- 作成日 : 2026年1月14日
役員変更登記は自分で手続きできる?具体的な手順や必要書類、費用、期限など徹底解説
法人の経営において、役員の任期満了や辞任、新任に伴う「役員変更登記」は避けて通れない手続きです。「司法書士に依頼すると費用がかかる」「役員変更登記を自分でやりたい」と考える経営者や担当者は少なくありません。
本記事では、役員変更登記を自分で行うための具体的な手順、必要書類、費用、そして絶対に守らなければならない申請期限について徹底解説します。法務局への手続きをスムーズに進め、コストを抑えたい方はぜひ参考にしてください。
目次
役員変更登記は自分で手続きできる?
役員変更登記は専門家(司法書士)に依頼せず、自分(自社)で手続きを行うことが可能です。
法務局が公開している様式や記載例を利用したり、民間のオンライン登記支援サービスを活用したりすることで、法律の専門知識が深くなくても申請書類を作成できます。ただし、手続きには会社法に基づいた厳格なルールと期限が存在します。自分で行う場合は、コスト削減というメリットだけでなく、手間や法的なリスクといったデメリットも比較して判断することが重要です。
自分で申請するメリットは?
- コスト削減:司法書士などの専門家へ依頼した場合、数万円の報酬(代行手数料)が発生しますが、自分で行えば実費である「登録免許税」のみの支払いで済みます。
- 知識の習得:自分で手続きを行う過程で、会社法や商業登記の仕組みに関する理解が自然と深まります。自社の定款を見直す機会にもなり、経営者としての法務知識が蓄積されることは、長期的な会社経営において大きな財産となるでしょう。
自分で申請するデメリットは?
- 手間と時間がかかる:ゼロから必要書類を収集・作成し、法務局へ出向く(または郵送する)手間が発生します。
- 補正のリスク:専門知識がないと、書類の不備や記載ミスが起きやすくなります。法務局から補正指示を受けると、再提出などの対応でさらに時間がかかります。
- 期限超過のリスク:登記は「変更が生じてから2週間以内」という期限があります。書類作成に手こずり期限を過ぎると、過料の対象となる可能性があります。
役員変更登記が必要になるケースは?
役員変更登記が必要になるケースは、単に人が入れ替わる時だけではありません。会社法では主に以下の4つのパターンで登記申請が必要となります。
1. 任期満了による「重任(再任)」
最も多いケースが、任期満了に伴う手続きです。既存の役員が任期を終え、引き続き同じ人が役員を務める場合でも、自動更新とはなりません。必ず株主総会で再選の決議を行い、「重任」の登記をする必要があります。
2. 役員の「辞任」または「解任」
役員が任期の途中で会社を辞める場合は「辞任」、会社側が役員を辞めさせる場合は「解任」の登記が必要です。辞任の場合は本人の意思確認書類(辞任届)、解任の場合は株主総会の決議などの証明書類が重要になります。
3. 新しい役員の「就任(新任)」
事業拡大などで新たに役員を追加する場合や、欠員が出たために後任を迎える場合は「就任」の登記を行います。この際、新任役員の就任承諾書や印鑑証明書などが新たに必要となります。
4. 役員の氏名・住所変更や死亡
役員個人の氏名が変わった場合や、引っ越しをして住所が変わった場合(代表取締役など住所が登記されている役員のみ)、あるいは役員が亡くなった場合にも変更登記が必要です。
自分で役員変更登記を行う方法は?
自分で申請する場合、大きく分けて2つのパターンがあります。
1. 書面で申請する方法
法務局公式サイトからテンプレートをダウンロードし、Word等で作成して提出する方法です。完成した書類一式を管轄の法務局窓口に直接持参するか、郵送にて提出します。
窓口持参の場合、軽微な不備であればその場で修正の指摘を受けられる場合があるため、不安な方は窓口へ行くことをおすすめします。
参考:商業・法人登記の申請書様式|法務局、管轄のご案内|法務局
2. 法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用する方法
法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、自宅やオフィスから申請する方法です。申請にはマイナンバーカードと、それを読み取るためのICカードリーダライタ等の準備が必要です。
申請情報の送信はオンラインで可能ですが、添付書類は別途法務局へ郵送(または持参)が必要なケースが一般的です。システム操作に一定の慣れが必要です。
3. 民間のオンライン書類作成サービスを利用する方法
登記書類作成支援に特化した民間のサービスを活用する方法です。ガイドに従ってフォームに入力するだけで、議事録・申請書などの書類が自動生成されます。作成された書類を印刷し、郵送して完了させます。
数千円〜1万円程度の利用料がかかりますが、司法書士依頼よりは安価です。自分でやりたいが書類作成に不安がある方、時間を節約したい方におすすめです。
自分で役員変更登記を行う具体的な手順は?
役員変更登記を完了させるまでの流れは、大きく分けて3つのステップがあります。
1. 株主総会の開催と決議
まずは株主総会を開催し、役員の選任や解任に関する決議を行います。
株式会社において役員の変更は、会社法上の重要事項です。定時株主総会または臨時株主総会を開き、以下の事項を決定します。
- 任期満了に伴う改選(重任・退任・新任)
- 辞任の承認
- 解任の決議
この際、必ず「株主総会議事録」を作成し、決議の内容、日時、出席数などを正確に記録してください。この議事録は、登記申請における最重要書類の一つとなります。
2. 必要書類の収集と作成
決議内容に基づき、法務局へ提出する「登記申請書」と「添付書類」を作成・収集します。役員変更の内容(重任、新任、辞任など)によって必要な書類は異なりますが、一般的には以下の書類が必要です。
- 変更登記申請書:会社名や変更内容を記載した表紙
- 株主総会議事録:役員の選任や辞任を決議した記録
- 株主リスト:議決権上位の株主情報を記載した書類
- 就任承諾書:新しい役員が就任を承諾したことを証する書面
- 辞任届:辞任する役員がいる場合に必要
- 印鑑証明書:新任の場合や、代表取締役の変更時に必要となる書類
3. 法務局への申請
すべての書類が揃い、押印が完了したら、管轄の法務局へ提出します。
法務局に書類を提出してから登記が完了するまでの審査期間は、通常1週間〜2週間程度かかります。書類の調査・作成に要する準備期間も含めると、トータルで2〜3週間程度を見積もっておくのが無難です。
特に、年度末や定時株主総会が集中する6月〜7月などの繁忙期は、審査にさらに日数がかかることがあります。補正が入ると完了が遅れるため、余裕を持って提出することが大切です。
自分で役員変更登記を行う場合にかかる費用は?
自分で行う場合にかかる費用は、基本的に「登録免許税」のみです。
登録免許税は資本金によって異なる
役員変更登記にかかる登録免許税は、役員が何人変わっても、1回の申請(申請書1通)であれば一律料金となります。金額は会社の「資本金の額」によって以下の2パターンに分かれます。
- 資本金が1億円以下の場合:10,000円
- 資本金が1億円を超える場合:30,000円
この金額分の収入印紙を郵便局や法務局で購入し、申請書の台紙に貼り付けて納付します。司法書士に依頼しないため、この実費以外の報酬支払いは発生しません。
複数の変更はまとめて申請がおすすめ
登録免許税は「申請1件につき」課税されるのが原則ですが、役員変更に関しては「変更内容が複数あっても、1枚の申請書でまとめて申請すれば1件分の料金」で済みます。変更時期が近い案件がある場合は、タイミングを合わせて一括申請するのがおすすめです。
自分で役員変更登記を行う場合の注意点は?
役員変更登記は、効力発生日(株主総会での決議日など)から「2週間以内」に申請しなければなりません。これは会社法第915条第1項で定められた法的義務です。
もし2週間を過ぎてしまった場合でも、登記申請自体は受理され登記簿は書き換えられますが、「登記懈怠」という違反状態になります。この場合、後日、裁判所から代表者個人に対して「100万円以下の過料(罰金のようなもの)」が科される可能性があります。
数ヶ月や数年の放置は、高額な過料のリスクだけでなく、金融機関や取引先からの信用低下を招くため、速やかな対応が必要です。
役員変更登記を司法書士に依頼すべきケースは?
「時間がなく確実性を重視したい」「株主構成や変更内容が複雑」という場合は、専門家への依頼が賢明です。
司法書士に依頼すれば、必要書類の作成から申請代理までを一任でき、手間を省いて手続きをスムーズに進められます。なお、登記申請の手続きを業として代理で行うことができるのは、司法書士または弁護士のみです。それ以外の第三者が報酬を得て手続きを代行することは法律で禁止されているため注意してください。
コストと手間を比較して最適な方法を
役員変更登記を自分で行うことは、コスト削減の有効な手段です。最後に重要なポイントを整理します。
- 専門知識がなくても、自分(自社)で手続きは可能。
- 費用は資本金1億円以下なら1万円、1億円超なら3万円(登録免許税)。
- 登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書などが必要。
- 期限は変更が生じてから2週間以内。遅れると過料のリスクあり。
まずは法務局のWebサイトを確認するか、書類作成支援ツールを検討し、期限内に確実に申請を済ませましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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