、ガバナンスの取り組みが不可欠です。近年ではESG(環境・社会・ガバナンス)の一環としても注目されており、資金調達や企業価値向上の面でも重要な要素となっています。

ガバナンスとコンプライアンスとの違いは?

ガバナンスとコンプライアンスはともに企業経営における重要な概念ですが、焦点と役割が異なります。

コンプライアンスは「法令を守ること」、ガバナンスは「企業全体を管理すること」

コンプライアンス(法令遵守)は、企業が法律や規則、社会的ルールを守るための姿勢や体制を意味します。ハラスメント防止、労働法の遵守、内部通報制度の整備などが含まれます。

ガバナンスは、こうしたコンプライアンスも含みつつ、企業全体の経営を健全に導くための管理体制や意思決定の仕組みを指します。つまり、コンプライアンスは「守る」ことに重点があり、ガバナンスは「組織を統治・運営する」視点に立っている点が違いです。

ガバナンスとリスクマネジメントとの違いは?

ガバナンスとリスクマネジメントは関連性の高い概念ですが、目的とカバー範囲が異なります。

リスクマネジメントは「個別のリスク対策」、ガバナンスは「全体を統制する枠組み」

リスクマネジメントは、災害、情報漏洩、業績悪化などの具体的なリスクを洗い出し、評価・対策を行う手法です。これは企業活動における危機回避や損失防止を目的としています。

ガバナンスは、そうしたリスク管理も含めた経営全体の健全性や透明性を保つための枠組みです。つまり、リスクマネジメントはガバナンスの一部であり、特定の課題に対処する仕組みとして位置づけられます。

ガバナンスと内部統制の違いは?

ガバナンスと内部統制は混同されがちですが、それぞれの役割には違いがあります。

内部統制は「業務を正しく進める仕組み」、ガバナンスは「組織全体の統治」

内部統制は、業務が適正に行われるようにするための具体的な管理プロセスです。会計の正確性、職務の分掌、承認ルールの整備などが該当します。これに対し、ガバナンスは、こうした内部統制を含めた経営全体の方向性や意思決定を監視・管理する仕組みです。つまり、内部統制は「手段」、ガバナンスはそれを含む「経営管理の全体像」という関係です。どちらも相互に補完し合い、組織の信頼性を支える重要な柱となります。

企業用語としての「コーポレートガバナンス(企業統治)」とは?

日本において「ガバナンス」という言葉は、ビジネス分野では主に「コーポレートガバナンス(企業統治)」を意味する用語として使われています。これは、企業が不正を防ぎ、透明性・公正性のある経営を行うための管理体制や統制の仕組みを指します

コーポレートガバナンスは経営の健全性を支える仕組み

コーポレートガバナンスとは、企業の意思決定が適切かつ透明に行われるように、取締役会や社外取締役、監査役などの仕組みを通じて経営の監視を行う制度です。株主や従業員、取引先などの利害関係者に対して説明責任を果たし、信頼される企業活動を行うことを目的としています。

ガバナンスが不十分だと企業に重大なリスクをもたらす

ガバナンス体制が弱い企業では、不正会計、インサイダー取引、ハラスメント問題などの不祥事が発生するリスクが高まります。こうした問題は企業の社会的信用を大きく損ない、株価下落、顧客離れ、損害賠償といった経済的損失にもつながります。近年ではESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも、ガバナンス強化は企業評価の重要な指標とされており、国内外の投資家からも注目されています。

ガイドラインとしての「コーポレートガバナンス・コード」とは?

コーポレートガバナンス・コードは、2015年に上場企業や上場を目指す企業に向けて公表された指針です。東京証券取引所と金融庁が取りまとめた企業が持つべき意識を示す指針で、これまでに二度の改訂が行われています。

直近では2021年に、取締役会の機能強化・企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保・サステナビリティに関する課題への取り組みをポイントに改訂されました。コーポレートガバナンス・コードには以下に説明する5つの基本原則が定められています。

参考:コーポレートガバナンス改革に向けた取組みについて|金融庁

原則1:株主の権利・平等性の確保

「株主の権利・平等性の確保」とは、株主の権利が実質的に確保されるような適切な対応、また各株主が平等に扱われることを求める原則です。株主が適切に権利行使できるよう環境を整備したり、少数株主や外国人株主に十分な配慮をしたりすべきであり、具体的には次のようなことが挙げられます。

  • 株主総会において可決はしたが反対も相当数に上った会社提案に対しては原因を分析し、対応要否の検討などを行う
  • 株主総会で株式が適切に判断するために必要とされる情報は、必要に応じて的確に提供する

原則2:株主以外のステークホルダーとの適切な協働

「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」とは、従業員・顧客・取引先・債権者・地域社会といったさまざまなステークホルダーと適切に協議すること、取締役会・経営陣はステークホルダー事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮することを求める原則です。具体的には次のようなことが挙げられます。

  • 女性や外国人、中途採用者の管理職登用など、多様性の確保についての考え方や目標を示すとともに状況開示を行う

原則3:適切な情報開示と透明性の確保

「適切な情報開示と透明性の確保」とは、会社の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに関する情報などの非財務情報について適切に開示することを求める原則です。次のような情報の開示が推奨されます。

  1. 会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
  2. コーポレートガバナンス・コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
  3. 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
  4. 取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
  5. 取締役会が上記4.を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行う際の個々の選解任・指名についての説明

原則4:取締役会等の責務

「取締役会等の責務」とは取締役会に対して、企業戦略等の大きな方向性を示すこと、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支えること、経営陣や取締役に対して独立した客観的な立場から実効性の高い監査を行うことを求める原則です。

  • 取締役会は取締役会として判断・決定を行う事項と経営陣に委ねる事項について経営陣に対する委任の範囲を明確に定めて、概要を開示する

原則5:株主との対話

「株主との対話」とは、株主総会の場以外でも株主との間で建設的な対話を行うことを求める原則です。

コーポレートガバナンスを効かせるメリットは?

コーポレートガバナンスを整備し、しっかりと機能させることは、単に企業内の不正を防止するためだけでなく、経営の透明性や社会的信頼の向上、資金調達の円滑化など、企業にとって多くのメリットがあります。ここでは、主な利点を解説します。

経営の透明性が高まり、企業の信頼が向上する

コーポレートガバナンスの強化により、取締役会や監査役による監視体制が整い、経営陣の意思決定プロセスが外部から見える形になります。これにより、株主や取引先などの利害関係者に対して説明責任を果たしやすくなり、企業への信頼度が高まります。特に上場企業では、透明性のある経営は株主や投資家からの評価に直結します。

不正や不祥事の予防につながる

ガバナンス体制が機能していれば、内部監査やチェック機能を通じて、不正会計やハラスメント、情報漏えいなどの不祥事を早期に発見・是正できます。経営陣が一部の都合で暴走することを防ぎ、客観的で冷静な判断を促す土壌が作られます。これにより、企業は社会的信用の失墜や法的責任を負うリスクを低減でき、安定した運営が可能になります。

資金調達や投資誘致に有利になる

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が広がる中で、ガバナンスの整備状況は投資家の大きな判断材料となっています。ガバナンスがしっかりしている企業は、投資先として信頼されやすくなり、株式や社債による資金調達も有利に進められます。また、金融機関からの融資判断にも好影響を与えるため、企業の成長戦略においても重要な要素となります。

コーポレートガバナンスを効かせるデメリットは?

コーポレートガバナンスは企業の健全な経営や不正防止に効果を発揮しますが、すべての面でメリットばかりとは限りません。ここでは、ガバナンスを機能させる際に考慮すべきデメリットについて解説します。

意思決定に時間がかかり、経営のスピードが落ちる

コーポレートガバナンスの強化により、取締役会や社外監査の意見を取り入れる体制が整う一方で、関係者が増えることで意思決定に時間がかかる場面が出てきます。迅速な判断が求められるベンチャー企業や中小企業においては、ガバナンスの重視が経営判断の遅れにつながるリスクもあります。

コストや業務負担が増える

社外取締役の招聘や内部監査部門の整備、コンプライアンス研修の実施など、ガバナンス体制の構築には人件費・運営費がかかります。また、関連する文書の作成や会議の増加によって、管理部門の業務量が増大し、現場に負担がかかるケースも少なくありません。

柔軟な経営が難しくなることがある

ガバナンス体制が強化されると、内部統制や規則に縛られる部分が増え、経営者が直感や経験に基づいて大胆な戦略を打ち出しにくくなる傾向があります。新規事業への挑戦やリスクを伴う決断では、社内の合意形成に時間がかかり、チャンスを逃すことにもつながりかねません。

コーポレートガバナンスがないことで生じるリスクは?

コーポレートガバナンスが不十分、あるいは存在しない企業では、経営の不透明さや不正の温床となるなど、さまざまなリスクが生じます。これは企業の信頼性を損ない、社会的・経済的に深刻な影響を及ぼすおそれがあるため、十分な注意が必要です。

不正や不祥事が発生しやすくなる

ガバナンスが機能していない企業では、経営陣の暴走や従業員による不正行為を未然に防ぐことが困難になります。社内のチェック体制が整っていないことで、粉飾決算、情報漏えい、不適切な取引などが発生するリスクが高まります。これにより、企業は社会的信用を失い、訴訟や行政処分といった重大な事態に直面する可能性があります。

経営の透明性が失われ、判断の質が低下する

コーポレートガバナンスが欠如していると、取締役会や監査の機能が不十分になり、重要な意思決定が独断的かつ非効率に行われる恐れがあります。これにより、経営方針が不明確になったり、社員のモチベーションが低下するなど、組織全体の統率力が損なわれる可能性があります。

投資家や取引先からの信用を失い、資金調達が困難になる

ガバナンスが整っていない企業は、投資家や金融機関からの評価が低くなり、資金調達や取引の機会を失うリスクがあります。近年では、ガバナンスはESG投資の主要な評価軸の一つでもあり、体制が整っていない企業は投資対象から外されることも少なくありません。ガバナンスの欠如は、将来的な成長機会を狭めることにつながります。

コーポレートガバナンスの管理を行う部署・仕組みづくりの手順は?

コーポレートガバナンスを機能させるためには、社内に適切な担当部署を設けるとともに、明確な仕組みを整える必要があります。ここでは、主な担当部署と、ガバナンス体制を整備する手順について解説します。

ガバナンス管理の中心は法務部・総務部・内部監査部門

企業内でガバナンスの管理を担う主な部署は、法務部、総務部、そして内部監査部門です。 法務部は、会社法や金融商品取引法などの法令に則った運営を支援し、取締役会や株主総会の手続き管理を担います。総務部は取締役会の事務局的機能を持ち、社内規程や社内ルールの整備を進めることが多いです。内部監査部門は、企業活動全体がガバナンスに沿って適切に行われているかを独立した立場からチェックします。

これらの部門が連携し、ガバナンス体制の構築と維持を担います。

ガバナンス体制づくりは4つのステップで進める

ガバナンスの仕組みを整えるためには、以下のような手順を踏むのが一般的です。

  1. 現状把握と課題の洗い出し
    経営陣・業務部門・監査部門が連携し、現行の統治体制やルールの整備状況を確認します。不正リスクやコンプライアンス体制の弱点などを明確にします。
  2. 基本方針の策定
    企業理念や経営戦略に沿ったガバナンス方針を明文化します。たとえば、「企業の透明性確保」「取締役会の実効性強化」などの基本方針を定めます。
  3. 体制の構築と制度整備
    取締役会の構成、社外取締役の導入、監査体制、リスク管理委員会の設置など、必要な制度・機関を設計・導入します。社内規程の見直しや運用ルールの整備もこの段階で行います。
  4. 運用と継続的な見直し
    策定した仕組みを運用しつつ、定期的にモニタリング・評価を行います。内部監査や第三者評価を通じて課題を抽出し、必要に応じて体制を修正します。

このように、ガバナンスは一度整えれば終わりではなく、継続的に見直し改善していくべき組織全体の取り組みです。経営と現場が一体となって制度を活かし、実効性あるガバナンスを構築することが、企業の持続的成長につながります。

必要な仕組みをつくり、コーポレートガバナンスを効かせよう

ガバナンスは統治という意味の言葉で、コーポレートガバナンスは企業統治として用いられます。企業が健全な経営を行うために必要な管理体制や取り組みを表し、企業の不正や不祥事を未然に防ぎ、利害関係者からの支持により資金調達で有利に働くといったメリットがあります。

法令遵守を指すコンプライアンスや、リスクの適正管理を指すリスクマネジメントとともに、ガバナンスを強化することが求められています。ガバナンスについては、コーポレートガバナンス・コードが東京証券取引所と金融庁の取りまとめにより設けられています。上場企業や上場を目指す企業は、コーポレートガバナンス・コードに沿って、企業経営健全化のために必要とされる管理体制構築やその他の取り組みを行わなければなりません。

コーポレートガバナンス・コードでは「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」の5つを基本原則としています。

コーポレートガバナンスを効かせると、不正の防止に役立つ・経営の健全化が図れる・企業価値が向上するといったメリットがもたらされます。コーポレートガバナンス・コードについても理解して、必要な仕組みづくりをしましょう。

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