- 更新日 : 2025年12月23日
利益供与とは?グループ会社の具体例と判断基準、会計のポイントを解説
目次
利益供与とは?
利益供与とは、企業や組織が特定の相手に対して金銭・物品・便宜などの利益を不当な形で提供し、自社に有利な影響を及ぼそうとする行為を指します。以下では、利益供与の意味と法的な位置づけについて整理します。
利益供与とは、企業が不当な利益を提供して意思決定を歪める行為
利益供与とは、企業が取引先・顧客・株主などに対し、金銭や贈答品、接待、特別な便宜などを不当に提供し、自社に有利な行動をとらせるために働きかける行為です。これは贈収賄や不正な優遇措置に発展する可能性があるため、公正な取引を妨げる行為として会社法や金融商品取引法で禁止されています。また、株主に対する不当な利益提供は、少数株主の利益を侵害する行為として厳しく規制されています。
禁止されており、違反すると企業の信用失墜や法的責任につながる
利益供与が行われると、企業内部の意思決定が歪み、市場競争が公正に保たれなくなります。そのため、企業は内部統制やコンプライアンス体制を強化し、不当な利益提供を防止する必要があります。利益供与が発覚した場合、役員の責任追及、行政処分、刑事罰などのリスクが生じ、企業の信用は大きく損なわれます。利益供与は企業不祥事の原因となりうる重大な問題であり、組織全体で防止策を徹底することが求められます。
グループ会社の利益供与とは?問題点は?
グループ会社間では親会社・子会社・関連会社が取引を行いますが、この関係性を利用して一方が他方に不当に利益を与える行為は「利益供与」とみなされます。以下では、その意味と問題点を整理します。
グループ会社の利益供与とは、支配関係を背景に一方に不当な利益が偏る取引
グループ会社の利益供与とは、親会社が子会社に不当に利益を移転したり、子会社が親会社に不利益な条件で取引を行ったりする行為を指します。たとえば、相場を大きく下回る価格での販売、無償提供、過度な値引き、資金のゼロ金利融資などが代表例です。企業集団内では支配関係が存在するため、取引条件が外部の市場原理より偏りやすい点が特徴です。
少数株主の利益侵害や税務上の問題につながるためリスクとなる
グループ会社間の利益供与は、外部株主に不利益を与えたり、財務状況を歪めたりする原因になります。また、税務面では移転価格税制の対象となり、適正価格から逸脱していると判断されれば追徴課税を受ける可能性があります。さらに、会社法上の取締役の善管注意義務に抵触する恐れがあり、役員の責任問題に発展することもあります。
企業集団としての透明性と公正性を確保するため、グループ内部の取引であっても市場価格を基準とした適切な管理が不可欠です。
グループ会社の利益供与とみなされる例は?
グループ会社間の利益供与とみなされ、問題になる可能性がある主な取引について解説します。
債務免除
グループ会社に対する貸付債権の放棄や売掛債権の放棄などの債務免除は、利益供与とみなされ、寄附金課税が問題になる可能性があります。債務免除がグループ会社の支援を目的としたものであっても、認められるための要件は厳しく設定されています。過去の裁判では、債務超過の解消を求められた中で行われた貸付債権の放棄について、適切な支援と認められなかった事例もあります。理由は、債務超過の解消を求められた事実が認められなかったこと、債務免除をしなかったことによる倒産の可能性が否定されたことによるものです。
設備の無償供与
グループ会社への設備の無償供与も利益供与に該当します。問題となるのは、寄附金課税です。海外子会社に対して設備の無償供与をした場合には、移転価格税制が問題になることがあります。本来であれば、適切な対価を受け取って設備を譲渡するところを、無償で提供していることから問題になるケースです。
金銭の貸付
金銭の貸付は第三者に対しても行われる可能性があるため、グループ会社への貸付自体は問題ありません。寄附金課税や移転価格税制の問題が生じる可能性があるのは、貸付金に対する金利や金融機関からの借り入れに対する保証です。第三者間の取引であれば、貸付に対して相応の金利が発生するはずです。また、金融機関からの借り入れの保証を引き受ける際には、相応の対価を受け取るはずです。グループ間取引で、相応の金利や保証の対価を受け取らない場合は、利益供与とみなされる可能性があります。
金銭による支援
グループ会社への金銭による支援は、支援をしないことにより倒産の可能性が高まるなどの妥当性が認められなければ、利益供与とみなされる可能性があります。金銭以外の、営業権や指導料などの経済的利益の供与も同様の扱いです。いずれも、寄附金課税や移転価格税制の問題が生じる可能性があります。
資産の低価での提供
商品の販売価格を下げての提供などは第三者間の取引でも行われることがあります。通常の取引の範囲内であれば、妥当と認められる可能性があるでしょう。問題なのは、グループ会社に対して資産を著しく低価格で提供した場合です。利益供与とみなされ、寄附金課税や移転価格税制が問題になる可能性があります。
子会社からの配当
子会社から親会社への配当は、株主に対する配当が第三者間でも行われる通常の取引であるため、基本的には問題ありません。しかし、子会社の財政状況に対して過度な配当の支払いなどは子会社の財務を危うくし、取締役の義務違反や株主の利益侵害のリスクを生じさせる問題になる可能性があります。
グループ会社の利益供与にならないケースは?
100%の資本関係がある親子間などの取引では、グループ法人税制が適用されます。グループ法人税制とは、対象の法人間で行われる寄附や資産の譲渡、配当などの取引については税務上の損益を認識しない制度です。
グループ法人税制があることで、完全支配関係がある企業間の取引は利益供与とみなされません。同じ会社の支店間で取引が行われても利益供与とみなされないのと同じ理由です。金銭や資産の単なる移動と考えることから、利益供与にはなりません。
参考:完全支配関係がある法人間の受贈益(4-2-6ご参照)|国税庁
グループ会社間で利益供与とみなされた場合はどうなる?
グループ会社間の利益供与が問題となった場合の、罰則や税務上のリスクについて解説します。
利益供与が違法になるケース
会社法では、株主の権利行使に関する利益供与の禁止が規定されています。株主の権利行使に影響を及ぼす財産上の利益を供与することを規制したものです。株主に対する利益供与だけでなく、権利行使を妨害する目的であれば、役員や監査役、従業員、株主の家族などへの利益供与も違法とされる可能性があります。
株主の権利行使に関する利益供与の禁止が問題になるのは、利益供与により、経営陣の便宜を図る議決権行使を促すようなケースです。資本関係が100%の完全子会社や50%を超える子会社については、問題になるケースはほとんどないでしょう。しかし、影響力はあっても子会社ほどの影響力はない資本関係が20%以上の関連会社などで問題になる可能性があります。
参考:特定株主への利益供与とはどのようなケースが該当するか|中小企業基盤整備機構
違法な利益供与の罰則
株主の権利行使を妨げる違法な利益供与は、法律により返還の義務があります。返還がされないときは、利益供与に関与した取締役が利益供与相当額を返済しなければなりません。
また、利益供与については刑事罰も定められています。利益供与をした者、利益供与を受けた者、利益供与を強要した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑に処される可能性があります。
利益供与の税務リスク
グループ会社間の取引が利益供与とみなされた場合、寄附金課税と移転価格税制の税務リスクが生じる可能性があります。
寄附金課税とは、実質的に贈与または無償の供与とされる部分を税務上の寄附金とすることです。寄附金は、ほかの経費とは異なり、その種類に応じて損金算入額(法人税の計算上経費に算入できる金額のこと)に限度が設けられています。国内のグループ会社との取引で問題になる可能性があります。
移転価格税制とは、国外関連者との取引において国外への所得の移転を防止するための制度です。第三者間において適正な取引価格とされる独立企業間価格で取引が行われたものとして課税されます。海外のグループ会社との取引で問題になる可能性があります。
参考:寄附金の範囲と損金不算入額の計算|国税庁、国際税務関係情報|国税庁、移転価格ガイドブック|国税庁
利益供与のリスクへの対応
利益供与のリスクに対応するには、まず法令をしっかり遵守することが重要です。税務リスクに対応するには、取引が妥当なものと認められるようにしておく必要があります。例えば、客観的に取引が妥当とされる証拠を残しておく、取引の妥当性について十分に説明できるようにしておくなどです。
グループ会社間の利益供与に関する会計処理のポイントは?
グループ会社間の取引は、市場価格から逸脱した条件で行われると利益供与とみなされ、税務調査で寄附金認定や移転価格税制の適用を受ける可能性があります。ここでは、利益供与と判断されやすい代表的なケースと、それぞれの会計・税務処理のポイントを解説します。
寄附金に該当する場合
グループ会社に対して資金提供を行った際、返済見込みが低かったり、経済合理性が乏しかったりすると、「寄附金」と判断されます。寄附金とされれば損金算入に制限があり、税額が増える可能性があります。一方、倒産防止など合理的な理由があれば寄附金扱いにならないこともあります。会計上は貸付金の回収可能性を見極め、必要に応じて貸倒引当金や減損処理を検討します。
低額譲渡に該当する場合
資産を時価より著しく低い金額で譲渡すると、時価との差額が税務上の寄附金として扱われます。会計では実際の取引価額で計上するため、税務申告で別表調整が必要になります。低額取引が継続する場合は移転価格税制の対象にもなり得るため、取引価格の妥当性を検証する必要があります。
低利または無利息で貸付を行った場合
通常、金銭の貸付には利息が発生するため、市場金利より著しく低い利率や無利息で貸付を行うと、その利息相当額が寄附金と認定されることがあります。税務では、適正利率との差額を寄附金相当額として調整する必要があります。会計上は、利息収益の計上が実際の契約内容と整合するよう、契約内容に応じた処理が求められます。
無償で役務・サービスを提供した場合
グループ会社に対して無償でサービス(管理業務、事務代行、技術提供など)を提供した場合も、提供した役務の価値が寄附金とみなされることがあります。会計上は実際に収益が発生していないため記帳はされませんが、税務面では「通常発生するはずの役務提供対価」を算定し、寄附金として損金不算入の調整が必要です。管理部門サービスの提供などは「グループ共通費の適正配賦」が求められます。
グループ会社の利益供与は問題になる可能性がある
グループ会社間の利益供与は、会社法や税務上の面で問題になる可能性があります。特に税務上の取り扱いに関しては、利益供与とみなされることで税負担が増える可能性があるため注意しましょう。利益供与とみなされる可能性がある取引を監視し、適切に対応できるようにするには、グループ全体の取引を一元管理できる適切な会計システムの利用がおすすめです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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