• 作成日 : 2026年1月14日

皮膚科の開業は儲からない?年収の実態や失敗する理由、成功の秘訣を解説

皮膚科の開業は「儲からない」という噂がありますが、これは戦略次第で大きく変わります。保険診療単体では単価が低いため、高い回転率か自由診療の組み合わせが重要になるからです。

この記事では、皮膚科開業医の年収の実態から、失敗してしまう具体的な理由、そして安定した収益を上げるための成功法までをわかりやすく解説します。

皮膚科の開業は本当に儲からない?

皮膚科の開業は、戦略なしでは儲かりにくいものの、工夫次第で十分に高収益が可能です。

皮膚科経営で利益を出せるかどうかは、明確な戦略の有無によって決まります。内科などのように、ある程度の患者数が来れば自然と経営が成り立つ診療科とは異なり、皮膚科は「数を診る」か「単価を上げる」かの選択が欠かせません。実際に、駅前で1日100人以上の患者を診察して利益を出す「回転重視型」クリニックもあれば、完全予約制で美容皮膚科をメインにし、高収益を上げる「付加価値重視型」クリニックもあります。

儲からないと言われるケースの多くは、このどっちつかずの状態になっていることが原因です。自身の得意分野や地域のニーズに合わせた経営スタイルを確立できれば、皮膚科は依然として魅力的な開業科目といえるでしょう。

参考:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)|厚生労働省

皮膚科の開業が儲からないと言われる理由は?

皮膚科の開業が「儲からない」と言われる主な要因は、保険診療の単価の低さと競合過多の2点です。皮膚科は処置料などが安く設定されているため、利益を出すには多くの患者を診なければなりません。くわえて、都市部を中心にクリニックが乱立し、患者の奪い合いが起きている現状もあります。

ここでは、皮膚科特有の収益構造の難しさと、市場環境の厳しさについて解説します。

保険診療の点数が低く「薄利多売」になりがちだから

保険診療を中心とする皮膚科経営は、診療報酬点数が低いために薄利多売の構造にならざるを得ません。内科や外科で算定できる高い点数が少なく、日常診療は視診と投薬が中心だからです。

例えば、湿疹などの一般的な症状では、診察料と処方箋料以外に算定できる点数がほとんどありません。このように、皮膚科で点数を稼ぐ難易度は他科に比べて高く、これが儲からないと言われる最大の要因です。1人あたりの単価が低いため、患者数が少ない日は売上にダイレクトに響いてしまうのです。

参考:令和6年度診療報酬改定について|厚生労働省 

多数の患者を診る必要があり業務がきついから

皮膚科医の業務が「きつい」とされるのは、収益確保のために1日80人〜100人ものペースで診療を続けなければならないためです。

近年、皮膚科が少ない理由として、この薄利多売の働き方を敬遠する若手医師が増えていることもあげられます。開業しても休みなく働き続けなければならない現実は、これから開業を目指す医師にとって大きな懸念材料となります。

競合クリニックが増加して患者の奪い合い状態だから

都市部における皮膚科クリニックの急増は、患者の奪い合いを引き起こし、経営を圧迫する直接的な原因となっています。皮膚科は大型の医療機器がなくても開業できるため、初期投資が比較的少なく、参入障壁が低い診療科です。そのため、駅前や住宅街にはすでに多くの皮膚科が存在し、飽和状態にあるエリアも珍しくありません。

とくに収益性の高い美容皮膚科を併設するクリニックが増えたことで、単なる肌荒れ治療だけでは差別化が難しくなってきています。既存のクリニックとの競争に勝てず、必要な患者数を確保できないことが、「儲からない」という結果につながっています。

皮膚科における開業医・勤務医それぞれの年収は?

皮膚科の開業医と勤務医の年収を比較すると、リスクを負う分、開業医の方が大きく上回る傾向にあります。一般的に開業医は高収入ですが、そこには経営リスクや設備投資の返済も含まれることを考慮しなければなりません。

ここでは、勤務医と開業医それぞれの年収相場について解説します。

勤務医の年収

勤務医として働く皮膚科医の平均年収は、およそ1,000万円から1,500万円が相場です。この金額は、勤務する病院の規模や地域、役職によって変動しますが、他の診療科と比較しても標準的な水準といえます。大学病院などに勤務する場合はこれより低いケースもありますが、外勤や当直などで収入を補う医師も少なくありません。

一方で、昇給の幅は限定的であり、大幅な年収アップを目指すのは難しいのが実情です。20代から30代にかけてスキルを磨いても、給与への反映には時間がかかるため、開業を検討する医師が多くなります。

参考:令和5年賃金構造基本統計調査(一般労働者・職種)|e-Stat 政府統計の総合窓口

開業医の年収

独立して開業した皮膚科医の平均年収(事業所得)は2,500万円から3,000万円ほどです。経営が軌道に乗れば、自分の裁量で収入を大きく伸ばせるのが開業医の最大の魅力です。とくに美容皮膚科を積極的に取り入れているクリニックでは、年収1億円を超える事例も珍しくありません。

ただし、この金額は税金や借入金の返済を行う前の金額(事業所得)です。ここから税金や社会保険料、将来のための内部留保などを差し引くため、全額が手取りにならないことに注意が必要です。また、開業初期は患者数が安定せず、一時的に収入が下がるリスクがあることも理解しておきましょう。

参考:第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)|厚生労働省 

皮膚科の開業で失敗するパターンは?

皮膚科の開業で失敗してしまう典型的なパターンには、立地選定のミスや無謀な資金計画があげられます。一度開業してしまうと修正が難しい要素も多いため、事前によくある失敗パターンを把握し、対策を練っておくことが重要です。

ここでは、皮膚科の開業で失敗する代表的なパターンについて解説します。

立地選定のミスで患者が集まらない

クリニックの立地選定を誤ることは、集患につながらない最大の要因となり、経営不振を招きます。皮膚科は「通いやすさ」が重視されるため、駅から遠い、駐車場がないといった立地では患者が集まりません。失敗例として多いのが、家賃の安さを優先して人通りの少ない場所を選んでしまうケースです。

看板が見えにくく(視認性が悪く)、飛び込みの患者が見込めないビルの2階以上などの場所で開業する場合は、よほど強力なWeb集患やこの先生に診てもらいたいという独自の強みがない限り、経営は苦しくなります。物件選びは妥協せず、徹底的な診療圏調査を行うことが求められます。

無理な資金計画と高額な機器導入をする

開業初期に過大な設備投資を行うことは、資金繰りを悪化させ、早期の経営破綻を招く危険性があります。とくに美容皮膚科を併設する場合、1台数百万円〜1千万円以上もする最新のレーザー機器などを最初からフル装備で導入しようとするのは危険です。開業資金は、半年〜1年分の運転資金も含めて余裕を持たせる必要があります。

高額な機器を導入しても、すぐに稼働率が上がるとは限りません。広告宣伝費を削って機器にお金をかけてしまうのもよくある失敗です。どんなに良い設備があっても、患者に知られなければ意味がないため、慎重な計画が必要です。

差別化ができず埋もれてしまう

特色や強みのない「何でも屋」のようなクリニックは、競合の中に埋もれてしまい患者に選ばれません。近隣に競合が多いエリアでは、「あそこの皮膚科は〇〇が得意」という認知を獲得しなければならないからです。例えば、アトピー治療に特化している、小児皮膚科に強いなど、通うメリットが明確であることが大切です。

差別化ができていないと、価格競争に巻き込まれたり、広告費をかけ続けなければ集客できなかったりと、消耗戦になってしまいます。自分の専門性や地域のニーズをふまえ、独自のポジションを築くことが成功への近道です。

皮膚科の開業で儲かる状態にするには?

皮膚科開業で儲かる状態を実現するには、自由診療の導入やオペレーションの効率化といった仕組みづくりが不可欠です。具体的には、自由診療による単価アップ、業務効率化による回転率の向上、そして効果的な集患戦略の3つが鍵となります。

ここでは、皮膚科の開業で儲かる状態を作り出すためのポイントについて解説します。

美容皮膚科(自由診療)を導入して単価を上げる

客単価を上げるためのもっとも効果的な手段は、美容皮膚科などの自由診療を導入することです。シミ取りレーザーや脱毛などの施術は、保険診療とは異なり価格を自由に設定できるため、高い収益性が見込めます。すべての患者に美容医療を勧める必要はありませんが、一般皮膚科で来院した患者の中には、肌の悩みを抱えている人が多くいます。

また、ドクターズコスメやサプリメントなどの物販も、手間をかけずに単価を上げる有効な手段です。自由診療を収益の柱の一つとして育てることで、外部要因に左右されにくい強い経営体質を作れます。

回転率を高めるオペレーションを構築する

診療の回転率を高めるためのオペレーション構築は、多くの患者をスムーズに診察し収益を最大化するために欠かせません。医師が診察以外の業務に時間を取られないよう、スタッフとの役割分担を明確にすることが大切です。例えば、問診は事前にWebで行い、カルテ入力はクラーク(医師事務作業補助者)に任せることで、医師は「患者の診察」と「治療方針の決定」だけに集中できます。

ITツールを積極的に活用し、院内の動線を見直すことで、患者満足度を下げずに診療数を増やすことは可能です。スタッフ教育にも力を入れ、チーム全体で効率化に取り組む姿勢が求められます。

ターゲットに合わせた集患戦略を実行する

ターゲット層に合わせた集患戦略を実行することは、クリニックの認知度を高め、安定した来院数を確保するために重要です。どんなに良い診療をしていても、患者に来てもらわなければ収益にはつながりません。若年層や美容に関心のある層をターゲットにするなら、InstagramなどのSNS活用が効果的です。症例写真や院内の雰囲気を発信することで、親近感と信頼感を醸成できます。

Webマーケティングは専門的な知識が必要な場合も多いため、プロの手を借りるのも一つの方法です。自院の強みとターゲットを明確にし、もっとも響く媒体を選んで情報発信を続けましょう。

皮膚科開業で成功する秘訣は?

利益を上げ続ける皮膚科医には、医療スキルだけでなく、鋭い経営視点と変化への適応力が共通しています。皮膚科医が向いている人とは、単に診断が早いだけでなく、ビジネスとしての医療を理解している人といえます。

ここでは、皮膚科の開業で利益を上げるために医師自身が意識すべきポイントについて解説します。

スピーディーな診療と判断を心がける

保険診療で利益を出すためには、短時間で的確な診断を下すスピーディーな診療スキルが求められます。患者の話を丁寧に聞くことは大切ですが、1人あたりに時間をかけすぎると、待ち時間が長くなり、結果として患者満足度の低下と収益の悪化を招きます。視診だけで瞬時に診断をつける直感力に近い経験値と、迷いなく治療方針を決定する決断力が重要です。

スピーディーな診療は、患者にとっても「早く終わって助かる」というメリットになります。質を落とさずにスピードを上げることは、皮膚科開業医にとって必須のスキルといえるでしょう。

美容への関心とトレンドを追い続ける

美容皮膚科で成功するためには、医師自身が常に美容トレンドに関心を持ち、情報をアップデートし続ける必要があります。美容医療の世界は日進月歩であり、新しい機器や治療法が次々と登場します。患者、とくに女性層はSNSなどで最新情報を収集しているため、医師の知識が古いと信頼を失いかねません。

また、自分自身が美容施術を体験したり、スタッフと共有したりすることで、患者の気持ちに寄り添った提案ができるようになります。美容をビジネスとして割り切るのではなく、楽しんで取り組める医師のほうが成功しやすい傾向にあります。

経営者としての数字をきちんと管理する

安定した経営を行うには、医師であると同時に経営者として、売上や経費などの数字をシビアに管理する能力が欠かせません。「診療さえしていれば何とかなる」という感覚では、知らないうちに無駄な経費が膨らんだり、スタッフの採用タイミングを見誤ったりしてしまいます。

数字に弱いと感じる場合は、税理士やコンサルタントなどの専門家と連携し、毎月の試算表損益計算書など)をチェックする体制を整えましょう。どんぶり勘定ではなく、シビアな目線で数字と向き合うことが、クリニックの存続と成長につながります。

自分に合った開業スタイルを見極めよう

自分に合った開業スタイルを見極めることが、皮膚科経営の成功への第一歩です。皮膚科の開業は、決して「儲からない」ものではありません。たしかに保険診療のみでの高収益化はハードルが高いですが、美容医療の導入やオペレーションの工夫によって、大きな成功を収めるチャンスは十分にあります。

まずは開業支援のプロに相談し、具体的な収支シミュレーションを行ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。


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